日誌、日記や検討書が刑訴法323条3号の特に信用すべき書面に当たり証拠能力が認められるかが争われた事案
①銀行支店次長がほぼ毎日終業後に本人の主観を抜きにして当日の業務の要点を記載していた日誌、②同支店長が私生活に関する事項等を個人的な心覚えのために記載していた日記、③会社の設計部所属の者が護岸工事に必要なブロックの重量・個数を算出した検討書に323条が適用されるかが争われた。
判旨(最高裁昭和53年判決)
法第323条各号所定の書面は、伝聞証拠禁止の例外の重層的構造のいただ点に位するものとして、反対尋問を経ることなく無条件にその証拠能力が肯認されているのであって、かかる事情に鑑み、同条第3号所定の「前2号に掲げるものの外特に信用すべき情況の下に作成された書面」とは、その作成時の情況及び書面自体の性質において前2号に掲げる書面と同程度の高度の信用性の情況的保障を有する書面を指称するものと解すべきある。
①は、作成目的、作成方法に照らし、誤りの入り込む余地が少なく、高度の信用性があるものと認められる。…業務過程文書に比肩すべき高度の信用性の情況的保障を有するものと認められ、323条3号の書面に該当する。
②は、私生活に関する事項の記述や主観的な所感、意見等が随所に記載されているといった情況であって、同条1号、2号所定の書面に準ずる性質の書面と解するを得ない。
③は、鑑定書の性格を有するものである。…しかし、法第321条4項所定の鑑定書の要件すら充たしていないのであるから、到底これを法第323条3号所定の書面に該当するものと言うことはできない。
コメント
323条は無条件に証拠能力を付与する規定ですが、それは業務の過程で機械的・継続的に作成され類型的に信用性が高いためです。①は、ほぼ毎日業務の終業後または遅くともその翌朝に、主観を交えず箇条書き式に記入されたものであったのに対し、②は主観的な意見等を交えて数日後に記載されたものであったため同条3号の適用に差異があります。また、③はそもそも321条4項の適用がない以上、伝聞例外の重層的構造のいただ点に位する323条は適用はされないとしました。