事案
被告人XとYは、他の者らとA方に火炎瓶を投げて放火することを謀議し、YらがA方に赴き火炎瓶を投げつけ、現住建造物等放火未遂罪が成立するかが争われた。第1審はこの事実を認定する証拠として、「私、Yらが実行することになっていたが、私は実行に参加しなった、翌日の朝、Yから、Yら4人でA方へ火炎瓶を投げつけてきたという話を聞いた」旨の供述を記載するXの検察官に対する供述調書を掲げた。再伝聞に証拠能力が認められるかが争われた事案。
判旨(最高裁昭和32年判決)
原審が弁護人の論旨…に対する判断において説示する理由によって、刑訴321条1項2号及び同324条により右供述調書中の所論の部分についての証拠能力を認めたことは正当である。
コメント
再伝聞とは、伝聞証拠中に伝聞証拠が含まれている場合のことをいいます。本件では、Xの供述を録取した供述調書が伝聞証拠であり、その中にYの供述が含まれているため、再伝聞となります。刑訴法には再伝聞に関する直接の規定がないため証拠能力が認められるかが問題となりますが、本判決は証拠能力を肯定し、通説もこれを肯定します。刑訴法321条1項各号により証拠能力を認められた供述調書中の伝聞にあたる供述は、公判準備又は公判期日における供述と同等の証拠能力を有する、つまり、公判期日における供述と原供述の関係と類似の利益状況にあるため、324条が類推適用される、という理由によるものです。