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少年事件の流れや改正のポイントを解説

少年と成人では、その犯罪に対する国家の態度は大きく異なります。「成人犯罪には応報を、少年事件には保護を」と言われています。

私が在外研究で訪れたイギリスでは、非行の問題をその属するコミュニティの問題と捉えます。
警察、弁護士はもちろん、PTAなど親のグループや教師など、全ての関与者が対立する当事者ではなく、協力する当事者として非行を行なった少年の親と共に、少年の改善のための方策を議論していたのです。 少年法を改正して厳罰化傾向のある我が国の少年法制においても、上記のような「保護」のアプローチは忘れてはなりません。

我が国の刑法では、14歳以上の者に対する処罰を規定しています(刑法41条)。また、少年法では、20歳未満の者に対して、刑法に加えて特別な規定を定めています。少年法の中では、20歳未満の者を「少年(女子でも法律上は少年と呼びます)」としており、少年が犯した事件を一般的に「少年事件」と呼びます。

以下、少年法の内容やその流れについて、代表弁護士・中村勉が詳しく解説いたします。

少年事件の対象

少年法のもと家庭裁判所の審判に付される「非行少年」は以下に区別されます。

  1. 犯罪少年(14歳以上で罪を犯した少年)
  2. 触法少年(14歳未満で上記1.に該当する行為を行なった少年)
  3. ぐ犯少年(保護者の正当な監督に服しない性癖があるなど、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年)

刑法41条では、「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定められているため、上記2.の触法少年の場合は、原則として児童福祉法による保護的な措置となります。

これに対して、上記1.の犯罪少年の場合は、警察等による捜査の対象となり、逮捕されたり、勾留されたりすることになります。
そして、少年法改正により、2022年4月1日より、1.の犯罪少年のうち、18歳、19歳の少年は「特定少年」と呼ばれ、17歳以下の少年とは異なる特例が定められるようになりました。

少年事件でとられる処置

被疑者が少年の場合でも、捜査段階では刑事訴訟法が適用されます(少年法40条)。弁護士は弁護人として成人と同様の活動を行う一方で、少年事件では以下のような成人と違う規定もおかれています。

1. 身柄拘束

少年事件の場合でも、身柄拘束はあり得ます。ただし、成年の場合と異なり、少年法に様々な規定がありますので、代表的なものを紹介します。なお、身柄拘束されない在宅事件の場合は、呼出しを受けた時にその都度自分で出頭して取調べを受けますが、その点は成年と同様です。

  1. 検察官は、勾留に代わる観護措置を取ることができる(少年法43条1項)
  2. 検察官は、やむをえない場合でなければ、勾留を請求することができない(少年法43条3項)
  3. 勾留状は、やむをえない場合でなければ発することができない(少年法48条1項)
  4. 少年鑑別所を勾留場所とすることができる(少年法48条2項)

2. 全件送致主義

少年事件の場合、捜査機関が捜査を行い、犯罪の嫌疑があると判断したときは、全ての事件を家庭裁判所に送致されることになります(少年法41条、42条)。したがって、成人の刑事事件のような起訴猶予を勝ち取るという活動は基本的には想定されていません。

ただし、一部の重大事件の場合、家庭裁判所は、検察官から送致されてきた事件を、再び検察官に送致して、少年審判ではなく一般的な刑事裁判の手続に付することができ、これを「逆送」と呼びます。逆送された少年は、少年審判ではなく、成人と同じように刑事裁判を受けることになります。

3. 付添人の選任(捜査段階)

少年事件では、弁護士は、弁護人ではなく、付添人として活動することになります(少年法10条1項)。捜査段階から私選弁護人をつけることもできますが、貧困などの自由により弁護士を選任できない場合には成人の刑事事件と同様、少年事件にも被疑者段階であれば、被疑者国選弁護人を利用することが可能です
ただし、家庭裁判所に送致されると、被疑者国選弁護人の任務は終了されてしまいます。

4. 付添人の選任(家庭裁判所送致後)

上記、捜査段階で被疑者国選弁護人の利用有無に関わらず、少年事件では家庭裁判所送致後に改めて付添人選任届を提出するか国選付添人に選任される必要があります。

もっとも、この場合「一定の重大な事件」において選任できるものとなっています。「一定の重大事件」とは、少年審判で裁かれるもので、殺人や傷害致死、強盗など刑期としては、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若くは禁錮に当たる罪がそれに当たります。
これに当たらない事件は、私選弁護人に依頼するなどの選択をとることになります。

5. 少年審判

少年事件の場合、家庭裁判所送致後は、家庭裁判所調査官の調査を受けた後、刑事裁判ではなく少年審判を受け、刑罰ではなく保護処分を受けることになります(逆送事件は除きます)。

保護処分は、保護観察少年院送致児童自立支援施設等送致の3種類があります(少年法24条1項)。審判の結果、保護処分の必要性がないと判断されれば、不処分(少年法23条2項)となることもあり、また、それ以前に調査の段階で審判を行う必要がないと判断されれば、審判不開始(少年法19条1項)の決定をする場合もあります。

少年の性格や環境等によっては直ちに少年に対する処分を決めることができない場合には、少年に対する最終的な処分を決めるために、少年を一定の期間、家庭裁判所調査官の試験観察に付すことがあります(少年法25条1項)。

6. 抗告

保護処分決定に不服がある場合は、刑事裁判での上訴と同じように、少年審判でも不服申立手段があり、これを「抗告」と呼びます(少年法32条)。

抗告は、決定に影響を及ぼす法令違反、重大な事実の誤認又は処分の著しい不当を理由とするときに限り、することができます。つまり、家庭裁判所の審判の手続が法律に違反するものであったり、非行事実が誤って認定されていたり、決定された処分が著しく重過ぎたりすることが理由とされます。

このような場合に、決定の告知を受けた日から2週間以内に抗告することができます。抗告審は高等裁判所で行われますが(裁判所法16条2号)、抗告をするには、抗告の趣意を簡潔に記載した申立書を原裁判所である家庭裁判所に提出します(少年審判規則43条)。

少年法改正のポイント

2022年4月1日の少年法改正によって新設された「特定少年」についてとられる処置も、基本的には17歳以下の少年と変わりません。ただし、一部取扱いが変わりますので、そのポイントを解説します。

1. 逆送対象事件の拡大

先ほどのとおり、一部の重大事件の場合、少年事件であっても、少年審判ではなく、成人と同じように刑事裁判を受けることがあり(「逆送」と言います)、特定少年の場合、この逆送対象事件が拡大します。

改正前では、①「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件」については「刑事処分を相当と認めるとき」(現行法20条1項)②「16歳以上の少年が故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪の事件」については原則(同条2項)、逆送されます。
ところが、特定少年の場合、①「刑事処分を相当をと認めるとき」の逆送類型から、「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件」という制限が撤廃され(改正法62条1項)、②原則逆送される対象事件として、新たに、「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪」の事件が追加されました(改正法62条2項2号)。

②の変更によって、これまでは原則逆送の対象とはされていなかった、現住建造物等放火罪(刑法108条)、強制性交等罪(刑法177条)、強盗罪(刑法236条)などの罪も対象に含まれることになりましたので、「特定少年」については、これまでよりも刑事裁判に付される範囲が拡大されたことになります。

2. 保護処分についての特例

「特定少年」に関しては、保護処分の決定にあたって「犯情の軽重を考慮」することが明文で定められるとともに(改正法64条1項柱書)、審判時に、保護観察は6か月・2年のいずれか、少年院送致は3年の範囲内で、「犯情の軽重を考慮」して、保護処分の期間が明示されることになりました(同条2項・3項)。

少年審判の第1の目的は、非行に陥った少年に保護処分等の教育的措置を施し、その再非行を防止することにありますが、特定少年の場合は「犯罪の軽重を考慮」されることになるので、少年の健全育成という教育的機能は残しつつも、社会公共の安全・福祉を維持するという司法的機能が強くなったといえるでしょう。

3. ぐ犯少年の適用除外

特定少年については、民法上の成年となることなどを考慮し、将来、罪を犯すおそれがあること(ぐ犯)を理由とする保護処分は行わないこととされ、少年審判に付されることがなくなりました(改正法65条1項)。

4. 実名報道の解禁

現行法では、「家庭裁判所の審判に付された少年」や「少年のとき犯した罪により公訴を提起された者」について、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によって、その者が当該事件の本人であると推知・特定されるような記事や・写真の報道(推知報道)は禁止されています(現行法61条)。
しかし、改正法では、特定少年のとき犯した罪については、推知報道は原則として禁止されるものの、逆送されて起訴された場合(略式手続の場合は除きます)には、その段階から、推知報道の禁止が解除されることとなります(改正法68条)。

これは、選挙権年齢や民法の成年年齢の引下げにより責任ある立場となった特定少年については、起訴され、公開の裁判で刑事責任を追及される立場となった場合には、推知報道を解禁し、社会的な批判・論評の対象となり得るものとすることが適当であると考えられたことによるものです。

まとめ

少年事件で被疑者となる少年は、成人に比べて精神的に未成熟で、自分を取り巻く環境に影響を受けやすく、非行を犯したとしても、自分ではどうすることもできない事柄が要因となっていることも多くあります。また、親御様におかれても、自分の息子や娘が起こした事件の解決と子供の今後の将来に向けてどのように取り組むべきかなどにつき、少年と共に向き合って行く必要があります。

そのような人生における重要な時だからこそ、多くの少年事件案件を扱ってきた弁護士の力が必要であり、1日も早い対策を検討していくことが大切です。特に、少年事件は取扱い経験がある弁護士が少ない分野であり、しかも最新の法改正まで熟知している弁護士は限られているため、成年の刑事事件以上に専門性の高い分野といえます。限られた貴重な時間を大切にしながら信頼ある弁護士に相談するようにしましょう。

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