心神耗弱者の過剰懲役刑についての非常上告
被告人に対する福岡県迷惑行為防止条例違反被告事件について、犯行当時中等度精神遅滞及び飲酒酩酊のため心神耗弱の状態にあったものであると、認定した。そして、累犯前科の事実も認定した上で、被告人の所為につき、福岡県迷惑行為防止条例の所定刑のうち、懲役刑を選択し、「被告人を懲役1年2か月に処する。」との判決を言い渡した。
この確定判決につき、検事総長から非常上告の申立てをされた事案。
判旨(最判 平成26年7月4日)
…原判決認定の罪は心神耗弱者の行為であるから、刑法39条2項、68条3号を適用して必要的減軽をすべきところ、本件条例12条1項、11条1項、6条1号によれば、原判決認定の罪の法定刑は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金であり、懲役刑を選択し、累犯加重をした上で、刑法39条2項、68条3号により法律上の減軽をすると、その処断刑の長期は懲役1年となる。そうすると、これを超過して被告人を懲役1年2月に処した原判決は、法令に違反し、かつ、被告人のため不利益であることが明らかである。
コメント
非常上告とは、判決が確定した後にその事件の審判に法令違反があることを理由として認められる非常救済手続です(刑事訴訟法454条)。
そして、心神耗弱状態とは、責任能力が著しく低下した状態をいいます。そして、心神耗弱状態と認められると、刑が必ず減刑されます(必要的減刑)。
本事案では、条文を適用すると、長期の懲役は1年が限度であるにもかかわらず、それを超えていたため、非常上告をし、最高裁によって法令の適用に誤りがあると認められました。