事案
強制性交等(旧 強姦)未遂、強制性交等(旧 強姦)、強制わいせつ被告事件の被告人によって選任された弁護人らに対し、検察官が、被告人の委託を受けて保管中の犯行状況とされるものを撮影録画したデジタルビデオカセットについて、公判期日で没収相当との求刑をし、裁判所の職権により差押えをするよう申し立てた。しかし、弁護人らは、任意提出を拒否した上で、当該ビデオカセットが「秘密」に当たり、押収拒絶権を行使できるなどとして、反対する旨の意見を述べた。
原々審では上記デジタルビデオカセットを裁判所に提出するよう命じ、弁護人らはこれに対し、抗告を申し立てたが棄却されたため、特別抗告した事案。
判旨(最判 平成27年11月19日)
本件デジタルビデオカセットは、主任弁護人により警察官への任意提出や検察官への証拠開示、その一部についての証拠請求がされ、更にその全部の複製DVDが公判期日で被告人及び弁護人らの異議なく取り調べられているから、被告人の意思に基づく訴訟活動の結果、本件デジタルビデオカセットに記録された情報の全ては、もはや「秘密」でなくなったことが明らかであって、本件デジタルビデオカセットは、刑訴法105条の「他人の秘密に関するもの」に当たらないというべきである。
コメント
刑事訴訟法105条「他人の秘密に関するもの」にあたるか、につき、最高裁は「秘密」の定義を明らかにしておらず、学説も対立しておりますが、どちらの学説からも外形上秘密性を有しないことが明白なものは「秘密」にあたらないとしています。
本判決では、その複製DVDの実質的な内容が既に公判廷で明らかにされていることから、外見上秘密性を有しないものと判断したといえます。