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AVマーケットとは|AVマーケットについて元検事率いる中村国際刑事の弁護士が解説
2020年6月,愛知県警の発表によると,児童ポルノの画像を販売したとして,アダルト動画の販売サイト「AV Market(エーブイ マーケット)」などを運営していた運営者ら3名が児童買春・児童ポルノ法禁止法違反(提供)の疑いで逮捕・送検されました。
県警によると,3名は数年間,同アダルト動画の販売サイトを運営し,18歳未満の女児の裸の画像を有料で提供するなどした疑いがあるとのことです。
海外サーバーを用いた児童ポルノ販売サイトの運営者の摘発は全国で初めてで,後日の報道によれば,すでに2万人分の会員情報も入手・解析されているとのことです。そのため,同サイトでの出品者や購入者も捜査対象となる可能性があります。
以下,AVマーケットについて,どのような問題があるのか,自首すべきか等について解説いたします。
AVマーケットとは
そもそもAVマーケットとは,2018年にオープンした,いわゆる素人らによるアダルトコンテンツのマーケティングサイトをいい,個人が自由に出品したアダルトコンテンツを単品から購入できるサイトでした。現在は閉鎖されています。
誰でも自由に出品できるため,同サイト上の多数のいわゆる児童ポルノ動画や無修正動画等に対する運営者によるチェックが手薄になり,このような違法なコンテンツが多数流通していた実情があるようです。
AVマーケットの問題
AVマーケットにおける出品・販売の決済方法はクレジットカードによる方法が取られていたことから,運営者らへの捜査の過程で,会員情報としてのクレジットカード情報や,アクセスログ,IPアドレス等が判明する可能性があり,これらの情報から関与者が特定できれば,家宅捜索を始めとする捜査の手が及ぶ可能性があります。
問題は,AVマーケットには「退会」という概念がないため,過去に一度でも出品・購入した場合であっても捜査の対象となる可能性があるのです。
児童ポルノ法違反の可能性
児童(18歳未満の者)によるいわゆるポルノの出品・購入は,児童ポルノ法で禁止される「所持」または「提供」に該当し,「所持」の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金,「提供」の場合は3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます(児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「法」といいます。)第7条)。
児童ポルノ所持,提供等
第七条 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。
2 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
児童ポルノ法違反の検挙例
2013年6月,女児の裸が写った動画をインターネット上でやり取りしたとして,横浜市立大准教授が茨城県警により逮捕されました。同准教授は同年7月にも滋賀県警に逮捕され,その後罰金50万円に処されました。
わいせつ物頒布等の罪の可能性
仮に児童ポルノ法違反には該当しないとしても,いわゆるわいせつな動画のインターネット上での出品や,販売のためにそのような動画等のデータを保存することは,わいせつ物の「頒布(わいせつ電磁的記録媒体頒布罪)」,「公然陳列(わいせつ電磁的記録媒体陳列罪)」,「所持および保管」に該当する可能性があります。これらの罰則には,2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金,またはその併科(懲役刑と罰金刑の両方が科されること)が規定されています。
わいせつ物頒布等
第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
わいせつ物頒布等罪の検挙例
2013年7月,温泉施設でのわいせつな盗撮動画をインターネット上で公開したとして,わいせつ電磁的記録媒体陳列の疑いで,札幌市のウェブサイト制作会社社長)と同社社員の男2名が逮捕されました。
2017年5月には,インターネット回線を用いて,男性性器を露骨に撮影したわいせつ画像データをウェブサイトに投稿し,不特定多数のインターネット利用者が同画像を閲覧できる状態にしたとして,男性と女性がそれぞれ逮捕されました。
AVマーケットの自首について
AVマーケットに対する摘発はこれが初めてであり,今後の捜査がどこまで及ぶかわかりません。すでに警察がAVマーケットの会員情報を把握・解析していることから,AVマーケットの出品者・購入者が捜査対象となるのは時間の問題と思われます。
上記の通り,児童ポルノ法違反やわいせつ物頒布等罪は逮捕される可能性のある犯罪です。児童ポルノの単純所持罪での逮捕例は多くありませんが,重い刑罰が下る可能性は十分あり得ます。
もし,AVマーケットで過去に出品・購入したことのある方は,早めに弁護士に相談し,自首を検討するのが良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はAVマーケットをめぐる問題について解説いたしました。
スマートフォンや様々なインターネットツール等の普及に伴い,違法なコンテンツが氾濫してしまっている現代社会においては,普段からデータの保管や情報の授受に慎重を期することが大切といえます。