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準強制わいせつで逮捕されたらを弁護士が解説

皆さんは「準強制わいせつ罪」についてニュースなどで聞かれたことがあると思います。
特に若い男性について準強制わいせつ罪で逮捕される例はとても多いです。

しかも、それまで犯罪歴もなく、真面目な学生であったり、医師であったり、官僚であったり、犯罪を起こすとは思えない人が逮捕されており、実刑判決を受けて刑務所に服役するケースも少なくなく、それまで順風満帆で送ってきた人生を棒に振ってしまう若者がいかに多いことか。

強制わいせつ罪や強制性交等罪もそうですが、準強制わいせつ罪といった性犯罪は、早く行動しなければ取り返しがつかなくなります。以下、代表弁護士・中村勉が解説します。

性犯罪は迅速に弁護士に相談を

刑事事件で捜査対象となった人の不利益について段階を追ってみてみます。以下の3つのレベルがあります。

  • 逮捕されるよりは逮捕されない方が社会上の不利益は少ない。
  • 逮捕されても起訴されなければ、起訴されるよりは社会上の不利益は少ない。
  • 起訴されても執行猶予が付けば実刑になるよりは社会上の不利益は少ない。

このことにつき、不等号記号を使って示すと、
逮捕無し(在宅捜査)< 逮捕あり< 起訴なし(不起訴)< 起訴< 執行猶予< 実刑
となります。

もちろん逮捕無しでも起訴されれば逮捕されて不起訴になるよりは不利益が大きいと考えることもできますが、ここでは単純化しました。無罪は省略します。弁護士はこの不等号のできるだけ小さい方の結果を目指して活動します。

ここで、注意すべきは、準強制わいせつ罪などの性犯罪は、この不等号の順序通りにいかないということです。例えば、覚せい剤を例に挙げて準強制わいせつ罪などの性犯罪と比較してみましょう。覚せい剤事件は、ほぼ例外なく逮捕され、多くは起訴されますが、使用所持といった類型では、初犯の場合にはまず間違いなく執行猶予が付きます。前科なくしていきなり実刑という例は、大量密輸などの営利目的事案です。

準強制わいせつ罪は示談が成立しなければ実刑となることが多い

ところが、準強制わいせつ罪では、捜査段階で被害者と示談ができれば不起訴となる確率が高いですが、示談できずに(ないし示談活動を一切せずに)起訴となった場合、公判段階で示談ができなければ実刑判決になる可能性が高いのです。前科がなくても執行猶予付き判決ではありません。起訴から執行猶予を飛ばしていきなり実刑判決になり得ます。ここが覚せい剤事案との大きな違いです。

不起訴と実刑の違いがいかに大きいか容易に想像がつきます。不起訴であれば前科はつきません。勤務先会社も辞めなくて済むかもしれません。家庭不和も解消するかもしれません。しかし、実刑となれば前科がつくだけではなく、数年間という長期間、刑務所に服役しなければならず、職は失い、家庭崩壊の可能性も高くなります。

ですから、準強制わいせつ罪の弁護の中心は示談と言ってよく、示談の機会をできるだけ長く確保するために、早期に示談交渉に着手する必要があるのです。あとで述べますように、逮捕後はたったの23日間しか示談を成立させるチャンスがありません。中には、起訴後に示談に着手し、判決までに示談を成立させれば良いと考える方もいますが、もしその間に示談が成立しなかったら実刑なのです。

被害者は逮捕後に一度も謝罪の措置(示談金支払い等)もない犯人に対して処罰感情を強くしており、示談の成功率は、公判段階は捜査段階と比べて低くなることが珍しくありません。

準強制わいせつの成立要件

準強制わいせつ罪は、刑法178条2項に規定されています。

第178条(準強制わいせつ)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

刑法176条は強制わいせつ罪のことで、法定刑は6月以上10年以下の懲役です。準強制わいせつ罪が成立する場合には、強制わいせつ罪と同じ法定刑が科せられます。

「心神喪失」の意義

心神喪失とは、精神又は意識の障害によって、性的行為につき正常な判断ができない状態を指します。
具体的には、失神している人や酩酊している人、睡眠中の人、高度の精神病を患っている人などを指します。

「抗拒不能」の意義

抗拒不能とは、心神喪失以外の理由で物理的、心理的に抵抗できないか、または抵抗することが著しく困難な状態にあることを言います。
具体的には、患者が医師を信頼していたため、医師のわいせつな行為を治療に必要な行為と誤信してしまった場合、女子高生が自校の英語教師から紹介された英語の先生を信頼していたため、心理的に抵抗することが著しく困難であった場合などがあります。

「わいせつな行為」の意義

わいせつな行為とは、いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為を指します。代表的なものは、キスをする、女性の胸を直接揉む、陰部を触ったり指を入れたりするといった行為になります。

人が心神喪失や抗拒不能状態であるのを良いことにそれを利用してわいせつ行為に及んだ場合のみならず、何らかの方法で人を心神喪失状態や抗拒不能状態にしてわいせつな行為をした場合にも準強制わいせつ罪が成立します。

暴行や脅迫を用いてわいせつ行為に及んだ場合には強制わいせつ罪が成立しますが、暴行や脅迫を用いていなくとも、上記のように心身喪失や抵抗できない状態の相手に対してわいせつ行為に及ぶと処罰されるおそれがある点に注意が必要です。

準強制わいせつにあたる行為例

事例1

まず、就職を希望している女性被害者らを、就職希望先のテレビ局の人事担当職員を装って欺罔してわいせつな行為をしたという、準強制わいせつに当たる具体的行為例を挙げます。これは、実際に裁判例で準強制わいせつ罪の成立が認められたケースです。具体的には、以下のような事情を踏まえて犯罪の成立が認められています。

抗拒不能を基礎づける事実

  • 被告人の「君は秘書に向いている」「自分は人事部課長で権限があるから、そういう採用はできる」などの一連の虚偽の言動によって、被害者はいずれもまず被告人が、現に就職を希望している各テレビ局の人事担当者であり、その意向により各テレビ局の職員採用を行うことができる権限を有するものと誤認したこと。
  • 被告人による前記のようなわいせつ行為を受忍することによって各テレビ局に職員として採用されることが可能となる、つまりこうした行為を拒絶した場合にはその採用が不可能ないしは困難となるものと誤認したこと。
  • 本件の各犯行場所はまんが喫茶やカラオケ店の犯行の各個室であり前者はカーテンないしパーテーションによって区画された空間であって、外部と完全に遮断された区画とは言えないけれども、一応内部にいる者同士の間のみで会話等のやりとりがなされる区画であり、後者はドアと壁によって、外部とは遮断された機密性のある区画と評価できることに照らせば、このような区画内で被告人から本件のような経過でわいせつ行為に及ぶ旨の言辞を申し向けられた場合、むしろこれを拒絶することの方に心理的な抵抗感をともなうこと。

わいせつな行為に該当する点

  • 「足をもっとよく見せたほうがいいので、ストッキングをはいているよりもはいていないほうが良い」などと被害者に申し向け、被害者自身にストッキングを脱がせたうえで、太ももを触るなどのわいせつ行為をしたこと。
  • 「本当にこのテレビ局に入りたいんでしょ、第一志望でしょ」などと被害者に申し向け、キスをするなどのわいせつ行為をしたこと。

事例2

続いて、モデル等の職業紹介を業とするプロダクションの経営者がスカウトした女性に対し、全裸になって写真撮影されることもモデルになるため必要であり、拒否すればモデルとして売り出してもらえなくなる可能性があると誤信させ、全裸にさせて写真撮影した上、わいせつな行為をした事例を例に挙げて説明いたします。上記事案についても、裁判例は以下のような事実に着目して準強制わいせつ罪を認めています。

抗拒不能を基礎づける事実

  • 被害者が19歳と比較的若い女性であり社会経験は比較的少なく、芸能プロダクションの社長が37歳であったため、抵抗するのが困難であったこと。
  • 被告人は芸能プロダクションの社長であり、被害者はモデルとして活動することを望んでいたから、被告人が被害者の志望を実現させることができる地位にあったと言え、被害者が要求を拒みにくい状況であったこと。

わいせつな行為に該当する点

  • 被告人が被害者を密室のスタジオの中で全裸になるよう強要し、全裸にさせたこと。

事例3

最後に、英語の個人レッスンを受けるために一人で被告人の家を訪問した女子高生に対しわいせつな行為に及んだ事案を例に挙げます。
上記事案についても、裁判例は以下のような事実に着目して準強制わいせつ罪を認めています。

抗拒不能を基礎づける事実

  • 当時被害者は女子高生である一方、被告人は相当年配の男性であったこと。
  • 被告人は、被害者の高校の英語教師の恩師であって、間違ったことはしない立派な人物であると被害者が信用していたこと。
  • 被告人は、被害者に対し、英語上達につながるリラックス方法であるなどと言葉巧みに説き、これを信用させて、強い口調で自分に従えば英語が上達すると信じ込ませたこと。
  • 被告人が被害者に対し、仮に被告人の申し出を拒否すれば、英語を教えてもらえず、失礼に当たると思わせ、わいせつ行為に対しての抵抗を心理的に困難にしたこと。

わいせつな行為に該当する点

  • 被告人が被害者に対し、服を手渡し、下着を脱がせてその服に着替えさせたこと。

準強制わいせつで逮捕されたら

逮捕後の手続は次のようなものとなります。
逮捕されると、警察は48時間以内に被疑者を検察庁に送致するか、釈放しなければいけません。事件の送致を受けた検察官は、24時間以内に裁判所に対して勾留(更に10日間、身柄拘束を継続すること)の請求をするか、被疑者を釈放するかを決定しなければなりません。検察官が勾留を請求し、裁判所が勾留を決定すると10日間の身体拘束が決まります。

この勾留は検察官が延長を請求して裁判所が許可することにより、更に10日間延長されることがあります。逮捕から起算すると最長23日間の身柄拘束を受けることになります。準強制わいせつ罪で逮捕された場合、被害者との関係性やわいせつ行為の程度によりますが、勾留・勾留延長となる場合が多いです。もっとも後述のように弁護人が身柄解放のために迅速に活動することによって、勾留を回避したり、勾留が延長される前に示談を成立させて被疑者を釈放できることがあります。

検察官は、勾留期間の20日間以内に起訴するか不起訴とするかの決定をします。そして、起訴された場合には、刑事裁判によって有罪か無罪か、有罪である場合はどのような刑罰が下されるかが決められます。
起訴か不起訴かの決定に当たって重要なのは、検察官から見て有罪とするに足りる証拠が十分かどうか、また被害者が起訴によって厳しい処罰を与えることを望んでいるかということです。そのため、起訴を防ぐためには、被害者と示談交渉を行い、一定の金銭の支払いを条件として被疑者の処罰を望まないこととするという示談書を取り交わすことが重要になってきます。

起訴された場合、保釈が認められない限り、刑事裁判の判決が出るまで身体拘束が続きます。判決が出るまでにかかる時間は、準強制わいせつ罪を成立を認めるか争うかなど、事案によって大きく異なります。1か月半から2か月程度で終わることもありますが事件によっては1年ほどかかることもあります。そして判決宣告となりますが、有罪判決の確率は99%以上とされています。次のチャート図をご覧ください。

準強制わいせつの弁護活動はどのようなものか

身柄拘束に関連した活動

まず、接見を通して事案や弁解の詳細を確認し、取調べに対する適切なアドバイスを与えます。次に、身柄解放活動として、勾留を回避するために検察官や裁判所に意見書を提出したり、勾留が決定しまったら準抗告、勾留取消などの申し立てをします。

これらの身柄拘束に関する活動は、ほかの罪名にかかる弁護活動と同様です。しかし、前期のとおり、起訴不起訴の決定にあたっては被害感情が重視されるため、示談交渉に着手し、示談を成立させることが重要です。警察官や検察官と連絡を取り、時には面会をして、被害者の処罰感情等の情報の収集や示談交渉のため被害者の連絡先の開示を依頼します。そして、丁寧かつ速やかな交渉によって示談を成立させ、依頼人を身体拘束から解放することを目指します。

示談交渉

弁護士は、法的に妥当な交渉内容を見据えつつ、被害者に対し、少しでも犯人の慰謝と謝罪の思いが伝わるよう、誠実に対応します。被害者にしてみれば、犯人の行為は許しがたいものがあります。準強制わいせつは、お酒や薬の影響などにより状況の分からない被害者に対して、被害者の性的な自己決定権を奪い、それに乗じて尊厳を侵害する耐え難い行為をする卑劣な犯罪です。それまでの日常を突然に引き裂かれたという、筆舌に尽くしがたい苦しい状況にあります。

そのような現実を受け入れがたく思っている被害者側の方々に対して、経験の浅い弁護士が目先の結果だけを意識してとにかく示談金で早急に解決しようという姿勢は、逆効果となることがあります。示談交渉も一回で合意に至ることが滅多になく、何度も交渉し、謝罪の意思を伝えなければなりません。犯人が心から謝罪の意思をもたないとその気持ちは伝わらないものですが、その反省の気持ちを引き出すのは弁護士の力です。

再犯防止策

被害感情が厳しく示談が不成立となり起訴された際、依頼人が罪を認めている場合には有罪判決を前提にできるだけ軽い量刑を目指すことになります。執行猶予付きの判決を目指すためには、社会の中で被告人が更生できることを裁判所に訴えることが必要です。

準強制わいせつのような性犯罪事件の場合は、刑務所の強制プログラムによらなくとも、医療機関への通院などによって再犯を防ぐことができると説明できるようにすることが大切なのです。そのために、弁護士から依頼者の方に対して治療の必要性を説明し、時にはクリニックを紹介するなどして、性依存症の治療を行う、専門的なクリニックへの通院してもらうことがあります。

医学的な知見に裏付けられた効果的な治療に精力的に取り組むことで、社会内で更生できることを裁判所に訴えることができるとともに、依頼者の方の更生のために適切な再犯防止策を構築し、有利な判決の獲得と依頼者の方が真に更生することを目指します。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、準強制わいせつ罪で逮捕された場合のポイントについて解説いたしました。逮捕後の刑事手続きの流れを踏まえれば、少しでも早く弁護士を選任して示談交渉に着手することが不起訴処分の獲得のためには大切です。

万が一、準強制わいせつ罪でご自身が捜査を受けたり、ご家族が逮捕されてしまった場合には、刑事弁護に強い弁護士に早急に依頼し、適切な助言を得ることをおすすめいたします。

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当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。

  • 逮捕されるのだろうか
  • いつ逮捕されるのだろうか
  • 何日間拘束されるのだろうか
  • 会社を解雇されるのだろうか
  • 国家資格は剥奪されるのだろうか
  • 実名報道されるのだろうか
  • 家族には知られるのだろうか
  • 何年くらいの刑になるのだろうか
  • 不起訴にはならないのだろうか
  • 前科はついてしまうのだろうか

上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

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