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学生や未成年が逮捕されたら

「若気の至り」という言葉がありますが、学生時代には時として、若さ故にその場のノリや甘い考えで過ちを犯してしまうことがあります。

しかしその過ちが犯罪であれば、学生だからといって許されるものではありません。時として大人と同じように、刑事手続にかけられてしまうことになります。

高校生や大学生など、学生が犯罪に関わってしまった場合に刑事手続はどのように進み、どのような不利益が予想されるのか、そうした不利益を回避する手段はあるのでしょうか。

学生が逮捕された場合の刑事手続の流れ

同じ学生でも、20歳以上か20歳未満かで違いがあります。

20歳以上の場合

20歳以上であれば成人ですから、学生であっても一般的な刑事事件と同じです。まず、警察に逮捕されてから48時間以内に検察官に送致されます(送検)。微罪で留置する必要のない場合は、警察の判断で釈放されます。

検察官に送致されると、そこから24時間以内に、検察官は拘置所に勾留する必要があるかどうかを判断し、必要な場合は、裁判官に対して勾留請求を行います。あるいは、この段階ですぐに起訴することもでき、その場合には勾留請求を行う必要はありません。

勾留は、原則として、勾留請求を行った日から数えて10日間です。勾留期間の延長は、合算して10日以内とされているため、勾留されるのは、最大で20日間ということになります。検察官は、勾留期間中に、被疑者を起訴するかどうかを決めます。起訴されると、刑事裁判にかけられることとなります。証拠隠滅のおそれなどがある場合、起訴後も勾留が続きます。

20歳未満の未成年の場合

20歳未満であれば、少年事件となりますが、家庭裁判所へ送致されるまでの捜査段階では、成人事件と同様に基本的に刑事訴訟法が適用されます(少年法40条)。犯罪少年の事件では、成人と同様、捜査機関が捜査することになり、少年は被疑者として逮捕・勾留されることになります。

しかしながら、少年法では、勾留に際して、成人の場合とは異なる規定が設けられており、「検察官は、少年の被疑事件においては、やむを得ない場合でなければ、裁判官に対して、勾留を請求することはできず(同43条3項)、裁判官においても、勾留状は、やむを得ない場合でなければ、少年に対して、これを発することはできない(同48条1項)」と規定されています。実務的には、少年であっても成人と同様に捜査機関が安易に逮捕・勾留することは珍しくありませんから、そのような場合には弁護士が迅速な身柄解放活動を行うことで在宅捜査に切り替えられる可能性があります。

勾留場所についても、少年鑑別所とすることができ(同条2項)、少年を警察留置施設で勾留する場合でも、成人とは分離しなければならない(同49条3項)とされています。刑事事件を起こした少年は、事案の重さなどにより、警察に逮捕されることがあります。事件の内容が軽微である場合には、逮捕されずに捜査を行い、あるいは、逮捕後に勾留されずにそのまますぐに家庭裁判所へ送致されます。この場合、逮捕後48時間以内に家裁送致となります。

一方、事件の内容が重大であり、罪証隠滅や逃亡を防ぎつつ、捜査にある程度時間を要する場合には、少年は逮捕後に検察庁に送られ(検察庁送致)、成人の刑事事件と同様に、検察官が10日間の勾留を24時間以内に裁判官に請求し、裁判官の判断により勾留されることがあります(当初は10日間、延長されると最長20日間)。勾留満期までには事件は家庭裁判所に送致されます。

ですから、身柄の拘束やその延長を避けるためには、逮捕後の48時間+24時間の72時間が非常に重要な初動となります。この間に弁護士を依頼し、不必要な長期拘束を避ける必要があるのです。勾留が決定された後では、早期釈放は難しく、また、身柄拘束されたまま家裁送致となると、その後、観護措置がとられて少年鑑別所に収容される可能性が非常に高くなってしまいます。観護措置は通常1カ月間の収容を伴いますので(最長2カ月)、身柄の拘束は非常に長くなります。

逮捕されたら学校はどうなるのか

中学生や高校生が何らかの事件で逮捕された場合、警察から所属する学校に対して当該事件に関する連絡が行くことがあります。これは、警察・学校相互連絡制度によるものです。

公立の学校については必ずこの制度があり、私立の学校は学校によって制度の有無が分かれます。いずれの制度であっても、逮捕された場合には警察から学校に通報するとされている場合が殆どです。したがって逮捕された場合に学校に知られずに刑事手続を進めることが現実的に困難です。

大学生であれば、大学内で起きた事件など事件に大学が関わっている場合でない限り、警察があえて大学に連絡をして事件を知らせることは少ないといえるでしょう。もっとも、被害者が同じ大学の学生である場合などは、被害者による大学への連絡により大学に事件が発覚してしまうことがあります。

学生の事件が所属校に発覚した場合、学校側は、事件の軽重にもよりますが、学生に対して退学などの重い処分を下す可能性が高くなります。そんな時に、弁護士は、学校側と交渉し、学生がそれまで所属していた学校に復帰できるように環境調整を行っていきます。

具体的には、学生の事件の性質や、最終的な処分の見通し(未成年(20歳未満)の場合は家庭裁判所における見通し)などを学校側に伝えることで、学校側の過剰な反応を抑制していきます。被害者との間で示談の締結が可能な場合には、示談書に「被害者は学校の処分を望まない」といった文言を入れるよう交渉し、示談書を学校に提出することで処分が軽減されることもあります。そのようにして、弁護士は、学校側と交渉し、学生を学校で積極的に受け入れるよう要請していきます。学校側の協力を求められる場合には、校長や担任に受け入れる旨の上申書を書いてもらうなどし、裁判所に提出することもあります。

このようにして、弁護士は、刑事手続だけでなく、学校への対応も行うことができます。中村国際刑事法律事務所では、実際に学校への連絡を回避して処分を避けた例があります。

退学になってしまったら

もっとも、このような活動をしても、学生が退学処分を受けてしまうことがあります。そのような場合には、弁護士が学生のために新しい学校を探すことになります。基本的には、通信制の学校になることが多いとは思いますが、学生の性格等を考慮し、学生にあった学校で、転入できる可能性が高い学校を弁護士がアドバイスしていきます。最終的に転入する学校を決定していただくのは保護者の方になりますが、学校を決める際の指針については、弁護士からも提示させていただきます。

通信制の学校については、学生一人一人のペースに合わせてくれたり、学校での日常を尊重した融通の効く教育システムを取ってくれたりするところも多く存在するため、事件後に学生が勉強を再開することが苦になりづらいです。また、登校する日数についても、週1日から週5日まで自由に選べる形態を取っている学校も多いので、学生の生活リズムに合わせた勉強環境を構築することができます。

前科はつくのか

前科がつくかどうかは、当該学生が20歳未満か20歳以上かによって異なります。
20歳以上の場合、通常の刑事事件の手続と同様ですので、起訴されて有罪判決を受けることとなれば前科がつきます。後述するように、前科を避けるためには示談交渉や検察官との折衝といった弁護士による弁護活動が必要です。

当該学生が20歳未満の場合、少年事件の手続で進み(事件の重大性などから検察庁へ逆送となる場合をのぞく)、家庭裁判所で保護処分を受けることになります。保護処分は刑事罰とは異なりますのでいわゆる前科ではなく、前歴にとどまります。前歴であれば、警察官や検察官などの特定の公務員を目指す場合でない限り、将来への影響はありません。

前科がつくことを回避する方法は

当該学生が20歳以上の場合には、成人の刑事事件として扱われます。そのため前科を回避するためには、不起訴処分を狙うか、起訴された場合に無罪判決を得るかのどちらかしかありません。日本の刑事裁判の有罪率は極めて高いですから、まずは不起訴処分を狙うことが現実的な目標となります。

被害者のいる事件であれば、被害者が被疑者の刑事処分を望まない旨が記載された示談を成立させて示談書を検察官に提出することで、不起訴処分の可能性が高くなります。示談交渉は基本的に当事者同士ではできませんから、弁護士に依頼して示談交渉を行うことが必要です。

例えば、痴漢・盗撮や万引きといった再犯が懸念される事件では、再犯防止のための医療機関に通院し、通院状況に関する資料を検察官に提出することで、不起訴の可能性が高まることがあります。

まとめ

以上のように、学生が刑事事件の当事者となった場合の刑事手続の流れについて解説してきました。学生といっても、成人の刑事事件と同様に扱われれば前科がつく危険性があり、これを回避するためには弁護士による適切な弁護活動が必要不可欠です。

所属校による不利益を回避するためにも、刑事事件に精通した弁護士に依頼することが重要です。ご自身が学生で捜査機関による捜査を受けたり、学生のお子さんが逮捕されたりした場合には、速やかに弊所にご相談ください。

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