2010年9月 のアーカイブ

大阪地検公判部長・副部長は何をしていた?

2010年9月27日 Filed under:司法制度

郵便不正事件に絡んだFD改さん疑惑報道を見るにつけ,大阪地検公判部の部長・副部長は一体何をしていたのかと思います。
報道によれば,この事件の公判担当検事が特捜部副部長を庁舎に呼びつけて,故意による改ざんの可能性があると直訴したというではないですか。
私はどちらかというと刑事部経験が長く,特捜部,公判部の経験は長くはないですが,大阪地検では一年間公判部に配属となり,ずいぶんと苦労しました。
当時の大阪地検幹部が言っていたように,公判部というのは,地検の捜査部と裁判所の中間にあるような存在,いわば”中等検察庁”であって,捜査部よりは事件を客観的に見ています。ですから,捜査の不手際に対しては,とても苦労しているのです。
今回,FD改ざん疑惑を直訴した公判部担当検事にはとても同情します。
もし,仮にそのような勇気ある指摘を,特捜部長や副部長が捻じ曲げ,歪曲した形で次席検事や検事正に「問題ない」などと報告したとしたなら,心情的にゆるせませんね。
それにしても,報道では,公判部の部長や副部長の話がさっぱり出ていませんが,一体何をしていたのでしょう。当然,公判部の担当検事は,特捜部副部長に直訴する前に公判部副部長,そして,公判部長に相談していたはずです。
公判部長や副部長は,次席検事や検事正に対し,公判検事から相談された内容について報告しなかったのでしょうか?不思議です。

釈放理由としての「日中関係を勘案」

2010年9月25日 Filed under:司法制度

尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で,那覇地検が容疑者の船長を釈放しました。船長は中国政府チャーター機で本国に凱旋し,ピースサインをして英雄となりました。
とんでもない話ですが,政治問題は置いておいて,釈放根拠を考えましょう。

逮捕後の勾留は最初が10日間,止むをえない事由があるときは+10日間の延長ができます。この勾留期間内に検事が起訴するかしないかを判断し,起訴する場合には起訴し,起訴しない場合には釈放します(刑事訴訟法第208条1項)。つまり釈放権限は検事にあります。「勾留取消し」という処分もありますが(同法第87条),それは裁判官の権限です。
今回,那覇地検は,9月19日に10日間の勾留延長を請求しそれが裁判官に認められて29日まで勾留されることになったのに,昨日24日に那覇地検次席検事鈴木亨が突如釈放を発表し,釈放されたのです。

この勾留満期前の釈放の法的根拠を考えると,刑事訴訟法第248条しか考え付きません。もちろん,満期前に釈放することがあります。典型的には嫌疑がなくなったときです。犯人ではないと分かれば検事は直ちに釈放しなければなりません。勾留を支える要件である「犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由」がなくなったからです。しかし,今回は違います。勾留を続け捜査を継続しなければならない事案です。それにもかかわらず,釈放したのは,法的に見れば,「検事が起訴しない」と判断し,起訴便宜主義(刑事訴訟法第248条)の下,釈放権限を行使したと考える以外にありません。「10日以内に起訴しないときは直ちに釈放」(刑事訴訟法第208条1項)というのは,10日目,つまり勾留満期に判断するのが通常であり,ぎりぎりまで捜査を尽くすことが求められていますので,満期前に釈放するというのは異例なのです。

ところで,刑事訴訟法第248条の起訴弁護主義における起訴不起訴の判断は,「犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重および情状並びに犯罪後の状況」を考慮して決定されるので,鈴木次席検事が言及した「日中関係を考慮して」などというのは,当てはまらないように見えます。せいぜい「犯罪後の状況」でしょうか。しかし,一地方の検察庁が「外交」を考慮して処分を決めるなど,権限逸脱も甚だしく,あってはならないことです。この鈴木次席検事の記者会見を受けて,政党や政治家も一斉に那覇地検を非難しています。でも,私には,この鈴木次席検事が言った「日中関係への考慮」という言葉が,いかにも検察官らしくない言葉なので,かえって地検に対する官邸からの強い政治的圧力があったのだなあ,と逆に感じます。鈴木亨がそんな馬鹿げた判断をするわけがないのです。鈴木検事は,私の函館修習時代の恩師です。

それにしても,そんな鈴木次席検事の苦渋の決断を無視するかのように,「地検の判断だ」を繰り返す首相と官房長官は許せません。卑怯だと思います。

前田検事立件のための最高検の”構図”は?

2010年9月23日 Filed under:司法制度

前田検事がFDデータを改ざんしたとして証憑隠滅罪で逮捕されました。
不正な公的証明書を作成したデータの最終更新日時が,2004年「6月1日」から「6月8日」に改ざんされていたということです。村木局長の関与の時期について6月初旬との構図を描いていた検察にとって,データの最終更新日時が6月1日未明では,村木局長の指示は5月でなければならず,6月初旬とする検察主張とは矛盾してしまうのです。それで,前田検事は,このFDデータを検察側主張に沿うように改ざんした。これが前田検事を証憑隠滅罪で立件しようとしている最高検が描いている”構図”です。

ただ,この”構図”にもやっかいな点があります。
それは,FDデータ最終更新日時が6月1日とする,捜査報告書の存在です。この捜査報告書は村木局長の裁判で弁護側が証拠開示を請求して検察から開示されたものです。無罪の決め手になりました。
もし,最高検の”構図”のとおり,前田検事が意図的にデータ改ざんをしたとするなら,この捜査報告書にも最終更新日時は「6月8日」と記載するでしょう。なぜ「6月1日」なのか?
報道によると,現に,逮捕された前田検事は,改ざんの故意を否認し,過失を主張し,「捜査報告書に正しいデータが残されている以上,FDを改ざんする意味がない。」などと弁解しているようです。

以下は私のまったくの推測になります。私の「筋読み」です。
前田検事は当初この捜査報告書の存在に気づいていなかった可能性があり,その点を詰める必要があります。
押収した証拠に関する解析報告書は,検察事務官が作成することが多いです。捜査主任検事が直々作成することはまずないです。
もちろん,そうした捜査報告書は主任検事であれば当然目を通しているはずです。しかし,前田検事は見落としていたのではないでしょうか。可能性はゼロではありません。
押収した直後に,検察事務官によってそのような真正な捜査報告書が作成されていたことに気付かなかった前田検事が,FDデータを調べてみたら,最終更新日時が「6月1日」になっているのを見てびっくりし,自分の事件の筋の見立てに合わせて,意図的にFDデータを改ざんして「6月8日」にした?データ解析をしたところ,前田検事が改ざんした日が起訴後である7月13日というのですから,その時点では,おそらく問題の「捜査報告書」も含めて一件書類はすべて公判部に上がってしまっています。改ざん時には前田検事は捜査報告書の存在に気づいていなかった可能性があるのです。
そして,前田検事はその改ざん後のFDを敢えて上村被告人に返しておく。ここで,不思議に感じることは,どうして,せっかく見立てに合うように改ざんしたのに,そのFDを公判で証拠請求しなかったのか,ということですが,そこまで大胆な性格ではなかったのでしょう。大阪は,捜査部と公判部は分かれています。公判検事に対して「このFDを証拠請求しろ」と言えるほどの大胆さはなかったのでしょう。

その後,先ほど述べたように,弁護側の証拠開示請求で「捜査報告書」が弁護側に開示されます。それで,弁護側が検察の構図の矛盾をついてきます。慌てたのは公判検事だけではありません。「初めて捜査報告書の存在を知った」前田検事は真っ青になります。しまった!弁護側に反したFDの記録との矛盾がばれてしまう!おそらくそう思って前田検事は,そのときになって上司にFDデータ操作を報告したのでしょう。

現在,捜査中であり,無罪推定であって,安易に前田検事の行為の犯罪性を決めつけるわけにはいきませんが,前田検事が故意があってデータ改ざんをしたかどうかは,もっぱらこの「捜査報告書」の存在に前田検事が何時気づいたかにかかっています。

大阪地検特捜部検事が証拠改ざん?

2010年9月21日 Filed under:司法制度

今日の朝日新聞朝刊のスクープで,元厚労省局長の郵便不正事件に関し,大阪地検特捜部の主任検事がFDの最終更新日時を改ざんしていたと報道されました。
信じられないことです。検事調書の「作文問題」とは比較にならないほどのスキャンダルだと思います。FDという「客観的証拠」の改ざん問題だからです。このような客観的証拠を改ざんされたら,何を頼りに裁判をしていいか分からなくなります。裁判が無意味になるのです。検事調書の「作文」も,客観的証拠があればこそ,「作文」であると解明できますが,客観的証拠それ自体が検事によって改ざんされたら何も解明できなくなるのです。
検事の仕事の醍醐味とは,証拠を一つ一つ地道に検証分析して真実に迫る点にあります。その証拠それ自体を自分の好きなように改ざんする検事は,一体何のために検事をやっているのでしょうか?それを検事に聞きたいです。

もう一点,指摘したいのは,この公的証明書のデータの最終更新日時という情報は,何も主任検事だけではなく,この捜査に携わっているすべての検事の関心事です。決裁官たる上司も当然関心を持っている基礎事実です。決裁官たちは,最終更新日時を6月1日と認識していたのでしょうか?それとも6月8日と認識していたのでしょうか?どのような報告をこの主任検事から受けていたのでしょうか?
6月1日と真実が記載されていた捜査報告書が存在し,弁護側に開示されていたようですが,その存在を決裁官は知っていたのでしょうか?分からないことがたくさんあります。

事態は,この主任検事の処分だけではなく,大阪地検特捜部副部長,特捜部長,大阪地検次席検事,大阪地検検事正を含めた組織の綱紀粛正に発展するでしょう。
今回の改ざん報道が事実とすれば,主任検事はもちろん逮捕起訴され,実刑判決となると思います。それほど重大な事件です。検事による暴行事件の比ではありません。最高検による徹底捜査が必要です。

押尾学裁判

2010年9月13日 Filed under:司法制度

押尾学被告人の裁判が佳境を迎えつつあります。
報道を見る限りでの感想ですが,次のようなことが言えます。
① 検察官は押尾被告人の事後的な偽装工作からその証言の信用性を弾劾していますが,裁判官・裁判員にかなり効果的だと思います。そこから伺われる保身と無責任さはかなり押尾被告人に不利です。
② 弁護人は,被害者が暴力団関係者との交際があり,独自の薬物入手ルートがあったことを立証しようとしていますが,やや間接的であるばかりか,執拗な被害者に対する攻撃に映ってしまっており,「死人に鞭打ち」を嫌う日本人気質を考えるとむしろマイナス効果を裁判員に与えているような気がします。
③ しかし,一方で,検察は,押尾被告人がMDMAを被害者に渡したとする点の立証については,直接的なものとしては,落ち合う前の「あれ,すぐいる?」という携帯のやりとりくらいなもので,弱いと言えば弱いです。検察はそれを補充するために,押尾被告人の過去の女性関係を立証範囲に据えて,同じように「あれすぐいる?」と以前にも薬物を渡す際に言っていたことを立証しようとしています。
④ 押尾被告人の弁解である「あれすぐいる?」とは,俺の体がすぐに欲しいか,すぐにセックスしたいか,という意味で言ったとの弁解はとても弱いです。信用されないでしょう。
⑤ しかし,もし,押尾被告人が「確かに携帯メールでMDMAの意味で『あれすぐいる?』と聞いたが,実際に会ってみると被害者が自分でMDMAを入手し,事前に用意していたので,自分のMDMAを被害者には渡さずに被害者のものを試しに使ってみた。そうしたら死んでしまった。」と,もしそのように弁解すれば,検察はかなり苦しくなると思います。

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