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飲酒運転で逮捕されたら? 弁護士が解説

報道によると、2021年の統計において、飲酒運転で検挙された人が、なぜ飲酒運転をしたかという問いに対する回答は、「警察に見つからないと思った」というものだったそうです。

過失による交通事故や交通違反と違って、飲酒運転は速度違反とともに「故意犯」です。法を破ろうと思って意図的にやった行為であり、その動機が「ばれないと思った」というのですから、弁解の余地はありません。

飲酒運転は、重大事故にもつながる可能性を秘め、職種によっては職を失いかねない事態を招きます。「飲んだら乗らない、乗るなら飲まない」という姿勢を徹底したいものです。それは、法廷において「もう一生お酒をやめます」という悲痛な決意を聞くたびに思うことです。

以下では、飲酒運転をめぐる法律の規定や、飲酒運転により事件を起こし、逮捕されるなどした場合について、代表弁護士・中村勉が解説いたします。

飲酒運転とは

飲酒運転とは、アルコールを含む飲食物を体内に取り込んで車両等を運転する行為です。
法律上、体内のアルコール度数や、アルコールの影響により正常に車両を運転できないかどうかにより、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2つに大別されています。
また、飲酒運転をした運転者だけでなく、運転自体をしなくても飲酒運転に一定の関与をした者は、刑事罰の対象となります。

飲酒運転の基準

酒気帯び運転の基準

道路交通法(以下「法」といいます)第65条1項は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と規定し、飲酒運転は運転者の飲酒量等に関わらず禁止行為とされています。
そのうち刑事罰の対象となる酒気帯び運転の基準は、アルコール濃度が「血液1mlにつき0.3mg又は呼気1リットルにつき0.15mg以上」です(法117条の2の2第3号、道路交通法施行令44条の3)。

その検査に多く利用されるのは、呼気検知です。呼気検知は、採血などの医療行為を伴う血液検査ではなく、たとえば交通検問の場で直ちに行えるからです。
呼気検知の結果が客観的に呼気1リットル中0.15ml以上なら酒気帯び運転とされます。たとえ主観的にいくら「自分は酒に強いから酔っていない」、「運転には影響がない」などと感じていたとしても、全く関係ありません。飲酒により身体にアルコールを保有している場合、たとえその量が微量であっても、客観的に情報処理能力、注意力、判断力等が低下し、交通事故を起こすおそれが著しく増大するからです。

酒酔い運転の基準

酒酔い運転の基準は、アルコール濃度の数値ではなく、酒気帯びて車両等を運転した者(その者の血中アルコール濃度が1ml中0.3mg又は呼気1リットル中0.15mg以上であるか否かを問いません)が、当該運転の際に酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)にあったか否かです。
検挙されるか否かの判断は、現場に臨場した警察官が運転者の状態をみて、視点が合うか、呂律が回っているか、直立歩行が可能か、その他運動機能、平衡感覚、認知能力の低下がないかなどにつき、総合的に判断します。

罪名 基準 処罰
酒気帯び運転(道路交通法117条の2の2第3号) 身体に血液1mlにつき中0.3mg又は呼気1ℓにつき0.15mg以上のアルコールを保有する状態にあった場合 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
酒酔い運転(道路交通法117条の2第1号) アルコールにより、正常な運転ができないおそれのある状態で車両等を運転した場合 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(8条8項)

飲酒終了後、何時間経てば飲酒運転とならないか

アルコール処理能力には体質による個人差があります。性別・年齢・体重・体質、疲労・体調等でも変わり、また睡眠中は処理が遅くなります。
アルコールの分解能力は、そうした様々な要素を勘案した上で、1時間当たりアルコール4グラムと計算しておけば、検知器で検出される可能性はほとんどないと言われることがあります。

ビール中瓶1本、日本酒1合、グラスワイン2杯をそれぞれにつき、それを飲んだ場合に体内でそのアルコールを処理するまでにおよそ4~5時間かかると言われています。
もっとも、この数値はあくまでも目安であり、上記のように個人差があります。飲酒後7~8時間以上は空けるべきと言われることもあります。飲んだお酒の量がいかに少量でも、飲酒した日は運転を避けるべきですし、たとえ睡眠を取ったとしても、その時間が短ければアルコールが体内に残っていますので、安心できるとは限りません。

国土交通省航空局監修、定期航空協会及び一般財団法人航空医学研究センター作成の「飲酒に関する基礎教育資料」平成31年2月(令和元年10月改正)等参照

飲酒運転の処罰

飲酒運転の罪は昨今厳罰化の傾向にあります。それは、車両等は一歩間違えれば凶器となり得るところ、その車両等の運転に関わる者としての自覚に欠ける安易な飲酒運転により、悲惨な交通事故が相次いだためです。
そして、運転者だけでなく、同乗者や酒類を提供した者なども罰則の対象となります。以下、順に見ていきます。

運転者に対する罰則

上記のとおり、酒気帯び運転の罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、酒酔い運転の罰則は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。刑事罰だけでなく、行政罰として、免許停止又は免許取消の対象となります。

ちなみに、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為により人を死傷させた場合、あるいは、アルコールの影響により正常な運転に支障が生じるおそれのある状態で自動車を運転し、そのアルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合には、危険運転致死傷罪が成立します。危険運転致死傷罪については、危険運転致死傷罪に関する記事「危険運転致死傷罪を弁護士が解説」をお読みください。

車両提供者に対する罰則

運転者に対する罰則と同様、車両を提供した者にも運転者が酒気帯び運転をした場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、同じく酒酔い運転をした場合は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金という重罰が科されます。

酒類提供者又は飲酒をすすめた者に対する罰則

運転者が酒気帯び運転の場合は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金、同じく酒酔い運転をした場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
上記二例よりは軽いとはいえ、依然として重い刑罰が定められていることが分かります。

同乗者に対する罰則

運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、車両を運転して自己を運送するよう要求又は依頼して、当該車両に同乗した者にも、酒類提供者と同様、運転者が酒気帯び運転をした場合は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金、同じく酒酔い運転をした場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

道路交通法 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)
1 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
2 何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
3 何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
4 何人も、車両(トロリーバス及び道路運送法第二条第三項に規定する旅客自動車運送事業(以下単に「旅客自動車運送事業という。)の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項、第百十七条の二の二第四号及び第百十七条の三の二第二号において同じ。)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。

(罰則 第一項については第百十七条の二第一号 〔五年以下の懲役又は百万円以下の罰金〕、第百十七条の二の二第二号〔三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金〕第二項については第百十七条の二第二号〔五年以下の懲役又は百万円以下の罰金〕、第百十七条の二の二第二号〔三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金〕第三項については第百十七条の二の二第三号〔三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金〕、第百十七条の三の二第一号〔二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金〕第四項については第百十七条の二の二第四号〔三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金〕、第百十七条の三の二第二号〔二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金〕)

飲酒運転で事故を起こしてしまったら

もし飲酒運転で事故を起こしてしまったら、あなたは気が動転し、すぐにでも現場から立ち去りたくなるかもしれません。ですが、そのような逃走行為は、救護義務違反・報告義務違反となり、罪を重ね、更に刑罰を重くするだけの愚かな行為です。現実に人が負傷していた場合には、生命の危険すら生じているかもしれないのです。

事故を起こしてしまったら、必ず現場に留まり、直ちに110番通報を行いましょう。また、状況に応じて、119番通報や必要な救護措置を必ず取りましょう。

飲酒運転で逮捕されやすいケース

飲酒運転により検挙されても、場合によっては逮捕に至らないこともあります。それでは、一体どのようなケースで逮捕に至りやすいのでしょうか。

前科・前歴がある場合

過去に飲酒運転その他同種の罪で前科・前歴がある場合、逮捕される可能性は高くなります。

人身事故の場合

飲酒運転で人身事故を起こした場合も、逮捕される可能性が高くなります。
過失運転致死傷罪はもとより、危険運転致死傷罪に問われることもあります。

執行猶予期間中の場合

執行猶予期間中の犯行であった場合、逮捕されるばかりか、公判請求されて執行猶予も取り消されるおそれもあります。一般に、執行猶予中の犯行に対して再度の執行猶予判決を獲得するのは困難で、実刑判決を受け、前の刑と合わせて服役しなければならなくなりかねません。

飲酒検知の拒否、逃走・証拠隠滅等の行為に及んだ場合

たとえば検問で停められて、飲酒検知を求められてもそれを拒否したり、その場から逃走し、身代わりを立てるなどの証拠隠滅行為に及んだりした場合も、逮捕される可能性が高く、別罪も成立する可能性もあります。呼気検知を拒否しても、令状を請求されて血液検査をされる場合もあり得ます。

飲酒運転で逮捕されたら

飲酒運転に関する罪で逮捕された場合、最初の72時間が、長期に身柄拘束となるか否かにとって重要です。事案によってはその後10日間勾留され、身柄を確保され続ける場合があります。この勾留は、さらに10日間の延長も可能です。
このような勾留を回避し、または少しでも短期で釈放されるには、弁護士に依頼し、勾留を回避し、あるいは早期の釈放を可能とする証拠を集めて検事・裁判官を説得したり、場合によっては勾留や勾留延長の判断に対する不服申立てをする必要があります。また、その後の裁判を見据えた弁護活動にも早期に着手することにより、不当に重い処分を回避できる可能性が高まります。

飲酒運転により事故を起こした場合には、被害者の方に対する誠意を尽くすのは当然です。被害者の方などとのやり取りは、運転者ご本人ではなく、代理人弁護士が間に入った方がスムーズなことも多いので、是非弁護士への依頼をご検討ください。

飲酒運転と否認事件

お酒を飲んだ翌朝、「もうお酒は抜けているだろう」と安易に考えて自動車を運転し、検挙されてアルコール含量が基準値を超えて飲酒運転で立件されることがあります。飲酒運転は故意犯ですから「故意」すなわち体内にアルコールを保有しているという認識がなければなりません。
そこで、被疑者の中には、これを否認し、「お酒はもう抜けていると思った」「飲酒運転をする意図はなかった」と弁解するケースは決して少なくありません。

このような場合は、単に体内におけるアルコール含有量だけではなく、朝起きたときの体の状態、言動、ふらつきなどの事情を総合考慮して「故意」の有無を判断します。
特に、走行中、パトカーに追尾され、走行車両のふらつきが警察官によって現認されることもあります。しかし、嫌疑不十分として不起訴処分となるケースもありますので、認否に際しては弁護士と相談すべきです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。飲酒運転に対する世間の目はますます厳しく、厳罰化の傾向は当面止まることはないでしょう。まずは「飲んだら乗るな・乗らせるな」は当然のこととして徹底頂きたいと思います。
また、飲酒運転は運転者のみでなく、同乗者、お酒の提供者等も罰せられます。自分は運転していないから大丈夫などと考えるのは、完全な間違いです。

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  • 逮捕されるのだろうか
  • いつ逮捕されるのだろうか
  • 何日間拘束されるのだろうか
  • 会社を解雇されるのだろうか
  • 国家資格は剥奪されるのだろうか
  • 実名報道されるのだろうか
  • 家族には知られるのだろうか
  • 何年くらいの刑になるのだろうか
  • 不起訴にはならないのだろうか
  • 前科はついてしまうのだろうか

上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

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