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国選弁護人と私選の違いは? 条件やメリット・デメリットを弁護士が解説

警察からいきなり連絡が来て取調べに呼ばれたり、家族が逮捕されたり、誰しも刑事事件の当事者になるときは突然のことです。弁護士の力を借りる必要があることは思いついても、どのようにどんな弁護士を選べば良いのか、分からない方も多いことでしょう。

国選弁護人制度の概要や私選弁護人との違い、それぞれのメリット・デメリットなどについて、弁護士・坂本一誠が解説します。

国選弁護人制度とは

国選弁護制度とは、刑事事件において、資力が乏しいなどの理由で被疑者・被告人において自ら弁護士を選任できない場合に、本人の請求又は裁判所の職権で弁護人を選任する制度です。

国選弁護人と私選弁護人(自ら費用を支払い私的に委任契約を結んで選任する弁護人)のもっとも大きな違いは、国選弁護人は身柄拘束を受けている被疑者か、起訴後の被告人しか選任ができないということです。つまり、身柄拘束を受けていない被疑者、いわゆる在宅捜査の状態で、起訴か不起訴を待つ立場にある人は、国選弁護人を付けることができず、自身で費用を負担して弁護士を契約して私選弁護人を選任するしかないのです。

国選弁護制度は、憲法第37条3項(「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する」)を根拠として認められた(被疑者と)被告人の権利です。

被疑者国選弁護制度は、平成16年5月の刑事訴訟法の改正により導入されたものであり、被疑者段階でも被疑者が勾留されていれば国選弁護人が就くことができるようになりました(刑事訴訟法第37条の2)。被疑者国選弁護人が就ける事件は、当初は制限がありましたが、平成18年10月、平成21年5月、平成28年5月の各刑事訴訟法改正により順次拡大され、現在では勾留状が発せられ、あるいは勾留請求された全ての事件について、国選弁護士の制度が利用できるようになり、痴漢や盗撮等の法定刑の比較的軽い事件においても被疑者段階で国選弁護人が就けるようになりました。より手厚く被疑者の人権が保護されるようになったと言えましょう。

当番弁護士制度とは

国選弁護制度とよく混同されがちなのが、当番弁護士制度です。平成16年5月の刑事訴訟法の改正前においては、国選弁護制度は、起訴された被告人のみを対象とした制度であり、被疑者段階の国選弁護制度はありませんでした。そのため、弁護士会は、被疑者弁護の充実を図るため、独自にこの当番弁護士制度を創設したのです。

この制度は、弁護士が逮捕された被疑者に初回のみ無料で接見に行くというものです。ただ、無料で接見してもらえるのは原則一回のみであり、その弁護士に引き続き弁護活動を依頼するには、その弁護士と改めて私選弁護人としての契約を結ばねばなりません。もちろん、この場合、通常の私選弁護人の選任の場合と同様、費用がかかります。

国選弁護人はどのようにして選任されるのか

国選弁護人は、被疑者・被告人の請求により選任される場合と、請求によらずに職権で選任される場合があります。国選弁護人が被疑者・被告人の請求により選任される場合の流れを紹介しますと、被告人、又は勾留状が発せられ若しくは勾留請求をされている被疑者(以下、「被疑者・被告人」といいます。)が国選弁護人の選任を請求することができる(刑事訴訟法36条、37条の2)わけですが、その場合、まずは資力要件(同法36条の2、37条の3)、つまり、被疑者・被告人の資力が現金や預金を合わせて50万円未満である必要があります。被疑者・被告人は、選任請求時に「資力申告書」を提出し、審査を受けることになります。

資力要件を満たさない被疑者・被告人の場合は、あらかじめ弁護士会に弁護人の選任の申出をする(それでも《私選》弁護人となる者がいなかった)必要があります(同法36条の3第1項、37の3第2項)。そして、①「貧困」「その他の事由」により弁護人が選任できないこと(同法36条本文、37条の2第1項本文)、②被疑者・被告人以外の者が選任した弁護人がいないこと(同法36条但書、37条の2第1項但書)のほか、被疑者の場合には③勾留状が発せられたこと(同法37条の2)という要件があれば、弁護人を付す旨の決定がなされ、国選弁護人が選任されることとなります。

国選弁護人と私選弁護人のメリット・デメリット

国選弁護人の費用は、私選弁護人と比べて一般に安価であること

国選弁護人の一番のメリットは、一般に、私選弁護人より費用が安いということです。ただ、国選弁護人費用は、訴訟費用の一部であり、裁判所は、判決で被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させることになっていますが、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、被告人負担させないこともできます。つまり、被告人が国選弁護人の費用を後から負担することになることはあり得るのですが、それでも、国選弁護人の費用は、私選弁護人のそれよりも安価であるのが一般です。

これに対し、私選弁護人は、被疑者・被告人(その他配偶者、直系の親族、兄弟姉妹等の弁護人選任権者)が自ら選任するのですから、その費用は必然的に被疑者・被告人側が負担することとなり、国選弁護士費用のように判決で免除されることはありません。そして、その金額も、自白事件や単純な事案であっても国選弁護士費用の数倍はかかりますし、否認事件、複雑・重大事案、著明な事案等ともなると、弁護人の弁護活動等の負担はその分増大し、弁護士費用も高額とならざるを得ません。

国選弁護人は、勾留請求前の段階では選任され得ないこと

国選弁護人は、勾留状が発付される前の段階では、選任される要件を欠き、選任されることはありません(勾留請求がなされていれば、選任の請求はできます)。要するに、逮捕前や逮捕後勾留される前の段階では選任されることはないということです。これが最大のデメリットです。

逮捕される前、たとえば任意取調べの段階でも、上記のような複雑重大事案等であればあるほど弁護人を必要とする度合いは高く、その後身柄拘束等の大事に至らないよう、事案に応じた専門的かつ活発な弁護活動が必要です。また、不幸にして逮捕された場合、勾留請求がなされるまでの最大72時間は、勾留されずに在宅事件に切り替えることができるか否かの瀬戸際と言える事案も多く、この間に初動でいかなる弁護活動ができるかが決定的に重要となります。

しかしながら、こうした間には、弁護人の必要性がいくら高くても、また、いくら被疑者が要求しようが、国選弁護人が選任されることはなく、被疑者が自ら私選弁護人を選任しない限り、弁護士のサポートを受けることはできません。これは、国選弁護士制度を選択する場合の最大のデメリットと言えます。

このページをご覧になっている皆さんの中にも、警察から取調べの呼出しを受けている被疑者の立場にある方や、ご家族の方が逮捕されて不安な方がいらっしゃると思います。そのような在宅捜査の被疑者の立場にある方や、逮捕されて勾留がなされる前の段階の方は、国選弁護人は付けられません。この段階で、刑事処分や身体拘束を回避するために弁護活動を行うには、私選弁護人と契約して活動してもらうしかありません。

私選弁護人であれば、逮捕前であろうと、逮捕後勾留前であろうと、いつでもつけることができます。ですから、逮捕・勾留を回避して在宅捜査の道を探りたい場合や、任意の取調べが厳しく不当であって、捜査機関側に抗議すべき場合などには、私選弁護人に頼る以外にありません。勾留は、10日から20日間もの身柄拘束を伴い、それだけで会社を解雇されることもあるので、勾留請求がなされた段階では遅きに失します。国選弁護人の選任を待たず、いち早く私選弁護人を選任すべきです。

国選弁護人を自らが選ぶことはできず、変えることもできないこと

被疑者・被告人は、国選弁護人となる弁護士を選ぶことができません。国選弁護人は、事前に日本司法支援センター(法テラス)に国選弁護人候補者として登録された者から選ばれます。被疑者・被疑者は、今後の人生を左右しかねない弁護人が誰になるのか、事前には全く知らされず、どのような弁護士をつけるかなどにつき意見を求められることもありません。刑事事件の知識・経験が深いか否か、自分と相性が合うか否か、どれだけ熱心に弁護活動をしてくれるかなどの感触を事前に確かめることができないのです。

就いてくれた国選弁護人と例えば相性が悪いと感じたとしても、新たに私選弁護人を選任することはできても、被疑者・被疑者側から変更を求めることもできません。国選弁護人候補者として登録している弁護士は千差万別であり、刑事事件に対する知識・経験にも差があり、主たる取扱事件が民事事件であることもあります。もとより刑事事件を中心に業務をしている弁護士はそう多くはありません。

刑事事件の弁護活動は、事案の「筋」を的確に把握し、的確な見通しを持つことを始めとして、捜査・公判段階を通じ、身柄解放、勾留決定・接見禁止決定等に対する準抗告、検事面会、裁判官面会、示談交渉、再犯防止の環境確保、保釈獲得、被疑者・被告人の主張に関する証拠収集、検察側証拠の評価・反証、情状立証など幅広く、対応する相手や方法は段階によって異なり、スピード感を持って適時に適切な対応を採る必要があります。

いつ、誰を相手として、いかなる活動をするのか、あるいはすべきでないのかなど適切かつ迅速な弁護活動を行うには、刑事手続に精通しているだけでなく、豊富な経験とそれに基づく事案の的確な分析と見通しがものを言います。否認事件、複雑・重大事案、専門的知識を要する事案等はもとより、そうでない事案でも、ご自分の将来をかけた弁護に万全を期したい場合、ご自分と相性が合い、個別の事情を良く分かってくれる弁護士にじっくりと弁護してもらいたい場合などには、費用はかかっても、私選弁護人の選任を検討されるのがよいでしょう。

国選弁護人から私選弁護人に変える手続やタイミングは

被疑者・被告人は、国選弁護人が選任されている場合でも、上記のとおり自らその国選弁護人を解任することはできないものの、いつでも(あるいは理由を問わず)私選弁護人を選任することができます(刑事訴訟法30条1項)。選任に至らずとも、私選の「弁護人となろうとする者」として、接見要請を出し、セカンドオピニオンを求めることもできますし、上記のような配偶者、直系の親族、兄弟姉妹等の弁護人選任権者において「(私選)弁護人となるとする」弁護士に対し、同様にセカンドオピニオンを求めたり、私選弁護人を独立して選任することさえ可能です(同条2項)。

私選弁護人が選任されれば、国選弁護人は、裁判所側から解任されることとなるのが通常ですので、被疑者・被告人側でその心配をする必要はありません。ご自分やご家族の将来がかかった刑事弁護です。国選弁護人の弁護活動や説明に疑問を持ったら、いつでも、刑事事件の知識・経験が豊富な弁護士にセカンドオピニオンを求め、あるいは接見に行ってもらい、私選弁護人への変更を検討することを躊躇する理由はありません。

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当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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