2013年8月 のアーカイブ

9億円横領の元弁護士に懲役14年 岡山地裁「職責に反する」

2013年8月30日 Filed under:事件

今日は弁護士の犯罪の記事です。

弁護士業務に絡む交通事故の賠償金など9億円以上を着服したとして,業務上横領などの罪に問われた元弁護士,F被告(65)の判決公判で,岡山地裁は28日,懲役14年(求刑懲役15年)を言い渡した。

判決理由で裁判長は「弁護士の職責に真っ向から反する行為。弁護士制度に対する信頼を揺るがすもので,強い非難に値する」と述べた。

判決によると,F被告は2006~12年,交通事故や医療過誤の損害賠償請求訴訟で支払われた賠償金や,成年後見制度に基づき預かっていた財産など約9億762万円を着服するなどした。

F被告は依頼者らから生活費や,後に支払われる賠償金の立て替えを求められ,安易に支払いを続けるうちに着服するようになったという。

公判を傍聴した,F被告の着服被害者らでつくる「被害者の会」会長(68)は「求刑通りの量刑とならず,納得できない。横領した金の流れなども,裁判で明らかにならなかった」と不満を漏らした(2013年F月28日18時46分 日本経済新聞)。

弁護士の犯罪率は意外と高いのです。詐欺や業務上横領が多いのですが,毎月の懲戒件数も5件から10件はあります。どうして法のエキスパートの弁護士が犯罪を行うのか。
倫理観の欠如,業界不況など,色々な原因があると思いますが,一人事務所という事務所経営形態もその原因のひとつでしょう。
弁護士白書によれば,全国の弁護士事務所のうち,一人の弁護士で経営されている,いわゆる一人事務所は,全体の60%を超えます。そこには,犯罪抑止のチェック機能は皆無です。しかも,弁護士は依頼人から多額の預り金を受ける場合があり,それを流用したり,使い込む誘惑に駆られやすいのです。

弁護士は,会社犯罪や会社不祥事に際し,「コンプライアンスの不備」を声高に訴えることがありますが,まずは我が身のコンプライアンスをきちんと整備することが先決でしょう。

亀岡暴走事故を考える

2013年8月27日 Filed under:事件,刑事司法

今日は「亀岡事故」について考えてみたいと思います。

京都府亀岡市で昨年4月,集団登校中の児童らが車にはねられ,10人が死傷した事故で,自動車運転過失致死傷と道路交通法違反の罪に問われた少年(19)の控訴審初公判が21日,大阪高裁(森岡安広裁判長)であり,検察側,弁護側の双方が量刑不当を主張した。

検察側は,懲役5年以上8年以下の不定期刑(求刑懲役5年以上10年以下)とした一審・京都地裁判決について「交通事故史上たぐいまれな重大かつ悪質な事案。遺族らは量刑に強い不満と怒りをあらわにしている」と主張した。一方,弁護側は「保護処分が相当」と訴えた。

被告人質問で少年は「非常に申し訳ございませんでした」と法廷の遺族らに頭を下げた。閉廷後の記者会見で,亡くなった松村幸姫さん(当時26)の父,中江美則さん(50)は少年の様子について「弁護人とのやりとりの中で言葉を選んでいるようにも思えた。憤りばかりだ」と話した。

一審判決によると少年は昨年4月,亀岡市の府道で無免許で居眠り運転し,10人を死傷させた(2013年8月22日02時09分 日本経済新聞)。

亀岡市で起こった交通事故から,1年以上が経過し,間もなく控訴審判決が下されるようです。妊婦を含めた10人もの方々が死傷された,誠に痛ましい事件です。亡くなられた方やご遺族の方々に,心より哀悼の意を表します。また,今もなお事故からの回復を目指して治療されている方々もおられると思います。少しでも早く回復されることを心よりお祈り申し上げます。

今回の事件では,「危険運転致死傷罪」ではなく,より軽い「自動車運転過失致死傷罪」が適用された点で,論争が巻き起こりました。無免許運転を常習的に行っており,長時間に渡るドライブの末に居眠り運転をした結果,10名もの人々を死傷させる事故を起こしたのだから,量刑の重い危険運転致死傷罪(刑法208条の2)が適用されるべきだという主張がされました。遺族の方々のこのような主張は,その無念さや悔しさからすれば,当然だと思います。

しかし,危険運転致死罪は、「アルコールや薬物で正常な運転が困難な状態で自動車を運転した」「車を制御困難な高速度で走らせた」、「進行を制御する技能を有しないで走らせた」等の事情で人を死なせた場合にのみ適用されることが明文で定められています。そのような「行為」が危険であり,法秩序を著しく乱すと法は考えているのです。10人死傷という「結果」は重大で被告人の刑事責任を判断する上で無視できませんが,「結果責任」だけで刑罰を考えることは出来ません。

確かに,少年は無免許運転を繰り返し,自己の直接原因は長時間運転による居眠りでした。特に,無免許運転は故意犯であり,居眠りという過失と違って悪質です。しかし,無免許運転であっても,日常的に事故を起こすことなく運転を繰り返していた少年は,「進行を制御する技能を有しない」とはいえないと判断されたのです。

遺族の方々の無念さは痛いほど理解できますが,危険運転致死罪という,道路交通法違反等との組み合わせによっては最高30年までの懲役が科される重い罪の適用については,慎重な議論が必要です。適用範囲が解釈によって安易に拡大されれば,その分,将来に渡って多くの国民が恣意的に厳罰を下されることにもなりかねません。現在,無免許運転の罰則強化や危険運転罪の適用範囲の拡大が法制審議会で議論されています。感情論に流され過ぎないよう,バランスの取れた慎重な議論が行われることを望みます。

LINE使い脅迫容疑,男逮捕 元交際相手に800回送信

2013年8月22日 Filed under:事件

今日は「LINEを使った犯罪」について考えてみます。

元交際相手の女性に約800回にわたり無料通話アプリ「LINE(ライン)」などを使ったメールを送って脅したとして,警視庁東村山署は17日までに,無職,I容疑者(24)=東京都中野区=を脅迫の疑いで逮捕した。同署によると,「彼女を振り向かせたかった」などと話しているという。

逮捕容疑は5月22日~7月4日,交際していた都内在住の20代女性から別れを告げられたことに腹を立て,携帯電話で「殺してやる」「包丁を持って待っている」などとメールを送りつけて脅した疑い。

同署によると,I容疑者は多い時で1日に約470回メールを送信していたという。女性が7月上旬,警視庁に被害を相談していた(2013年8月17日11時41分 日本経済新聞)。



「LINE」は,主にスマートフォン向けに開発された無料通信アプリです。
2011年に開発されて以来,現在では世界で1億5000万人,日本だけでも4500万人のユーザーがいるそうです。短い文章でのやり取りをリアルタイムで行うことができるので,気軽に友人と連絡を取り合うことができますし,「スタンプ」と呼ばれる独自のキャラクターによる画像は,通信者の感情を面白おかしく表現してくれます。人気タレントによるプロモーションも手伝って,若年層を中心に爆発的にヒットしていますが,それに伴って,「LINE」が犯罪に使われるケースも増えています。

たとえば,2013年4月には,自衛官がLINEで知り合った高校1年の女子生徒に,裸を撮影させて画像を送信させたとして,児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の被疑事実で逮捕されています。
また,同月に,富山では,LINEを使って「美人局」を行ったとして少年と少女計4人が恐喝罪の被疑事実で逮捕されています。
今回取り上げたニュースでも,LINEを用いて脅迫行為が行われています。他にも,LINEを連絡手段として用いた事件は,数多く発生しています。

LINEに関連する一連の報道を見ていますと,LINEそれ自体が「悪」であるかのような印象を抱かせるものも少なくありません。よくメディアが,「LINEを通じて知り合った」かのような報道をしていますが,LINE自体には出会い系機能はありません。「友だち」に登録してはじめてメッセージや通話ができるのであって,出会い目的で,見知らぬ人と連絡を取り合うことはできないのです。援助交際に関する報道でよく目にする「LINE掲示板」等は,LINEとは全く関係のない非公認の掲示板です。
LINEに関連して発生している事件の内容も,恐喝や援助交際を中心としたものですので,以前から存在していた「出会い系サイト」を介した犯罪と,実体は何ら変わらないものといえるでしょう。犯罪に用いられる通信手段が,メール等からLINEに変わっただけで,LINEそれ自体が「悪」ではないものと考えます。

もっとも,LINEがこれまでの通信手段と比べて,気軽な連絡のやり取りを実現するものであり,大多数の若者がLINEを利用しているのもまた事実です。その結果,若者を中心として,LINEを通信手段とする犯罪が増加している点は否定できません。「LINE犯罪」という言葉に踊らされることなく,保護者や教師はLINEの扱い方や,その裏に潜む危険性について,根気強く子ども達と話し合っていくことが必要でしょう。

児童ポルノとCG加工

2013年8月14日 Filed under:事件,刑事司法

今日は「児童ポルノとCG加工」のお話です。

コンピューターグラフィックス(CG)で児童ポルノ画像を製造し,インターネットで販売したとして,警視庁は7月11日,岐阜市正木,デザイナーT容疑者(52)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供目的製造など)の疑いで逮捕したと発表した。

CGの児童ポルノの摘発は全国で初めて。

同庁幹部によると,T容疑者は2009年12月,約30年前に雑誌に掲載された少女の裸の写真をCGで加工し,昨年12月,島根県の男性に約3000円でダウンロードさせた疑い。

T容疑者は「CGなので販売しても大丈夫だと思った」と供述している。しかし,同庁は,CGによる画像でも実在の少女を基に描写すれば児童ポルノにあたると判断した(2013年7月11日12時42分 読売新聞)。

単純所持罪に関する議論など,最近は「児童ポルノ」を巡る問題がよく取り上げられています。児童ポルノと言ったときに,おそらく皆さんが想像するのは,ポルノ写真だと思います。ですが,今回問題となったのはポルノ写真そのものではなく,ポルノ写真をCG加工したものです。一見すると,CG加工した物全般にまで「児童ポルノ」の解釈を拡大したようにも思えますが,そうではありません。せっかくですので,少し「児童ポルノ」の対象範囲について考えてみましょう。

「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,①児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態児童の姿態,②他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの,または,③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの,を視覚により認識することができる方法により描写したものをいいます(児童買春・児童ポルノ禁止法2条3項参照)。

そして,ここでいう「児童」とは,18歳未満の男女をいいます。「その他の物」には,写真やビデオテープなどのように例示されている物に類する物をいうものと考えます。

そうすると,絵やCG加工した物は,明示こそされていないものの,「その他の物」に含まれて規制対象となる可能性があるのです。特に,実在する児童を特定可能な程度にリアルに描写した絵などは,「その他の物」に該当する可能性が高くなります。今回問題になった対象物は,約30年前に雑誌に掲載された実在の少女の裸の写真をCG加工した非常に精巧な物のようで,写真に類する物として「その他の物」に該当すると判断されたのでしょう。実在している人物の存在が判断の分かれ目となったようですので,写実的なCG加工物であれば,たとえ空想の人物であっても処罰対象となる,とまでは考える必要はないのです。

このように考えると,空想の人物でも実在世界に存在する誰かに似ていることもあるのではないか?空想の人物であってもリアルで性欲を刺激するようなものは規制対象にしても良いのでは?という反論も出てきそうです。この反論は妥当でしょうか。

児童ポルノ法と一見すると似ている,青少年保護育成条例は,「有害指定図書」の流通を制限しています。その規制の趣旨は,心身の未成熟な青少年が,著しく性的感情を刺激するような有害図書を閲覧することで,健全な育成を阻害されることを防止する点にあります。仮に,児童ポルノ法が,青少年保護育成条例と同じ趣旨で「児童ポルノ」の流通を禁ずるのであれば,児童一般の健全な育成を保護するために,空想の人物であっても児童の性的感情を著しく刺激するようなリアルなものは,規制の対象とする方が合理的なように思います。

しかし,児童ポルノ法は,直接的には,児童ポルノに描写された児童の保護を目的とするものであり,間接的に,児童一般を保護することをも目的とするものと解されています。したがって,モデルとされた児童本人を保護するという観点から,「児童ポルノ」に該当するためには,モデルとされた児童が実在することが必要だと考えられているのです(大阪高裁平成12年10月24日)。また,実在の人物と「リアルな空想の人物」との境界線は極めて曖昧です。そうすると,侵害されるべき具体的な利益を有しない空想の人物についてまで保護を拡大する必要はないのであって,むしろ表現の自由の保護を優先させる方が妥当ではないか,という価値判断が働きます。このように,児童ポルノ法と青少年保護育成条例とは,規制の趣旨が異なる以上,導かれる結論も異なるのです。以上より,上記反論は妥当ではないものと考えます。

「児童ポルノ」を規制すれば,作成者の表現の自由を一定程度制限することは否めませんが,かといって,安易な制度批判に偏らないよう注意しなくてはなりません。将来,もしも表現の自由が著しく侵害された場合に建設的な議論ができるよう,日々冷静に警察・検察の立ち位置を分析し議論していく必要があるでしょう。

ネットなりすまし痴漢事件

2013年8月13日 Filed under:刑事司法

今日は「インターネット掲示板でのなりすまし事件」について考えてみます。

女性になりすましインターネットの掲示板で痴漢を呼び掛けたとして,和歌山区検は29日,大阪国税局海南税務署員,I容疑者を県迷惑防止条例違反(卑わいな行為)で略式起訴した。和歌山簡裁は罰金30万円の略式命令を出し,伊勢川容疑者は即日納付した。

起訴状では,I容疑者は4月30日,JR和歌山線電車内で,インターネットの掲示板に,乗り合わせた女性になりすまし,服の特徴や痴漢行為を望むような書き込みをし,掲示板を見た男性に女性の体を触らせた,としている。

捜査関係者によると,I容疑者は「痴漢しているところを助ければ,自分を好きになってくれると思った」などと供述している。

同国税局は「国民の信頼を損なう重大な事件であり,誠に遺憾。司法当局の判断を踏まえ,組織として厳正に対処する」としている。

和歌山地検は29日,この事件で,女性を触ったとして強制わいせつ容疑で逮捕され,処分保留で釈放された男性(26)を不起訴にした。不起訴の理由は明らかにしていない(2013年7月30日 読売新聞)。

さて,今回の事件の加害者は,被害者女性の同意があると思い込んで痴漢をしてしまいました。加害者の痴漢行為には,何らかの罪が成立するのでしょうか。この点について法律的観点から少し考えてみようと思います。
 
加害者は,インターネット掲示板上で「痴漢募集」の書き込みを見て,これに応じ,痴漢を募集していた女性と思われる女性に痴漢をしました。加害者の言い分としては,被害者の同意を得たうえで,女性の体を触っただけだと言いたいでしょう。そこで,「被害者の同意」論や錯誤論を用いて,犯罪の成立を否定できるのではないかが問題となるのです。

犯罪は,何らかの法益が侵害された場合に成立するものです。ですので,法益主体である被害者自身が有効な同意によって,自らの法益を放棄したと認められる場合には,犯罪が成立しない,と考えるのが「被害者の同意」に関する議論です。強制わいせつ罪においける保護法益は「被害者の性的自由」ですので,被害者が性的な行為をされることに同意していれば,原則として,当該行為には犯罪が成立しないことになります。
もっとも,他の乗客の面前で行えば公然わいせつ罪が成立する余地はあります。今回の事件では,実際に,被害者女性は痴漢行為に対して全く同意をしていませんでした。加害者は,被害者の同意があると誤信していた以上,違法性を阻却する事実を認識していなかった(故意がなかった)として犯罪が成立しないと解する余地があります。現に,本件で実際に痴漢行為をした人は立件されないと思われます。

一方で,そのような成り済ましの呼びかけをした今回の犯人には,痴漢が成立します。これは,情を知らない第三者を利用した,一種の間接正犯としての責任を負うことになります。

更に詳しく知りたい方は「痴漢で逮捕されたら」をお読みください。

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