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強制わいせつ事件の示談金相場や交渉術を弁護士が解説

お酒に酔った勢いで無理やりわいせつ行為を行ってしまった。
無理やりの意識なく性行為をしたが、もしかすると相手は嫌がっていたかもしれないといったことがあった場合、強制わいせつとして逮捕されてしまう可能性があります。また、逮捕されなくても、相手が警察に被害申告をすれば、強制わいせつ事件として捜査が開始される可能性が高いです。

刑事事件になってしまった場合、示談交渉は弁護士にお願いしなければできないのか、そもそも示談をした方が良いのか、被害者が言っている金額をそのまま払うべきなのかと疑問がたくさんあると思います。

ここでは、そんな疑問が解消できるよう、強制わいせつ事件の示談交渉や示談金について代表弁護士・中村勉が詳しく解説いたします。

強制わいせつ罪とは

強制わいせつ罪とは、「13歳以上の者に」「暴行又は脅迫を用いて」「わいせつな行為」をした人を罰する犯罪です。また、「13歳未満の者」については、暴行・脅迫がなくても「わいせつな行為」をすれば強制わいせつ罪に当たります。これらは、刑法176条に明記されています。

刑法第176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

「暴行又は脅迫」は、被害者の意思に反してわいせつな行為を行うに足りる程度の暴行・脅迫であれば足り、暴行に関して言えば、力の大小・強弱は必ずしも問わないとされています(大審院大正13年10月22日判決)。したがって、わいせつな行為を行うために着衣を引っ張ったり、体を押さえたりする行為もここにいう「暴行」に当たります。

なお、不意に股間に手を差し入れる場合のように、暴行自体がわいせつ行為に該当する場合でも、この要件を満たし得ます(大審院昭和8年9月11日判決)。

以前は、強制わいせつ罪が成立するためには性的な意図が必要であり、例えば、専ら報復や侮辱等の目的で、人を裸にして撮影をした行為には強制わいせつ罪は成立しないとされていました(最高裁判所昭和45年1月29日判決)。もっとも、近年判例が変更され、現在では、本罪の成立には、行為者の性的意図は必要ないとされています(最高裁判所平成29年11月29日判決)。

13歳未満の者に対する強制わいせつ罪については、相手が13歳未満であることの認識が必要ですので、13歳未満の者を13歳以上と誤信し、かつ、暴行又は脅迫を用いることなくわいせつな行為をした場合には、本罪は成立しません。
もっとも、13歳未満の者に対し暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合にも、刑法第176条の文言にかかわらず、強制わいせつ罪が成立すると解されていますので(最高裁判所昭和44年7月25日決定)、13歳未満の者を13歳以上と誤信していても、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合には強制わいせつ罪が成立します。

強制わいせつ罪の刑罰

刑罰は、「6月以上10年以下の懲役」と定められており、罰金刑の規定はありません。このことからも、強制わいせつ罪が刑法で厳しく処罰されていることがわかります。
痴漢や盗撮等の迷惑防止条例違反の性犯罪は、罰金刑も定められていますので、初犯の場合で被害者と示談ができない場合には、略式罰金といって、書面での手続きのみで罰金刑の略式命令を受ける簡易な手続きがとられるのが通例です。

これに対し、強制わいせつ罪は、罰金刑がない以上、起訴されてしまうと、公開法廷での正式な裁判が開かれることになります。初犯だから示談ができなくても不起訴となることはありません。
また、強制わいせつは以前、親告罪とされていましたが、平成29年に行われた刑法の一部改正により親告罪ではなくなりました。したがって、被害者の告訴がなくても起訴できる罪になります。

強制わいせつは未遂でも罪になるのか

強制わいせつ罪は、未遂罪も処罰されます。

刑法第180条
第176条から前条までの罪の未遂は、罰する。

事案によっては強制わいせつ罪・強制わいせつ未遂罪と痴漢(迷惑防止条例違反)の区別が難しい場合があります。例えば、胸や臀部を直接ではなく下着や衣服の上から揉んだ、掴んだ、といった事案などです。
当事務所で扱った事件でも、強制わいせつで逮捕されたものの、捜査途中で罪名が痴漢に切り替わりそうだということを担当検察官から示唆された事件がありました。

なお、強制わいせつ罪または強制わいせつ罪の未遂罪を犯し、よって人を死亡させたり傷害したりした場合には、強制わいせつ致死罪強制わいせつ致傷罪が成立します(刑法第181条1項)。

刑事事件における示談の流れ

示談」という言葉を一度は聞いたことがあるかもしれません。和解の一種で、一般的に紛争解決の手段として使用されます。
刑事事件における示談では、被害の弁償や精神的苦痛に対する損害賠償(慰謝料)、その他の損害賠償として示談金を支払い、解決に向かいます。

刑事事件の示談交渉では、警察や検察が関係するので、まずは、弁護士が警察や検察に対し、示談交渉のため被害者の連絡先を教えてほしい旨伝え、被害者への取次ぎを依頼します。警察や検察が勝手に連絡先を弁護士に教えることはなく、被害者の意向を確認し、被害者の了承が得られた場合にはじめて弁護士は被害者の連絡先を知ることができます。

この際、被疑者が被害者の連絡先を元々知っている間柄にある場合を除き、被疑者本人には伝えないことを条件にされることが多いです。そのような条件を明示されなくても、実務上、弁護士が被害者の連絡先を被疑者にみだりに伝えることはないでしょう。被疑者が被害者ともともと面識がなく、名前も知らないような事件においては、連絡先はもちろんのこと、名前も被疑者に教えないことが条件になるのが通例です。

なお、被害者との示談にあたって、弁護士をつけなければいけないというルールはありませんので、理論上は、当事者同士で示談することも可能です。しかし、多くの被害者は被疑者に自己の名前や連絡先が知られるのを拒みますので、事実上、示談交渉は弁護士にお願いしなければできないということができるでしょう。

本人や家族が警察等に対して被害者との示談の申し出をしても断られた、というようなケースの中には、被害者が被疑者側に連絡先等を教えたくないからこそ断っていたにすぎず、弁護士がついた後は示談交渉に応じてくれるケースが多くあります。
また、示談にあたっては、民事的にも刑事的にも一回的に解決できる内容になるよう、ポイントを押さえる必要がありますので、その観点からも法律の専門家である弁護士に依頼すべきといえます。

示談に対する被害者の気持ちは、被害感情と同様、時間の経過等により変化し得ます。警察段階では断られたものの、検察段階では弁護士に連絡先を教えてもらえた、ということも往々にしてありますので、示談については、焦っても諦めない気持ちが大切です。
連絡先を教えてもらうことができれば、弁護士は示談交渉に着手します。

強制わいせつ事件での示談の必要性

では、強制わいせつ事件における示談の必要性について説明いたします。前述のとおり強制わいせつ罪は親告罪ではないので、被害者の告訴がなくても起訴される可能性があります。

もっとも、捜査段階において被害者との間で示談が成立し、被害者から当該事件につき宥恕してもらえた場合には、不起訴となることが見込まれます。親告罪でなくなったとはいえ、被害者の処罰感情はなお検察官の起訴・不起訴の判断において重要な判断要素となるからです。
強制わいせつ事件を含め、性犯罪事件では、示談の成立は、どのタイミングでも被疑者側に有利な事情として扱われますので、否認事件でない限り、可能な限りすべきです。ただ、タイミングによってその効果は大きく異なることに注意が必要です。

強制わいせつ事件での示談のタイミング

一番理想的なのは、捜査段階での示談です。捜査段階できちんとポイントを押さえた内容の示談ができれば、不起訴になる確率が高くなります。一方、捜査段階で示談できず、起訴されてしまうと、公判段階で示談ができても前科が残るのはもちろんのこと、実刑になる可能性も残ります。

この点につき、「示談できず起訴されても、公判で示談できたら執行猶予付き判決が狙え、公判でも示談ができなかった場合には実刑となる」というように考えがちですが、性犯罪事件においては、公判段階で示談できたとしてもなお実刑になる可能性が残ります。特に、強制性交等や強制性交等致傷等の事件では、公判段階において高額で示談したとしても、実刑になる可能性が非常に高く、示談成立の事実は量刑上考慮されるにすぎないことが圧倒的に多いのが現状です。

強制わいせつ事件でも、行為態様や被害者の数、同時に起訴された罪名、前科等によっては、公判段階で示談が成立していても実刑判決が出ているケースが見られますので、服役を回避するためには、捜査段階における被害者との示談、すなわち、早期の弁護士依頼と示談交渉の着手が非常に重要です。

強制わいせつで逮捕されたときの示談交渉

強制わいせつ事件は重大な犯罪の一つですので、逮捕されることが多いです。そして、逮捕された場合、10日間の勾留やその後の更なる10日間の勾留延長も、早期に示談が成立しない限りは必至です。また、勾留されている以上、ご自身での示談はほぼ不可能です。
勾留決定されると、必要な要件を満たせば、裁判所に国選弁護人を選任してもらうことができます。しかし、国選弁護人は、必ずしも刑事事件に精通している弁護士が選任されるとは限りません。普段民事事件を主に扱っている弁護士が選任された場合には、被害者の感情に十分配慮した対応ができず、示談交渉が難航する場合もあります。

強制わいせつ事件を含む性犯罪の事件においては、捜査段階における被害者との示談が非常に重要です。強制わいせつ事件で逮捕・勾留されてしまった場合には、勾留満期日の数日前には検察官が起訴・不起訴の方針を決めますので、それまでに被害者との示談を成立させることが必要です。
このように、強制わいせつで逮捕された場合には、時間制限がありますので、なおさら、そのような時間制限をきちんと意識でき、かつ、示談交渉に手慣れている刑事弁護士に早期に依頼すべきといえるでしょう。

ひとたび逮捕されると勾留や勾留延長がほぼ避けられない強制わいせつ事件であっても、被害者との間で早期に示談が成立すれば、勾留延長前や勾留満期日前に釈放されることもあります。早期の示談の成立によって、検察官が不起訴の方針を早めに立てることができるからです。
したがって、捜査段階での早期の示談成立は、実刑回避や起訴回避というメリットに加え、身柄の早期釈放のメリットもあるといえるでしょう。
なお、通常、示談は当該犯罪事実を認めている場合に行うものですが、否認している場合であっても、起訴されるリスク等を考えると、念のため検討すべきものとなります。日本の高い有罪率からすると、否認事件の場合には、やはりリスクヘッジの観点も重要なのです。否認事件の場合には、示談のメリット・デメリットを弁護人が丁寧に検討し、本人が希望する結果との関係でどうするのが最善なのかを一緒に考えていく必要があるでしょう。

強制わいせつ事件の示談金相場

強制わいせつ事件には様々な態様のものがありますので、示談金の額も様々です。また、被疑者の資力や被害者の感情等にも大きく左右されますので、相場というものは出しにくいですし、仮にあったとしてもそこまで当てになりません。

ただ、強制わいせつ事件の示談においては、示談金が100万円を超えることは珍しくなく、少なくとも50万円程度は示談金として用意できないと示談成立は難しいというのが一応の目安になるかもしれません。
13歳未満の被害者に対する強制わいせつの場合には、被害感情が峻烈であることが予想される被害者の保護者が交渉相手となりますので、示談金額は高額になる傾向にあります。

なお、被害者側から示談のための金額を提示されることもあるかもしれません。その金額に納得できるのであれば問題ありませんが、もし納得できない場合やその額を支払う資力がない場合、あるいは、資力はあったとしても、その額が法外ではないかと疑問に思う場合には、弁護士にご相談ください。当該具体的事案に即して、被害者が示談によらず民事訴訟で慰謝料を請求してきた場合に認められ得る額や、被害者の提示額を争うことによるデメリット、争わずに応じるメリット、考え得る被害者との今後の交渉方法など丁寧にご説明いたします。

強制わいせつの示談で弁護士が必要な理由

強制わいせつ被害を受けたと言われ、その心当たりのある人が、警察に被害届を出される前に示談にして解決しようと思ったとき、弁護士を依頼するのではなく、①本人が交渉する、②親が交渉する、③知人や友人が代理人となって交渉するという選択が考えられます。

この際に注意すべきは、いずれのケースも法律の専門家ではないことから、せっかく示談合意ができ、慰謝料も払ったのに、それを情状証拠として後に用いるだけの書面として体裁ができていなかったり(示談対象の行為の特定、日付の記載、支払ったお金の趣旨が曖昧など)、書面としての体裁は整っているものの、肝心の宥恕文言(赦すという文言)が欠落していたり、清算条項(当事者には他に債権債務な存在しないという条項)がなかったりするなど、問題が生じることがあります。

また、②の親が交渉するケースでは我が子可愛さに示談締結を知らず知らずのうちに強要して、のちに無効を主張されたり、最悪の場合、強要罪や脅迫罪で訴えられることもあります。
このことは①や③のケースでも同じことですが、③のケースで、知人友人が示談をまとめ上げた際、報酬を要求され支払う羽目になることもあります。しかし、これは非弁活動として弁護士法に違反することになってしまうのです。
以上のようなリスクを考えると、やはり専門家であり、法律家である弁護士に依頼して示談交渉を進めるのが一番です。

強制わいせつで示談し不起訴となった事例

当事務所では、実際に強制わいせつで被害者と示談し、不起訴となった事例や感謝の声が数多くあります。以下、その一部をご紹介します。

まとめ

いかがでしたでしょうか。早期の弁護士依頼及び示談着手の重要性をお分かりいただけたかと思います。
強制わいせつ事件でご家族が逮捕された場合にはもちろんのこと、ご自身やご家族が警察や検察に呼出しを受けた場合にも早急に弁護士にご相談ください。
起訴されてからでも弁護士を雇うメリットはありますが、一番よい結果が期待できるのは捜査段階に限られます。

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当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。

  • 逮捕されるのだろうか
  • いつ逮捕されるのだろうか
  • 何日間拘束されるのだろうか
  • 会社を解雇されるのだろうか
  • 国家資格は剥奪されるのだろうか
  • 実名報道されるのだろうか
  • 家族には知られるのだろうか
  • 何年くらいの刑になるのだろうか
  • 不起訴にはならないのだろうか
  • 前科はついてしまうのだろうか

上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

更新日: 公開日:
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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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