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整体施術中の準強制わいせつで逮捕

わいせつ事件の中でも、よく報道で見聞きするのが整体師やマッサージ師による準強制わいせつ事件。否認事件も多い類型にあたります。

本記事では、整体やマッサージの施術中のわいせつ行為につき成立する犯罪と刑罰や、立件された場合の対処方法等について、弁護士・中村勉が解説いたします。

施術中のわいせつ行為に成立する犯罪と刑罰

整体やマッサージの施術中のわいせつ行為は、準強制わいせつ罪で立件されることが多いです。事案によっては、強制わいせつ罪、強制性交等、準強制性交等で立件されることもあります。
以下、順に見ていきましょう。

準強制わいせつ罪、準強制性交等罪

準強制わいせつ罪の刑罰は、6月以上10年以下の懲役です(刑法第178条)。「準」というと、強制わいせつ罪より軽いものをイメージされるかもしれませんが、刑罰は強制わいせつ罪と同じで、刑法上、犯罪としての重さに変わりはありません。行為態様に違いがあります。

刑法第178条(準強制わいせつ及び準強制性交等)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

準強制わいせつ罪が成立するのは、(A)人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした場合、または(B)人の心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせてわいせつな行為をした場合です。

心神喪失」とは、精神機能の障害によって正常な判断能力を失っている状態をいいます。例えば、酩酊、高度の精神病等により被害者が行為の意味を理解できない状態にある場合が当てはまります。

抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由で心理的又は物理的に抵抗が不可能となっている状態、若しくは著しく困難な状態のことをいいます。例えば、睡眠や錯誤等により自由な意思に従って行動する能力を失っている状態にある場合が当てはまります。

整体やマッサージの施術中のわいせつ行為は、当該行為が施術の一環であるものとの錯誤を被害者に生じさせている状態、すなわち被害者において自由意思に従って行動する能力を欠いている状態を利用するものが多く、抗拒不能に乗じてわいせつ行為をしたものとして、準強制わいせつ罪に問われるケースが多いのです。

わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいい(最高裁昭和26年5月10日判決)、例えば、手などで胸や臀部、陰部に触れる行為や接吻する行為がわいせつ行為に当たります。

被害者の心神喪失または抗拒不能に乗じ、そのような行為にとどまらず、性交、肛門性交または口腔性交をした場合には、準強制性交等罪が成立します(刑法第178条2項)。この場合、刑罰は強制性交等罪と同じ、5年以上の有期懲役になります(刑法第178条2項、刑法177条)。もっとも、整体やマッサージの施術中のわいせつ行為の事例において、施術を装ってそこまでの行為をすることはあまり多くありません。そこまでの行為は、もはや施術を装う等せずに暴行や脅迫を用いて行っていることが多く、その場合には強制性交等罪として立件されます。

強制わいせつ罪

強制わいせつ罪の刑罰は、6月以上10年以下の懲役です(刑法第176条)。わいせつ行為をするにあたって、暴行または脅迫を用いた場合に成立します。

刑法第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

整体やマッサージの施術中とはいえ、施術を装うことなく、例えば、衝動的に乱暴的に被害者に対してわいせつ行為をする等した場合には強制わいせつ罪として立件される可能性が高いです。
また、13歳未満に対するわいせつ行為は、暴行や脅迫の有無を問わず、強制わいせつ罪に当たります(刑法第176条後段)。

強制性交等罪

強制性交等罪の刑罰は、5年以上の有期懲役です(刑法第177条)。上限が20年となりますので(刑法第12条1項)、とても重い罪の部類に入ります。

刑法第177条(強制性交等)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

暴行または脅迫を用いて、または13歳未満に対し、わいせつな行為にとどまらず、性交、肛門性交または口腔性交をした場合に強制性交等罪が成立します。
整体やマッサージの施術中に、施術者が衝動的に乱暴的に性交等を行った場合には準強制性交等ではなく、強制性交等罪に問われます。ただ、このようなケースの中には、被害者と加害者の主張が異なり、加害者において合意があった旨主張する事案も見られます。

ところで、被害者が女性、加害者が男性の施術中のわいせつ事案において、時折「異性に施術をさせた女性も悪いのでは?」というような非難をする声も見られますが、女性はあくまでも施術のプロに施術をお願いしているのであり、施術者が異性だからといって、わいせつ行為をされることなど想定していないはずですので、このような非難は不適切です。犯罪の成否にも影響しません。もしそのようなイレギュラーのケースまで想定して異性による施術等を受けるかどうかを決めなければならないとすれば、この社会はとても窮屈なものになりますし、施術者側も経営上の打撃を受けることになるでしょう。

なお、上記犯罪はいずれも以前は親告罪(被害者等の告訴権者による告訴がなければ起訴できない犯罪)だったのが、現在では非親告罪となっています。
もっとも、被害者による被害申告がなければ、捜査機関に事件が発覚するのは困難ですので、事実上は被害者による告訴とまでは言わなくても被害申告があって初めて立件されることになるでしょう。また、非親告罪になったとはいえ、起訴・不起訴の判断にあたっては、被害者の処罰感情等は、なお大きな割合で考慮されています。

わいせつ事件を起こしてしまったら

整体やマッサージの施術中のわいせつ行為に成立する犯罪は上述したとおりです。上記犯罪のいずれが成立するにしても、刑罰は懲役刑のみで、罰金刑がありません。ですので、書面のみで刑罰(罰金)が科せられる略式命令で終結する道がなく、起訴された場合には公開の法廷で裁判が行われることになります。
したがって、身柄拘束の有無にかかわらず、施術中のわいせつ行為について立件された場合には、起訴される前に示談等の手立てを講じ、不起訴を目指すことが重要になります。

在宅事件の場合

当初は警察からお話を聞きたいと言われて呼び出され、任意の取調べに誠実に対応していたとしても、その後逮捕されてしまうことはあります。
逮捕されてしまうと、報道される可能性も一段と高くなってしまいますので、まずは警察に呼び出された時点で早急に弁護士に相談しましょう。

刑事事件に強い弁護士に依頼すると、取調べでの受け答えの仕方について詳細にアドバイスをもらえる上、逮捕を回避するための書類も用意してもらえます。場合によっては、取調べ自体には同席できないものの、取調べを受ける当日に弁護士に警察署へ同行してもらえることもあります。逮捕の必要性の判断にあたり、弁護士がついていることが考慮されることもそれなりにあります。また、逮捕されていない間は任意の取調べである以上、取調べの途中に取調べ室を出て弁護士と直接又は電話等で相談することも可能です。

認め事件の場合には、逮捕を避けつつ、被害者との示談も進めていくことになります。被害者との示談が成立すれば、逮捕の可能性がほとんどなくなる上、初犯であれば不起訴になる可能性が高くあります。被害者の心情を考えると、示談は第三者である弁護士に依頼するのがベストでしょう。

身柄事件の場合

整体やマッサージの施術中のわいせつ事案については、施術者においては犯罪を行った自覚がなく、あるいは合意があったものと信じ込んでいて、施術者本人の知らない間に被害者が警察に相談し、ある日突然逮捕される例も多くあります。

施術中のわいせつ事案は、逮捕されると報道されてしまう可能性も比較的高いのが現実です。報道自体を避けるのは至難の業ですが、今後の仕事や生活への影響を最小限にするためにも、お早めに弁護士に相談すべきです。
特に、ご家族の方は詳しい事情が分からず、動揺されるでしょう。そのような時にはとりあえず、弁護士に相談してとりあえずご本人の接見に行ってもらうようにしてください。

早期の接見はご本人にとっても重要です。今後の刑事手続の流れや被疑者としての権利等について丁寧に説明を受けることにより、不安を軽減することができます。更に、認め事件の場合も否認事件の場合も、取調べにおける対応が処分との関係でとても重要になってきますので、可能であれば逮捕の当日中、できる限り早く弁護士からアドバイスを受ける必要があります。

認め事件の場合には被害者との示談についても考えなければなりません。施術中のわいせつ事案ですと、逮捕後に最大20日間の勾留が続く事案がほとんどです。検察官はこの勾留の満期日の数日前には起訴するか不起訴にするのかの方針を立てますが、証拠が十分にある事案ですと、この時までに示談が成立していない場合には起訴されてしまいます。したがって、示談との関係でもスピードをもって動いてもらえる、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼することが鍵となってくるでしょう。

損害賠償請求をされる可能性も

整体やマッサージの施術中のわいせつ事案は、刑事事件とは別途、民事的に損害賠償請求をされることも考えられます。
もっとも、刑事事件の手続の中で、示談を被害者との間で成立させることで、これを避けることも可能です。ただ、この辺りは、いかに被害者に示談に応じるメリットを感じてもらえるかにもかかってきますので、やはり被害者との示談交渉を沢山経験している、刑事事件に強い弁護士に依頼するのがよいでしょう。

免許との関係

柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師などの免許をもっている方の場合、起訴されて有罪判決を受けると、免許を取り消され、または、業務の停止を命じられる可能性があります(柔道整復師法第8条1項、第4条3号、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第9条第1項、第3条3号)。したがって、免許との関係でも、刑事事件において不起訴を獲得することが重要となってきます。

冒頭でも述べましたが、整体やマッサージの施術中のわいせつ事案は、否認事件も多くあります。
もっとも、通常、これらの施術は個室やカーテン等で仕切られた空間で、施術者と客の2人だけしかいないところで行われ目撃者がおらず、かつ、当然ではありますが録画等もされていませんので、事実を客観的に確かめる方法はほとんどありません。そのような中、捜査機関は被害者が何もされていないのに被害を訴える理由はない等考え、被害者の供述をより信用しがちです。そのために、冤罪であるのに逮捕されてしまったり、起訴されてしまったりする事例が発生してしまうのです。
このような事態を避けるためにも、やはり弁護士という味方、戦力は不可欠です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。施術中のわいせつ事件の場合、起訴を回避するためには捜査初動の時から適切かつ迅速な対処が必要です。
また、逮捕や起訴によって多方面への影響も考えられますので、お早めに刑事事件の経験が豊富な弁護士にご相談ください。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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