2014年2月 のアーカイブ

法科大学院7校「改善進まず」 中教審の特別委調査

2014年2月27日 Filed under:その他,司法制度

今日は「法科大学院」に関する記事です。

中教審の法科大学院特別委員会は24日、入学者数の減少など深刻な課題を抱える法科大学院を対象にした2013年度調査で、12校に「重点的な改善が必要」と指摘した。このうち既に学生の募集停止を決めた5校を除く7校はいずれも「前年度から改善が進んでいない」とした。

7校の内訳は国立が香川大と鹿児島大、私立が白鴎大(栃木)、日本大(東京)、愛知学院大、京都産業大、久留米大(福岡)。特別委は、入学者数が低迷していることや教育体制が十分に整っていない点を課題として挙げた。

「継続的な改善」を求めたのは静岡大など20校。学生募集の停止を決定または検討中の4校を除く16校のうち、司法試験の合格状況などで「大幅な改善がある」と評価されたのは琉球大(沖縄)と青山学院大(東京)の2校のみ。残りの14校は一層の改善が必要とした(2014/2/24 20:32 日本経済新聞/共同)。

2004年4月より開始した現行の法科大学院制度は,開始当初は3万9350名の志願者を集めました。しかし,2014年度の志願者は5377名にとどまっており,この10年間で実に7分の1にまで激減しています。また,学生はより合格率の高い法科大学院に進学しようとするため,志願者が特定の法科大学院に集中しています。
その結果,法科大学院は二極化が進み,記事にあるように合格率の低い法科大学院は,現在非常に厳しい立場に置かれています。

先日,新たにこのような記事が出ました。

15年度から学生募集停止 東海大法科大学院

東海大が東京都渋谷区にある法科大学院の学生募集を2015年度から中止することが25日、分かった。入学者数の減少に歯止めがかからないためで、学内手続きを経て文部科学省に届け出る。

東海大法科大学院は04年に開設された。昨年の司法試験合格者はゼロで、文科省は14年度の補助金削減を決めている(2014/2/25 10:21日本経済新聞/共同)。

今回,東海大学が募集停止を決定したように,現在までに既に11校の法科大学院が募集停止等を行っています。そして,本記事の内容からすると,今後もしばらくは法科大学院の統廃合は続いていくのかも知れません。

およそ10年前にスタートした法科大学院制度ですが,いま大きな転換期を迎えています。以前,当ブログで,司法試験制度が2015年から変更される可能性についても言及しました。これからの法科大学院制度,ひいては法曹養成制度をいかに考えるべきでしょうか。今後の法曹制度の在り方について,いまの現状を真摯に受け止め,慎重かつ十分な議論がなされることを望みます。

LINEで自殺教唆容疑の慶大生釈放

2014年2月25日 Filed under:司法制度

今日は「自殺関与罪」に関する記事です。

交際中の女性に無料通信アプリLINE(ライン)でメッセージを送り自殺をそそのかしたとして、自殺教唆容疑で逮捕された慶応大3年の男子学生(21)が22日、釈放されたことが警視庁三田署への取材で分かった。
三田署によると、検察側の勾留請求が22日、東京地裁で却下された。男子学生は「メッセージを送ったことは間違いない」と供述しており、同署は任意で捜査を継続する。
三田署は19日、昨年11月に交際していた女性にラインで「お願いだから死んでくれ」などとメッセージを送信し、自殺を決意させたとして自殺教唆容疑で男子学生を逮捕、21日に送検していた(2014年2月23日0時4分日刊スポーツ/共同)。

殺人罪における「人を殺した者」(刑法199条)には,行為者自身は含まれないため,現行法上自殺は不可罰です。しかし,その自殺について教唆や幇助するなどして関与した者は,自殺関与罪(刑法202条)として処罰されます。
自殺教唆とは,他人をそそのかして自殺実行の決意を起こさせることをいいます。つまり,本件において,男子学生が送信したメッセージによって被害女性が自殺を決意したといえる場合には,本罪が成立することになります。

なお,記事によると,被疑者の男性は検察による勾留請求が却下されたため,捜査機関による身柄拘束が解かれたようです。このように釈放された場合,一般の方からすると,被疑者は無実だったのではないかと思う人がいらっしゃるかもしれません。
しかし,犯罪者に対する処罰と捜査方法とは別の問題です。処罰をどうするかは, 捜査が終わった後で,検察官,そして裁判官が決めます。一方で,それまでの捜査のやり方をどうするか,つまり,逮捕や勾留をしたままで行うか, 釈放して在宅で行うかはまた別の考慮が必要となるのです。罪証湮滅のおそれがあったり,逃亡のおそれがあれば勾留却下にはならずに身柄拘束したままで捜査が続けられていたでしょう。勾留却下となったということは,被疑者の男性が事実を認めていて,口裏合わせなどといった罪証湮滅のおそれが認められなかったことが考えられます。また,逃亡のおそれも無いと判断されたのでしょう。実際,被害者は既に亡くなっているので被害者への働きかけのおそれはありませんし,Lineという客観的な証拠も押さえられていますので,身柄拘束の必要はないと判断されたと思います。今後の事件の進展に注目したいと思います。

「2000万件保有」名簿屋逮捕…1万人分販売

2014年2月24日 Filed under:司法制度

今日は,「幇助」に関する記事です。

注文していない商品を届けて金をだまし取る「送りつけ商法」の犯行グループに約1万人分の名簿を売ったとして、京都府警は17日、広告代理店社長・I容疑者(34)(東京都豊島区)を詐欺ほう助などの疑いで逮捕した。
同社から押収したパソコンには個人や法人延べ3億件以上の情報が入っており、名簿の押収量では過去最大規模という。I容疑者は「犯罪に使われるとは知らなかった」と容疑を否認している。
発表では、I容疑者は2012年12月上旬、会社社長・H被告(35)(公判中)らに名簿を4万2000円で販売。H被告らが岡山県内の女性(84)に健康補助食品を送りつけ、2万3500円を詐取するのを手助けした疑い。
I容疑者は「名簿は実数で1000万~2000万件分はあるだろうが、多すぎて正確にはわからない」と供述しているという。「通販利用者」や「上場企業エリート」「警察官」「パチンコ愛好家」などに分類し、それぞれ名前や住所、生年月日、電話番号などを記録。1件4~25円で販売していた(2014年2月18日07時46分 読売新聞)。

「正犯を幇助した者」(刑法62条)には,幇助犯が成立します。「幇助」とは、「手伝うこと」を意味し、犯罪の実行行為以外の行為によって、正犯に加担することをいいます。
幇助犯は従犯であり,「従犯の刑は,正犯の刑を減軽する」(刑法63条)と規定されています。つまり,今回の場合,詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」(刑法246条)なので,この法定刑を上限として処罰される可能性があるわけです。

本件において,被疑者は「犯罪に使われるとは知らなかった」と容疑を否認しているようです。しかし,「幇助者が正犯の日時・場所・目的・態様等の細部まで具体的に表象していなくとも,特定の犯罪についてその内容をある程度概括的に表象していれば,幇助犯の成立のため十分である」(東京高判昭和51・9・28)とする裁判例があるように,たとえ幇助者に犯罪について具体的・確定的な認識がなくとも,何か違法な利用の仕方をするのではないかといった程度の認識でも成立します。もっとも,正犯者が合法的に利用することを具体的に幇助者に説明していた場合であって,そう信じても不思議ではないような事情が認められる場合には故意が否定される可能性も十分あります。

いずれにしても,現代社会において「情報」は価値や利便性が高く,それゆえ犯罪等に悪用されるケースが少なくありません。情報を取り扱う者は,常にそこには多様な法的リスクが存在していることを忘れてはいけません。

パチンコで負けむしゃくしゃ、店に落書きした男

2014年2月20日 Filed under:司法制度

今日は,「建造物等損壊罪」に関する記事です。

警視庁町田署は16日、東京都町田市の会社員の男(35)を器物損壊容疑で現行犯逮捕した。

逃亡や罪証隠滅の可能性がないと判断し、17日夕に釈放、任意で捜査を続け、容疑が固まり次第、建造物損壊容疑に切り替えて書類送検する方針。

同署幹部によると、男は16日午前2時40分頃、同市原町田で、雑居ビル1階の飲食店のシャッターや通路のドアに、スプレー式塗料で意味不明の文字などを落書きした疑い。

飲食店の店員が落書きに気づき、逃げる男を約300メートル追いかけて取り押さえ、同署員に引き渡した。

調べに対し男は容疑を認め、「パチンコで負けたのでむしゃくしゃし、友人と酒を飲んだ後にやった」と話している。スプレー式塗料は、犯行直前に、早朝まで営業している近くの量販店で購入したとしている。

同署は、男の友人で、ともに現場にいた同市内の建設業の男(35)も、落書きを手助けしたとして、建造物損壊容疑で逮捕する方針。繁華街の原町田地区では、商店などへの落書きが絶えず、問題化しており、同署は重点的に捜査していた(2014年2月18日11時55分 読売新聞)。

「他人の建造物又は艦船を損壊した者」(刑法260条)は,建造物等損壊罪で処罰されます。「損壊」とは,建造物・艦船の物理的損壊に限らず,その効用を害する一切の行為が含まれます。建造物等の使用を全く不能にするまでの必要はありません(大判明治43・4・19)。最高裁も,公園の公衆便所の外壁にラッカースプレーで「反戦」と大書した行為につき,「本件建物の外観ないし美観を著しく汚損し,原状回復に相当の困難を生じさせたものというべきであるから」本条の「損壊」に当たるとしています(最決平成18・1・17)。
したがって,本件のように,シャッターやドアなどにスプレーで落書きする行為も,態様によっては,建造物等損壊罪で処罰されることになります。
先月も以下のような同様の事件がありました。

高1、交番にスプレー噴射で1mの落書き…逮捕
札幌市西区の琴似本通交番の外壁がスプレーで落書きされる事件があり、北海道警札幌西署は25日、同市厚別区の高校1年男子生徒(16)を建造物損壊容疑で逮捕したと発表した。

発表では、生徒は24日午前10時頃、同交番の外壁に黒と青色のスプレーを縦約1メートルにわたって噴射した疑い。署員が25日未明、交番付近にいた生徒に職務質問したところ、生徒はリュックの中に黒や青色などのスプレー缶計3本を所持しており、「いらいらして、やった」と話しているという(2014年1月26日19時40分 読売新聞)。

現在,商店街などにおいて,スプレーによる落書きが問題化している地域が少なくありません。ひょっとすると,単なる落書きと,安易な気持ちで行う者が多いのかもしれません。
しかし,本罪は法定刑が「五年以下の懲役」であり,決して軽微な犯罪ではありません。本件のように,単なる落書きでは片づけられない場合があることを,行為者は肝に銘じなければなりません。

我が恩師,渥美東洋先生

2014年2月16日 Filed under:司法制度

渥美東洋先生がご逝去された。
唯一,僕の恩師といえる先生である。

僕は中央大学法学部,渥美東洋先生の刑事訴訟法ゼミ21期生である。
とにかく中央大学で一番入るのが難しいゼミで,かつ,司法試験合格率がとても高いゼミだった。
渥美東洋先生の刑事訴訟法ゼミには入ゼミ試験があり,5倍ほどのの競争率で,合格発表は成績順に行うということで有名だった。
2年生の夏に,当時,出版されたばかりであった佐藤幸治京大教授の「憲法」で,ゼミ試験科目の憲法を猛勉強した。
秋の入ゼミ試験では,「事件性の要件」という憲法訴訟の難しい問題が出題されたが,何とか書きまくった。
法学部事務室の掲示板で5番の成績で合格しているのを確認し,こうして,渥美先生の門下生としての生活が始まった。

ゼミのクラスは約20名くらい。
法学部棟6号館のゼミ用の教室に渥美先生を囲むようにしてゼミ生が席についた。初顔合わせである。
その中にNICDの同志,小島千早弁護士もいた。
3年生のクラスでは「逮捕勾留」,「被疑者取調べ」といった刑事訴訟法の各テーマごとに発表担当者が割り当てられ,僕は,「無罪推定の原則」を担当することになった。
夏には春日山荘という小諸にある大学施設で集中ゼミを行った。
夜の宴会を伴う楽しい思い出である。

週1回のゼミと大教室での講義で学び,その中で教わったことは,刑事訴訟法に留まらず,法制史,宗教,米国観,文化論,人類学など数知れず,紙面に尽くせない。
もっとも強く影響を受けたのは,社会をジョン・ロックのように社会契約論で考え,その中で個人の自由や権利,プライバシーを最大化し,一方で犯罪から市民生活を守るための法執行のあり方はどうあるべきかという実践学であった。
その意味で,渥美先生の教えは,刑事弁護士志望者にも,検事志望者にも魅力的なものであった。
渥美先生はイェール大学ロースクールの留学経験があったので,アメリカのロースクールの話を度々され,憧れを抱き,自分もいつか留学したいと思った。
結局,渥美ゼミの同期では約半分が司法試験に合格した。

それにしても,渥美先生の顔を見るたびに「自分には勉強が足りない」と自覚させられた。
到底,追い越すことの出来ない巨人でもあった。
しかし,「経学無憂」(けいがくむゆう,学問をしていれば憂いなど無い)という先生の言葉には,勇気づけられ,司法試験浪人時代だけではなく,今でも僕の座右の銘となっている。

大学卒業後も渥美先生との交わりは深い。
修習生のときには湯島の司法研修所で渥美先生の特別講演を聞いた。
検事になって結婚したが,そのときの主賓が渥美先生。祝辞らしからぬ,講義のような長い祝辞であった。
弁護士になってから,上告事件で法律意見書を書いて頂いた。
また,コロンビア大学ロースクール留学の際には推薦状も書いて頂いた。
そして,去年の夏。
NICDが開催した刑事法ローヤー・サマープログラムにおいて,渥美東洋先生に特別講演をして頂き,100人を超えるロースクール生等を魅了した。
先生は,「皆さんは近く法曹となられますが,1人1人が最高裁判事のcandidateだという自覚で研鑽して頂きたい。」と仰った。
来年も再来年も,NICDの刑事法ローヤー講座に特別講師として出てください,という僕のお願いに,先生は大きく頷いて「いいですよ。」と仰った。
しかし,渥美先生はその約束を破ってしまった。
まだまだ教わることがあった。
NICDは渥美先生の思想的支柱をもっているから,もう少しNICDを見守って欲しかった。

最後に,渥美東洋ゼミ,最終日における渥美先生の我々学生へ贈った言葉を紹介する。

「皆さんはこれから法律家のみならず様々な立場でコミュニティ,共同社会に入っていきますね。
その社会の中で個人の力を精一杯発揮して社会に貢献していくということは大切であるけど難しいことでもあります。
社会の役に立っているのだろうか,一生,社会貢献できる日など来ないのではないだろうか,色々と思い悩むことがあるかもしれません。
しかし,どんな人にも,生涯には必ず1度は,社会が自分を必要とする瞬間があり,舞台があります。
その瞬間が訪れたときに,自分を必要としている社会に対し,その期待にきちんと応えることが大切なのです。
その瞬間に社会の期待に応えられない,などということは絶対にあってはならないのです。
その瞬間に最大の力を発揮し,社会の期待に応えるために,今があります。訓練の場としての今があるのです。
無名で平凡な日々にあっても,しっかり勉強し,実力をつけ,苦しいことにも耐え得る力を身につけ,その瞬間に備えるのです。
もっとも,その「瞬間」は永遠に訪れず,自分の出番なく人生を終える人がいるかもしれません。
しかし,結果としてその「瞬間」が終生訪れなくても,その「瞬間」に備えて日々努力すること,その「瞬間」が来たら社会の期待に必ず応えるよう,日々鍛錬し,努力を積み重ねること。
そうした生き方こそが尊いのです。」

先生,ご冥福をお祈りいたします。

H26.2.16 中村

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