2014年11月 のアーカイブ

NICDのアルバイトが何故すごいか

2014年11月30日 Filed under:その他

NICDでは、十名を超えるアルバイトスタッフがシフト制の下、働いてます。
仕事の内容は、相談電話受付、書類等の裁判所や検察庁へのデリバリー、接客、簡単なリサーチなどです。
この中で、相談電話の受付とその報告が最も重要な仕事で、しかも、将来、法律家となったときに貴重な財産となるような仕事なのです。

法律家の仕事は、
① 法律家の助力を必要としている人の話を聞く
② その話を聞いて相談者が抱えている悩みがどのような紛争なのか、その性質を分析する
③ その紛争は刑事事件なのか(処罰して欲しい、あるいは、逮捕されそう)、民事事件なのか(お金を請求したい、請求されそう)、あるいは、その両方なのかを判断します。
④ 相談者自身、自分の抱えている悩みがどのような性質の紛争なのか分からないことが多いです。刑事なのか民事なのか、行政の問題なのか、それとも単なる人生相談や恋愛相談なのか、職場の不平不満なのか分からないことが多いです。ですから相談者は何とか自分の悩みや要望を伝えようとあらゆる事情を説明しようとします。
⑤ 法律家はその相談者の話を聞いて、「法律家の頭」で、法律要件や法律効果などを考えながら整理していきます。重要でない事情を長々と話しているところを、法律家は、適宜、口を挟んで整理して問題のポイントを確認したり、いったいどのような法律効果を期待しているのか相談者自身の真意に迫ったりして整理していくのです。このような整理なくして相談者が悩みを話すままにしていると、相談は何時間にも及び、結局、どのような解決手段を示せばいいいのか法律家自身分からなくなってしまいます。この「話の整理」が法律家にとってとても重要なのです。
⑥ 弁護士が相談者から話を聞く場合がそうであり、また、検事が警察から相談を受けるときもそうであり、被疑者の取調べをするときもそうなのです。この整理力がなければなりません。裁判官も代理人双方の主張を整理しなければなりません。雑多で未整理である紛争原因に関する複雑な心情や事実関係や背景事情を整理することが、法律家にとって何よりも重要なのです。この整理が上手にできたとき、あとは、適切な法律要件をあてはめ、問題となりうるいつくかの解釈を踏まえ、推定されるいくつかの結論とその結論を導くための法的手段を提示してあげるのです。
⑦ さらに、そのような相談内容をもとに、法律書面を作成して各種の訴訟行為に移っていきますが、そのよう法律書面も争点が的確に把握されたものであって、法律要件事実も過不足なく含まれ、一読して理解できるものでなければなりません。そのためには、「話の整理」がきちんとできていないといけないのです。「話の整理」ができていないまま、法律書面を作成すれば、それは同じ法律家にとっては理解不能で、言ってみれば「出来の悪い法律家」の烙印を押されてしまいます。そのような法律家はこの世には数多くいます。
⑧ 検事もそうです。検事にとって重要な仕事の一つは、取調べです。取調べはまさに「話の整理」をしながら犯罪構成要件該当事実の有無を分析していく作業です。取調べが上手かどうかは「話の整理」ができているかどうかにかかります。そして、取調べの成果を盛り込んだ供述調書が作成されますが、その調書を読めば、「話の整理」がきちんと出来ているかどうかが分かるものです。

このように、「話の整理」が出来れば、法律家の仕事としては9割が完了したと言っていいのです。その能力こそ、法律家の能力なのです。
NICDでのアルバイトの仕事は、もちろん、アルバイトは法律家ではありませんから、法的な助言は絶対にしません。
しかし、上記のような「話の整理」を、極めて短時間のうちに(15分か20分程度)、「法律家の頭」をもって行う、そんな作業なのです。
しかも、NICDでは、そのような相談電話を受けたアルバイトは、弁護士に電話をつなぐ際に、相談内容を手短かに報告しなければなりません。
働き始めの多くのアルバイトは、「話の整理」もできず、その口頭報告もうまくできないので、弁護士、特に、中村に、「何のことかさっぱり分からない。いいから電話代わって」と言われたり、「こうこうこの点を相談者に聞き直して。」とやられてしまいますから意気消沈してしまいます。

また、弁護士不在のときには、メールで相談内容を報告しなければなりません。
「話の整理」ができていない報告メールは見ればすぐに分かります。そんな報告メールに対する弁護士、とくに中村から返ってくる返信は、「意味が分からない。」「結局、何の相談?」といったものが少なくありません。さらに、NICDでは、報告は簡潔的確を求められるので、なかなかうまく文章にできません。ついつい長文メールになってしまうのです。長文メールを書く人は、自分の頭で整理がされていない、もしくは、法律要件を分かっていないのです。
弁護士、とくに中村からの返信は、「このメール、量を5分の1にしてもう一回報告して」とやられてしまいます。
実は、この光景は、大事務所におけるアソシエイトのパートナーに対する報告、あるいは、検察庁における主任検事の決裁官への報告と同じもので、言ってみれば、NICDのアルバイトは、アルバイト代をもらいながらにして、そのような訓練を日々徹底して受けているのです。

このような訓練を積んでいくNICDのアルバイトは、見る見るうちに力をつけていきます。そして、とうとう、弁護士、とくに中村から怒られなくなる、そんな幸せな(?)日がやがて訪れるのです。
NICDでは次々と新しいアルバイトが入ってきますが、みなさん、以上のような試練にぶち当たり、落ち込みます。しかし、訓練を受けた「先輩アルバイト」が指導してくれるのです。中村から怒られて落ち込んでいる新任アルバイトを慰めてくれるのも先輩アルバイトです。中村に怒られなくなるようなコツまで教えてくれます。

やがて、アルバイトの中から司法試験合格者が出ます。
2014年の司法試験で言うと、現職アルバイトないし直近までアルバイトだった方のうち4名が合格し,前年までアルバイトだった方も1名合格したので、合計5名の最終合格者を出しました。
彼らは全員、もはや法律家の土台・原型は、NICDでの訓練で出来上がっているのです。

NICDのアルバイトは、アルバイトであって単なるアルバイトにあらず。言ってみれば、法律家養成塾の塾生なのです。

(中村)

企業秘密の漏洩、未遂も刑罰 海外流出防止に重点

2014年11月27日 Filed under:司法制度

今日は,「不正競争防止法の見直し」に関する記事です。

 経済産業省は企業の営業秘密の漏洩を防止するため「不正競争防止法」を見直す。情報の取得に失敗した未遂罪も刑事罰の対象にするほか、海外に情報を流した場合は「15年以下」の懲役とし、現行の「10年以下」より厳しくするなど罰則を強化する。日本企業の情報が外国企業に不正流出する事例が増えていることに対応し、日本企業の競争力確保を法制面から後押しする。(2014年11月24日2時00分 日本経済新聞)

 今回の不正競争防止法の見直しは,先日のベネッセの顧客情報流出事件や,新日鉄住金や東芝の元職員による韓国企業への情報流出が問題化していることに原因の一端があります。また,昨今,日本企業と韓国企業が係争するなど,日本企業の機密情報の流出が問題化しています。政府は6月にまとめた成長戦略で企業の営業秘密や知的財産の保護を徹底する方針を打ち出していましたところ,ようやく今回の改正案となりました。
 改正法案は,来年の通常国会に提出されます。
 では,我々が日常生活において「情報」を持ち出した場合,何罪になるのでしょうか。
 刑法は235条で「他人の財物を窃取した者」を窃盗犯として処罰しますが,財物とは有体物を前提としています。また,無体物では245条で「電気」を財物と見なす旨の規定がありますが,企業や個人の有する情報は,紙に印字された場合の紙そのものや,ベネッセの流出事件のようなUSBメモリー等の記録媒体に保存されて初めて財物となり得るのです。そのため,刑法ではカバーできないところが生じてしまうのです。
 そこで,不正競争防止法が情報に対する窃盗をカバーしていくことになります。
 同法は平成5年に施行されましたが,科学技術が発展することで日常生活が便利になることと同時に,常にアップデートされてきました。近年の情報化された社会では,有体物よりもむしろ情報の持つ価値の方が遙かに大きい場合があります。たとえば,企業の成長戦略に欠かすことのできない営業秘密や技術ノウハウなどです。これらの情報は,一度流出してしまいますと,インターネットの普及により瞬時に世界中を席巻します。もはやヒト・モノ・カネの移動が容易になったことと比べる余地のないスピードです。情報の持つ価値の重要性が強く認識されている現代社会では,情報を取得する手段もまた多様化しているため,情報を保持する者はあらゆる手段で情報漏洩を防がねばなりません。
 今回の不正競争防止法の改正案は,重要な情報の漏洩を防止するための強化策です。
 改正案では罰則を強化し,対象者の拡張を図ります。加えて,未遂罪を罰することによりカバーする範囲を拡張し,犯罪の抑止力を高めるのです。情報の流出を防止し,日本企業の競争力を法律面で確保することが目的となります。
 日本企業は,外国企業と比べて特許申請の数が多く,また,米国のような研究資金が潤沢でない中でも,創意工夫して新たなモノを生み出し,科学技術分野のノーベル賞受賞者を多く輩出しています。情報の重要性,情報の利益創造性を考えますと,国際競争力の基礎となる知恵や技術を含む「情報」を法律面から保護するという点では,まだまだ不十分なのかもしれません。

鳥取県、成分特定せず全国初の全面規制 危険ドラッグ条例が成立

2014年11月26日 Filed under:司法制度

今日は,「危険ドラッグの規制」に関する記事です。

 幻覚や陶酔作用があり、人が摂取する恐れがある危険ドラッグなどを、成分特定なしに「危険薬物」として全面規制し、罰則も設ける改正薬物乱用防止条例が14日、鳥取県議会で可決、成立した。県によると、成分によらず包括的に規制するのは全国初。11月中旬にも施行する。
 審議した委員会は規制対象があいまいだとして厳格運用を求める付帯意見をつけた。県は流入防止が主目的で、実際は使用者が救急搬送されるなど摂取と健康被害の因果関係が確認された薬物が対象になるとしている。
 改正条例は、たばこや酒類などを除き(1)麻薬や覚せい剤と同じように興奮や幻覚、陶酔などの作用があり、健康被害を及ぼす恐れ(2)人が摂取、吸引する恐れ-があれば、成分が特定されなくても危険薬物と定める。
 その上で正当な理由なく所持、使用、製造、販売することを禁止。違反者には警告や中止命令を出し、従わない場合には懲役や罰金を科す。名称や形状、販売方法などから危険薬物に当たる恐れがあるものを「知事指定候補薬物」に指定、購入・販売時に届け出を義務づける制度も導入する。
 危険ドラッグは、物質ごとに薬事法で規制されるが、構造を変えた新種がすぐに出回る。成分を特定せず規制する同法改正案が衆院に提出されるなど、法改正に向けた動きも出ている。(2014年10月14日10時56分 産経WEST)

 以前の記事で,条例による取締りが次々に新成分の薬物が次々に現れるために規制がいたちごっこ状態になっていることを紹介しました。しかし,今回,鳥取県で全国初となる,配合成分を問わない,ある種包括的な規制が行われようとしています。
 なぜこのような規制が問題になるかにつきましては,以前の記事でご紹介したとおり,憲法の規定する罪刑法定主義の大原則があるからです。この憲法の大原則がある以上,危険だから,悪いことだからという理由で,むやみに刑事責任を問うことは出来ないことになるのですが,今回の立法はこの点を「(1)麻薬や覚せい剤と同じように興奮や幻覚、陶酔などの作用があり、健康被害を及ぼす恐れ(2)人が摂取、吸引する恐れ」という限定をかけることで対処しようとしているものと考えられます。
 もっとも,このような処罰が広がりすぎるような条例は,過度の広汎性又は文言不明確故無効と評価されるおそれがあります。当該条例の施行の後,摘発された人による憲法訴訟がなされることが予想されるところです。

教室で盗撮疑い、高校生書類送検 京都で条例初適用

2014年11月14日 Filed under:司法制度

今日は,「京都府での盗撮」に関する記事です。

 高校の教室内で同級生を盗撮したとして、右京署は24日、京都府迷惑行為防止条例違反(盗撮)の疑いで、京都市伏見区の高校3年の男子生徒(17)を書類送検した。学校や職場での盗撮行為の規制を盛り込んだ4月施行の改正条例を初めて適用した。校内での盗撮行為に条例を適用し検挙するのは全国でも珍しいという。
 書類送検容疑は6月24日午後3時15~25分の間、市内の高校の教室で、同じクラスの女子生徒(17)のスカート内をスマートフォンで撮影した疑い。
 右京署によると、男子生徒は休憩時間中に撮影音を消すアプリを使って盗撮していた。「インターネットに投稿されている盗撮画像を僕も撮れると思った」などと供述しているという。
 男子生徒は自分の席の横にバッグを置き、女子生徒がまたぐ瞬間に撮影。目撃した生徒2人がスマホを取り上げ、担任の教諭に伝えた。同日夜に学校側から右京署に申告があったという。(2014年07月24日 14時20分 京都新聞)

 今回適用された京都府迷惑行為防止条例は,今年の3月に改正案が可決され,6月に施行されたばかりでした。改正前の条例は,公衆の前での盗撮行為のみを規制し,学校や職場などは規制の範囲外とされ,法の抜け穴となっていました。盗撮などの犯罪はなにも,公共交通機関や野外に限らず,職場でも行われるのに,なぜわざわざ改正前の条例はこれを規制対象から外していたのでしょうか。その答えは,日本の最高法規たる憲法にあります。憲法35条は住居の不可侵を定め,捜索・差押には令状が必要と定めています。これは捜査機関がプライバシー侵害を伴う強制力を行使するには裁判官に事前に審査させた上で,適当とされた場合のみ許されることをしめしたもので,一般に令状主義と呼ばれています。「住居」は私的な生活空間ですので,プライバシー保護の要請が特に高い領域です。したがって,ある建物が「住居」と同視できるのであれば,プライバシー保護の要請もそれに比例して高くなるのです。ですから,証拠収集の必要があっても勝手に住居に立ち入ってはならず,事前の令状発付を要するとしたのです。
 住居はこのようにプライバシーの要保護性が高い領域です。しかし,だからと言ってその住所内で何をやってもいいという訳ではありません。ただ,プライバシー保護の要請の高い領域に対しては,規制対象に含めるか否かについて特別の配慮が必要となります。不特定多数が出入りするデパートや公共交通機関は,「住居」にあたらないといえますが,学校・職場などの特定の人しか出入りをしない場所には,特定の人々のその空間におけるプライバシー保護の要請が高く,「住居」と区別することが困難です。そのため,これを規制対象とすると憲法上問題が生じる可能性がありました。こういった事情から,改正前の条例において,規制対象に学校などを含めずにいたのです。
 しかし,現実に学校や職場などで盗撮被害が発生しているのにこれを処罰できないのでは制度として欠陥品であると言えます。そこで,改正前は,警察・検察が協議し,学校なども多くの人が出入りするという点で「公衆の目に触れるような場所」に含まれるというように条文の解釈により適用範囲を拡大したり,別の公の場における盗撮行為にしぼって起訴するなどして,この問題点に対処していました。このような実情や府民のアンケート調査などを受け,府議会は条例の改正に踏み切ったのでした。改正時には厳罰化も図られ,より規制が厳しくなりました。
 今回の記事はこの改正条例が実際に適用された最初の事例ですので,非常に重要であると言えます。法律が社会の実情に沿うように改正されていくことを示す記事でした。

「リベンジポルノ」に「懲役3年」 自民、今国会提出目指す

2014年11月13日 Filed under:司法制度

今日は,「リベンジポルノ」に関する記事です。

自民党は9日、元交際相手らの裸の画像などをインターネット上に流出させる「リベンジ(復讐)ポルノ」問題に関する特命委員会を開き、最高「懲役3年以下」の罰則を盛り込んだ新法案の概要をまとめ、了承した。公明党や野党に賛同を呼び掛け、議員立法で今国会への提出を目指す。
 法案概要によると、インターネット上などに第三者が被写体を特定できる方法で、個人的に撮影した性交や、それに類似する性的な画像記録などを不特定多数に提供した場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金を科す。
 画像記録を拡散させる目的で特定の者に提供した場合も1年以下の懲役または30万円以下の罰金とする。(2014年10月9日13時10分 産経ニュース)

 リベンジポルノについて,これを特に規制する法律は,現在は存在しません。もっとも,元交際相手等のものであること,復讐心を理由とする写真等の流出行為であること捨象すれば,わいせつな写真等を頒布し,特定人の社会的名誉を低下させたことにはかわりないので,刑法175条1項のわいせつ物頒布罪,刑法230条1項の名誉毀損罪に問われる可能性は十分にあります。わいせつ物頒布罪の量刑範囲は,「二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料」又は懲役と罰金の併科とされています。また,名誉毀損罪の量刑範囲は,「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」とされています。
 このような場合,写真の流出行為という一つの行為をもって,わいせつ物頒布罪と名誉毀損罪と二つの罪を犯していることになります。刑法上の罪数処理として,「一個の行為が二個以上の罪名に触れ」る場合(刑法54条1項前段,観念的競合)にあたるので,「その最も重い罪により処断する。」ことになります。重軽の判断は,わいせつ物頒布罪と名誉毀損罪では,後者の懲役が三年と長いので,名誉毀損罪の懲役が量刑範囲となります(刑法10条2項前段)。そして,予定されている法案の「罰金五十万円」の部分も名誉毀損罪と重なっています。
 以上からすると,リベンジポルノについて法律は,既存の名誉毀損罪で処罰するのと量刑の点では異なりません。そうすると,リベンジポルノ行為そのものについて厳罰化を指向するものとはいえなさそうです。今回の立法の目的は,社会におけるリベンジポルノに対する関心を喚起し,このような行為が立派な犯罪であると周知させて今後のリベンジポルノ行為を抑止することや,名誉毀損罪における立証の困難性を緩和するといった点にあるように考えられます。

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