異議申立ての許否が問題となった事案
有罪とされた申立人が、訴訟費用負担の裁判につき、刑事訴訟法502条による裁判の執行に関する異議を申し立てた事案。
検察官の執行指揮に基づき納付告知及び督促はされていたものの、未だ同法490条1項による徴収命令が出されていなかったため、この時点で異議申立てをすることが許されるか、すなわち、徴収命令に先立つ納付告知及び督促が「執行に関し検察官のした処分」(刑事訴訟法502条)に当たるかが問題となった。
判旨(最判 平成27年2月23日)
検察官は、訴訟費用負担の裁判について、刑訴法472条の執行指揮をし、これに基づき、徴収担当事務官が、申立人に対し納付告知書及び督促状を送付している。これらは、検察官の執行指揮の内容を告知し納付を催促するため、徴収事務を制度化した徴収事務規程(平成25年3月19日法務省刑総訓第4号)に基づき、検察官の命により送付されたものであり、同法502条の「執行に関し検察官のした処分」であると解すべきであって、同法490条1項による徴収命令の出される前であっても、訴訟費用負担の裁判の執行に対する異議の申立てをすることができる。
コメント
刑事訴訟法502条は「裁判の執行を受ける者…は、執行に関し検察官のした処分を不当とするときは、言渡をした裁判所に異議の申立をすることができる。」と規定しており、同条に基づき異議申立てをするためには、その対象が「執行に関し検察官がした処分」に該当する必要があります。
刑事訴訟法490条1項に基づき、徴収命令というものが出されていれば、これが「執行に関し検察官がした処分」に当たるため、502条に基づき異議申立てをすることができます。しかし、本件事案のように、納付告知及び督促はされていたものの、未だ同法490条1項による徴収命令が出されていない場合であっても502条による異議申立てができるのか、徴収命令に先立つ納付告知及び督促が「執行に関し検察官のした処分」に当たるか否かについては見解が分かれていました。
たしかに、納付告知及び督促は、検察官が徴収金の支払いを催告するものに過ぎず、申立人の権利義務に対して影響を与えるものではありません。しかし、納付告知及び督促は、徴収事務規程に基づくものであり、検察官の権力行使の一場面であるといえます。本決定は、このような観点から、徴収命令に先立つ納付告知及び督促が「執行に関し検察官のした処分」に当たると判断したものと評価できます。