事案
Aに対する公務執行妨害、傷害被告事件において、Aが裁判官入廷前に手錠及び腰縄を外すことなどを求めて公判期日への不出頭を繰り返していた。国選弁護人である申立人らも、Aに同調して公判期日に出頭せず、刑事訴訟法(以下、刑訴法とする。)278条の2第1項に基づく出頭在廷命令にも応じなかったことから、原々審が申立人に対して同条の2第3項による過料の決定をした。この決定に対して、申立人らから即時抗告の申立てがなされたが棄却されたため、さらに特別抗告が申し立てられた事案。
判旨(最判 平成27年5月18日)
特別抗告棄却。刑訴法278条の2第1項による公判期日等への出頭在廷命令に正当な理由なく従わなかった弁護人に対する過料の制裁を定めた同条の2第3項は、訴訟指揮の実効性担保のための手段として合理性、必要性があるといえ、弁護士法上の懲戒制度が既に存在していることを踏まえても、憲法31条、37条3項に違反するものではない
コメント
本件は、刑訴法278条の2第3項による弁護人に対する過料の制裁が、国家権力に介入されない弁護権を行使する弁護人の弁護を受ける被告人の権利を侵害するとして憲法31条、37条3項に違反しないか、また、過料の制度が弁護士自治を脅かすのではないか争われた事案です。
そもそも、過料の制度は当事者が理由なく出頭しなかったり、退廷するようなことが生じた場合に、訴訟指揮の実効性を担保しようとする制度です。つまり、訴訟手続上の秩序違反行為に対する秩序罰であり、弁護士会の懲戒制度とは目的や性質が異なります。したがって、弁護士法上に懲戒制度があっても、過料制度の必要性や合理性はあり、憲法違反にはなりません。
さらに、この過料決定がなされたからといって、弁護士会に懲戒措置をとることが義務付けられるわけでもないため、特に弁護士自治を脅かすものとまではいえないでしょう。