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PISTORIUS TRIAL- 判決宣告に関し,弁護人・検事の攻防が続く

2014年10月14日 Filed under:司法制度

既に過失致死罪(最長で15年,もっとも執行猶予ない自宅軟禁)で有罪宣告されているピストリウス氏の判決宣告手続が13日に行われましたが,マシパ判事は検事弁護人の双方の量刑に関する議論が必要とし,同日,弁護人側証人の刑務官が証人に立ち,「ピストリウス氏には3年間の自宅軟禁(週一回の社会奉仕含む)が相当である。」と証言し,これを検事が激しく拒絶,翌日14日も攻防が続くこととなりました。判決宣告には数日かかるとみられます。

PISTORIUS TRIAL

2014年10月13日 Filed under:司法制度

■事案
両足切断者クラスの100m、200m、400mの世界記録保持者であり,南アフリカの英雄ともされていたオスカー・ピストリウス(Oscar Leonard Carl Pistorius)が,恋人であるリーバ・スティンカンプを自宅寝室にて銃殺したとの容疑で起訴された事件です。

■当事者の主張
【弁護側ストーリー】
 ピストリウスはリーバと午後10時に同じベッドで就寝。その後,深夜にピストリウスは目が覚め,義足をつけずにバルコニーに出た。すると,浴室の方から音が聞こえた。侵入者がいると思ったピストリウスはベッドに戻り,ベッドの下から銃を取りだした。このとき,ピストリウスはリーバがまだベッドで寝ていると思って,警察を呼ぶように囁きかけた。そして,浴室の方に向かうと,トイレの個室の中からまた音が聞こえた。恐怖におののき,侵入者がまさにトイレから出てくると思ったピストリウスは,弾丸4発をトイレのドア越しに打ち込んだ。

【検察側ストーリー】
 ピストリウスとリーバはその晩一緒に寝てはいなかった。彼らは近所に聞こえるくらい大声でけんかしていた。リーバの胃の内容物から判断すると,彼女は死ぬ2時間前に食事を取ったことが推測される。これは,拳銃の発射の5時間前に就寝したとするピストリウスのストーリーと矛盾する。リーバはある時点で,ピストリウスから逃れるために,トイレに閉じこもった。ピストリウスは憤り,殺意を持って,トイレに4発の銃弾を撃ち込んだ。証人は,この時間帯に,女性の悲鳴を聞いたと証言しており,これは,ピストリウスがドアの後ろの彼女の存在を認識していたことを示唆する。これに対し,弁護人側は,これはピストリウスが助けを呼ぶ悲鳴であると主張する。

■裁判体について
・南アフリカは、1969年に陪審員制度が廃止されました。アパルトヘイトの下で、陪審員が人種的偏見に基づいて評決をするおそれがあったためです。
・ピストリウスはプレトリアにて,マシパ裁判官(Thokozile Matilda Masipa)に裁かれます。彼女は,アパルトヘイトが終わってから,黒人として二人目に任命された裁判官です。

■裁判所の判決
【本罪】
・殺人につき無罪。
→計画的殺人(premeditated murder)について無罪とし,非計画的殺人(non-premeditated murder)についても,未必の故意(dolus eventualis)の証明がないとして,無罪としました。
 
・過失致死(culpable homicide)につき有罪。

【余罪】※参考までに
・2013年の車のサンルーフへの発砲につき無罪。
・2012年のレストランでの発砲につき有罪。
・無許可での弾薬所持につき無罪。

【争点についての判断】
・リーバがトイレに携帯を持ち込んだのは,閉じこもっていたことを裏付けるとの検察の主張については,明かりとりのために持ち込んだ可能性が否定できない。
・ワッツアップ(日本でいうLINE)のメッセージは,殺意の判断には役立たない。
・専門家が,胃の内容物についての科学は完全なものではないという結論に至った以上,消化途中の胃の内容物の意味合いについて裁判所が判断するのは賢明とは言えない。
・証人の証言は矛盾しており,信用できない。
・殺意についての証明は不十分で,被告人はドアの向こうの人間に対して発砲するという認識しかなかった。

■判決に対する疑問
・南アフリカの多くの判決では,人に対して銃を向けて撃てば,殺意があると認定されています。
・マシパ裁判官は,リーバがドア越しにいたことをピストリウスが認識していなかったことを理由に,ピストリウスの殺意を否定したのではないかと,専門家は述べています。
・しかし,南アフリカのState vs. Malinga判決は,日本でいう抽象的符合説と同様の立場を採用しており,これによれば恋人への殺意は認められなくとも,侵入者に対する殺意が認められる以上,殺意は当然認められるとも思われます。
なお,日本でもそうであり,「人」を殺そうと思って「人」を殺せば,その「人」が侵入者であろうが,恋人であろうが殺人罪は成立します。

■法定刑
【本件で問題となる過失致死罪(Culpable Homicide)について】
・Culpable homicide(南アフリカでは過失致死を意味する)については,法定刑がなく,どのような刑を科すかは先例を基準に裁判官の裁量で判断されます。
・量刑に関するガイドラインもありますが,基本的に刑の重さは過失の程度に応じて決定されます。このため,本件裁判官がどの程度ピストリウスに過失があったと認定するかによって、10年以上の懲役という重い刑もあり得るし,自宅拘禁という軽い刑や,執行猶予判決が言い渡される可能性もあります。

■本件の量刑の予想
・前述のように裁判官の裁量に委ねられているため,どのような判決もあり得ます。過去には,恋人を誤って殺した事件で,懲役刑が科されなかった事件もあります。しかし,重過失が認められた場合は,最高で15年程度の懲役があり得ます。
・マシパ裁判官は,「被告人は合理的な行動を取らず、あまりに性急に過剰な攻撃に出た」として、「被告人の行為に過失があったことは明らかである」と判示しています。さらに,「被告人は他に方法があるにもかかわらず,あえて銃を使用した」のであり,「被告人は,電話を拾って警備を呼ぶか,バルコニーに出て助けを呼べばよかった」とも付け加えています。
・なお,量刑についての判断は13日に示されるとのことですが,私の感覚では執行猶予はあり得ず,懲役8年~10年くらいではないでしょうか。
なお,もし殺人罪が認定されていれば,終身刑であったであろうと思います(南アフリカ共和国は死刑廃止国です)。

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