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令和に便乗した改元詐欺が横行 – 改元詐欺を弁護士が解説

平成が終わり、新たな元号は「令和」となりました。昭和から平成への代替わりとは異なり、退位によって行われる改元のため、おめでたいムードに包まれているのはとても良いのですが、このような喜びごとを詐欺に使おうとしている人たちがいます。既に被害も生じています。

今回は、平成から令和への改元を利用した改元詐欺を取り上げます。改元詐欺の手口・実例を紹介したうえで対策方法をお伝えしますので、参考にして頂いて、このような被害に遭わないように気を付けてください。ご自身の財産を守るには、あなた自身が気を付けるしかありません。悪い人に騙されないようにしましょう。

改元に便乗した改元詐欺が増加傾向

改元に便乗した改元詐欺が最初に朝日新聞で報道をされたのは、今年の1月19日のことでした。この時は、郵便を使った改元詐欺未遂の報道でした。その後3月4日に静岡県浜松市で1件の被害が報道され、3月26日の埼玉の地方版の記事では、1月下旬から2月下旬にかけて埼玉県内で5件の改元詐欺が発生したことが伝えられました。また、4月5日に兵庫県で1件同様の事件が発生したと報道がなされています。その後、4月11日にはMBSのウェブサイトで、10日に京都で1件の同様の詐欺事件が発生したと報じられました。

改元は5月1日に行われましたが、同様の事案はしばらく続く可能性がありますので、注意が必要です。

改元詐欺の手口・実例

改元詐欺とは、改元を理由にキャッシュカードが使えなくなるなどと嘘を言い、キャッシュカードを入手したうえで、暗証番号も聞きだして口座からお金を引き出すというものです。その手口は巧妙ですので、報道に現れた範囲ですが、一部を紹介いたします。

郵便で詐欺の手紙を送り、郵送でキャッシュカードを送るように求める事案

これは、全国銀行協会を騙って「5月1日の改元による銀行法改正に伴い、全金融機関のキャッシュカードを不正操作防止用に変更することになった」と書かれた封書が届いた詐欺事案です。封書の中には、「キャッシュカード変更申込書」が封入されており、口座番号、暗証番号などを記入し、カードとともに返信用封筒で東京都内に送るよう求めていました(朝日新聞2019年1月19日ウェブサイトに掲載)。

このような事案の場合、キャッシュカードを送らせる行為に詐欺罪(刑法246条1項 )が成立します。そして、キャッシュカードを受け取った犯人がATM等でお金をおろしますので、それについては銀行等の金融機関を被害者とした窃盗罪(同法235条)が成立します。

電話で詐欺を行い、犯人が直接自宅を訪ねてキャッシュカードを受け取る事案

市役所職員を騙った者が被害者宅に電話をかけてきたうえで、「還付金があるので、どの口座に振り込めばよいのか」と尋ね、口座を開設している金融機関を確認することから詐欺は始まりました。被害者が農協の口座を伝えたところ、その後農協の職員を騙る男から再度電話があり、「改元があるので、今のキャッシュカードが使えない。職員が取りに行く」と伝えられ、その後、訪ねてきた男にキャッシュカードを渡したとの事案です(朝日新聞2019年3月4日ウェブサイト掲載)。
この場合も、先ほどの事案と同様に、詐欺罪と窃盗罪が成立します。

改元詐欺への対策・注意点

暗証番号を聞くのは詐欺の証拠

改元詐欺は、キャッシュカードが改元で使えなくなると伝えたうえで、キャッシュカードを受け取って、合わせて暗証番号を聞き出し、口座からお金をおろすという詐欺です。したがって、キャッシュカードを渡さないことと暗証番号を伝えないことが重要です。金融庁も今年の2月7日に注意喚起を出していますが、「全国銀行協会や銀行員が暗証番号等を尋ねることは一切ありません。」 ということなので、暗証番号を聞いてくる時点でそれは詐欺であることは明らかです。その時点で電話を切ってもいいですし、郵便は返事をする必要はありません。

家に銀行や、警察の人が訪ねてきたときは、必ず身分確認をする

キャッシュカードをだまし取ろうと思う詐欺の犯人は、詐欺をしますと言って家に来るわけではありません。警察や、銀行、農協、信用金庫職員など偽って訪ねてきます。そこで、これらの者に対して身分確認を行うことが必要です。なお、偽造した身分証などを用いて身分を偽ることがありますので、身分証だけを信じてはダメです。また、そういった公的な機関の人が訪ねてきた場合、疑うのは申し訳ないと思う気持ちも分かりますが、少なくともキャッシュカードを受け取るようなことを言ってくる場合は、まず詐欺ですからそれを疑うのは失礼ではありません。

身分確認の方法で一番確実なのは、訪ねてきた者が所属する機関に電話をかけて、その訪ねてきた者が本当にその機関から来たのか確認をすることです。その際に、訪ねてきた者に電話番号を聞いてはいけません。ご自身でインターネットなどを利用して電話番号を確認してかけてください。それがどうしても無理な場合は、警察でも大丈夫ですので、警察に電話をして相談してみてください。

電話があった時点で警察に相談する

改元詐欺に限らず、この種の特殊詐欺の場合、予兆となる電話がかかってくることがあります。また、最近はアポ電強盗という類型の犯罪もありますので、その点でもこの手の電話には注意が必要です。

先ほど紹介した2件目の事案でも還付金があるという電話が最初の電話となっています。このような電話があった時点で警察に相談をするべきです。警察への相談は、地元の警察署でもいいですし、交番を訪れてもいいです。緊急ではない場合、#9110でも警察に相談することができます。

家の電話を留守電設定にして、可能があれば録音機能を導入する

また、自宅の電話を留守電状態にして、相手の身分が確実で必要な電話のみ折り返す方法も有効です。改元詐欺のような詐欺の予兆電話は、留守電状態にある電話に電話をして、メッセージを残すということは現時点ではないようです。

これは、犯人が自身の電話番号を記録に残したり、声を残したりすることを嫌がることが原因です。つまり、留守電にメッセージを残した知り合いのみ折り返すようにすれば、改元詐欺のような電話を受けることは避けられます。また、知らない相手から留守電のメッセージが残っていた場合はそのまま折り返すことなく、相手の所属先に確認をしてから折り返すべきです。

また、録音していることを通話の前にアナウンスする装置を取り付けるのも有効です。この取り組みはすでに各地で行われています。改元詐欺の予兆電話をかけてくるような犯罪者は証拠を残すことを嫌いますので、このようなアナウンスがあるにも関わらず、詐欺行為を続ける者も現時点ではいないようです。

違法な行為をしたと脅されるなど、警察に怖くて相談できない場合は弁護士に

時々、違法な行為をしたとして、警察に通報できないような精神状態にさせ、お金をだまし取る事案が発生します。そのような場合は、家族にも相談しにくいかもしれません。そういったときは、一人で抱え込むことなく弁護士に相談をしてください。弁護士は守秘義務を負っていますので、あなたが相談で話をしたことの秘密は守られます。家族に話すこともありませんし、警察に通報することもありません。安心して相談をしてください。

被害に遭ってしまった時はすぐに警察に通報を

それでは、うっかり被害に遭ってしまった場合はどうしたらよいでしょうか。まずは、警察とその口座のある金融機関に一刻も早く通報することが必要です。これは2つの意味で重要です。1つ目は、そのキャッシュカードの口座が犯罪に使われる危険性があり、早く通報しないとあなたまで共犯者と疑われてしまうこと、そして、2つ目は早く動くことで、口座を止めてもらうことが可能となり、場合によってはお金が引き出されるのを防ぐことができることです。

犯罪被害財産支給手続について

犯罪被害財産支給手続とは

なお、いわゆる振り込め詐欺の被害に遭った場合、場合によっては、被害にあった金銭については犯罪被害財産支給手続によって返金される可能性があります。その詳細は、「犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律」(以下「被害回復給付金支給法」といいます。)に定められています。同法で定められた罪で被害受けた財産等について、同罪での有罪判決等があった場合に、裁判所が犯人からその被害財産を没収・追徴(裁判所が犯人の財産を取り上げる処分)をした場合に、その没収・追徴された被害財産等を原資にして、一定の範囲の被害者に対して、国が給付金を支給する制度です。

どのような罪が対象犯罪となるのか

対象となる犯罪は幅広く、正確には、組織的犯罪処罰法13条2項に規定されている犯罪となります。刑法の「財産に対する罪」も対象の犯罪となっていますので、詐欺罪や窃盗罪などについても、対象となります。今までは次のような犯罪が対象となっています。

不正作出支払用カード電磁的記録供用(刑法163条の2第2項)、窃盗(同法235条)

他人名義の預金口座に紐付られたデビットカードの電磁的記録を不正に入力したカードを利用して、銀行のATMでお金を引き出した行為

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反

古銭買取業者を装い、被害者に電話をし、古銭販売業者から古銭を買い取ってくれれば、高額で買い取ると嘘を述べて、現金を宅配便等で送付させてだまし取った行為

詐欺(刑法246条1項)

被害者の親族になりすまし、会社の金で株を運用していたが損をしてしまったなどと嘘を言って、被害者を遠方の駅にまで連れ出し、現金を交付させてだまし取った行為

手続きの方法

先に説明しましたように、給付金を受け取ることができるのは、その原資となる犯罪被害財産等が、刑事裁判で没収・追徴がなされた場合のみです。したがって、ご自身が被害にあった事件等で犯人が逮捕・起訴され、有罪判決が確定し、その中で犯罪被害財産が没収・追徴されている必要があります。そのような状態になったかどうかは検察庁のサイトに公開されていますので、確認をしてみてください。もっとも、警察に届け出るなどして検察官があなたの被害を知っている場合は、検察官から通知が来ることになっていますので、それを待っておけばよいということとなります。

このように給付金の支給が開始された場合、給付金の支給を受けるには、ご自身で申請を行う必要があります(被害回復給付金支給法9条)。そして、その申請を受けたうえで、検察官が被害回復給付金の支給を受けることができるかどうか、給付額について審査をします(同法10条)。そして、認められた場合は支給がなされることになります(同法14条)。

なお、検察官が行った上記の審査に対して異議がある場合、不服申立てを行うことができます(同法40条)。これらの手続きについては、ご自身でされても構いませんが、ご自身で準備するのが大変な場合、弁護士を代理人として手続きしてもらうことも可能です(同法9条3項)。ご自身で行う自信が無い場合などは、弁護士事務所に依頼をすることも良い方法であると思われます。

まとめ

本コラムでお伝えしたように、改元に伴う詐欺が急増しています。ぜひ注意をしてください。全国銀行協会や金融庁も何度もアナウンスをしていますが、改元によってキャッシュカードの交換が必要となることはありませんし、暗証番号を書かせるなどということもありません。

被害に遭った場合は速やかに警察やキャッシュカードを発行した金融機関に届け出るべきですが、相手に嘘を言われて、自身に弱みがあるかのように騙され、公的機関に相談できないように思い込んでいる場合もあるかもしれません。そのような場合は、守秘義務を負う弁護士にご相談ください。あなたが悪いことをしていない場合が大半だとは思いますが、仮に何らかの法令違反があったとしても、どのような量刑等になるのかをお示ししたうえで、あなたにとって最善の対応を一緒に相談することができます。安心して相談をするようにしてください。

この手の詐欺は一度被害に遭うと、被害者のリストとして流通し、何度も詐欺の対象になることがあります。一人で抱え込まず、勇気を出して相談をしてみてください。騙した人が悪いのであって、あなたは悪くありません。ご自身の財産を守るために行動を起こしましょう。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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