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薬機法違反で逮捕されたら

今回は、この薬機法に規定されている医薬品等の広告について、最近改正された部分とともに、代表弁護士・中村勉が解説いたします。

薬機法違反で逮捕されたら

薬事犯は、マイナーな犯罪のように見えて、実は身近な犯罪で、誤った効能を謳う広告による不当な経済活動は国民の健康に与える脅威も小さくはありません。

特に、コロナ禍において、最近、新型コロナウイルス感染症に対する効能・効果を標榜するなどした、薬機法違反の事案が見られるようになりました。
警察庁の集計によると、全国の警察が令和2年に検挙した薬事関係事犯は、前年より15件増加の63件で、このうち、新型コロナウイルスに対する効能・効果を広告で標榜して広告するなどした薬機法違反事件は14件ありました。
また、全国の警察が令和3年に検挙した薬事関係事犯は、前年より17件減少の46件にとどまりましたが、このうち、新型コロナウイルス感染症に対する効能・効果を標榜してインターネットを通じて広告するなどした保健衛生事犯は7件ありました。

出典
警察庁生活安全局 生活経済対策管理官「令和2年における生活経済事犯の検挙状況等について」、「令和3年における生活経済事犯の検挙状況等について

薬機法(旧薬事法)、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律とは

そもそも「薬機法」とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略であり、従来「薬事法」と呼ばれていた法律の名称が平成25年11月の改正で変更されたものです(平成26年11月25日施行)。
医薬品・医療機器等の有効性・安全性を確保するため、製造から販売、市販後の安全対策まで一貫した規制を行っています

出典: 赤羽根秀宜著「Q&A医薬品・医療機器・健康食品等に関する法律と実務」日本加除出版株式会社

薬機法で刑事事件になるケース

薬機法で刑事事件になるケースとしては、やはり、広告に関する規定の違反がよく見られますが、その中でもいくつかバリエーションがあります。
まずは冒頭でも触れました誇大広告等のケースを解説します。

薬機法第66条(誇大広告等)
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

何人(なんぴと)も」とあるように、製造販売業者、製造業者又は販売業者等をはじめ、例えば、これらの業者から単に依頼を受けて、テレビ、新聞、雑誌、インターネット等の媒体を通じて虚偽・誇大な広告等を行った場合でも、そのテレビ局、新聞社、雑誌社、サイト運営者等はこの規定に違反したことになります。

虚偽」とは、事実と異なる事柄をいい、「誇大」とは、いわゆる最上級の表現を用いた場合(決定的(な性能)、最高(の性能)など)がこれに該当します(出典: 團野浩編「詳説 薬機法 第3版 薬事法から医薬品医療機器法へ」株式会社ドーモ)。

広告」に当たるか否かは、以下の要件に該当するか否かで判断されています(平成10年9月29日医薬監148号都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医薬安全局監視指導課長通知)。

  • 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
  • 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
  • 一般人が認知できる状態であること

また、医薬品等の広告規制に反しないか否かは、厚生労働省が定める医薬品等適正広告基準(平成29年9月29日薬生発0929第4号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知「医薬品等適正広告基準の改正について」)に基づいて行われています。
この医薬品等適正広告基準では、対象となる広告は新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト及びSNS等全ての媒体であるとされ、以下の14個の基準の項目が示されています。

  1. 名称関係
  2. 製造方法関係
  3. 効能効果、性能及び安全性関係
  4. 過量消費又は乱用助長を促すおそれのある広告の制限
  5. 医療用医薬品等の広告の制限
  6. 一般向広告における効能効果についての表現の制限
  7. 習慣性医薬品の広告に付記し、又は付言すべき事項
  8. 使用及び取扱い上の注意について医薬品等の広告に付記し、又は付言すべき事項
  9. 他社の製品の誹謗広告の制限
  10. 医薬関係者等の推せん
  11. 懸賞、賞品等の広告の制限
  12. 不快、迷惑、不安又は恐怖を与えるおそれのある広告の制限
  13. テレビ、ラジオの提供番組等における広告の取扱い
  14. 医薬品の化粧品的もしくは食品的用法又は医療機器の美容器具的若しくは健康器具的用法についての表現の制限

本規定に違反した場合、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処され、又はこれが併科されます(85条4号)。
次に、承認前の医薬品等の広告の禁止について解説します。

薬機法第68条(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

先ほど解説した66条について、承認を受けるまでは単なる物であり、医薬品等ではないから広告規制の対象にならないという理屈も考えられなくはありません。
しかし、申請内容がそのまま承認されるかどうかは不明であり、実際の承認内容によっては、承認前に行った広告が虚偽・誇大なものとなり得ることを考慮し、本規定が設けられています。
本規定に違反した場合、やはり2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処され、又はこれが併科されます(85条5号)。

薬機法の改正と厳罰化

以上のように、誇大広告等は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金という法定刑が規定されていますが、信頼確保のための法令遵守体制等の整備の観点から、令和3年8月1日より、虚偽・誇大広告による医薬品等の販売に対する課徴金制度が創設されました(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63号)の概要)。

薬機法第75条の5の2(課徴金納付命令)
第六十六条第一項の規定に違反する行為(以下「課徴金対象行為」という。)をした者(以下「課徴金対象行為者」という。)があるときは、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額(次条及び第七十五条の五の五第八項において「対価合計額」という。)に百分の四・五を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
2 前項に規定する「課徴金対象期間」とは、課徴金対象行為をした期間(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日(同日前に、課徴金対象行為者が、当該課徴金対象行為により当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置として厚生労働省令で定める措置をとつたときは、その日)までの間に課徴金対象行為者が当該課徴金対象行為に係る医薬品等の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)をいう。(以下省略)

このように、虚偽・誇大広告による医薬品などの販売を行った者に対して、違反行為をしていた期間の対象商品の売上金額の4.5%が課徴金として課されることになりました。利益ではなく「売上」の4.5%であり、かなり高額であることに注意しましょう。課徴金は、行政罰の一種であり、刑事罰ではありませんが、高額な課徴金が課されることによって、一定の抑止効果が期待されています。
ところで、もしこの課徴金を期限内に納付しなかった場合、どうなるでしょうか。

薬機法第75条の5の11(納付の督促)
厚生労働大臣は、課徴金をその納期限までに納付しない者があるときは、督促状により期限を指定してその納付を督促しなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の規定による督促をしたときは、その督促に係る課徴金の額につき年十四・五パーセントの割合で、納期限の翌日からその納付の日までの日数により計算した延滞金を徴収することができる。ただし、延滞金の額が千円未満であるときは、この限りでない。
3 前項の規定により計算した延滞金の額に百円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

その場合、督促状が出されてしまい、しかも、ただでさえ高額な課徴金に年14.5%の延滞金が付加されます。課徴金を支払わず、無視するのは絶対にやめましょう。

薬機法違反の解決実績と感謝の声

当事務所で扱った薬機法違反の解決実績と感謝の声を一部ご紹介します。

まとめ

薬機法違反は弁護士にご相談を

いかがでしたでしょうか。今回は、薬機法違反の中でも、コロナ禍で違反が目立ち、また、最近法改正もあった医薬品等の広告について解説しました。
薬機法違反は、逮捕のおそれもあり、また、課徴金も踏まえると、甘く見てはいけません。さらに、事件が報道されてしまうと、業者の評判が失墜し、今後の業務にも多大な支障をきたすおそれもあります。

薬機法違反は特別法違反であり、取扱い経験のある弁護士は限られます。もし薬機法で逮捕された場合、あるいは警察から呼び出しを受けた場合は、専門性のある弁護士にきちんと相談しましょう。

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経験豊富な弁護士がスピード対応

刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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