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公務員が逮捕されたら? 弁護士が解説

公務員が罪を犯し、逮捕されてしまったという報道は、大いに話題になります。公務員が逮捕された場合、どうなるのでしょうか。

公務員の仕事を失ってしまうのでしょうか。一般的な刑事事件と公務員による刑事事件では、どのような違いがあるのでしょうか。

公務員は、身分保障が手厚いです。その分、公務員は国民に奉仕するものとして、民間会社の従業員よりも高度の廉潔性が求められます。事件を起こせば報道されますし、懲戒解雇という厳しい社会的制裁が科されます。このことは、贈収賄などの新聞を賑わす官僚による犯罪に限りません。公務員組織の末端者であっても同じです。

当事務所は、元検事2名を擁する事務所であり、公務員組織やその文化を熟知しております。これまでもその強みを活かして数々の公務員事件の弁護をしてきました。

以下、代表弁護士・中村勉が詳しく解説いたします。

公務員の犯罪例

公務員の職務に関連する犯罪の代表例は、業者との談合に際して公務員が金品を受け取る、収賄罪(刑法第197条1項等)です。その他にも、偽の公文書を作成する、虚偽公文書作成等罪(刑法第156条)や、公務員職権濫用罪(刑法第193条)、職務上知った秘密を漏らす、秘密漏泄の罪(国家公務員法第100条1項、109条12号、地方公務員法第34条1項、60条2号)などがあります。

刑法第197条(収賄、受託収賄及び事前収賄)
1 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。

国家公務員法第100条(秘密を守る義務)
2 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

国家公務員法第109条
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
十二 第百条第一項若しくは第二項又は第百六条の十二第一項の規定に違反して秘密を漏らした者

この他、痴漢や盗撮等の、主体が公務員に限られない罪を、公務員が犯すこともあります。

公務員が逮捕されたら

逮捕された場合の流れ

では、公務員が逮捕された場合、どのような流れになるかを解説します。この項の説明は、公務員以外の者による一般的な刑事事件と同じです。まず、警察に逮捕されてから48時間以内に検察官に送致されます(送検)。微罪で留置する必要のない場合は、警察の判断で釈放されます。

検察官に送致されると、そこから24時間以内に、検察官は拘置所に勾留する必要があるかどうかを判断し、必要な場合は、裁判官に対して勾留請求を行います。あるいは、この段階ですぐに起訴することもでき、その場合には勾留請求を行う必要はありません。勾留は、原則として、勾留請求を行った日から数えて10日間です。勾留期間の延長は、合算して10日以内とされているため、勾留されるのは、最大で20日間ということになります。

検察官は、勾留期間中に、被疑者を起訴するかどうかを決めます。起訴されると、刑事裁判にかけられることとなります。証拠隠滅のおそれなどがある場合、起訴後も勾留が続きます。

逮捕されたときの対処法

前述のように、逮捕されてから検察に送致(送検)されるまでの48時間、拘留するかどうかを決定する24時間合計72時間がポイントです。この72時間は、弁護士以外の者とは、たとえご家族であっても接見(面会)できないことが多いです。したがって、まずは、弁護士を呼び、適切なアドバイスを求めることが重要ですし、一人で警察や検察の取調べに耐えなければならないため、弁護士は大きな心の支えにもなります。
警察署には当番の弁護士がいるほか、自ら弁護士を指名して呼ぶこともできます。警察官に「○○法律事務所の○○先生を呼んでほしい」と依頼しましょう。逮捕されたときに弁護士を呼ぶことは、法律で保障された権利です。

ただし、実際には、取調べ時には持ち物は取り上げられるため、弁護士をスマートフォンで探すことはできません。そこで、ご家族の助けが必要となります。まずはご家族が弁護士に相談し、依頼を受けた弁護士が接見に行くという流れになります。

被疑者には黙秘権が保障されており、取調べにおいて、言いたくないこと(自分にとって不利なこと)を言う必要はありません。しかし、取調べを行う捜査機関は、あの手この手を使って供述を引き出そうとしてきます。日常会話から始めて自然に事件の話に話題を移したり、時には強い口調で被疑者に迫ったり、あるいは「正直に話せば罪が軽くなるぞ」などと言って誘惑したりしてきます。(否認事件ではない場合)すべてを話すことが、その後、自分にとって有利に事態が進展することにつながるとも限りません。また、否認事件の場合、捜査機関に圧迫されて、何も関係がないのに「私がやりました」などと自白することは避けなければなりません。

なお、供述した内容は、捜査機関がいわゆる「供述調書」にまとめ、それに被疑者が署名・押印することによって、証拠となります。供述の内容に誤りがある場合や、内容を増やしたり減らしたりしたい場合には、その供述を調書に記載しなければなりません。内容に納得がいくまで、捜査機関に求められても、署名・押印をする必要はありません。取調べで何を話し、何を話さないかは、その後の捜査の行方にも影響するため、弁護士のアドバイスを求めることが重要です。

公務員の刑事事件はすべて勤め先に知られてしまうのか

収賄罪や虚偽公文書作成等罪などの公務員としての職務に関係する犯罪の場合には、職場に知られてしまうことは避けられませんが、そうではない場合(一例として、窃盗や痴漢など)は、ただちに職場に知られるとは限りません。

逮捕された事実を職場に知らせるのは、警察や検察です。そこで、警察や検察に対し、職場に連絡をしないように求めることも、重要な弁護活動ということになります。ただし、長期にわたって勾留されると、出勤できないため、職場に知られてしまうことにはなります。そのため、弁護士は、検察に対して逃亡や証拠隠滅等の危険がないことを理由に釈放を求めたり、職場に対して説明をしたりします。

公務員の刑事事件では即刻失職や停職になるのか

まず、公務員は、法律の規定なく懲戒処分を受けることはありません。どのような場合に懲戒処分となるかについては、国家公務員については国家公務員法第82条1項、地方公務員については地方公務員法第29条1項に規定があります(自衛隊や国会職員など、特殊な公務員の場合は、これらとは別の法律に規定されています)。

国家公務員の場合

国家公務員法第82条(懲戒の場合)
1 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

犯罪は、3号の「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」にあたるため、懲戒処分を受けることになります。ただし、逮捕されたというだけで当然に懲戒処分を受けるわけではありません。懲戒処分には、重いものから順に、免職、停職、減給、戒告があります。

このうち、どの処分が下されるかは、「行為の動機、態様、結果等のほか、処分歴、他の職員及び社会に与える影響等、種々の事情を総合的に考慮の上」決定されます(人事院サイトより)。具体的には、犯罪の内容や捜査・裁判の状況、(被害者がいる場合には)被害者との示談交渉の成否などによって決められることになります。なお、懲戒処分と刑事罰は、どちらも受ける場合があります(国家公務員法第85条1項)。懲戒処分は行政内部での処分に過ぎないからです。

国家公務員法第85条(刑事裁判との関係)
懲戒に付せらるべき事件が、刑事裁判所に係属する間においても、人事院又は人事院の承認を経て任命権者は、同一事件について、適宜に、懲戒手続を進めることができる。この法律による懲戒処分は、当該職員が、同一又は関連の事件に関し、重ねて刑事上の訴追を受けることを妨げない。

逮捕後、起訴された場合には、(本人の意に反して)休職となることがあります(国家公務員法第79条2号)。

国家公務員法第79条(本人の意に反する休職の場合)
職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職させることができる。
二 刑事事件に関し起訴された場合

さらに、裁判の結果、禁錮以上(死刑、懲役、禁錮)の判決が言い渡された場合には、欠格事由(国家公務員法第38条2号)に該当し、失職します(国家公務員法第76条)。この場合の失職は、懲戒処分がなされる必要はありません。

国家公務員法第76条(欠格による失職)
職員が第三十八条各号の一に該当するに至つたときは、人事院規則に定める場合を除いては、当然失職する。

国家公務員法第38条(欠格条項)
次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則の定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者

地方公務員の場合

また、地方公務員についても、起訴された場合に休職となることがあり(地方公務員法第28条2項2号)、禁錮以上の判決を言い渡された場合には失職します(地方公務員法第28条4項、16条2号)。

地方公務員法第28条(降任、免職、休職等)
2 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反してこれを休職することができる。
二 刑事事件に関し起訴された場合
4 職員は、第十六条各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う。

地方公務員法第16条(欠格条項)
次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

なお、24条2項には、「条例に特別の定がある場合を除く外」とあり、各地方公共団体の条例に独自の規定がおかれている場合があります。
例えば、東京都の「職員の分限に関する条例」の8条1項には、情状により失職を免れさせることができるという規定がおかれています。

東京都 職員の分限に関する条例第8条1項(失職の例外)
1 任命権者は、禁錮の刑に処せられた職員のうち、その刑に係る罪が過失によるものであり、かつ、その刑の執行を猶予された者については、情状により、当該職員がその職を失わないものとすることができる。

ただし、このような規定はすべての地方公共団体の条例に置かれているわけではありません。例えば、大阪府の「職員の分限に関する条例」にはこのような規定はありません。

公務員の刑事事件は報道されてしまうのか

公務員という職業に、公共的な側面がある以上、公務員の犯罪は国民からの注目度も高く、報道されることが多いです。また、実名報道がなされる場合もあります。さらに、マスコミによる取材は家族など、身近な人に及ぶことも考えられます。

実名が報道されると、家族がバッシングや嫌がらせを受けたり、親族との関係が疎遠になったりする可能性もあります。また、公務員の職を失った場合に、民間への再就職が困難になることもあり得ます。そのため、マスコミへの対応も、弁護士の仕事の一つです。

その後の生活はどうなるか

公務員の仕事を失うこととなった場合には、新たな民間の職場を探さなければなりません。しかし、実名報道がなされてしまった場合には、それも困難なことがあります。また、失職はせずとも、懲戒処分となった場合は、公務員としてのキャリアに影響が出ることは避けられません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。逮捕されることにより、公務員の仕事を失ってしまうこともあります。また、公務員という職務は公共性が強いため、マスコミによる報道も、過熱しがちです。

しかしながら、迅速かつ適切な弁護活動を行うことによって、逮捕による影響を小さくすることは可能です。逮捕されたらすぐに弁護士に依頼することが重要です。

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当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。

  • 逮捕されるのだろうか
  • いつ逮捕されるのだろうか
  • 何日間拘束されるのだろうか
  • 会社を解雇されるのだろうか
  • 国家資格は剥奪されるのだろうか
  • 実名報道されるのだろうか
  • 家族には知られるのだろうか
  • 何年くらいの刑になるのだろうか
  • 不起訴にはならないのだろうか
  • 前科はついてしまうのだろうか

上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

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