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のぞきで逮捕されたら – のぞき行為で問われる罪など弁護士が解説

「のぞき」という行為について、聞いたことがあると思います。
のぞき行為をしている人において、「見つかったら警察を呼ばれそう。」「逃げ切れなかったら逮捕されそう。」とは思っていても、実際にどのような名称の犯罪にあたるのかを知っている人はそういないでしょう。

ここでは、「のぞき」をするとどのような犯罪を犯したとして立件されるのか、また、盗撮との違いについて代表弁護士・中村勉が解説します。

「のぞき」とは

「のぞき」とは、一般的に、家の内部などプライバシー性が高い場所を外部からひそかにうかがい見ることを言います。法律的な解釈では、意図せず、自然に又は偶然に見えてしまった場合は「のぞき」には当たりません。

例えば、更衣室やトイレ、お風呂など衣服を脱ぐような場所を盗み見る行為は「のぞき」にあたります。実際に他人の下着や裸を見たわけではなくても、このような場所を盗み見る行為自体が「のぞき」に該当します。また、電車の中やエスカレーターなどでスカートの中のを盗み見る行為も「のぞき」にあたります。

のぞきで問われる罪・法定刑・時効

のぞき行為は犯罪にあたりますが、日本には「のぞき罪」といった名称の犯罪はありません。のぞき行為の態様により以下の3つの犯罪に分かれます。

軽犯罪法違反

まず、考えられるのは軽犯罪法違反です。
軽犯罪法第1条23号は、正当な理由なく、人の住居・浴場・行為書・便所等、人が通常衣服を身につけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為を罰しています。

軽犯罪法第1条23号
第1条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

正当な理由なくこのような場所をひそかにのぞき見ただけで犯罪が成立しますので、のぞき見た結果、実際には衣服を身につけてない他人を見ていなくても、この規定に違反するとして軽犯罪法違反に問われ得ます。軽犯罪法違反の刑罰は「拘留又は科料」となっています。

「拘留」とは1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘置される刑です(刑法第16条)。また、「科料」とは、1000円以上1万円未満の金額の納付を義務付けられる刑です(刑法第17条)。いずれも懲役刑や罰金刑より軽いので、軽犯罪法違反の罪は、軽微な犯罪の部類に位置付けられます。

迷惑防止条例違反

次に、迷惑防止条例違反も考えられます。
条例は各都道府県ごとに定められていますので、ここでは、東京都の迷惑防止条例違反(正式名称は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」、以下「東京都迷惑防止条例」といいます。)を参考に見ていきます。

東京都迷惑防止条例の第5条1項3号は、人に対し、公共の場所また公共の乗物において、卑わいな言動をすることを罰しています。「前2号に掲げるもののほか」という規定のされ方がされていますので、2号を見てみますと、2号はいわゆる盗撮行為について規定していることが分かります。
したがって、3号が定める「卑わいな言動」は、盗撮行為には当たらないものの、公共の場所または公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着や身体を盗み見るといったのぞき行為等の言動を想定しているものと解されます。

東京都迷惑防止条例 第5条1項
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行 為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人 の身体に触れること。
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
(3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言 動をすること。

迷惑防止条例違反となる「のぞき行為」の刑罰は、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」です(東京都迷惑防止条例第8条1項2号)。先述した、人が通常衣服をつけないでいるような場所をのぞく行為自体を罰する軽犯罪法違反と比べ、より重い刑となっています。
なお、人の下着や裸をのぞくにとどまらず、これを撮影したり、撮影する目的でカメラを差し向けたり設置したりした場合には、いわゆる盗撮行為として、東京都迷惑防止条例第5条1項2号に該当することになります。この場合、刑罰はより重くなり「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」になります。のぞき行為は一回的ですが、盗撮行為は動画や画像といったデータが残り拡散の危険性高いので、その分犯情が重いでしょう。

東京都迷惑防止条例 第8条
1 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(1) 第2条の規定に違反した者
(2) 第5条第1項又は第2項の規定に違反した者(次項に該当する者を除く。)
2 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(1) 第5条第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定に違反して撮影した者
(2) 第5条の2第1項の規定に違反した者

住居侵入罪・建造物侵入罪

住居侵入罪・建造物侵入罪(刑法第130条)にいう「侵入」とは、住居権者・管理権者の意思に反する立入りのことをいいます。
したがって、のぞき行為をするために他人の住居の敷地内に入った場合には、住居侵入罪が成立します。また、入浴目的ではなく、のぞき行為をする目的で、入浴施設等に入った場合には、建造物侵入罪が成立し得ます

住居侵入罪・建造物侵入罪の刑罰は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」となっています。懲役刑の上限については東京都迷惑防止条例違反となるのぞき行為や盗撮行為より長くなっていますが、罰金については反対にこれらより低くなっています。

刑法第130条(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

なお、のぞき見をする際に窓やドア、その鍵等を破壊した場合には、別途建造物損壊罪(刑法第260条)や器物損壊罪(刑法第261条)が成立し得ます。

刑法第260条(建造物等損壊及び同致死傷)
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
刑法第261条(器物損壊等)
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

公訴時効について

軽犯罪法違反には1年(刑事訴訟法第250条2項7号)、東京都迷惑防止条例違反及び住居侵入罪・建造物侵入罪には3年です(刑事訴訟法第250条第2項6号)。

のぞきの事例

迷惑防止条例違反

岐阜県警の巡査が警察施設内の脱衣所で同僚職員をのぞき見たという事例
県警本部勤務の巡査2名が、警察施設内の脱衣所で同僚職員をのぞき見たとして、県警本部勤務の巡査2名は減給の懲戒処分になった。

住居侵入、軽犯罪法違反

大阪府警巡査が同僚の女性宅へのぞき見目的で侵入した事例
大阪府警の寮の女性専用フロアにて、留守の部屋に忍び込んだり、ベランダから室内をのぞいたりしたとして、同じ寮の住人である男性巡査を住居侵入と軽犯罪法違反の疑いで書類送検した。巡査は容疑を認め、減給の懲戒処分を受けて依願退職した。

のぞきで逮捕されたら

のぞき行為は、現行犯として逮捕されることが多いです。
現行犯逮捕は一般の人でもできるとされていますので(刑事訴訟法第213条)、被害者や目撃者等から取り押さえられて現行犯逮捕され、その後、警察官等の捜査機関に引き渡されることもあります(刑事訴訟法第214条)。

刑事訴訟法第213条
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
刑事訴訟法第214条
検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

防犯カメラ等が設置されていない場所でののぞき行為ですと、現行犯逮捕されなければ、その後に通常逮捕(逮捕状によって逮捕すること)される可能性は低いでしょう。のぞき行為をした場所やその周辺に防犯カメラ等が設置されていた場合には、後日通常逮捕されることが考えられます

のぞきで逮捕された後の流れ

逮捕されると、逮捕から48時間以内に検察官に事件が身柄と共に送致されます。検察官は引き続き身柄を拘束する必要があるかを判断し、必要があると判断した場合には、送致を受けた時から24時間以内に裁判官に対して勾留の請求をします。身柄拘束の必要がないと判断した場合には、その日に釈放されます。

裁判官が勾留する理由と必要があると判断すると、10日間の勾留の決定をします。裁判官が勾留する理由や必要がないと判断し、勾留請求を却下した場合には、その判断がされ日に釈放されます。10日間の勾留期間が満了してもなお引き続き勾留が必要と検察官が判断すると、勾留延長を裁判官に請求し、これが認められるとさらに10日間の身柄拘束となります(認められる延長期間が10日未満となることも時々あります)。したがって、一度逮捕されると、最長23日間もの長期にわたって身柄が拘束されてしまう可能性があります。なお、公判請求された場合には、勾留満期後も被告人として勾留されることになり、保釈許可が得られない限り、判決まで身柄拘束が続くことになります。

もっとも、のぞきで公判請求されることは稀で、重くても略式罰金となるケースが多いでしょう。勾留中に略式罰金となった場合、勾留満期日かその直前に検察官が略式起訴し、その日のうちに略式命令が発付され、釈放されることになります。のぞきの事実をそもそも認めておらず、事実を争っている場合には、略式起訴はされませんので、その点注意が必要です。

のぞきで逮捕された場合の家族や会社への影響

前述のとおり、ひとたび逮捕されると、勾留決定前に長くて3日間は身柄拘束されることになります。外部との連絡手段は遮断されますし、基本的に勾留が決定するまでのこの期間は家族とも面会ができません。弁護士のみ面会(接見)が可能です。

警察が家族へ逮捕の事実を知らせる連絡をしてくれることはありますが、それ以上の連絡は取り次いでもらえません。したがって、詳しい状況を本人の口から聞けない家族は動揺し、会社や学校も無断欠勤・無断欠席することになりかねません。また、のぞきで逮捕された事実が上記事例のように報道されてしまうこともあります。その場合には会社や学校にも逮捕の事実が知られることになり、最悪の場合、退職・退学を余儀なくされる事態になり得ます。また、報道によって、家族の日常生活にも少なからず影響が出てくるでしょう。

のぞきで逮捕された際に弁護士に依頼するメリット

のぞきの疑いで逮捕されてしまったら、直ちに弁護士に相談することをお勧めします。上述のとおり、逮捕直後は本人とご家族は面会することができず、弁護士のみ面会(接見)することができます。お互いに突然の出来事で不安な気持ちの中、弁護士に依頼すれば、本人と接見した上、警察よりも丁寧に今後の流れを説明してもらえるのみならず、本人に対しては取調べ対応についてもアドバイスをもらえます。多くの場合、職場との関係での取り急ぎの対応等についても家族への連絡を取り次いでもらえるでしょう。

また、逮捕後のさらなる勾留を回避し、早期に釈放されるよう迅速に活動してもらえます。具体的には、検察官に対し勾留請求を回避してもらうための意見書やその判断に有用な参考資料を提出したり、裁判官に対して検察官による勾留請求を却下してもらうための意見書やその判断に有用な参考資料を提出したりします。これらは一日二日といった短時間で行う必要があり、ノウハウをもっている弁護士だからこそできるものです。

のぞきの態様によっては特定の被害者がいることが考えられますので、その場合には、弁護士に被害者との示談交渉をしてもらうことになります。特に性犯罪の性質を有するのぞき行為の事案においては、捜査機関は被害者の被害感情に配慮し、通常、被疑者本人やそのご家族と被害者との間の連絡の取次ぎは行わないからです。

示談が成立すると、不起訴処分になる可能性が高くなりますし、身柄拘束が続いているケースでは、示談成立によって、勾留満期を待たずに早期に釈放される可能性も高くなります。同種の前科前歴が多数ある場合には、示談が成立しても公判請求を免れない可能性がありますが、その場合であっても示談成立の事実は量刑の判断において有利に考慮されます。なお、弁護士相手であっても、被害者本人が連絡先を伝えるのを拒むことがあり、その場合には示談ができないことになりますが、それでも弁護士に依頼していれば、示談の代わりに不起訴に向けてできることを適宜指示してもらえるでしょう。

先にも述べましたが、のぞき行為と盗撮行為とでは、動画や画像データが残り流失の危険性がある盗撮行為の方が犯情が重く、被害者の被害感情も強いといえるでしょう。とはいえ、のぞき行為による被害も必ずしも軽微とはいえません。一度のぞき行為の被害を受けると、同じような状況で違う人からも同様の行為をされるのではないかといった不安がつきまとうようになります。

特に、通常プライバシーが守られていて、くつろげる場所であるはずの自宅住居でのぞき行為がされれば、以後安心して生活することはできなくなります。場合によっては引っ越しを検討する被害者も出てくるでしょう。したがって、のぞき行為における示談も、必ずしも容易なものではありません。被害感情にきちんと配慮した交渉が重要になってきますので、刑事事件を多く扱っている弁護士に依頼するのがよいでしょう。

のぞきで逮捕される前に弁護士に依頼するメリット

のぞき行為をしてしまったものの、未だ逮捕されていないという場合には、早めに弁護士に依頼することで、そもそも逮捕されないようにするためにできる限りの活動をしてもらえます。

仮に逮捕されてしまったとしても、事前に弁護士に依頼していればすぐに接見に来てもらえます。そして、勾留回避のために迅速に動いてもらったり、ご家族等各方面への連絡も取り次いでもらったりできます。示談についても迅速に動いてもらえるでしょう。示談が成立すれば、そもそも逮捕されることもほぼなくなりますし、示談交渉前に逮捕されてしまった場合には、早期の身柄解放につながります。そして、何よりも不起訴の可能性が高まります

まとめ

いかがでしたでしょうか。のぞき行為がどのような犯罪に当たるのか、お分かりいただけたかと思います。盗撮などの他の類似犯罪と比べて法律的には軽微な犯罪として扱われていますが、かといって、のぞき行為では逮捕されない、示談も容易、ということにはなりません。

のぞき行為をしてしまった場合、あるいは、ご家族がのぞき行為で逮捕されてしまった場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

更新日: 公開日:
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