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金の密輸事件で逮捕された場合を弁護士が解説

金の密輸は違法であり、数ある密輸の一類型です。
経済制度の変容がそのまま犯罪類型ないし犯行態様の変化につながります。今回解説する金の密輸は、後ほど説明しますが、消費税制度導入が背景にあります。

金は覚せい剤や拳銃とは異なり、所持しているだけで違法になる物ではありません。それでは、金はなぜ「密輸」の対象となるのでしょうか。

今回は、金の密輸について、どういった法律に違反するのか、どのくらいの刑の重さになるのかなど、代表弁護士・中村勉が解説していきます。

金の密輸とは

金地金(きんじがね)の密輸は、消費税を申告・納付せずに国内に持ち込んだ金地金を国内の金買取業者(金買取店)に売却することによって、消費税額相当分を利益として獲得することを目的に行われていると考えられます。

例えば、本体価格500万円/kgの金地金5kg(2500万円)を輸入する場合、本来であれば輸入時に税関で250万円(2500万円×10%)の消費税を納付する必要があります。しかしながら、密輸を企てる者は、その消費税の納付を行うことなく、金地金を国内に持ち込みます。そうして密輸した金地金を市中の金買取業者が消費税(250万円)込みの価格で買い取ることによって、密輸を企てる者は、この消費税相当分を利益として得ることとなります。

つまり、所持していても違法ではない金がなぜ「密輸」の対象になるかの答えは、脱税の対象になるからということになります。

引用元:「ストップ金密輸」緊急対策 財務省

金の密輸事件の罪と罰則

金地金の密輸については、消費税法違反(消費税脱税)、地方税法違反(地方消費税脱税)及び関税法違反(無許可輸出入罪)の3罪が成立します。

現行の法定刑は、消費税法及び地方税法違反については懲役10年以下及び罰金1000万円以下(脱税額の10倍が1000万円を超える場合は脱税額の10倍以下)、関税法違反については懲役5年以下及び罰金1000万円以下(貨物の価格の5倍が1000万円を超える場合は貨物の価格の5倍以下)となっています。

消費税法 第六十四条
次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 偽りその他不正の行為により、消費税を免れ、又は保税地域から引き取られる課税貨物に対する消費税を免れようとした者
(中略)
4 第一項の犯罪(同項第一号に規定する保税地域から引き取られる課税貨物に対する消費税を免れ、又は免れようとした者に係るものに限る。)に係る保税地域から引き取られる課税貨物に対する消費税に相当する金額の十倍が千万円を超える場合には、情状により、同項の罰金は、千万円を超え当該消費税に相当する金額の十倍に相当する金額以下とすることができる。(以下省略)

地方税法 第七十二条の百九
偽りその他不正の行為により貨物割の全部又は一部を免れ、又は免れようとした者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の免れ、又は免れようとした税額の十倍が千万円を超える場合には、情状により、同項の罰金の額は、同項の規定にかかわらず、千万円を超える額でその免れ、又は免れようとした税額の十倍に相当する額以下の額とすることができる。(以下省略)

関税法 第百十一条
次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、当該犯罪に係る貨物の価格の五倍が千万円を超えるときは、罰金は、当該価格の五倍以下とする。
一 第六十七条(輸出又は輸入の許可)(第七十五条(外国貨物の積戻し)において準用する場合を含む。次号及び次項において同じ。)の許可を受けるべき貨物について当該許可を受けないで当該貨物を輸出(本邦から外国に向けて行う外国貨物(仮に陸揚げされた貨物を除く。)の積戻しを含む。次号及び次項において同じ。)し、又は輸入した者(以下省略)
第六十七条
貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、当該貨物の品名並びに数量及び価格(輸入貨物(特例申告貨物を除く。)については、課税標準となるべき数量及び価格)その他必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない。

金の密輸事件で逮捕されたら

密輸事件では、本当に密輸の認識があったか、つまり、運んでいた人が、荷物の中身を本当に密輸になりうる物であったかを認識していたかが争点になることが多いです。

取調べで、認識があったと自白すれば、「後でやっぱり認識がありませんでした」と答えたとしても、誰も信用してくれません。そこで、本当に認識がなかったのであれば、一貫してそのように供述し、また、そうだとすればどういう認識でその物を運んでいたのかをきちんと説明する必要があります。その説明に信用性がないと判断されれば、否認を貫いたとしても、やはり起訴され、有罪になる可能性が高いです。

一方、認識があったのなら、不自然・不合理な弁解に終始するのではなく、きちんと認めて反省の態度を示し、脱税を試みた税金をきちんと納付して、保釈や執行猶予を狙う方針を推奨します。特に、金は一目見れば誰でも金だと判別できますし、重量もかなりありますので、他の物だと思っていたとの弁解は、どうしても不自然・不合理になりがちです。「知りませんでしたで通そう」という安易な考えは絶対にやめましょう

金の密輸事件の事例

密輸事件では、密輸量や脱税額によって量刑に大きな差があり、実刑の事例もあれば執行猶予の事例もあります。両方見ていきましょう。

実刑の事例(東京地判平成16年10月12日)

判決: 懲役3年6月及び罰金5000万円
被告人が他3名と共謀して298回の多数回にわたって合計2896kgもの極めて大量の金地金を密輸入し、総額1億9991万0200円に上る非常に高額の消費税等(消費税合計1億5993万6600円及び貨物割合計3997万3600円)を免れ、未遂には終わったものの、更に3回にわたって32キログラムの金地金を密輸入し、消費税等合計219万3500円(消費税合計175万4900円及び貨物割合計43万8600円)を免れようとしたが、税関職員によって金地金を発見されたため、いずれも、その目的を遂げなかった事例。
同種前科あり(懲役1年8月及び罰金500万円)。

執行猶予の事例(名古屋地判平成30年 5月11日)

判決: 被告人を懲役1年6月執行猶予3年及び罰金50万円
被告人は、A、B、C、D及び氏名不詳者らと共謀の上、シンガポール共和国から金地金を不正に輸入し、これに対する消費税及び地方消費税を免れようと考え、金地金5個(合計5kg)を携行し、空港税関支署旅具検査場において、金地金を輸入する事実を秘し、申告すべきものはない旨の虚偽の輸入及び納税の申告を行い、税関長の許可を受けないで、前記金地金5個を輸入しようとするとともに、不正の行為により保税地域から引き取られる課税貨物である前記金地金5個(課税価格2280万1031円相当)に対する消費税143万6400円及び地方消費税38万7600円を免れようとしたが、職員によって発見されたため、その目的を遂げなかった事例。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回のテーマである金の密輸は、一見何が違法なのかもわかりにくいですが、何が違法で、また、どれくらいの罪の重さなのか、おわかりいだけたでしょうか。
金の密輸は特別法違反の事件であり、取り扱い経験のある弁護士も多い事案ではありません。お困りの際は、ぜひ刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

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