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教師が逮捕されたらどう対応すべきか-失職回避や刑事事件の対応

教師が犯罪行為をして逮捕された、懲戒免職となった、そのようなニュースを日頃聞くことは珍しくないかと思います。

教師という立場でありながら、犯罪行為をしてしまったら今後どうなってしまうのか、教師という自分の立場をなくしてしまうのか、そんな不安を抱いているかもしれません。

教師が犯罪行為をしたらどうなるのか、そもそも教師と教員の違いとは何か、教員免許の剥奪や失効を回避するためには弁護士をつけてどのような弁護活動を行うことが考えられるのか、を解説していきます。

教師が犯罪行為をしたらどうなる-教師と教員の違いとは?

まず、「教師」と「教員」の違いを説明します。
「教師」とは、様々な立場で、ものを教える人のことをいいます。なので、学校で勉強を教える先生はもちろん「教師」ですが、それに限らず、家庭教師など、学校外で勉強を教える人も「教師」です。また、「教師」が教える内容は勉強に限らず、宗教などの指導者も「教師」にあたります。

「教員」とは、教育機関において学生を教育する立場にある人のことをいいます。なので、小学校、中学校、高等学校、大学において学生を教育する立場の人が「教員」にあたります。
つまり、「教師」はものを教える人のことを広く意味し、「教師」の中に、学校の先生である「教員」が含まれる、ということになります。

教師が犯罪行為をした場合にはどうなるでしょうか。
例えば、被害者が生徒である場合等、教師という立場を利用して犯罪行為を行った場合には、犯罪内容がより悪質とされ、重い刑事処分となる傾向にあります。
また、そのような場合でなくても、教師という立場であるにもかかわらず犯罪行為を行った、ということを強く非難され、重い刑事処分となることがあります。
このように、教師という社会的立場がある人とない人とでは、刑事処分の重さに差が出ることがあります。

教師が逮捕されたら

教師が犯罪行為を行って逮捕された場合、その高い社会的立場や、事件内容の社会的影響力の大きさから、実名報道されてしまうことが多いです。特に、国立学校の「教員」は地方公務員ですから、より報道されるリスクが高くなります。

逮捕された場合の流れは、教師という立場があるのとない場合とで異なりません。
逮捕されると、警察署内の施設である留置場にとどめ置かれます。その後、逮捕から48時間以内に警察署から検察庁に身柄が送られます。そして、検察官は、身柄が送られてから、24時間以内に、①さらなる身体拘束を行うために、裁判所に対して、被疑者の勾留を求める請求をするか、②被疑者の勾留を求める請求をせずに釈放するか決定します。

「勾留」とは、比較的長期間身柄を拘束する裁判とその執行のことをいいます。検察官により勾留が請求された場合は、裁判官が被疑者に対して質問を行う手続(勾留質問)を経た上で、裁判官により、勾留するかどうかの決定がなされます。裁判官は、法律上、被疑者が犯罪を行った疑いが認められるか、被疑者による罪証隠滅のおそれがあるか、被疑者が逃亡する危険があるかという点から、被疑者の身体を引き続き拘束するべきかどうかを検討し、検察官の勾留請求を認めるか否かの判断を行います。

これらの判断により、裁判官によって勾留決定がなされた場合には、最大で勾留が請求された日から数えて10日間身体拘束されることとなり(さらに最大で10日間勾留期間が延長されることもあります)、それまでに、捜査機関が必要な捜査を行い、検察官が起訴をするかどうか決定します。このような手続きにより、逮捕されるとまず約3日間の身体拘束がなされ、さらに、勾留決定が認められてしまうと、約20日間の身体拘束期間がなされることになります。

教員免許の欠格事由、懲戒免職等

教員免許の欠格事由については、教職員の免許に関する基準を定めた法律である「教育職員免許法」においてどのように規定されているか見ていきましょう。

教育職員免許法によれば、「禁錮以上の刑に処せられた」者には、教員免許を与えない(同法5条1項3号)とされています。「禁錮以上の刑」とは、禁錮刑、懲役刑、死刑をさし、科料、拘留、罰金は含まれません。つまり、禁錮刑または懲役刑の前科がある場合、そもそも教員になることができません。
なお、懲役刑には、執行猶予付き判決も含まれますので、注意が必要です。

また、教員であっても、「禁錮以上の刑に処せられた」場合(同法10条1項1号、同法5条1項3号)には、教員免許が剥奪されることになります。つまり、犯罪を行ってすぐに教員免許が剥奪されるわけではないですが、裁判を受け、有罪判決を受けて、刑事処分の内容が禁錮以上の刑であった場合には、教員免許が剥奪されてしまいます。

また、公立学校の教員が懲戒免職の処分を受けたときにも、教員免許の効力を失う(同法10条1項1号)と規定されておりますので、この場合にも、教員の地位が失われてしまいます。
どんな場合に懲戒免職となるかですが、国家公務員法では、「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」(国家公務員法82条1項2号)、「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」(同法82条1項2号)と抽象的な規定にとどまっています。教員に対する懲戒処分の考え方については、各都道府県の教育委員会によって指針が示されていることがあります。例えば、東京都教育委員会では、「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」というのが一般に公開されています。そこでは、「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」(令和4年4月1日施行)第2条第3項に掲げられた以下の行為については、原則として免職とする、とされています。
すなわち、原則として免職となる行為とは、以下の通りです。

①児童生徒等に性交等をすること又は児童生徒等をして性交等をさせること
②児童生徒等にわいせつな行為をすること又は児童生徒等をしてわいせつな行為をさせること
③刑法第182条の罪(16歳未満の者に対する面会要求等)、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第5条から第8条までの罪又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条から第6条までの罪に当たる行為をすること
④児童生徒等に次に掲げる行為(児童生徒等の心身に有害な影響を与えるものに限る。)であって児童生徒等を著しく羞恥させ、若しくは児童生徒等に不安を覚えさせるようなものをすること又は児童生徒等をしてそのような行為をさせること
イ 衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の性的な部位(児童ポルノ法第2条第3項第3号に規定する性的な部位をいう。)その他の身体の一部に触れること。
ロ 通常衣服で隠されている人の下着又は身体を撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
⑤ 児童生徒等に対し、性的羞恥心を害する言動であって、児童生徒等の心身に有害な影響を与えるものをすること

教員免許のはく奪や失効は回避できるか

上記で説明したように、教員免許が剥奪されるのは、「禁錮以上の刑に処せられた」場合(同法10条1項1号、同法5条1項3号)になります。なので、教員免許の剥奪を回避するためには、不起訴を目指していくこと、もしくは、不起訴を目指すのが難しいとしても、罰金刑を目指していくことが必要になります。

また、上記で説明したように、教員免許が剥奪されなくとも、教員の地位が失われてしまう場合として、教員免許の失効があります。教員免許が失効してしまうのは、公立学校の教員が懲戒免職の処分を受けたとき(同法10条1項1号)になります。懲戒免職となる可能性が高い類型の行為については、前述したとおりで、これらの行為を行ってしまった場合には、起訴・不起訴に関わらず、懲戒免職の処分を受けて教員免許が失効してしまう可能性が高く、一般的には教員免許の失効の回避は難しいといえます。

教師が逮捕された場合の弁護活動のポイント

上で述べた通り、教員免許の剥奪を回避するためには、「禁錮以上の刑に処せら」れないよう、不起訴や罰金を目指す必要があります。不起訴や罰金を目指すための弁護活動として、被害者のいる事件では被害者との間で示談の成立を目指すことが重要です。被害者がいない事件や、被害者が不詳の事件においては示談をすることができませんが、贖罪寄付などを行うことで、検事が示談に準じたものとして考慮をしてくれることもあります。

また、検事が起訴・不起訴などの判断をするにあたっては、再犯防止の環境が整っているかどうかも重視することがあるので、その環境を整えることも重要です。
性犯罪であれば性依存症治療専門のクリニックへの通院をすることが考えられます。飲酒の上で事件に及んでしまった場合には、アルコール依存症の治療を行うため、専門のクリニックへの通院や、同じくアルコール依存症と戦っている人のためのミーティングに参加することが考えられます。

最近では、ADHD等の発達障害の特性が事件につながってしまった、というケースも多いです。発達障害について専門家の確定診断を受けていない人の中でも、事件を機に発達障害を有するのではないかとの疑いを持つようになる方もいます。そのような場合には、まずは専門機関の受診をしたうえで、再犯防止のための治療や日頃の対策を考えていくことになります。

また、懲戒免職となる可能性が高い類型の行為を行ってしまった場合は、起訴・不起訴の刑事処罰の有無にかかわらず、教員免許が失効してしまうので、これを回避するのは難しいといえます。もっとも、犯罪行為後の事情によっては、懲戒免職を免れる可能性も0ではないので、諦めずに、被害者との示談や再犯防止の環境を整えることが大切です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
教師が犯罪行為をしてしまった場合にどうなってしまうか、イメージが湧きましたでしょうか。
犯罪行為を行ってしまったとしても、一人で考えていては、何も解決策が浮かびません。弁護士に相談して、今後の処分の見通しや、何かできることはないか、アドバイスをもらってはいかがでしょうか。まずはお気軽に、私達弁護士へお問い合わせください。

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