中村国際刑事法律事務所 | 刑事事件の実力派弁護士集団 中村国際刑事法律事務所
お急ぎの方へ メニュー

ひきこもりと犯罪 – 刑事事件に強い弁護士が解説

ひきこもり支援の条例案が埼玉県議会で可決の見通し

埼玉県ひきこもりの支援に関する条例案」は、将来について様々な不安を抱えるひきこもりの当事者や家族に対し、行政や民間支援団体等を通じて、安心して支援を受けることができる社会を推進することを目的として提案されました。令和4年3月25日、埼玉県議会において、「埼玉県ひきこもりの支援に関する条例案」が可決される見通しです。

本コラムは弁護士・中村勉が執筆いたしました。

ひきこもりとは

内閣府によれば、「ひきこもり」とは、様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態と定義されます。
内閣府による平成27年度調査によると、全国の満15歳から満39歳までの人口のうち1.57%にあたる54.1万人が、平成30年度調査によると、満40歳から満64歳までの人口のうち1.45%に当たる61.3万人が、ひきこもり状態にあると推計されています。

このように、「ひきこもり」は、特定の年齢層のみに見られるものではありませんし、特別にめずらしいものでもありません。
「埼玉県ひきこもりの支援に関する条例案」では、ひきこもりの当事者本人の意思を十分に尊重したうえで、ご本人や家族が孤立しないよう、必要に応じて社会とのかかわりをもてるような支援を受けられることを目指しています。

ひきこもりと犯罪に関係性はあるのか

残念ながら、ひきこもりの方が起こした事件のニュースを目にすることもあります。逆に、ひきこもりの方が被害者となる事件のニュースを目にすることもあります。
しかし、だからといって、ひきこもりが犯罪を起こしやすい傾向にある、というわけではありません。むしろ、ひきこもりは長期間社会や他人とのかかわりを回避している状態であり、社会から隔絶された状態にあるため、犯罪から遠いと考えることもできるからです。

もっとも、ひきこもりの当事者がいる家族やその周りの方の中で、ひきこもりの当事者が犯罪加害者となっているのではないかと感じた場合には、早めに相談機関や警察に相談することが大切です。ひきこもりになった原因や置かれている環境によっては、当事者に対する支援へとつなげることが必要な場合があるからです。
そして、支援につながることで、事件の早期解決や、さらなる犯罪が生まれるのを防ぐことができます。

引き出し屋

ひきこもりの当事者が被害者として、犯罪に巻き込まれる場合もあります。それは、例えば、ひきこもりの当事者本人の意思を無視して、ひきこもりの自立支援をうたう業者(いわゆる「引き出し屋」)によって強引に家から引き出され、寮などといった場所に連れていかれる場合が考えられます。

この場合、「引き出し屋」には、暴行逮捕監禁罪が成立する可能性があります。このような「引き出し屋 」は、ひきこもりの当事者のいる家族の、「何とかしたいという気持ち」や「不安」に付け込み、高額な費用を請求することもあります。ひきこもり支援を目的として掲げる民間事業をめぐる消費者トラブルについては、消費者庁が注意喚起を促しています。

家庭内暴力について

ひきこもりに限った話ではなく、家庭という閉ざされた環境の中では、親子間や配偶者間における家庭内暴力に悩まされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ひきこもりにおいても、社会から隔絶され、家庭内での時間が増え密接な時間を過ごす中で、家庭内暴力が起こることがあります。

家庭内暴力に悩まされている場合には、なるべく早い段階で、保健所や精神保健福祉センター等、適切な相談窓口への相談が必要となります。また、身の危険がある、実際に怪我をしたなどの場合には、警察へ通報することが必要な場合もあります。
家庭内暴力であっても、暴行罪や傷害罪が成立するなどして事件性があると判断されれば、家庭内での問題にとどまらず、当事者が逮捕されたり、取調べを受けるなど、刑事手続に乗ることになります。

犯罪が起きてしまったら

「埼玉県ひきこもりの支援に関する条例案」は、ひきこもりの当事者本人とその家族が安心して支援を受けることのできる社会を推進する目的で制定されました。
条例の制定により、今後、行政や民間支援団体等の支援環境の整備も行われることでしょう。ひきこもりにお悩みの方は、まずは、適切な相談機関に連絡することをお勧めします。適切な相談機関と連携し、何かが起こる前に状況の改善を図ることが一番大切です。

また、ひきこもりが必ずしも犯罪に結びつくものではありませんが、ひきこもりに関連して、何らかの犯罪が起こったり、何らかの犯罪に巻き込まれたりする可能性はあります。家庭内暴力により怪我をさせてしまった、「引き出し屋」に無理やり連れ出されて監禁されてしまった等、トラブルや心配事がございましたら、相談機関や弁護士に相談してください。

もし、既に犯罪が起きてしまい、家族が逮捕された、警察から呼出しを受けた等の場合には、刑事手続に対してどのように対応していくべきかを考える必要があります。弁護士に相談をすることで、逮捕された家族の一日も早い釈放を目指したり、警察からの取調べに向けてどのような対応をとればいいかの方針を決めたりすることができます。
私たち弁護士と一緒に、現在置かれている状況を踏まえた、適切な対応策を一緒に考えていきましょう。

更新日: 公開日:

経験豊富な弁護士がスピード対応

刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

このページをシェア