ディープフェイクポルノ|ディープフェイク等の合成ポルノ事件を中村国際刑事の弁護士が解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

ディープフェイクポルノ|ディープフェイク等の合成ポルノ事件を中村国際刑事の弁護士が解説

刑事弁護コラム ディープフェイクポルノ|ディープフェイク等の合成ポルノ事件を中村国際刑事の弁護士が解説

ディープフェイクポルノ|ディープフェイク等の合成ポルノ事件を中村国際刑事の弁護士が解説

 2020年10月,人工知能(AI)の技術を使ってアダルト動画の出演者の顔を女性芸能人の顔にすり替えた,いわゆるディープフェイクポルノを作成し,これをインターネット上にアップロードして公開したとして,男性2名が警視庁と千葉県警に名誉毀損と著作権法違反の疑いで逮捕されました。
 また,その翌月には,ディープフェイクポルノが掲載されているウェブサイトのURLを自身の運営するウェブサイトに掲載したとされる男性3名が警視庁と千葉県警に名誉毀損の疑いで逮捕されました。
 本記事では,そもそもディープフェイクとは何か,ディープフェイクポルノの作成・公開がどのような犯罪に当たり得るのか等につき,説明いたします。

 本コラムは弁護士・宮本萌が執筆いたしました。

ディープフェイクポルノとは

 「ディープフェイク」とは,人間などの脳の神経回路の仕組みを模したニューラルネットワーク(Neural Network)と呼ばれる機械学習アルゴリズムを多層構造化したディープニューラルネットワーク(Deep Neural Network)を用いて行われる人工知能(AI)のディープラーニング(Deep Learning)と呼ばれる深層学習機能を,画像・映像の合成に用いて,偽(フェイク)の映像等を生み出す技術のことを指します。元々映画制作などで活用されていた(AI)技術です。
 残念なことに,数年前,米国において,ディープフェイク技術を用いてポルノ動画の出演者を女優の顔に差し替えた動画がインターネット上で公開されたことをきっかけに,ディープフェイク技術が注目を集めるようになりました。その後,同様の行為が日本を含め世界中で行われるようになり,ディープフェイク技術を用いて作成されたポルノ動画は,ディープフェイクポルノと呼ばれるようになりました。

ディープフェイクポルノの作成・公開につき,成立し得る犯罪及び刑罰

 ディープフェイクポルノは多くの場合,既存のポルノ動画の出演者の顔を芸能人などの他人の顔にすり替えて作られています。また,そのようにして作成した偽のポルノ動画をインターネット上に公開しています。
 したがって,ディープフェイクポルノの作成・公開行為には,名誉毀損,著作権法違反,わいせつ物頒布等の罪が成立する可能性があります。以下,詳しく説明します。

名誉毀損罪

 ディープフェイクポルノには,芸能人があたかも当該動画中の動作を本当に行ったものと視聴者を誤信させるのに十分な精巧さがあります。そのような動画をインターネット上に公開することは,不特定多数の人に対し,当該芸能人があたかもアダルト動画に出演しているように見せて,当該芸能人の名誉,すなわち社会的な評価を低下させるものですので,名誉毀損罪(刑法第230条1項)に当たり得ます。なお,すり替える顔が芸能人である必要はありません。すり替えた顔が一般人であっても,同様にインターネット上に公開すれば,当該一般人の名誉を棄損することになりますので,名誉棄損罪が成立し得ます。
 名誉毀損罪の刑罰は,3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です(刑法230条)。

刑法第230条1項(名誉毀損)

 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

著作権法違反

 著作権のある著作物を著作権者の許諾を得ないで無断で利用する行為は,著作権侵害にあたります。また,著作者に無断で著作物の内容等を改変する行為は,著作者人格権(同一性保持権,著作権法第20条)の侵害にあたります。
 ディープフェイクポルノの多くは,既存のポルノ作品をその著作権者の許諾を得ないで無断で利用し,さらに,それに芸能人等の顔の写真を合成して,著作物である同作品の内容を改変していますので,著作権侵害,著作者人格権侵害に当たり得ます。
 著作権侵害の刑罰は,10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金,またはこれらの併科です(著作権法第119条1項)。
 著作者人格権侵害の刑罰は,5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金,またはこれらの併科です(著作権法第119条2項1号)。

著作権法第119条1項

 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項、第三項若しくは第六項から第八項までの規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権(同項の規定による場合にあつては、同条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第五号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第十項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第六号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

著作権法第119条2項1号

 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 一 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第八項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)

 また,ディープフェイクポルノが掲載されているウェブサイトのURLを自身が運営するいわゆるまとめサイトに掲載する行為は,侵害著作物の利用を容易化するウェブサイトを公衆へ提示する行為ですので,著作権法第119条2項4号により,5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金,またはこれらの併科が科され得ます。

著作権法第119条2項4号

 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 四 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行つた者(当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等と侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等以外の相当数のウェブサイト等(第百十三条第四項に規定するウェブサイト等をいう。以下この号及び次号において同じ。)とを包括しているウェブサイト等において、単に当該公衆への提示の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)

わいせつ物頒布(わいせつ電磁的記録媒体頒布)罪

 ポルノ動画によっては,人の性欲を興奮または刺激させ,かつ,普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反するものと定義付けられる「わいせつ物」に該当します。ディープフェイクポルノという形であっても,「わいせつ物」に該当するポルノな動画をインターネット上で公開する行為は,わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録媒体頒布罪)(刑法第175条1項)に当たり得ます。
 刑罰としては,2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料,または懲役および罰金を両方科される可能性があります(刑法第175条1項)。

刑法第175条1項

 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

わいせつ物所持・保管(わいせつ電磁的記録媒体所持・保管)罪

 販売目的などでディープフェイクポルノを保持・保管した場合には,わいせつ物所持・保管(わいせつ電磁的記録媒体所持・保管)罪(刑法第175条2項)に当たり得ます。
 この場合,わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録媒体頒布罪)と同様の刑罰,すなわち2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料,または懲役および罰金を両方科される可能性があります。

刑法第175条

 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
 2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

ディープフェイクポルノを作成・公開したら逮捕されるか

 ディープフェイクポルノの作成・公開は,以上に見た通り,複数の罪に該当しうる犯罪です。
 そして,冒頭でも紹介したとおり,ディープフェイクポルノを作成し,インターネト上にアップロードして公開した人のほか,ディープフェイクポルノが掲載されているウェブサイトのURLを自身の運営するウェブサイトに掲載した人まで逮捕される事案が見られています。
 特に後者の事案については,被逮捕者が,いわゆる「まとめサイト」の形で当該サイトを運営し,広告収入を得ていたということが報道から分かっています。名誉毀損の成否自体に広告収入の有無は関係ありませんが,広告収入を得る目的でディープフェイクポルノを視聴できるサイトのURLを数多く掲載する行為はより悪質といえますし,拡散性も高いものと考えられます。ですので,警察としては,そのような拡散性の高いサイトを運営している人を優先的に捜査し,場合によっては逮捕するものと考えられます。
 警察の捜査が及んでいない場合,早期の自首によりその後の逮捕などを回避できる可能性があります。警察の捜査が既に及んでいる場合であっても,早めに弁護士に相談・依頼することにより,その後の逮捕を回避できる可能性があります。

ディープフェイクポルノの作成・公開等で逮捕された場合

 警察に逮捕されると,逮捕から48時間以内に検察官へ事件と身柄が送致されます。
 検察官に送致されると,検察官から弁解を録取され,検察官はその弁解や事件記録等をもとに,勾留請求するかどうかを判断し,勾留請求をすることにした場合には,送致を受けてから24時間以内に裁判官に対して勾留請求をします。検察官が勾留請求しないことにした場合にはその日に釈放されることになります。
 基本的に,東京都以外であればその日のうちに,東京都内であれば検察官が勾留請求をした日の翌日に,裁判官と面談します(「勾留質問」と呼ばれます)。裁判官はこの勾留質問や事件記録等をもとに,検察官による勾留請求を認めるかを判断します。
裁判官による勾留決定がされると,検察官が勾留請求をした日からまず10日間勾留されることになります。
 また,勾留期間は検察官が請求し,裁判官がこれを認めれば,もう10日間延長することができることとなっています。
 したがって,一度逮捕されると,逮捕の日から最大23日間,身柄拘束が続く可能性があります。

 当然ですが,身柄が拘束されている間,電話等は使用できませんので,外部との連絡手段が大きく制限されることになります。また,逮捕されて勾留決定されるまでの間は,基本的に家族とも面会できず,弁護士とのみ接見が可能です。
 上記のような流れは,一定程度は警察や検察官等から教えてもらえるかもしれませんが,身柄拘束されている側からすれば,そうスムーズに理解できるわけではなく,不安に駆られた状態が続きます。今後の流れを分かりやすく説明してもらうためにも,また,家族等の外部へ必要最低限の連絡をしてもらうためにも,弁護士との接見は有用です。
 ディープフェイクポルノを作成してしまったり,インターネット上に公開してしまったり,あるいはディープフェイクポルノの視聴ができるサイトのURLを自身の運営するまとめサイトに載せたてしまったりした方は,早めに弁護士に相談・依頼しておくことで,万が一逮捕されてしまった場合に,すぐに接見に来てもらえ,その後の勾留を回避するために迅速に活動してもらうことができます。
 当事務所でも同種事案につき,前もってご依頼いただいていたことで,逮捕後迅速に接見その他の弁護活動をすることができ,勾留を回避できた経験があります。
 前もってご依頼いただいていなくても,お早めにご相談・ご依頼いただければ,即日接見することや勾留回避のための活動をすることはなお可能ですので,ご家族がディープフェイクポルノ関係で逮捕されてしまった場合には直ちに刑事事件の経験が豊富な弁護士にご相談されるようにしてください。

 なお,ディープフェイクポルノの事案は,上述したいずれの犯罪に当てはまる場合であっても,初犯であれば,罰金刑となる可能性が高いでしょう。もっとも,罰金刑であっても,前科となることに変わりはありません。
 ディープフェイクポルノにつき,名誉毀損で立件された場合には,顔の部分を合成された人が,著作権法違反で立件された場合には,著作権者等が被害者として観念できます。これらの被害者との間で示談を成立させることができた場合には,不起訴処分となり,前科を回避できる可能性もあります。もっとも,被害者が芸能人であったり,大きな会社でったりする場合には,加害者自身が示談のためにアプローチをしようとしても相手にされないことが考えられます。少しでも被害者に示談交渉に応じてもらえるようにするためには,弁護士に依頼するのがよいでしょう。

ディープフェイクポルノをダウンロードしたら逮捕されるか

 ディープフェイクポルノは,著作者人格権や著作権を侵害する行為によって作成された物です。そのような物であることを知りながら,頒布の目的をもって所持する行為は,著作者人格権侵害行為ないし著作権侵害行為とみなされ(著作権法第113条1項2号),5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金,またはこれらの併科が科されます(著作権法第119条第2項3号)。
 したがって,ディープフェイクポルノを単にダウンロードするのみならず,これを頒布の目的をもって所持していた場合には逮捕される可能性があります。

著作権法第113条1項2号(侵害とみなす行為)

 次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 二 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為

著作権法第119条2項3号

 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 三 第百十三条第一項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

 また,ダウンロードしたディープフェイクポルノが「わいせつ」の定義に当てはまるものである場合に,その電磁的記録を有償で頒布する目的で保管すると,わいせつ電磁的記録保管罪(刑法第175条2項)も成立し得ます。

ディープフェイクポルノを個人で作成し個人で利用したら逮捕されるか

 個人で利用する目的のみで作成し,かつ,実際にも個人でのみ利用する場合には,逮捕される可能性は低いでしょう。しかし,個人で利用する目的のみで作成したとしても,それを後からインターネット上で公開するようなことをすれば,上記に掲げた犯罪に該当することになり,逮捕される可能性が高くなります。

他人にディープフェイクポルノを送りつけたら逮捕されるか

 当該ディープフェイクポルノが「わいせつ」の定義に当てはまるものであるかにもよりますが,多数人に送りつける行為はわいせつ電磁的記録頒布罪(刑法第175条1項)に当たり逮捕される可能性があります。
 また,特定の者に対する恋愛感情その他の行為の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で,当該特定の者またはその配偶者等に対して,ディープフェイクポルノを送りつけた場合には,ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」といいます。)上の「つきまとい等」に該当し(ストーカー規制法第2条1項8号),警察から警告を受けたり,禁止命令を受けたりする可能性があります。このような送りつけ行為を反復して行った場合には,逮捕される可能性もあります。

まとめ

 以上,ディープフェイクポルノの作成・公開は,様々な刑罰に当たる可能性のある犯罪です。
 実際の逮捕・検挙例もありますので,少しでもお心当たりのある方は,お早めに刑事事件の経験が豊富な弁護士にご相談ください。

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公開日: 更新日:

「わいせつ物頒布」に関する刑事弁護コラム