建造物損壊罪|器物損壊罪との違いや逮捕された場合について弁護士が解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

建造物損壊罪|器物損壊罪との違いや逮捕された場合について弁護士が解説

刑事弁護コラム 建造物損壊罪|器物損壊罪との違いや逮捕された場合について弁護士が解説

建造物損壊罪|器物損壊罪との違いや逮捕された場合について弁護士が解説

 建物のシャッターや壁にスプレーの落書きがされているのを見かけたことはありませんか。あるいは,古い公衆トイレ等のドアや壁の落書きはいかがでしょうか。
 実はこのような落書き行為には,建造物損壊罪が成立する可能性があります。また,建造物損壊罪と似たような犯罪に,現住建造物放火罪や非現住建造物放火罪,器物損壊罪があります。ここでは,建造物損壊罪とこれらの犯罪の違いや,「損壊」の意味について,弁護士が解説します。

 本コラムは代表弁護士・中村勉が執筆いたしました。

建造物損壊罪とは

 建造物等損壊罪は刑法第260条に規定されています。まず,条文をみてみましょう。

刑法第260条

 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

 建造物等損壊罪の対象物は,他人の「建造物」と「艦船」です。
 「他人の」とは他人所有のことを意味しますので,自己所有の建造物や艦船を損壊しても基本的に同罪は成立しません。しかし,自己所有のものであっても,差押えを受け,物権を負担し,賃貸し,又は配偶者居住権が設定されたものを損壊した場合には同罪が成立することになっていますので(刑法第262条),注意が必要です。
 本罪は,艦船も対象物となっている点では,現住建造物等放火罪や非現住建造物等放火罪と共通しますが,これらの放火罪と違い,汽車や電車は本罪の対象物となっていません。
 したがって,例えば,令和3年10月31日発生の京王線刺傷事件の被疑者は,乗客のいる電車に放火して電車を焼損させたともされていますが,現住建造物等放火罪は成立しても,建造物等損壊罪は成立せず,後述する器物損壊罪が成立するにとどまります。
 もっとも,現住建造物等放火罪の法定刑は,「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」という殺人罪(刑法第199条)と同じ重い刑になっていますので(刑法第108条),上記被疑者が同罪で立件され起訴された場合には別途器物損壊罪では立件等されないでしょう。

 「建造物」とは,壁又は柱によって支えられていて,屋根を有する工作物であって,土地に定着し,少なくとも人がその内部に出入りすることのできるものをいいます(大審院大正3年6月20日判決)。
 ですので,例えば,棟上げが終わっていても,未だ屋根を有するに至っていない物件は建造物に当たりません(大審院昭和4年10月14日判決)。このような物件を損壊した場合,後述する器物損壊罪が成立するにとどまります。
 本罪にいう「損壊」とは,その物の効用を害する行為とされています。したがって,「損壊」という言葉から一般的に想像されるような,物を物理的に壊す行為のみならず,物を著しく汚損する行為も「損壊」行為として本罪により罰せられる可能性があります。詳しくは,後述する建造物損壊罪の判決事例をご覧ください。
 なお,「よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」とされていますので,建造物を損壊し,それにより人を傷害した場合には15年以下の懲役となり,それにより人を死なせた場合には3年以上の有期懲役となります。

器物損壊罪とは

 建造物等損壊罪と似た犯罪で器物損壊罪があります。器物損壊については刑法第261条に規定されています。

刑法第261条

 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 器物損壊罪の対象物は,「他人の物」です。
 「前三条」すなわち,刑法第258条,第259条,第260条に規定されている公用文書等や私用文書等,そして建造物,艦船については,それぞれの規定で罰せられることになりますが,これら以外の物を損壊した場合は,器物損壊罪で罰せられることになります。
 「他人の」とは他人所有のことを意味しますが,建造物等損壊罪と同じく,自己所有のものであっても,差押えを受け,物権を負担し,賃貸し,又は配偶者居住権が設定されたものを損壊した場合には器物損壊罪が成立します(刑法第262条)。
 器物損壊罪にいう「損壊」とは,建造物等損壊罪と同じく,その物の効用を害する行為のことをいいます。
 建造物等損壊罪と違い,器物損壊罪では「傷害」する行為も規定されていますが,これは,同罪の対象として,動物をも念頭においているからです。

建造物損壊と器物損壊の違い

対象物について

 建造物等損壊罪と器物損壊罪の対象物の区別は上述したとおりですが,建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の対象に該当するか否かは,その物と建造物との接合の程度のほか,建造物における機能上の重要性を総合考慮して決定され(最高裁判所平成19年3月20日上告審判決),場合によっては建造物損壊罪の対象とはならず,器物損壊罪で罰せられます。
 過去の判例では,取り外すことが機能的にも予定されている,ガラス障子や雨戸・板戸,竹垣等は建造物に含まれず,器物損壊罪の対象となるにとどまると判断されています(大審院明治43年12月16日判決,大審院大正8年5月13日判決,大審院明治43年6月28日判決)。

罰則について

 建造物損壊が5年以下の懲役という罰則であるのに対し,器物損壊は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料と定められているように,建造物損壊の方が,懲役の上限が重く罰金の定めがありません。
 また,建造物損壊の方には致死傷罪が定められており,非親告罪のため,告訴がなくても検察は起訴することができます。これに対し,器物損壊は親告罪のため,告訴がなければ検察は起訴することができません。

建造物損壊罪の事例

他人の住居の外壁,車庫のシャッター等に緑色の合成塗料を吹き付けて落書きした事例

 門扉両脇に設置された外壁およびシャッターの,建造物との接合の程度および建造物における機能上の重要性を検討した上で,外壁およびシャッターは建造物の一部であるとされ,建物の有する住居としての特質や,落書きの位置等を検討した上で,落書きの範囲自体はそれほど大きいとはいえないものの,建物の外観ないし美観を著しく汚損し,かつ現状回復に相当の困難を生じさせたものと認められ,建物の効用を減損させたとされ,損壊に該当するとして,建造物損壊罪の成立が認められた。(広島高等裁判所平成19年9月11日控訴審判決)

他人の玄関ドアを金属バットで叩いて凹損した事例

 建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは,当該物と建造物との接合の程度のほか,当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべき。住居の玄関ドアとして,外壁と接続し,外界との遮断,防犯,防風,防音等の重要な役割を果たしている物は,適切な工具を使用すれば損壊せずに取り外しが可能であるとしても,建造物損壊罪の客体に当たるとされた。(最高裁判所平成19年3月20日上告審判決)

公園内に設置された公衆便所の白色外壁に,ラッカースプレーを用いて大きい落書きをした事例

 建物の外観ないし美観を著しく汚損し,原状回復に相当の困難を生じさせたものであり,その効用を減損させたものとして損壊にあたるとされた。(最高裁判所平成18年1月17日上告審判決)

建造物損壊罪で逮捕されたら

 建造物損壊罪で逮捕された場合,被害の大きさ,被疑者の自宅から当該建造物までの距離,被疑者の身元引受人の有無等によっては,勾留請求され,身柄拘束が長く続く可能性があります。
 すでに述べたとおり,建造物損壊罪は懲役刑のみで罰金刑が定められていませんので,器物損壊罪と違って略式罰金で終結する道がありません。したがって,勾留満期日の数日前までに被害者との間で示談が成立しないと,公判請求されてしまう可能性が高いです。
 ご家族が建造物損壊罪で逮捕された場合には,まさに時間との闘いになりますので,早急に弁護士にご相談ください。
 なお,被害者は,被疑者本人やそのご家族に自分の連絡先を教えたくないのが通常ですし,警察や検察も,被疑者本人やそのご家族へ被害者の連絡先の取次ぎは行わないのが通例です。ですので,示談をするには弁護士が欠かせないと言っても過言ではありません。 
 また,仮に被疑者側が被害者へ接触することが可能な事案であったとしても,被害者の感情に配慮し,直接の示談交渉は避けるべきです。直接接触したがために,さらに被害者の反感を買い,示談が不可能となることもあります。被害者との示談を望むのであれば,逮捕されていない事案であっても,弁護士に相談されるのがよいでしょう。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。建造物損壊罪の「損壊」に当たる行為には様々の軽重の行為がありますが,罰金刑が定められておらず,親告罪にもなっていない点で,器物損壊罪とは扱いが大きく異なります。比較的軽微な事案だから「起訴されないだろう」と思って放っておくのは危険です。逮捕まではされていなくても,建造物損壊罪の容疑等で警察や検察から呼出しを受けているのであれば,お早めに弁護士にご相談ください。

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公開日:

「建造物損壊罪」に関する刑事弁護コラム

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