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不同意わいせつで不起訴を目指す弁護

不同意わいせつで不起訴を目指す弁護

強制わいせつ罪をはじめとする性犯罪は、被害者の心身を深く傷つける重大な犯罪です。ニュースなどで不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪で被疑者が逮捕されたなどの報道に接すると、何て卑劣な犯人なんだと怒りに駆られる方も多いのではないでしょうか。

一方で、恋愛関係にある男女や、そうでない間柄だとしても、お互いの同意を得てキスをしたり、相手の体に触れたりという行為は、お互いが了承している限り許されることでもあります。そのため、相手の同意を明確に確認せずに焦って事を進めた結果、相手を大きく傷つけてしまい事件に発展することも珍しくありません。

特に現代では、マッチングアプリやSNSを通じた出会いが一般化し、見知らぬ二人が恋愛や性的行為を目的として出会うことは非常に多くなりました。そのような場面で相手の気持ちをきちんと確かめないままわいせつ行為に及び刑事事件化する例が非常に増えています。
もしあなたが不同意わいせつ罪を疑われるような行動に出てしまった場合、それを無かったことにはできませんが、弁護士に相談して適切な対処をすることで、被害者の方と示談をしたり、不起訴処分を得て前科がつくのを回避したりすることができる可能性があります。
大切な家族が捕まっている方の場合には、弁護士に依頼することで前科や失職を回避することができる可能性が高まります。

不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)で不起訴処分を得るためにはどんなことが必要か、弁護士・坂本一誠が解説いたします。

不同意わいせつ(旧強制わいせつ)とは

不同意わいせつ罪は、刑法176条で定められています。同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じてわいせつな行為をした者について、不同意わいせつ罪が成立すると規定されています。

刑法第176条1項
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

「わいせつな行為」とは、「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断」するとされています(最判平成29年11月29日刑集71巻9号467頁)。
被害者の意思に反してキスをしたり、胸や陰部を直接触ったり舐めたりする行為が代表例です。

たとえば、被害者にわいせつ行為に対する同意がある場合には、そのようなわいせつ行為は被害者の性的自由を侵害するものではありませんので、不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)は成立しません。そのため被害者の同意がないことも不同意わいせつ罪の要件となります。

ちなみに、旧強制わいせつ罪では、暴行または脅迫が要件とされていましたが令和5年の法改正により旧強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪へと変更され、暴行や脅迫を用いた場合以外にも様々な状況が当てはまることになりました。
ですから、暴力を振るっていないからとか、強引にしていないから犯罪は成立しないと考えるのは大きな誤りで、明確に同意を得たうえで性的な行為に及ぶ必要があります。

不同意わいせつ(旧強制わいせつ)で不起訴になる条件とは

刑事手続においては、警察が必要な捜査を遂げた後、事件記録を検察官に送致します。
送致を受けた検察官は、必要があれば追加で捜査を行った上、起訴・不起訴の決定をします。不起訴処分を行う場合には、基本的に嫌疑不十分を理由とする場合と、起訴猶予を理由とする場合に分かれます。

嫌疑不十分とは、検察官が必要な捜査を遂げた結果、被疑者を有罪とするには合理的な疑いがあり、有罪の疑いが不十分であると検察官が判断した場合を意味します。この場合、公訴を提起したとしても無罪となる可能性があるため、検察官は嫌疑不十分を理由に不起訴処分とします。不同意わいせつ事件では、例えば被害者の供述するわいせつ行為の内容が話すたびに変わってしまい信用性に疑問があるとか、被害者が犯人の顔を見ておらず、DNAなどの客観証拠もないため被疑者が犯人であるとの証拠が不十分である場合が該当します。

起訴猶予とは、被疑者が罪を犯したことが証拠上明白であっても、被疑者の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重と情状、犯罪後の情況により訴追を必要としないと検察官が判断する場合に、起訴を猶予して不起訴とすることです。

不同意わいせつ事件の場合、被疑者自身が罪を認めており、その他の証拠からも不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)に当たる事実の存在は明らかなものの、被疑者と被害者の間で示談が成立し被害者が被疑者の処罰を求めていないという場合には、起訴猶予を理由とする不起訴処分となることが多いです。

以上を踏まえると、不起訴処分となるためには、検察官において有罪とする証拠が不十分であると判断するか、被害者との間で示談が成立し被害者が被疑者の刑事処罰を求めていないことが必要になるといえます。

不同意わいせつ罪は、薬物犯罪や窃盗罪などと異なり、不起訴か実刑かの二者択一の側面があります。薬物犯罪などでは、不起訴を得られずに仮に起訴になったとしても、初犯であれば執行猶予判決となって刑務所に行かなくても済みますが、わいせつ系の犯罪では仮に捜査段階で示談を獲得できず、起訴になってしまった場合には、執行猶予を通り越していきなり実刑となってしまうことが多いのです。ですから、専門的な私選弁護士は起訴になってから探せば良いと考えるのではなく、捜査段階から示談の経験豊富な弁護士を探すことが大切です。

不同意わいせつ(旧強制わいせつ)で不起訴となる弁護活動

不同意わいせつの事案で不起訴処分を得るために最も大切な弁護活動は、被害者との間で示談交渉をして示談を成立させることです。

まず、依頼人である被疑者が罪を認めており、検察官も不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪を証明するための証拠が十分であると考える場合、嫌疑不十分を理由とする不起訴は考えられないため、起訴猶予を理由とする不起訴を目指すしかありません。そのためには被害者との間で、被害者が被疑者を許して刑事処罰を望んでいないという内容の示談を締結する必要があります。

被害者が被疑者の知人の場合など、既に被害者の連絡先が分かっている場合には、弁護人が連絡を取って示談交渉を行います。被疑者が携帯電話を警察に押収されるなどして被害者の連絡先が分からなかったり、赤の他人が被害者である場合には、弁護人から警察官や検察官に被害者の連絡先の開示を依頼し、捜査機関が被害者にその旨を伝えて被害者の許可が得られた場合には、弁護人が被害者の連絡先を知ることができます。その後、弁護人が被害者と連絡を取り、直接面談するなどして示談交渉を行います。

交渉に当たっては、事件によって肉体的・精神的被害を受けている被害者の感情に配慮した丁寧かつ慎重な対応が大切です。被害者の方の感情は事案によって様々です。被疑者に対する怒りをありのまま弁護人に伝える方もいれば、深い悲しみや事件の生活への影響を涙ながらに語る方もいます。あくまで被疑者の権利・利益を守る弁護人ではありますが、被害者の感情や辛さを理解する姿勢を伝えて丁寧に話し合いを行うことが必要なのです。

依頼人である被疑者が不同意わいせつ(旧強制わいせつ)の事実を否認しており、冤罪である場合であっても、示談交渉を行うことがあります。
この場合、被害者とされる相手方には、こちらの依頼人はわいせつ行為をしたとは考えておらず、起訴された場合には無罪を主張するつもりであることを伝えます。そして、その場合には相手方が証人として出廷し法廷で証言しなければならない可能性が高いことを伝え、一定の金銭を解決金として受け取り、刑事裁判を避けることに納得できるのであれば示談に応じてもらえるように説得をします。
こちらが罪を認めて示談を申し入れるわけではありませんので、示談交渉が奏功せず起訴されたとしても、一貫して無罪の主張をすることができます。もし示談が成立すれば、罪を認めている場合と同じように不起訴処分となる可能性が高いため、上記のような交渉が有効となります。

示談交渉の他に、取調べへの適切な対応について依頼者にアドバイスをすることも不起訴処分を目指すうえで弁護人の重要な役割です。取調べでは、事件に関して様々な質問をされた後、被疑者が供述した内容を取調官が書面(供述調書)にまとめ、被疑者に署名押印を求めてきます。一度署名押印すると、後からその内容が事実ではないと公判で主張することは容易ではありません。署名押印は拒否することができます。また、そもそも取調べで供述して捜査機関に情報を与えること自体が被疑者にとって不利になるケースもあります。

そのため、取調べで供述をするのかどうか、供述をするとして供述調書に署名押印をするのかどうかについては、弁護人と被疑者がよく協議をし、被疑者自身がそれぞれの対応策のメリットとデメリットをよく理解して、方針を決定した上で取調べに望む必要があります。このような取調べのサポートも、不起訴を目指す上で重要な活動です。

不同意わいせつ(旧強制わいせつ)で不起訴を獲得した事例

当事務所で取り扱った不同意わいせつ(旧強制わいせつ)事件で、不起訴処分を獲得した事例を一部ご紹介いたします。

まとめ

以上のように、不同意わいせつの事案で不起訴を目指すために重要なことについて、解説をしてきました。
不同意わいせつは被害者の性的自由を侵害する重い犯罪で、実際に事件が起きてしまった場合にはそのことが許されるわけではありません。令和5年の法改正に伴い厳罰化の動きも強まっています。
しかしながら、弁護人が適切な活動をすることで、被害者の方も納得をしたうえで示談を成立させて不起訴になる事例が多くあります。

そもそも身に覚えがない場合には、取調べや示談について適切な対応を取ることで、不起訴の可能性を高めることができます。
警察から不同意わいせつの疑いで捜査を受けている方や、ご家族が不同意わいせつで逮捕された方は、速やかに弁護士にご相談ください。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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