盗品等関与罪の該当行為を弁護士が解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

盗品等関与罪の該当行為を弁護士が解説

刑事弁護コラム 盗品等関与罪の該当行為を弁護士が解説

盗品等関与罪|該当行為について刑事事件に強い弁護士が解説

 窃盗罪の捜査手法の一つとして,古物商捜査,いわゆる質屋に赴いて不審な質入の洗い出しというものがあります。被害届が出ている,例えば高級腕時計や宝石などは,盗んだものはほぼ間違いなく換金するので,換金先の質屋等を割り出すことで犯人が特定されます。品物を質入などして換金するときは,身分証の提示が求められるので,質入した者の特定は容易なのです。
 ここで,実は自ら盗んだ訳ではないけど,それを譲り受けて,更に換金するということが行われ,窃盗罪の犯人として事情聴取を受けることがあるのです。仮に,窃盗犯人との濡れ衣を晴らせても,次に,盗品等関与罪の被疑者として立件されることがあります。

 今回はこの盗品等関与罪について代表弁護士・中村勉が解説いたします。

盗品等関与罪の成立要件と類型

 盗品等関与罪は,刑法で次のように規定されています。

刑法第256条(盗品譲受け等)

 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の懲役に処する。
 2 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処する。

 それでは順番に見ていきましょう。
 まず,「盗品その他財産に対する罪」とは,財産犯であればよく,具体的には,窃盗,強盗,横領,詐欺,恐喝はこれに当たります。当然,単純な強盗や横領に限らず,強盗殺人や業務上横領,遺失物横領なども含みます。
 ただし,「背任行為により領得された物」は否定されています。また,偽造文書,偽造貨幣,賄賂,密輸品などは「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たりません。

 次に,盗品等関与罪の類型を見ていくと,1項では無償譲受け,2項では運搬,保管,有償譲受け,有償処分あっせんが規定されています。

無償譲受けとは

 「無償譲受け」とは,贈与,無利息の消費貸借など,単純に本犯(元になる窃盗などの財産犯)の利益にあずかる行為のことをいいます。贈与等の契約の成立だけでは足りず,盗品等の受け渡しを受けることが必要です。

運搬とは

 「運搬」とは,盗品等の所在を移動させることをいいます。有償,無償は問いません。盗品等と認識しつつ本犯の利益のために運べばこれに該当し,判例は,本犯の利益のために,盗品の返還を条件に被害者から多額の金員を得ようと被害者宅に盗品を運ぶ行為についても,運搬罪の成立を認めています(最決昭和27年7月10日刑集6-7-876)。

保管とは

 「保管」とは,委託を受けて本犯のために盗品等の占有を得て管理することをいいます。委託者は本犯である必要はありません。預かったものが盗品だと後で知ったものの,そのまま預かり続けた場合も,法律上返還を拒否できる場合や返還が不可能な場合を除き,知情以降は保管罪が成立することには注意が必要です(最決昭和50年6月12日刑集29-6-365)。

有償譲受けとは

 「有償譲受け」とは,売買に限らず,交換,債務の弁済,利息付き消費貸借等を全て含む有償取得のことをいいます。さらに,本犯から直接取得する場合のほか,転売によって取得した場合にも成立します(大判昭和8年12月11日刑集12-2304)。本犯から有償取得した者からの有償所得も同様です(大判大正6年4月14日新聞1251-27)。
 ここでも,契約の締結では足りず,財物の引渡しが必要です(大判昭和14年12月22日刑集18-572,最判昭和24年7月9日刑集3-8-1193)。
 ただし,保管の場合と異なり,財物の引渡し後に盗品であると認識した場合は,有償譲受け罪は成立しません。また,盗品であることを知って有償取得した場合でも,被害者に変換する目的でこれを取得した場合は,有償譲受け罪は成立しません(東京高判昭和28年1月31日東時3-2-57)

有償処分あっせんとは

 「有償処分あっせん」とは,売買,交換,質入れ等の有償の法律上の処分を媒介・周旋する行為のことをいいます(大判大正3年1月21日刑録20-41)。あっせん行為自体は,有償,無償を問わず(最判昭和25年8月9日刑集4-8-1556),本犯の名義で行うか行為者の名義で行うかも問いません。
 また,直接売買等の相手方と交渉しなくても,他人に依頼して交渉させ盗品の売買を媒介した場合も含みます(大判大正3年1月21日刑録20-41,高松高判昭和29年5月27日高集7-6-860)。あっせん行為が行われれば足り,現に売買等が成立する必要はありません(最判昭和26年1月30日刑集5-1-117)。盗品の被害者を相手にあっせんする行為も本罪に当たります(最判平成14年7月1日刑集56-6-265)。

盗品等関与罪の論点

 これまで,盗品等関与罪の無償譲受け・運搬・保管・有償譲受け・有償処分あっせんの5つの類型について,個別に様々な論点を解説してきましたが,全体に共通する主な論点についても解説してきたいと思います。

盗品等の同一性

まず,盗品等の同一性という論点について解説します。盗品等関与罪が成立するためには,問題となっている盗品等の同一性が必要です。例えば,盗品等を換金して得られた金銭は,もうその盗品等との同一性を失っており,本罪の客体にはなりません。
 ただし,絶対に盗品等そのものの形が残っていなければならないわけではありません。
 例えば,判例では,盗品等が金銭の場合,両替した金銭についても本罪の客体になるとされています(大判大正2年3月25日刑録19-374)。判例では,他にも,貴金属類を溶解して金塊としたり(大判大正4年6月2日刑録21-721),自転車のサドルを外して他の自転車に取り付けたり(最判昭和24年10月20日刑集3-10-1660),木材を製材した場合などについても(大判大正13年1月13日刑集3-38),盗品等関与罪の成立が認められています。
 このように,その物の本質的部分に変更があったか否かが個別具体的に判断されています。

盗品性の認識

 次に,盗品性の認識という論点について解説します。刑法で処罰される犯罪は,一部の過失犯を除き,原則故意犯であり,盗品等関与罪も例外ではありません。
そこで,盗品等関与罪の成立には,客体が盗品等であることの認識が必要になります。問題はどの程度の認識が必要かという点です。
 判例では,本犯について,いつ誰が行ったもので,被害者が誰かなどの認識は不要であり(最大判昭和24年10月5日刑集3-10-1646),未必的な認識で足りるとされています(最判昭和23年3月16日刑集2-3-227)。「未必的な認識」と言われてもあまりピンとこないかもしれませんが,要するに,「盗品等かもしれない」という認識で足りるということです。
 実務上はこの認識が争点になりやすく,後でも述べるとおり,弁護活動のポイントになってきます。また,トラブルを回避するという観点では,少しでも盗品等かもしれないと思ったら,その物を譲り受けたり,保管したりするのはきっぱりと断るべきでしょう。

盗品等関与罪の罰則

 先ほどの条文を見ると,無償譲受けについては,3年以下の懲役,運搬・保管・有償譲受け・有償処分あっせんについては,10年以下の懲役及び50万円以下の罰金との法定刑であることがわかります。
 ポイントは,いずれにしても懲役刑が予定されている点です。
 例えば,窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法235条)。つまり,窃盗罪の場合は,懲役刑か罰金刑のどちらかだけが予定されているため,罰金刑だけで済んだということが実務上はよくあります。
 そして,罰金刑の場合は略式手続で処理することができるので,実務上は正式裁判を受けることなく,書面上の手続のみで済む場合が多いです。
 ところが,盗品等関与罪の場合,無償譲受けについてはそもそも罰金刑が定められておらず,運搬・保管・有償譲受け・有償処分あっせんについては「及び」の文言からわかるとおり,懲役刑と罰金刑の両方が予定されているため,いずれにしても懲役刑が予定されていることがわかります。懲役刑の場合,略式手続は使えませんので,正式裁判が開かれ,公開の法廷に出頭しなければなりません。
 つまり,盗品等関与罪の法定刑は軽くありません。むしろ窃盗罪より重いと考えてよいでしょう。

盗品等関与罪での弁護活動

 盗品等関与罪は,直接被害者から物を盗んだり騙し取ったりする犯罪ではありません。
 しかし,盗品等関与罪は,盗品等の占有を不法に取得し,所有者の物に対する追求権の講師を困難にする犯罪であり,判例上もこのような追求権が本罪の中心的な保護法益であると考えられています。
 そこで,直接被害者から物を盗んだりしていないとしても,被害者がその物を取り戻すことを妨げているということについて,被害者に対する謝罪や賠償が必要になってきます。つまり,もし盗品等関与罪を犯したことを認めるのであれば,被害者に対する示談交渉が弁護活動のメインになります。
 これに対し,盗品等関与罪を犯したことを認めない場合は,どのように,またどのような事情を使って否認の主張をしていくのかを組み立てることが弁護活動のメインになります。盗品等関与罪が成立するためには,先ほど述べたとおり,盗品性の認識が必要であり,逆に言えば,その物が盗品等であることを知らずに譲り受けたり,保管していた場合には,犯罪の故意がないことになり,盗品等関与罪は成立しません。とはいえ,「知りませんでした」といくら主張しても,その弁解が信用されず,不自然不合理と認定されれば,やはり有罪になってしまいます。
 そのため,「知りませんでした」との主張が自然かつ合理的であるとの主張をなるべく色々な周辺事情を使ってしていく必要があるのです。
 結局のところ,盗品等関与罪で検挙された場合,認めるとしても認めにないとしても,弁護士を付ける必要性は高いでしょう。認める場合の示談交渉は,単に物を直接被害者から盗んだ場合とは異なりますので,単純な窃盗罪などに比べて交渉は難しくなり,自分で交渉するのはハードルが高いです。認めない場合に組み立てる主張も,どのような事情が有利・不利かを判断し,さらにそれぞれの事情のうちどれが重要かを判断して,それをどのように主張していくかといった難しい法的な考え方をする必要があるため,弁護士のアドバイスなしでは現実的には難しいです。
 さらに,先ほど述べたとおり,懲役刑が予定されており,比較的重い法定刑であることも無視できません。一度起訴されれば,そこから示談を成立させても起訴が取下げられることはありませんし,無罪主張をするとしても,裁判官に無罪判決を出してもらうのは検察官に不起訴にしてもらうのに比べて格段にハードルが高くなります。
 盗品等関与罪は,起訴が決まる前にあらゆる弁護活動を尽くし,不起訴を狙う必要性が非常に高い犯罪であるといえるでしょう。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。盗品等関与罪は,窃盗罪や詐欺罪のように誰でも知っているメジャーな財産犯ではないかもしれません。
 しかし,盗品等関与罪は,「かもしれない」という認識でも犯罪が成立するので,よく気を付けないと自分が加害者になってしまう可能性があり,しかも法定刑が軽くないため,このような犯罪が刑法で定められているということは,この機会に覚えておくことをお勧めします。
 もし,盗品等関与罪で検挙された場合は,とにかく早く弁護士に相談した方が良いでしょう。特に,盗品性の認識を争う場合,一度認める内容で供述調書が作成されてしまうと,後からそれを覆すことは難しくなってきます。その点についての供述調書作成前に弁護士のアドバイスを受けることが極めて重要といえるでしょう。
 まだ警察沙汰になっていないとしても,お困りの方,ご心配の方は,お気軽に弁護士へご相談ください。

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