盗撮事件における示談とは|盗撮被害者との示談交渉を弁護士が解説
盗撮事件を起こしてしまった場合,どのように対応するのが適切でしょうか。
被害者に気付かれて警察に連れていかれ,取調べを受け,自身が犯した罪に対して向き合うために弁護士をお探しでしょうか。警察の捜査はされていないが盗撮行為を行ってしまい,被害者との示談をお考えでしょうか。
警察の取調べを受けて,その日に釈放になった場合でも,そのまま放置していると気付かぬうちに前科がつくことは避けられない状態になっている可能性もあります。
今回は,盗撮事件での被害者との示談交渉について刑事事件を多く取り扱ってきた弁護士が解説いたします。
本コラムは代表弁護士・中村勉が執筆いたしました。
盗撮の示談交渉活動とは
ご本人が盗撮の事実を認めている場合,弁護士は被害者との示談を目指します。
加害者本人と被害者の方が,直接示談交渉をすることは,現実的に考えて極めて困難です。加害者が直接被害者と連絡を取り合うこととなれば,報復をするおそれもありますし,脅迫するなどして証拠隠滅を図るおそれもあるので,警察官や検察官は,通常,加害者やその家族に対して,盗撮の被害者の連絡先を教えません。
また,仮に連絡を取れたとしても盗撮のような性的犯罪の場合,盗撮の犯人に対する被害感情が厳しいことが多いですし,建造物侵入罪を伴う盗撮行為の場合には,建物の責任者等を相手とする示談交渉をも同時に進める必要があるため,加害者側が直接示談交渉を成功させることは難しいと言わざるを得ません。
したがって,法律のエキスパートであり,公正・公平な立場から示談交渉に臨むことのできる弁護士が示談交渉に関わることが盗撮事件の解決に向けて重要となってきます。
また,弁護士による示談交渉が成功すれば不起訴処分を得られる可能性も高まります。不起訴処分を得られれば罰金刑とは異なり前科がつくことにはなりませんので,ご本人にとっては社会復帰に向けた大きな一歩となることでしょう。
そして,何よりも被害者感情に配慮した示談交渉をする必要があります。決して盗撮の被害者をさらに傷つけたり強引ともいえる示談獲得はいたしません。そのようにして得られた示談は一見すると依頼人に有利に見え,依頼人にとって頼もしい弁護士に映るかもしれません。しかし,示談成立の報告を受けた検察官は必ず被害者に示談状況について聴取確認し,無理な示談説得がなされていないかなど弁護士の示談活動を事後的にチェックします。そこで検察官に「問題あり」と思われてしまうとせっかくの示談成立も何ら効果のないものになってしまいかねないのです。示談はお互いの合意ですから双方にとって納得のいくものでなければなりません。
弁護士は粘り強く,しかし誠意を示すことを常に忘れずに被害者の方を説得する,これが中村国際刑事法律事務所の示談の進め方です。
盗撮事件の示談金
盗撮事件を起こしてしまった場合,大体どのくらいの示談金を用意すればよいのかという点の関心が高いと思われます。しかし,示談交渉において適正価格というものはありません。
事件の重大性や被害者の気持ちが重要となりますので,同じような事件でも示談金の額が違うということはよくあります。中村国際刑事法律事務所で扱った盗撮事件では,20万円~80万円で示談締結に至っているケースが多いです。
ただし,示談金が100万円もしくはそれ以上の金額になる事案も存在しますので,ケースバイケースです。
示談金が高額になるケースとしては,被害者が未成年者であった場合や,盗撮以外にも建造物侵入罪が成立する場合があります。
被害者が未成年者の場合は,保護者との示談交渉になります。そのため,被害感情や処罰感情は強くなる傾向があります。また,盗撮目的での建造物侵入罪が成立した場合にも示談金は高額になる傾向があります。その場合,盗撮の被害者だけではなく,建物の管理者や責任者との示談交渉も必要だからです。
仮に,示談が成立したとしても,事案によっては起訴される可能性もあります。
起訴されて有罪判決が言い渡される場合,東京都に定められている迷惑防止条例違反のケースでは,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されることとなりますが,初めて起訴される事例では30万円前後の罰金刑となることが多いです。なお,検事が罰金刑を相当と考えているケースで,ご本人が盗撮の事実を認めている場合には,通常,略式裁判といって書面のみによる簡易的な裁判手続がとられます。
示談書の記載事項
示談は口頭でも成立しますが,示談したことの証拠を残すため,示談書を取り交わすのが通例です。中村国際刑事法律事務所においても,後に検察官の説得に使用するので,必ず示談書を取り交わします。
内容としては,被疑者の謝罪や示談金をいくら支払い,被害者が示談金を受け取ったこと,示談金の支払いを条件に被害届の取下げてもらうことや,宥恕文言(許すという意味)などを示談書に明記することが多いです。その他にも,多くの場合,民事的観点からも紛争が起きないよう,お互いに他の債権債務が存在しないことを確認する清算条項を明記します。
示談は,被害者の今後の生活における不安を軽減できなければ,成立させるのが困難です。そのため,多くの場合,示談金の明記や清算条項だけではなく,「××駅には近寄らない」といった行動制限や,被害者には接触しないという接触禁止事項も設けます。場合によっては,被害者の不安をより軽減するため,違反した際の違約金条項も設けます。もちろん被疑者であっても今後の生活がありますし,被害者への謝罪と今後の生活については分けて考えるべきですが,被害者の気持ちを尊重し,ご自身の対応可能な範囲内で真摯に対応することが,示談成立に繋がります。
また,盗撮事件の示談での特徴として,盗撮したデータの存在があります。警察に渡した証拠品以外にクラウド上や別の端末にも保管していないことや,データに関するすべてを削除したという事情などを示談書に盛り込んでおくと,データの流出の可能性もなくなり,加えて今後のトラブルを防ぐことができます。
このように事件によって示談書の文言を工夫する必要があります。前述したように,弁護士による示談交渉が成功し示談が成立すれば,不起訴処分を獲得できる可能性も高まります。
検事との折衝
以上のような弁護活動を通じて示談書をはじめとする様々な証拠資料を整え,場合によってはご本人様の反省の情を表した陳述書等もそろえて,不起訴(起訴猶予)を目指して検察官の説得にかかります。
検察官は被害感情や反省の情,さらに再犯可能性など盗撮事件に関するありとあらゆる事情を総合して処分を決定しますが,示談が成立していることは起訴猶予とするもっとも大きな事情です。さらに,盗撮における再犯のおそれがないことを示すため,家族の監督状況や専門クリニックへの通院状況等の疎明資料をも提出して検察官を説得します。
中村国際刑事法律事務所は元検事が率いる事務所ですので,検察官が事件に対してどのような印象を持ちどのような処理方針をもって捜査しているかを具体的にイメージしながら弁護活動を展開します。
単に抽象的に温情を求めるのではなく事例に即した弁護活動を行い,その成果を具体的に示して,処罰感情の緩和や本人の反省悔悟の深さ,そして再犯可能性の低さなどについてアピールする活動を行います。
盗撮再犯の予防サポート
盗撮は再犯可能性の高い犯罪類型です。
ご本人やご家族にとっての最大の利益は,再び盗撮に手を染めることなく,以前と変わらない日常生活・社会生活を営むことに他なりません。そのためには不起訴処分やより軽い刑を得るような弁護活動だけでは不十分です。むしろ自ら犯した犯罪事実を真摯に反省し,盗撮被害者に心から謝罪することに加え,再犯防止に向けた精一杯の努力を,必要に応じて専門的なサポートを受けながら,処分決定後も継続していくことこそが重要なのです。
盗撮は窃視症ともいわれる一種の病気である可能性が高いとも言われています。弊所では,再犯防止に向けて医療専門機関と提携・協力し,ご本人が真に社会復帰を果たし平穏な日常を送れるよう支援することも視野に入れて弁護活動を行っています。
盗撮事件で示談をした事例
弊所の盗撮事件で示談が成立し不起訴処分を獲得した事例を一部ご紹介します。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。これまで盗撮の示談交渉について説明してきました。中村国際刑事法律事務所では,事件発生から事件終了後まで,トータルサポートを実現しています。示談交渉の相手である被害者の気持ちに寄り添った弁護活動による盗撮事件解決はもちろんのこと,盗撮を繰り返し行ってしまう場合の再犯防止策や今後の社会復帰の支援も心がけています。
詳しい弁護士費用や示談金については事案の内容により異なりますので,盗撮事件や,盗撮事件の示談交渉でお悩みの方は,まずはお電話にてお問い合わせください。