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保釈制度とは? 身柄解放活動や手続きを代表弁護士が解説

こちらのコラムでは、保釈の手続きとその運用について、代表弁護士・中村勉が解説します。
また、GPS装着に関する法改正動向も説明します。

保釈とは

逮捕・勾留による身体拘束を受けている場合、起訴されれば自動的に釈放されるわけではありません。身体拘束されたまま起訴された場合、被告人やご家族は、このまま身体拘束を受けたまま裁判が終わるのを待つしかないのかと、不安に思われることと思います。長期間の身体拘束は、仕事、学校生活等の日常生活にも大きな影響を与えます。また、身体拘束をされたままでは、裁判のための準備をするのにも制約を受けてしまいます。

起訴後も引き続き身体拘束されている被告人については、保釈請求をすることができます。保釈とは、起訴後に勾留されている被告人を、保釈保証金を納付することによって一旦釈放する手続きを言います。

保釈保証金それ自体は、裁判終了時に全額返還されるのが原則です。ただし、保釈の際には、保釈中の住居や外泊について保釈条件が付けられます。保釈条件に違反した場合には、保証金の一部または全部が没取される場合があります。

捜査段階では保釈は認められない

日本では、法律上、捜査段階では保釈は認められません。逮捕され、勾留されると最長23日間に渡って身柄拘束され、行動の自由が制限されます。拘束場所は警察の留置場になります。つまり警察の管理下に置かれます。

本来的には法務省管轄の拘置所に置かれるべきなのですが、捜査の便宜から警察の留置場で拘束されるのです。この制度を「代用監獄」と言います。
戦前の旧憲法下の法制では、身柄拘束に時間的制約はありませんでした。すぐに釈放されることもあれば、何か月も裁判なしに拘束が続くことがありました。

日本国憲法で人身の自由が基本的人権と認められ、たとえ捜査のためとはいえ、身柄拘束は必要最小限でなければならないとされ、逮捕・勾留期間の時間的制限が法定されたのです。そして、一旦逮捕勾留されたら、捜査及び取調べに集中するために一切保釈は認めないという法制となってしまったのです。先進国ではあり得ない制度です。こうして、捜査が終わって、検察官が起訴をし、そこからようやく一定条件のもと、引き続き勾留されている被告人が保証金(いわゆる保釈金)を提供することにより保釈が認められることになるのです。

検察官が起訴する場合には、身柄拘束したまま起訴するのが通常で、裁判官が被告人段階(つまり公判段階)の勾留状を発付して勾留が続くことになります。このような起訴後の勾留は「被告人勾留」と言います。ところが、稀に、検察官が捜査段階の勾留満期に(あるいはその前に)被疑者を釈放して起訴することもあります。主に交通事件が多いです。これは「釈放」であって「保釈」ではないので、保釈金の提供も必要ありませんし、生活上の条件もありません。

保釈許可の要件について

保釈には、「権利保釈」(刑事訴訟法89条)と「裁量保釈」(同法90条)があります。
権利保釈は、保釈請求があったとき、一定の例外に該当しない限りは、権利として保釈が許可されなければならないというものです。一定の例外としては、「罪証隠滅のおそれ」がないという要件が中心になります。そのほかの要件としては、一定の重大犯罪に問われている場合、重大犯罪の前科がある場合、住居が不明の場合等は、権利保釈が認められません。

    刑事訴訟法89条

  1. 被告人が死刑又は無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき
  2. 被告が前に死刑または無期もしくは長期10年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあること
  3. 被告が常習として懲役3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき
  4. 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
  5. 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に危害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
  6. 被告人の氏名又は住居がわからないとき

上記の1~6に該当しない場合には、保釈しなければなりません(必要的保釈)。
上記1~6にあたる場合でも、裁判所が保釈を認めても良いと判断した場合にも、保釈されることがあります(刑事訴訟法90条・裁量保釈)。裁判所に保釈を認めてもらうためには、本人が罪証隠滅や逃亡をしないための誓約書を作ったり、家族が本人をしっかり監督すること等の事情を適切に保釈請求の際に伝える必要があります。

検察官が被疑者を釈放しないで起訴するのは、釈放してしまうと裁判までに証拠隠滅を図るという危惧を持っているからです。証拠隠滅といっても、客観的証拠は既に保全されているうえ、供述に関しても既に取調べ及び供述調書作成により保全されているようにも思います。
しかし、裁判において捜査段階と異なった弁解をして供述調書の任意性や信用性を争ったり、新証拠を捏造して提出したりするというケースもあるので、検察官はそれを心配して釈放しないまま起訴するのです。もちろん、逃亡のおそれも危惧し、被告人が裁判に出廷しない事態を防ぎたいという関心もあります。

保釈制度もそのような検察官の懸念をベースに構築されており、罪証隠滅のおそれという事情が保釈の大きな壁となっているのです。そもそも保釈制度は、保釈金を提供させることにより逃亡、不出頭、罪証隠滅等をしないことを担保する制度なので、保釈金さえ払えば保釈を認めてくれても良さそうにも思えるかもしれません。しかし、罪証隠滅がなされてしまうと、裁判自体が歪められ、犯罪の成否に取り返しのつかないマイナス効果を及ぼすことになりかねないと考えられているのです。

これに対し、逃亡のおそれについては、仮に被告人が逃亡したならば、見つけ出して勾留し(保釈を取消し)、裁判に半ば強制的に出廷させれば済むこともあります。実際のところ、権利保釈の例外要件には「逃亡のおそれ」がないという規定はありません。

罪証隠滅のおそれとはどのような場合を言うのか

それでは、罪証隠滅のおそれ、つまり、「罪証隠滅をすると疑うに足りる相当な理由」、「被告人が被害者その他事件の審判に必要な知識をもつと認められる者やその親族の身体、財産に害を加えたりするような行為をすると疑うに足りる相当の理由」があるときとは、どのような場合を言うのでしょうか。

具体的には、共犯者がいて口裏を合わせる可能性がある場合虚偽のアリバイを捏造する場合被害者の居所等を知っていてお礼参りをしたり、被害の取下げを強要したりする場合などです。そのような蓋然性があれば保釈が認められないことが多いです。このような行為に対しては、刑法は、証拠隠滅罪や証人威迫罪を定めて罰しているのですが、事後的に罰したところで肝心の裁判自体が歪められては意味がないないと考えられています。

捜査段階の供述状況と保釈について

被告人が、捜査段階において事実を否認ないし黙秘していた場合には、罪証隠滅のおそれがあると推定するかのような実務運用がなされています。これは、言ってみれば、黙秘権行使に対する不利益処分でもあるのですが、それが実務です。もっとも、裁判官は黙秘権という権利行使をした事情を正面から保釈不許可の理由にしません。いずれにしても、捜査段階で黙秘権を行使する際には、起訴後の保釈請求のことも念頭に置かなければなりません。

問題なのは、起訴後の保釈を得たいばかりに、被疑事実について虚偽の自白をしてしまうことです。このようなことは、特に、痴漢事件などに多く、「やってはいないけれど、自白をしないと起訴後に保釈が認められず、長期間拘束されてしまう」と考えて虚偽の自白をしてしまうのです。これは沢山の冤罪を生むだけで、決してあってはならないことですが、残念ながらそのような実態もあり、中には弁護士がそのようにアドバイスするケースすらあるくらいです。周防正行監督の「それでも僕はやっていない」という痴漢冤罪事件を題材とした映画でも描写されています。このような現実があること自体、限定的にしか保釈を認めない我が国の保釈制度に問題があるのです。

保釈を獲得するための弁護人の活動について

このような保釈の厚い壁を乗り越えるためには、どうしても弁護士の力が必要になります。
検察官が指摘する懸念は抽象的な漠然としたものに過ぎず、具体的な罪証隠滅のおそれはないと主張していくのです。実際には、保釈請求の際には、保釈の制限住居地としての住居の確保のために親族や友人を保釈後の身元引受人とすること、逃亡、不出頭等がないようにさせるという親族(数名)や友人からの上申書を提出すること等がなされます。

保釈決定の際には、保釈金の額のほか、住居の制限、旅行の制限その他適当な条件が付されます。そして、保釈金が納付(原則現金によります)されたことが確認されてから身柄が釈放されます。裁判所にもよりますが、保釈請求をしてから、検察官の意見を聞き、弁護人の意見も聞いた上で判断しますので、請求当日に保釈されることは少なく、翌日、遅ければ2、3日後に判断が下されるということもあります。保釈不許可決定が出て、もしこれに不服があれば準抗告をすることができます。

保釈手続について

保釈請求をすることができるのは、弁護人だけではありません。勾留されている被告人本人のほか、配偶者・直系の親族、兄弟姉妹等であれば保釈を請求することができます(刑事訴訟法88条1項)。なお、内縁関係にある夫婦、婚約者、恋人、友人、同僚などは、保釈請求することはできません。保釈の請求は、保釈請求書という書面を提出して行いますので、実際上、保釈を獲得したい場合には弁護士を雇う必要が出てきます。

検察官が起訴した後、弁護士が裁判官に対し保釈の請求を行います。検察官の意見を聞いた上で保釈を許可するかどうか検討します。またこの時弁護士は、保釈に関して裁判官面接を希望すれば面接が可能です。

このため、弁護士が保釈を請求してから、この判断が出るまでには一日から数日かかることもあります。そして、裁判所は保釈金の金額を設定した後に許可の決定を下します。保釈金の額は事案にもよりますが、150万円前後から数百万円で、前科・共犯者無しの認め事件では150万円というのが多いです。

重大事件で資力のある被告人に対しては数千万円、数億円といったケースもあります。 例えば、保釈金の過去最高額は、「ハンナン牛肉偽装事件」の被告人で20億円でした。また、カルロス・ゴーン被告人では15億円でした。なお、カルロス・ゴーン被告人は海外逃亡したために15億円全額が没取されました。
保釈決定には保釈金の額のほか、住居の制限、旅行の制限その他適当な条件が付されます。そして、保釈金が納付(原則現金によります)されたことが確認されてから身柄が釈放されます。

どのような場合に保釈が認められるのか

たとえば、死刑や無期などが宣告される可能性のある重い罪を犯した場合や過去に重い罪で有罪になったことがある場合は保釈は認められないでしょう。また、証拠を捨てる・隠すなど行うと疑われる理由がある場合や被害者やその親族などに危害を加えるなどのおそれがあると判断されるような場合にも、保釈は認められないでしょう。保釈を認めていただけるように、裁判官に対してどのような説得を行うべきかは事案ごとに異なるため、弁護士の経験がとても重要となります。

保釈取消について

このようにして認められた保釈も、許可された根拠が覆される場合、つまり、正当な理由なくして出頭しない場合逃亡のおそれがある場合罪証隠滅をはかるおそれがある場合被害者等に危害を与えるおそれがある場合その他住居の制限等保釈の条件に反する場合には、保釈は取り消され、被告人は収監されてしまいます。

通常は、保釈金自体は裁判終了時に全額返還されますが、上記のような保釈条件違反がある場合には、一部または全部が没収(専門的には「没取」と言います)される場合があります。また、たとえ、逃亡したり罪証隠滅をしたりしなくても、指定された制限住居地には裁判所から期日の連絡などの重要な書類が何度か郵送されますので、不在を理由に郵送された書類が裁判所に戻るようなことがあれば、保釈条件違反が疑われますので注意が必要です。

刑事訴訟法96条
裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
1. 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき
2. 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき
3. 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
4. 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき
5. 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき

なかなか保釈されない場合は

保釈を獲得することは容易ではありません。しかし、弁護士法人中村国際刑事法律事務所では、検察官として過去に数多くの保釈実務に携わってきた経験豊富な代表弁護士とそのチームが、保釈の可能性や時期を適切に判断し、保釈環境を十分に整備したうえで、保釈請求に臨みます。その成果として、これまでに数多くの保釈決定をいただいております。準抗告での逆転決定により保釈を獲得したことや、保釈獲得が困難と言われている外国人事件においても、保釈獲得に成功した例もあります。

一日でも早く拘置施設での不自由な生活から解放してあげたい、自宅の温かいお風呂に入れてあげたいと願うのは、家族としては当然のことです。当事務所は、ご家族の皆様の切なるお気持ちに応えるべく、全力で保釈獲得に向けた弁護活動をいたします。

保釈に関する法改正(GPS装着)

日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告が保釈条件を破ってレバノンへ逃亡しました。その他にも保釈中の被告人の逃亡が相次ぎました。そこで、法制審議会は2021年10月21日、法務大臣に対し、保釈された被告らの逃亡を防止するための方策について、海外逃亡の恐れのある被告に全地球測位システム(GPS)端末の装着を可能にするなどの答申をしました。

この答申によれば、GPS端末の装着は裁判所が命令し、あわせて空港や港湾施設の周辺などを「所在禁止区域」に指定します。被告人が所在禁止区域に立ち入った場合や、義務に反し端末を外したり壊したりした場合、これらを端末が検知すれば、裁判所に通知され警察官などが必要に応じ身柄を拘束するというもので、罰則等も設けられる予定となりました。

その後、2023年5月10日、被告人に全地球測位システム(GPS)端末を装着させる制度の創設を盛り込んだ刑事訴訟法等の改正案が参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。所在禁止区域への立ち入り、端末の取り外し・破壊の場合には、1年以下の拘禁刑の罰則を設けるとされています。現在、法務省では法整備の検討に入っているところです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。保釈は被告人やその家族にとって最も関心の高いものです。
そして、保釈には必ず弁護士が必要になってきます。何度請求しても保釈を獲得できないなどの場合には、弁護士の交替も検討しなければなりません。それくらい、事件の中には保釈に高度の弁護技術を必要とされる場合があるのです。起訴が高い確率で見込まれるような事件の場合には、捜査段階のうちから保釈を念頭にした弁護活動が求められます

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