中村国際刑事法律事務所 | 刑事事件の実力派弁護士集団 中村国際刑事法律事務所
お急ぎの方へ メニュー

留置場での生活 – 差し入れやスマホ使用について等弁護士が解説

警察に逮捕されると、警察の留置場に収容されます。留置場とは、犯罪をしたとして逮捕された人のうち、逃亡や罪証隠滅のおそれがあったり、住居不定であったりする場合に、一時的に身柄を収容する施設で、ほぼ全国の警察署に存在します。
留置場に収容される段階では、被疑者であり、起訴された後に被告人として収容される拘置所とは異なります。

では、留置場とはどのようなところなのでしょうか。留置場とは無縁だと思っていても、万が一、あなたやご家族が逮捕されてしまうことがあるかもしれません。そうなった場合、留置場から外部への連絡がとれるのか、留置場での生活がどのようなものか、留置場に入れられた場合に差し入れるべき物が何か、そもそもどのように差し入れるのか、などの疑問が生じるのではないでしょうか。留置場での生活がどのようなものか、見ていきましょう。

起床から消灯まで、留置場の一日とは

留置場によって違いはありますが、標準的な留置場の一日をご紹介いたします。タイムスケジュールについては、留置場に入るときに説明されます。

午前6時30分に起床し、時間になると起床ブザーがなり、一斉に起床します。まず点呼が行われ、きちんと被留置者が居室にそろっているか確認されます。その後、朝食までの間に、洗顔をしたり、布団を布団部屋に片付けに行くなど掃除をしたりして過ごします。
午前7時30分に朝食となります。食事はどのようなメニューなのかについては、後ほど説明します。
午前8時に運動の時間があります。15分程度の時間ですが、留置場内の運動するスペースで体を動かすことができます。希望すれば、1日1時間以上、屋外での運動することも許される場合があるようです。
午後0時に昼食、午後6時に夕食となります。
午後9時に就寝となり、こうして留置場の一日が終わります。

スケジュールとして決まっていることは、思ったより少ないと感じるかもしれません。検察庁や警察署に、取調べや実況見分などで呼ばれることもありますが、そのようなことがない限り留置場で過ごすため、暇な時間が多くなります。被留置者は、読書をしたり、居室内でストレッチや筋トレなどの軽い運動をしたりして過ごすようです。

日刊新聞や備え付けの本を読むことができるほかに、後で紹介する差入れ制度によって外部の人から手元に渡される本や、自費で購入した本を読むことができます。また、食事中はニュースやラジオ番組を聞くこともできます。

留置場の様子とは

各居室は、定員が4~6名となっており、基本的には他の被疑者との相部屋になります。これを通常「雑居」と言います。ただし、メディアで報道された事件の被疑者や、他の被留置者とトラブルを起こして共同生活ができないと判断された被疑者は、定員1名の居室、通常「独居」と呼ばれる部屋に入れられることになります。

標準的な居室の広さは、相部屋の場合は1人当たり2.5平方メートル、個室の場合は4平方メートルとなっています。畳の広さで換算すると、1人当たり2畳の広さもないことになりますから、快適な空間とはいえません。居室の配置については、従来の扇型の配置から、居室を櫛型に配置する直線的な配置へと変わってきています。これは、従来の配置だと、扇型の要部分にある看守席から効率的な監視が可能となる一方で、被留置者は常に監視されている圧迫感を感じるためです。また、扇型だとスペースが余ってしまうため、効率的に空間を使用する意図もあるようです。もちろん、変更された配置でも、居室の出入り口等はモニターカメラを使うなどして監視されています。

居室の通路に面した部分は、鉄格子がはめられ、職員から居室内の様子が窺えるようになっています。もっとも、被留置者の人権に配慮して、下半分には不透明な板で覆いがされており、居室内で座ると頭部しか見えないようになっています。トイレは各居室内に設置されています。周囲を壁で囲ってあり、プライバシーには一定の配慮がされていますが、座ると上半身が見えるようになっています。トイレの使用に際して、ちり紙は支給されますが、ちり紙を飲み込むことによる窒息死という形で自殺を図ることを防止するため、支給される量は少ないようです。床は固い地面の上に薄いマットのようなものが敷いてあったり、畳が敷かれていたりすることもあるようです。

留置施設内で、空調は効いているのでしょうか。北海道等で冷房装置が、沖縄県等で暖房装置が設置されていないところもあるようですが、基本的には冷暖房装置が設置されており、室温で悩まされることはなさそうです。また、加湿器を置いている留置場もあります。

留置されている間に使う布団など身の回りの物の清潔状態も気になるところです。布団については、布団カバーは新しい被留置者が入るとき及び定期的に交換され、寝具も定期的に消毒されています。就寝時は照明が減らされますが、職員による監視の必要があるため、すべての照明が消灯されるわけではなく、人によっては眩しくて寝られないこともあるようです。

留置場内はどのような服で過ごすのでしょうか。留置された人が自殺を図るのを防ぐためベルトや紐のついた服等は使用できません。そのため、貸与されたスウェットやジャージを着用して過ごす人が多いようです。また、被留置者が走って逃走することを防ぐため、留置場内ではサンダルで過ごすことになります。このサンダルには留置番号が書かれていて、留置場内に入った後は氏名ではなく番号で呼ばれることになります。下着は留置場内で自由に洗濯をすることはできません。留置場内で定期的に洗濯される場合が多いですが、不足を感じる場合は、替えの下着を差し入れてもらうか、使用した下着を宅下げして洗濯してもらってから差し入れてもらう必要があります。

入浴は、少なくとも5日に1回以上、原則として週2回以上、というペースでしかすることができません。また、入浴の時間も15分から20分程度と短時間です。シャンプーや石鹸などの必要な道具は、最初に警察に預けた現金の中から天引きという形で購入させられます。購入させられる物は、シャンプー、石鹸、石鹸ケース、歯磨き粉、歯ブラシ、タオル等で、合計で1000円以上の金額が天引きされることになります。

留置場の食事とは

食事についても、施設によって、その献立や美味しさに違いがあるようですが、標準的な食事をご紹介します。朝食は、白米と味噌汁、それ以外におかずが少量ずつ数点あるといった具合です。おかずの例として、納豆、厚焼玉子、がんもどき、つくだ煮、おしんこがあり、この場合の朝食のカロリーは約668キロカロリーです。こう聞くと、おかずの種類もそれなりにあり、普通の食事とあまり変わらないと思うかもしれませんが、ボリュームは少なく味も薄いようです。

昼食は、食パンかコッペパン、ジャム、紙パックのジュースということが多いです。食パンだと4切れ程度、コッペパンだと2個程度らしいので、物足りないという人も多いかもしれません。その場合、昼食については、自費で外部からお弁当を買うことができる「自弁」と呼ばれる制度があります。自弁のメニューは、カレーライスやスパゲッティ、日替り弁当などで、だいたい400円~500円程度です。もっとも、日曜日は自弁を頼むことはできません。また、自弁は留置場に入るときに預けた現金から天引きされるので、現金をあまり所持していない場合には、買うことができません。

夕食の献立も、朝食とおおむね同じ具合です。白米と味噌汁、それ以外に焼魚(鮭)、オムレツ、シューマイ、野菜味噌炒め、うぐいす豆、おしんこがあり、合計約911キロカロリーです。
留置場の食事はボリュームも少なく味も薄いため、糖分不足等で頭がぼーっとしたり倦怠感を感じたりする人もいるようです。暇な時間が多く、屋内で長時間過ごさなければならない状況での、このような食事は辛いかもしれません。また、乳製品や菓子類などのおやつを自費で購入することもできますが、数日に一回しか購入できないなど留置場によって違いはあります。

留置された人は、留置施設で食事をすることになっています。たとえ、取り調べで呼ばれていたとしても、捜査官のいる取調室内で食事をとらされるということはありません。留置場内ではタバコは吸えるのでしょうか。愛煙家にとっては気になるところでしょう。以前は、運動時間に喫煙が許されていましたが、受動喫煙への配慮を徹底するため、2012年に全面禁煙とする方針がとられました。そのため、現在では、留置場内でタバコを吸うことはできません。また、留置場内の秩序維持の観点から、酒類などの嗜好品も禁じられています。

留置場でのコミュニケーション、差し入れ・面会・手紙・スマホは?

最初に留置場に入るときに、身体検査と所持品検査が行われます。留置場内には私物を持ち込めないため、この際に警察に預けることになります。携帯電話やスマートフォンも取り上げられてしまいます。そのため、逮捕されてしまうと、外部へ自由に連絡を取ることはできなくなります。留置場に入れられたことは、自分では家族に連絡できません。ご家族も、なぜ帰ってこないか分からないという状況に陥ることになるのです。

それでは、留置場に入れられてしまった場合、どのように外部と連絡をとれば良いのでしょうか。逮捕された被疑者には、弁護人依頼権があります。弁護人を選任したい場合、留置担当官に弁護士か弁護士会を指定して申し出ることができます(刑事訴訟法209条、78条1項)。申出を受けた留置担当官は、被疑者が指定した弁護士又は弁護士会に通知する義務を負っています(209条、78条2項)。留置場にいるときに申し出る以外にも、弁護人をつけたいという意思を伝える機会はあります。警察官や検察官から被疑事実について言い分を聞かれる際にも、弁護人依頼権の権利告知はありますので、そのときに弁護人を選任すると伝えることもできるのです。しかし、弁護士の知り合いがいないと弁護士を名指しで指定できず、弁護人をつけられないのではないかと不安に思うかもしれません。

この点については、当番弁護士制度という制度があります。当番弁護士とは、1回目の接見を無料で行い、被疑者の相談に応ずる弁護士会の制度です。被疑者本人が、当番弁護士を依頼する場合は、警察官等に「当番弁護士を呼んでください」と言えば、当番弁護士が面会に来てくれることになります。当番弁護士は、呼んでからほぼ24時間以内に来てくれますが、弁護士の派遣を頼んだ日の翌日の夜に接見に来たという体験談もありますので、24時間を超えることもあるようです。弁護人を選任することで、弁護人を通じて外部との連絡も取れるようになります。

弁護士を依頼すると、弁護人が留置場まで会いに行きます。接見といって、弁護人又は弁護人になろうとする者とは、留置場内の面会室で、立会人なく会うことができます。平日休日問わずすることができ、面会室も、会話が外部に漏れないような構造となっています。弁護人とは、接見だけでなく、書類や物の受け渡しをすることができます。留置場に入るときに警察に預けた被疑者の私物を、外部の第三者が引き揚げることを、「宅下げ」といいます。これによって、預けていたスマートフォンを弁護士に渡し、家族や会社など、連絡をとりたい人と、弁護士を通じて連絡をとってもらうことができます。

面会で弁護士とやり取りしたことをメモした被疑者ノートは、居室内に持ち込むことができます。被疑者ノートとは、被疑者が取調べ状況等を記録する日記のようなもので、取調べを受けたときに心がまえ等も記載されており、被疑者にとって大切なものです。さきほど留置場内に私物を持ち込むことはできないと言いましたが、弁護人との秘密交通権が保障されていることから、被疑者ノートの持ち込みは認められています。

家族など弁護人以外の者とも、原則として面会が認められています。しかし、裁判所が、被疑者が逃走したり、罪証隠滅をしたりするおそれがあると判断した場合には、会うことができません。これを接見禁止と言います。また、面会は1日に1回しか認められていないうえ、15分~20分程度という時間制限も存在します。家族など一般人との面会では、留置担当官が立ち会い、会話の内容を記録しています。

家族と連絡がとれると、ご家族だけでなく、留置されている人も安心します。しかし、上記のおそれがあると判断されている場合、家族が面会を希望しても会えないことがあるのです。この点、弁護人に接見禁止がつけられることはないので、留置された人と連絡を取ったり、替えの下着などの差し入れをしたりするには、弁護人をつける方が確実です。

留置場内と外部とで手紙のやり取りは可能なのでしょうか。突然逮捕された場合に、手紙で事情を説明したいという場面もあるでしょう。外部の者からの手紙は受け取ることができますが、接見禁止がつけられた場合には、受け取ることができません。被疑者宛てに手紙が届いても、接見禁止が解除されるまで、警察が保管し本人に手渡されることはありません。留置されている人から外部に対して手紙を出すことも可能です。ただし、封筒や切手は自費で購入しなければならないので、所持金がなければ手紙を出すことすらできません。

差し入れとは、外部の人から被疑者に対して書類や物を渡すことを言います。これに対して、被疑者から外部の人に対して物を被疑者の自宅等に持ち帰ってもらうことを宅下げと言います。食べ物についえは、毒物の混入等のおそれがあるため差し入れは認められていません(81条)。ただし、留置施設の指定販売にある食物については差し入れが可能です。薬も原則として差し入れることはできませんが、持病のため日常服用している特殊薬であれば認めてくれる場合もあるようです。また、空き時間に留置場内で他の被留置者と多少の雑談をして過ごすということもあるようです。

女性への配慮

女性が留置される場合、男性と比べて違いはあるのでしょうか。まず、すべての警察署に女性用の留置スペースのあるわけではありません。これは女性職員が不足しているため、女性の被留置者をある程度まとめなくてはならないことによります。

さきほど、最初に留置場に入るときに身体検査があると言いましたが、原則として肌着は着用したまま行われ、女性の場合には、女性警察官か女性職員が身体検査を行います。所持品を預ける際、自殺を防ぐためブラジャーも預けなくてはなりません。女性の居室は、同じ留置施設でも、男性や成人の被留置者とは別の区画に留置されます。

取り調べで呼ばれて留置場を出たりするときや、運動場に行くため留置場内を移動するときも、男性の被留置者と顔を合わせることがないように移動します。入浴の際にも女性職員が立ち会います。やはり男性と同様、入浴には時間制限があり、20分程度しか入れません。特に女性は、身だしなみを気にされる方が多いと思いますが、化粧水や保湿クリームは自費で購入することが可能です。また、ヘアブラシなどを使用することはできるようです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。突然逮捕された場合には、誰にもその事実を伝えられないまま留置場に入ることもあります。また、上記で見てきたように、自費で購入しなければならない物も多く現金が必要になることも多いため、差し入れをすることができることが重要になってきます。また、突然留置場に入ることになってしまった被疑者本人にとっても、ご家族などと連絡がとれると安心するものです。

ただし、接見禁止が付けられた場合、自由にご家族と面会したり差し入れをしたりすることはできません。そのため、弁護士を選任し、弁護士を通じてご本人の日々の状況や必要なものなどを確認していく方が、ご家族にとり安心といえます。

更新日: 公開日:
Columns

関連する弁護士監修記事を読む

経験豊富な弁護士がスピード対応

刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

このページをシェア