
近年、若者を中心とした「ソンビたばこ」と呼ばれる違法薬物の使用が問題視されています。このソンビたばこは、国内未承認の医薬品成分である「エトミデート(Etomidate)」を含有しており、その危険性と依存性の高さから、社会的に深刻な影響を及ぼしています。
薬物事件は、その依存性の強さから再犯率が非常に高く、一度犯罪の連鎖に巻き込まれると、ご本人だけでなくご家族の人生にも計り知れない影響を及ぼします。もし、ご自身やご家族がソンビたばこ(エトミデート)の使用や輸入、密輸の容疑で逮捕されてしまった場合、一刻も早い専門家である弁護士の介入が不可欠です。
当事務所は、覚せい剤や大麻など薬物事件に精通しております。元検事の知見を活かした迅速かつ的確な弁護活動を展開し、ご依頼者様の社会復帰と真の更生を全力でサポートいたします。
本記事では、ソンビたばこ(エトミデート)の危険性や法規制の現状に加え、万が一使用や輸入で逮捕された場合の刑事手続の流れ、そして不起訴処分や執行猶予を獲得するための具体的な対処法について、薬物事件に強い弁護士が詳しく解説します。
ソンビたばこ(エトミデート)の正体と規制の現状
「ソンビたばこ」は俗称であり、正式名称ではありません。これは、国内未承認の医薬品成分「エトミデート」を主成分とする危険ドラッグ(多くは電子たばこで吸引できるリキッド状)が、乱用された際の特異な挙動からそう呼ばれています。
エトミデートの定義と通称
ソンビたばこの正体であるエトミデート(Etomidate)は、化学的には「エチル=1-(1-フェニルエチル)-1H-イミダゾール-5-カルボキシラート」という物質です。
この薬物は、「笑気麻酔」という通称で販売されることがありますが、これは医療現場で利用される歯科用の「笑気ガス」、「笑気麻酔」とは全く異なる成分であり、混同は非常に危険です。危険ドラッグは、グミやクッキーなどの食品のほか、リキッドや乾燥植物片など様々な形態で販売され、あたかも安全であるかのように誤解されています。
ソンビたばこ(エトミデート)の危険性と健康被害
エトミデートは、中枢神経系の興奮や抑制、幻覚の作用を持つ蓋然性が高く、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがあると認められています。
危険ドラッグは、麻薬や覚醒剤などと同様に大変危険な薬物であり、乱用すると、意識不明、呼吸苦、痙攣、幻聴、幻覚、嘔吐など、様々な重篤な健康被害が報告されています。さらに、使用がやめられなくなるなど依存性があり、最悪の場合、死亡を含む健康被害や異常行動を引き起こす可能性があります。
沖縄県内でも危険ドラッグによる健康被害(救急搬送件数)が報告されており、令和5年には51人、令和7年9月末時点では13人(うちエトミデートを含む危険ドラッグ使用の疑いが2人)が救急搬送されています。また、エトミデートを含む危険ドラッグの使用は、ご自身の健康被害に留まらず、傷害事件や交通事故など、他人を巻き込む事例も複数報告されています。
法規制の現状と指定薬物としての規制
エトミデートは、その危険性の高さから、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法/薬機法)指定薬物として規制されています。
具体的には、エトミデートは令和7年5月16日付けで指定薬物に指定され、同年5月26日から施行されました。エトミデートを含有する物(元来これらの物質を含有する植物を除く。)は規制の対象となります。
エトミデート(ソンビたばこ)に関する法規制と罰則
エトミデートは指定薬物であるため、医療等の用途を除き、製造、輸入、販売、授与、所持、購入、譲り受け、使用が禁止されています。これらの行為はすべて犯罪であり、違反した場合は重い罰則が科されます。
薬機法(指定薬物)違反の罰則
エトミデート(ソンビたばこ)に関する行為が薬機法に違反した場合、以下の罰則が適用されます。
| 行為 | 罰則(医療等の用途以外の用途に供するため) | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 製造、輸入、販売、授与、所持、購入、譲り受け、又は使用 | 3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこれの併科 | 薬機法第84条28号、第76条の4 |
| 業として製造、輸入、販売、授与、所持(販売・授与目的)を行った場合 | 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれの併科 | 薬機法第83条の9、第76条の4 |
指定薬物の所持や使用は、かつては規制がありませんでしたが、乱用による健康被害や交通事故などの危害事例が頻発したため、平成26年4月1日より、所持、使用、購入、譲り受けも新たに禁止され、厳しく取り締まられるようになりました。
輸入に関する重罰(関税法違反)
海外のサイトやSNSを通じてソンビたばこ(エトミデート)を個人輸入した場合、薬機法違反に加え、関税法違反の罪にも問われる可能性があります。関税法では、指定薬物(エトミデートを含む)は「輸入してはならない貨物」とされています。
| 行為 | 罰則 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 指定薬物の輸入 | 10年以下の拘禁刑若しくは3000万円以下の罰金、又はこれらの併科 | 関税法第109条1項、第69条の11第1項1号の2 |
薬物の密輸は、薬物乱用の根源をなす行為として、所持や使用よりも非常に重い刑が定められており、厳しく罰せられます。
交通事故や傷害事件を起こした場合の重罰
エトミデートなどの薬物の影響により、正常な運転ができないおそれがある状態で自動車等を運転した場合、死傷結果の発生の有無にかかわらず、道路交通法第66条違反として処罰されます。
さらに、薬物を使用した状態で交通事故を起こし、人を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪が成立する可能性があります。
| 罪名 | 行為態様 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 道路交通法第66条違反 | 薬物の影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転した場合 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 危険運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法第2条) | 薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、人を死傷させた場合 | 負傷: 15年以下の拘禁刑 死亡: 1年以上の有期拘禁刑 |
危険運転致死傷罪は重大な犯罪であり、逮捕・勾留の可能性が必然的に高まります。また、薬物使用に伴う交通事故事件は、事故態様の悪質さから、重い刑事処分となる傾向があります。
ソンビたばこ(エトミデート)の使用・輸入で逮捕された場合の対処法
薬物事件の最大の特徴は、犯罪が発覚すると逮捕・勾留される可能性が非常に高いことです。一度逮捕され、長期の身柄拘束を受けてしまうと、職を失う、実名報道される、前科がつくなど、社会生活に甚大な不利益が生じます。薬物事件に強い弁護士は、これらの不利益を回避するために、「スピード」と「再犯防止策の構築」を重視した弁護活動を展開します。
逮捕・勾留からの早期解放を目指す「初動」の重要性
刑事手続において、逮捕後72時間以内は、長期の身柄拘束を回避できる最大のチャンスです。この間に弁護士が介入し、勾留阻止のための活動を行うことが極めて重要です。
逮捕直後の弁護士の役割(接見活動)
逮捕後最大72時間は、弁護士以外の者(ご家族を含む)は基本的に被疑者と面会できません。弁護士は、この間に速やかに警察署に急行し、ご本人と立会人なしで面会(接見)します。弁護士の接見は、以下の重要な役割を果たします。
- 取調べ対応のアドバイス: 取調べは密室で行われ、不利な供述調書が作成されると後から覆すことは困難です。弁護士は、黙秘権の告知や行使、供述調書の内容確認など、ご本人の権利擁護のための指導を徹底して行います。
- 精神的サポート: 外部との連絡が遮断され、不安の極みにあるご本人に対し、家族の思いや今後の見通しを伝えることで、精神的な支えとなります。
- 勾留回避活動の開始: ご家族から情報を収集して証拠化(身元引受書など)し、検察官・裁判官に対して逃亡や罪証隠滅のおそれが低いことを示す意見書を提出します。
ソンビたばこ(エトミデート)のような薬物事件では、薬物の処分が容易であるため、罪証隠滅のおそれがあるとして勾留される可能性が高いです。弁護士は、勾留決定を阻止するために、ご家族に身元引受人となっていただくことを説得し、ご本人の生活環境を監督する体制を整えます。勾留が決定した場合でも、直ちに準抗告(勾留決定への不服申し立て)を行い、身柄解放を目指します。
不起訴処分・執行猶予獲得に向けた弁護活動
薬物事件は、被害者のいない犯罪であるため、痴漢や窃盗などの事件のように示談による「起訴猶予」を狙うことができません。そのため、薬物事件の弁護活動では、再犯防止策の確実な実行と裁判所への説得が極めて重要になります。
再犯防止策の構築と立証
薬物犯罪は依存性が非常に強く、本人の強い意思だけでは断ち切ることが困難であるのが現実です。弁護士は、ご依頼者様が二度と薬物に手を出さないよう、具体的な再犯防止策を構築し、その実行をサポートします。
- 専門医療機関との連携: 薬物依存の治療を専門とする精神科や心療内科、ダルク(DARC)などの依存症回復支援施設を紹介し、通院・入寮といった治療プログラムへの参加を促します。
- 環境調整: 家族や周囲の協力を得て、薬物との関わりを断ち切るための生活環境を整えます。薬物仲間の連絡先を消去する、交友関係を整理するといった具体的な行動指導を行います。
- 贖罪寄付: 被害者がいない薬物事件では、示談の代わりに贖罪寄付を公益団体に行うことで、反省の意を客観的に示すことができます。
これらの再犯防止策の実行状況は、裁判において執行猶予判決を獲得するための最も強力な有利な情状として評価されます。
不起訴または執行猶予を目指す
エトミデート(指定薬物)の使用・所持は、初犯であっても起訴される可能性が高いですが、薬物の量がごく微量であった場合や、弁護士による積極的な防御活動によって嫌疑不十分(証拠が不十分)が認められ、不起訴処分となる可能性はゼロではありません。
万一、起訴された場合でも、薬物依存からの回復に向けた取り組みを裁判所に説得的に主張することで、執行猶予付き判決の獲得を目指すことが可能です。特に、保釈が認められた場合は、社会内で治療実績を積み重ね、その証拠を裁判所に提出することが、執行猶予獲得に大きく貢献します。
執行猶予付き判決となれば、直ちに刑務所に収容されることなく社会内で更生を目指すことができます。ただし、執行猶予期間中に再び罪を犯せば、執行猶予が取り消され、以前の刑と新しい刑の両方で服役することになります。
ソンビたばこ(エトミデート)密輸事件の特有の論点
ソンビたばこを海外から輸入した容疑で逮捕された場合、故意の有無が重要な争点となることがあります。
故意の否認
「違法薬物であると知らなかった」、「書籍に紛れ込ませた覚せい剤の成分が入っているとは夢にも思わなかった」といった主張により、薬物の密輸の故意を否定する弁護活動が考えられます。しかし、たとえ知らなかったとしても、「もしかしたら違法なものが含まれているかもしれない」という未必の故意が認定されれば、処罰の対象となる可能性が高いです。
防御活動の難しさ
薬物の密輸の故意は、裁判実務上、比較的簡単に認定されてしまうため、安易な弁解は通用しません。弁護士は、ご依頼者様の主張を裏付ける証拠(購入サイトの記載内容や通信記録など)を精査し、故意の不存在を裏付けるための具体的な弁護戦略を立案・実行します。
統計に見る危険ドラッグ事犯の現状と弁護士の役割
危険ドラッグに関する取締りは近年強化されています。特に沖縄県では、危険ドラッグが起因と疑われる救急搬送者数が、令和5年に51人に達するなど、深刻な状況が続いています。
日本の薬物事犯の検挙者の大半は、覚せい剤及び大麻によるものですが、指定薬物であるエトミデートも、今後、厳罰化の流れの中で検挙が増加する可能性があります。薬機法違反の起訴率は約3割ですが、薬物事案全体の起訴率は高い傾向にあり(覚醒剤取締法違反の起訴率は77.2%)、逮捕された場合には厳しい処分が予想されます。
刑事事件における弁護士の重要性
薬物事件を多数扱っている当事務所では、ご依頼者様の人生を左右する刑事手続において、弁護士の存在が不可欠であると考えています。
| 弁護士に依頼するメリット | 弁護士の具体的な活動 |
|---|---|
| 早期の身柄解放 | 逮捕直後の接見、勾留請求の却下を求める意見書の提出、準抗告の申立て、保釈請求等 |
| 再犯防止と更生 | 薬物依存専門クリニックとの連携、治療プログラムへの参加サポート、贖罪寄付の実施等 |
| 不起訴・執行猶予の獲得 | 証拠不十分(嫌疑不十分)の主張、再犯防止策の立証、裁判官への説得的な弁論により、前科回避や刑の減軽を目指す。 |
| 取調べのサポート | 捜査機関の誘導・強要を阻止し、供述方針を決定するアドバイスを提供する。 |
| 社会生活への影響軽減 | 逮捕報道回避の働きかけ、勤務先や学校への対応など |
当事務所は、刑事事件に関する法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、国内の薬物事件ほか、薬物の輸入・密輸といった国際案件においても豊富な経験と実績を有しています。
ソンビたばこ(エトミデート)に関する刑事事件弁護士Q&A
ソンビたばこ(エトミデート)はいつから規制の対象になったのですか?
エトミデートは、令和7年5月16日付けで指定薬物として指定され、同年5月26日から施行されました。指定薬物とは、中枢神経系の興奮や抑制、幻覚の作用を有し、人の身体に対する保健衛生上の危害が発生するおそれがあると認められた物質を指します。
ソンビたばこ(エトミデート)を所持・使用した場合の罰則はどのくらいですか?
エトミデートは指定薬物であり、医療等の用途以外の目的で所持、使用、購入、譲り受けなどを行った場合、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科が科されます。もし、これを「業として」(営利目的で)行った場合は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの併科となります。
危険ドラッグの使用や所持で逮捕されたら、必ず勾留されますか?
薬物事件は、薬物が容易に処分(証拠隠滅)できることや、再犯性の高さから逮捕・勾留される可能性が非常に高いです。勾留が決定すると、逮捕期間を含め最大23日間の身柄拘束が続く可能性があります。しかし、弁護士が勾留請求却下を求める意見書を提出するなど、逮捕直後から迅速な身柄解放活動を行うことで、勾留を回避できる可能性はあります。
逮捕された場合、家族が本人と面会できるのはいつですか?
逮捕された直後から勾留が決定するまでの最大72時間は、原則として弁護士以外の者は面会できません。勾留が決定した後(通常は逮捕から3日目以降)は、接見禁止決定が付されない限り、ご家族も面会が可能になりますが、面会時間や回数に制限があります。弁護士であれば、逮捕直後からいつでも接見が可能であり(接見交通権)、ご本人の状況を把握し、ご家族に伝えることができます。
初犯でも執行猶予がつかないことはありますか?
薬機法違反(指定薬物)の場合、初犯であれば略式罰金または執行猶予となる可能性はありますが、事案の悪質性や営利目的の有無によっては、初犯でも執行猶行がつかず実刑判決となる可能性はあります。特に、営利目的(販売や大量所持)が認められた場合、刑罰はさらに重くなります。また、交通事故や傷害事件を伴った場合も、情状が悪くなり実刑リスクが高まります。
薬物依存の治療は刑事処分に有利に働きますか?
はい、非常に有利に働きます。薬物事件は再犯性が高いため、裁判官は再犯の可能性を断ち切るための具体的な取り組みを重視します。薬物依存専門のクリニックやダルクなどの施設での治療を開始し、その継続性を立証することで、「社会内で更生できる可能性が高い」と判断され、執行猶予判決の獲得に繋がります。弁護士は、こうした専門機関との連携をサポートします。
ソンビたばこの購入目的で海外から輸入した場合、関税法違反にもなりますか?
はい、なります。エトミデートは指定薬物であるため、海外から輸入する行為は関税法第69条の11第1項1号の2に違反し、「輸入してはならない貨物」の密輸にあたります。この場合、10年以下の拘禁刑若しくは3000万円以下の罰金、又はこれの併科という非常に重い刑罰が科される可能性があります。
危険ドラッグの使用で交通事故を起こした場合、行政処分はどうなりますか?
危険ドラッグの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転した場合、道路交通法違反となり、行政処分の対象となります。エトミデートが該当する指定薬物を使用して運転した場合、35点の基礎点数の付加および3年の欠格期間(免許取り消し)といった重い行政処分を受ける可能性があります。
逮捕後、すぐに弁護士に依頼するメリットは何ですか?
逮捕後すぐに弁護士に依頼する最大のメリットは、身柄拘束による不利益を最小限に抑えられることです。弁護士は、逮捕後72時間以内に身柄解放活動に着手し、長期勾留や職場への発覚、解雇といったリスクを回避します。また、取調べへの適切なアドバイスを通じて、不利な供述調書作成を防ぎ、後の裁判で不利にならないよう防御を尽くします。刑事事件はスピードが命であり、初動の対応が極めて重要です。
まとめ – ソンビたばこ(エトミデート)による逮捕は一刻も早く弁護士に相談を
ソンビたばこ(エトミデート)は、指定薬物として所持や使用、輸入が厳しく禁止されている違法薬物です。逮捕された場合、最長23日間の身体拘束や重い拘禁刑に処されるリスクが伴います。
薬物犯罪は、初動の72時間以内の弁護士の対応が、勾留回避や早期釈放、その後の処分結果に決定的な影響を及ぼします。特に、薬物事件は示談ができない特性から、再犯防止に向けた具体的な取り組みが刑の軽減に不可欠であり、専門的な知見を持つ弁護士のサポートが必要です。
ご自身やご家族がソンビたばこ(エトミデート)に関連する事件で警察から捜査を受けたり、逮捕されたりした場合は、一人で悩まず、今すぐ刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
当事務所は、土日祝日を含め24時間体制でご相談を受け付けております。元検事の知見と豊富な経験に基づき、ご依頼者様の未来を守るための最適な解決策を提案し、全力でサポートいたします。