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痴漢の判例 – 刑事事件に強い弁護士

痴漢事件における判例をご紹介します。

東京簡易裁判所平成12年1月7日

被告人が、走行中の電車内において、被害者の着衣の上から、手指でその臀部付近を触って揉んだという東京都迷惑行為防止条例違反の事案。被告人に無罪判決を言い渡した。

証拠上のポイント

被害者供述は、触られている手をじかに掴むなり現認なりしたわけではなく、単なる被害感覚により、被告人を犯人としている疑いが濃厚であり、その供述の信用性は低いと判断。

目撃者供述については、その具体性・迫真性を認めつつも、被害者供述との整合性を欠いていること、内容自体が不自然であることを理由に全く信用性を欠くものと判示。被告人に無罪を言い渡した。

東京簡易裁判所平成12年4月12日

下記(東京高等裁判所平成12年7月4日)事件の第1審。
被告人が、走行中の電車内において、被害者に対し、背後から両手で同女の下腹部付近を抱きかかえて自己の陰茎を同女の臀部に押し付けるなどしたという、東京都迷惑行為防止条例違反の事案。被告人に無罪を言い渡した。

証拠上のポイント

十数分間も勃起した男性器を押しつけられっぱなしの被害を受け続けていたという供述自体が不自然。温かかったから男性の性器であることが分かった旨の供述に至っては、医師作成の検査結果報告書に徴し、理解できない不合理であると判示。また、陰部を触る行為についても、被告人と被害者の身長差等から、変な姿勢にならなければ触れないはずだが、被告人がそのような変な姿勢を保っている場面を目撃者は全く見ていない。

これらのように客観的証拠との整合性が欠けているところから、被害者供述の信用性を否定し、被告人に無罪判決を言い渡した。

東京高等裁判所平成12年7月4日

被告人が、走行中の電車内において、被害者の着衣の上から右臀部及び右大腿部付近をなで回したという東京都迷惑行為防止条例違反の事件。原審判決は被告人の犯人性を認めたものの、控訴審において原審を破棄し、無罪判決を言い渡した事例。

証拠上のポイント

被告人が、罰金五万円の略式命令を受けることを拒否して、勾留の上公判請求された末、弁護人選任の負担を負い、職をも失うことになった道を選択したことも、一概にはいえないものの、真実犯人であるとすれば、通常はやや合理性を欠くとして、慎重な検討を要すると判示した。

そのうえで、被告人がかなりの荷物を持っていたことを、犯行を困難にする事情として考慮。被害者から見られているのに気付きながらなおも痴漢行為を続けるというのは、やや不自然であること等を理由に、無罪判決を言い渡した。

東京高等裁判所平成12年7月14日

被告人が、走行中の電車内において、被害者のコートを捲り上げた上、ストッキングの上から手で同女の左大腿部を触ったという東京都迷惑行為防止条例違反の事件。被害者供述の信用性を認め、被告人に有罪判決を言い渡した原審判決を破棄し、被告人に無罪判決を言い渡した事案。

証拠上のポイント

被害者が、つかんだ手を被告人のものだと判断した根拠は、位置関係や距離などからそれを被告人の手であると推定したにすぎないうえ、被告人の顔を確認する前に手を一度話していること等を理由に、被害者証言は、犯人の特定に関する部分に限り、十分な信用性を有するものではないと判断。

また、被告人に自学調書については、全体が五丁からなる極めて簡潔なもので具体性に乏しく、被害者供述とも整合性を欠く部分があることや、条例違反行為の法定刑の上限は罰金五万円と比較的軽微なものである反面、否認を続けた場合には身柄の拘束が続く可能性のあり、虚偽の自白をするということもあり得ないことではないと判断。以上のことから、被害者供述と被告人供述を前提としても、被告人を犯人とするに足りないとして、無罪判決を言い渡した。

東京簡易裁判所平成12年8月11日

被告人が、走行中の電車内において、被害者のスカートの中に手を差し入れて大腿部を上下に撫でたという、東京都迷惑行為防止条例違反の事件。被害者供述に信用性が認められないとして、被告人に無罪を言い渡した。

証拠上のポイント

被害者の述べる被害態様を実行するためには、被告人の体勢としては不自然なものとなり、右腕を車両壁に保持することは困難。また、被害者は、犯行中の犯人の手をつかんだと供述するが、周囲は身動きのできないくらいの混雑状態であり、被告人は被害者の背後に密着していたうえ、被告人の体型は腹部がでて、太い腕をしており、オーバーコートも着用していたため、被害者が股下にきた被告人の犯行時の左手を何の障害もなくつかまえるということは困難。

以上のとおり、客観的状況と被害者供述が整合しないことを以て、被害者供述の信用性を否定し、被告人に無罪を言い渡した。

東京高等裁判所平成12年9月18日

被告人が、被害者の臀部付近を触るなどした東京都迷惑行為防止条例違反の事件。被告人の自白を前提に有罪判決を下した第一審を破棄し、被告人に無罪を言い渡した。

証拠上のポイント

被害者が当時着用していたとみられるサマーセーターは臀部全体も覆い隠しており、犯人役が犯行を再現したところによれば、犯人がサマーセーターに触れずに、被害者の臀部に触ることは困難として、実況見分の結果から被害者証言の信用性を否定した。また、被告人の自白も、否認を押し通すと勾留されることを案じて、自暴、自棄になって、捜査官の意向に沿う犯行状況を適当に作出した疑いが強く抱かれるとして、任意性は認められるにせよ、信用性はないものと判示した。

東京高等裁判所平成13年3月28日

被告人が、被害者の背後から両手で下腹部付近を抱きかかえ、陰茎を臀部に押し付けられ、陰部付近を触わったという東京都迷惑行為防止条例違反事件。第一審が被告人を無罪としたため検察官が控訴したものの、原審判決を維持し控訴を棄却した事案。

証拠上のポイント

被害者の供述が、各わいせつ行為の時期や順序、その時の電車の進行状況や車内の状況等について一貫していない。コートの袖を確認した時期や、袖の主が被告人であると判断した理由などについて、看過し難い変遷がある。また、10数分間にもわたって勃起した陰茎を押し付けられ続けるという証言自体も不自然である。

以上の事実から、被害者が虚構の事実を供述したものとは認め難いとしたうえで、中核となる事実に密接に関係する事実関係について、必ずしも合理的な説明のつかない相当大きな変動、変遷があることから、当初から供述が一貫している本件事実関係の中核的な痴漢行為自体の存在についても疑問を抱かせるものといわざるを得ないとして、証言の信用性を否定した原審判決の結論を指示した。

東京簡易裁判所平成13年5月21日

被告人が、走行中の電車内において、被害者のスカート内に手を差し入れて、同女の臀部等を撫でたという東京都迷惑行為防止条例違反の事件。被告人は、犯人性を争い無罪を主張し、裁判所も無罪判決を言い渡した。

証拠上のポイント

目撃者は存在しないため被害者の証言が唯一の証拠であった。被害者証言において、犯人の手が右手だったか左手だったかについて変遷があり、正当な変遷の理由はなかった。また、犯人と被害者が向かい合うに至った経緯について具体的な供述がなく、犯人特定に至る経緯に具体的な供述が一切ない。

この点について、期日外の尋問を行っても、具体的な供述が得られなかった。以上のことから被害者供述の信用性を否定し、被告人に無罪を言い渡した。

東京高等裁判所平成13年8月30日

被告人が、走行中の電車内において、被害者の臀部付近をスカートの上から触り、同女の左大腿部の裏側付近に膝を押し当てて動かすなどしたという、東京都迷惑行為防止条例違反の事件。被告人は無罪を主張し控訴したが、同控訴を棄却し、有罪判決を維持した事案。

証拠上のポイント

被害者が被告人を罪に陥れるために虚偽の申告をしたことを窺わせる状況は全く存在しない。
被害者が原審弁護人及び被告人の詳細な反対尋問に対して動揺することなく、核心部分についてほぼ一貫した証言をしていること、その内容は第一電車内及び第二電車内における痴漢の被害を受けた際の対応や心情等が臨場感をもって断定的に述べられている。以上の理由から被害者供述の信用性を認め、被告人の犯人性を認めた。

名古屋地方裁判所平成13年10月5日

被告人が、走行中の電車内において、被害者のスカートの上から臀部を撫で、スカート内に手を差し入れてパンティの上から臀部を撫でた上、パンティ内に手指を差し入れて陰部を弄ぼうとしたが、同女に右手を掴まれたため、陰部に触ることができなかったという、強制わいせつ未遂事件。被告人は逮捕直後に自白していたが、その後否認に転じた。無罪判決が言い渡されている。

証拠上のポイント

被害者は、スーツの左側ポケットの辺りしか視認しておらず、犯人の顔は確認していなかった。また、被害者の背後右側に被害者に接着して人がいた可能性も認めた。さらに、被害者が被告人の手を掴む前に、人の降りる動きがあった。

以上のことから、被害者が、犯人以外の者の衣服等を掴んだ可能性は低いといえるが、およそあり得ないという状況ではないとして、被害者の供述だけからは、被告人を犯人と断定することはできないと判断した。
また、被告人の自白供述に対しては、取調べに任意性を疑わしめるような事情は存在しないとしつつも、仕事の都合などから、否認供述を信用してもらえる可能性と自白供述をした場合の利益を考慮して、虚偽の自白供述をした可能性も否定できないとして、被告人の自白供述からも、被告人を犯人と断定することはできないと判示した。

東京地方裁判所平成13年10月26日

被告人は、走行中の電車内において、被害者の着衣の上から陰部付近を撫でたという東京都迷惑行為防止条例違反の事件。被告人には懲役10月が言い渡された。常習性の有無が問題となった。

証拠上のポイント

同種犯行による4回の罰金前科、5回の懲役前科があること。前刑出所後、仕事で電車に乗らなくてもよいようにと茨城県内で住み込みで働いていたにもかかわらず、無断で飛出した翌日に敢行された事件であること。上記の事情から常習性が認定された。

川崎簡易裁判所平成14年5月28日

被告人が走行中の電車内において、スカートのスリットから右手を入れて大腿部をなでたという痴漢の事案。被告人は犯人性を争い無罪を主張したが、裁判所は罰金5万円を言い渡した。

証拠上のポイント

本件においては、被害者の他に、同じ車両に乗り合わせ、被告人を現行犯逮捕した2名の警察官も、被告人が犯人である旨を証言していたため、3人の証人の証言の信用性が問題となっていた。弁護人は、同証言の信用性を弾劾するために、被害者や目撃者の証言通りの行動を再現ビデオにして撮影し、その行動が不自然であることを主張した。裁判所は、再現ビデオ内の仮想被害者と現実の被害者が違うことや、弁護人の解釈がいりこんでしまっていることを理由に、弁護側の再現ビデオによって、証人の証言の信用性は揺らがないと判断した。

最高裁判所平成14年7月19日

第一審は、非行事実を認定した上で、少年法23条2項による保護処分に付さない旨の決定を行った。非行事実を認定されたことから抗告を申し立てたものの、原審(下記事案6の東京高等裁判所平成14年4月26日)は、保護処分に付されていないことを理由に棄却した。最高裁も原審の見解を指示し、特別抗告を棄却した事例。

証拠上のポイント

非行事実自体の審理をしておらず、証拠上のポイントはない。少年事件において不処分との決定が得られた場合には、被告事実が認められたとしても、その後に不服を申し立てることはできない。

名古屋高等裁判所平成14年7月24日

被告人は、被害者に対し、スカート内に手を差入れてパンティの上からでん部を撫でた上、パンティ内に手指を差し入れて陰部をもてあそぼうとしたが、同女に手をつかまれたため陰部に触ることができなかったという強制わいせつ未遂事件。

第一審では被告人に無罪判決が言い渡されたが、検察官による控訴が容れられ、被告人に対して執行猶予付判決が言い渡された。

証拠上のポイント

第一審では、被告人と被害者との間に第三者がいたとの被害者証言を重視したが、本件では、同証言は原審裁判官からの質問につじつまを合わせようとした結果に過ぎないとして、被告人と被害者間に第三者は存在しなかったと認めた。そのうえで、被告人供述及び被害者証言から、犯行当時の位置関係を認定し、被告人の他に犯人である可能性のある人物の存在を否定した。

東京地判平成14年9月3日

電車内において痴漢行為をしたとして、逮捕、拘留、起訴された原告が、刑事手続で無罪が確定した後、原告を痴漢として現行犯逮捕した少女とその両親に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案で、本件電車内で原告から痴漢行為を受けたとする被告Aの供述は、全体としてみれば信用性の高いものであり、原告は、本件電車内で被告Aに対して痴漢行為をしたものと認められるとし、請求を棄却した事例。

証拠上のポイント

本件では、以前の刑事裁判とは異なり、本件電車内で原告から痴漢の被害を受けたとする被告(被害者)の供述は、全体としてみれば信用性の高いものであり、供述内容の主要な部分が真実であることをうかがわせるものであるのに対して、これを全面的に否定している原告(被告人)の一連の供述は、いずれも場当たりで一貫性がなく、かなり不自然なものであるといわざるをえず、これを信頼することはできないとして、本件電車内で原告から痴漢行為を受けたとする被告の供述内容が真実であるとした。その上で、原告の本件請求は理由がないとして、棄却した。

東京地方裁判所平成14年9月3日

被告人は、被害者のストッキングの上から股の間に指を差し込み、陰部付近をさわったとして、東京都の条例違反で起訴されたが、無罪判決を言い渡された。その後、現行犯逮捕した被害者に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求したものの、痴漢行為をしていたものと認められ、請求を棄却された。

証拠上のポイント

刑事事件における証人尋問においては、被害者が緊張していたこと等を理由に、刑事裁判において否定された被害者証言の信用性を肯定した。また、被告人(原告)の証言については、いくつもの点で不自然さを含むものとして、信用性を否定した。

刑事裁判の認定において合理的な説明がなされていないとされていても、本件民事裁判においてそれと異なる認定をすることを何ら妨げるものではないと判示しており、刑事裁判とは異なり、当事者間のいずれの供述を信用できるかという観点から判断したものと考えられる。

東京地判平成15年5月28日

被告人が、走行中の電車内において、被害者に対し、そのスカートをまくり上げてパンティー内に右手を差し入れ、手指で肛門付近等を弄ぶなどしたとされる強制わいせつ被告事件で、被害者の証言と被告人の捜査段階の自白などの証拠では、合理的疑いを入れない程度までの証明があったとは認めがたいとして、被告人に無罪を言い渡した事例。

証拠上のポイント

本件では、被害者が証言する被害内容が強制わいせつに該当する電車内の痴漢行為としてそれほど特徴的なものとまでは言い得ず、被害者証言には犯人識別に関して重要な逮捕時の状況について捜査段階と趣旨が異なると思われる部分があることなどから、被害者が強制わいせつ被害に遭ったことは認められるが、被告人が本件の犯人であることにつき、合理的疑いを入れない程度までの証明があったとは認めがたいとして、被告人に無罪判決を言い渡した。

東京地判平成15年6月6日

被告人は、迷惑行為防止条例違反被告事件の他に、通行中の被害者に対して、いきなり抱きついた上で、被害者の下着の上から手指で被害者の陰部をなで回すなどしたとされる強制わいせつ被告事件でも起訴されていた。

この事件について、被害者の犯人識別供述はその正確性について疑問を容れる余地が少なくなく、被告人の捜査段階での自白にも看過できない疑問が存するとして、強制わいせつの公訴事実についてのみ、裁判所が被告人を無罪とした事例。

証拠上のポイント

本件では、被害者の犯人識別供述がおよそ事件発生後1年以上も経過した時点でなされていることや警察から、「被告人が本件の犯人かもしれない」との連絡を受けた上で、被害者が面通しをしていることなどから、被害者の犯人識別供述は疑問を容れる余地があるとされた。

一方、公判廷における被告人供述については、数回にわたる被告人質問の機会を通じて終始一貫していたことなどから、単なる弁解として一概に排斥することには躊躇を感じざるを得ないとされ、被害者供述及び被告人の捜査段階での自白だけでは、本件公訴事実についての犯罪の証明がないとして、被告人に対して無罪判決を言い渡した。

東京高判平成16年7月8日

被告人が、走行中の電車内において、乗車中の被害女性(15歳)に対し、スカートをまくり上げながら右手で同女の臀部をなでるなどしたとされる公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(神奈川県)違反被告事件について、原審は被告人を無罪としたところ、これを不服として検察官が控訴した事案において、被告の居室から押収したアダルトビデオ等が被告人の故意を推認させる資料の一つとなり得るとして、原判決を破棄した事例。

証拠上のポイント

本件では、原判決が被害者の証言内容に変遷があるとした点について変遷ではないと判断し、原審の被害者の証言を信用できるとした。一方、被告人の供述については、電車内での行動に関して、供述内容が一貫しておらず、信用できないとした。

その上で、被告人の居室から押収されたアダルトビデオやアダルト雑誌から、被告人が電車内での痴漢あるいは女子高校生に異常な関心を抱いていることが示されているとして、これらの証拠を被告人の故意を推認させる資料の一つとし、無罪を宣告した原判決を破棄し、被告人に罰金50万円の有罪判決を言い渡した。

大阪簡判平成16年10月1日

下記事件(大阪高判平成17年3月2日)の第1審。

証拠上のポイント

本件では、被害者の本件被害に至るまでの経緯、被害状況についての証言が、その内容自体自然であり、弁護人の反対尋問に対しても、基本的部分においてほぼ一貫した供述をしていることから、高い信用性を認めることができる一方、被告人の公判廷における供述は、不自然、不合理な点があることから、当該供述は信用することができないとした。そして、本件痴漢行為が執拗であり、器物損壊行為も腹立ちまぎれにガラスを蹴って割ったものであって、悪質であることなどから、被告人に罰金40万円の有罪判決を言い渡した。

大阪高判平成17年3月2日

被告人が、電車内で隣に座った被害女性に痴漢行為を行った上、現行犯逮捕されて連行された交番の出入口引き戸ガラスを蹴って割ったとされる迷惑防止条例違反及び器物損壊の事案の控訴審において、被害者の供述は根幹部分については終始一貫しており信用性は高いことから、被告人を有罪とした一審判決を維持し、控訴を棄却した事例。

証拠上のポイント

本件では、被告人からその手で臀部等を二度にわたって触られたという根幹部分について、被告人の供述は終始一貫しており、その信用性が高いものであること及び被告人の捜査段階における自白供述が信用できることから、一審判決に事実誤認はないとした。

そして、痴漢の態様は執ようかつ悪質であり、器物損壊の点についても犯情が悪質であることなどから、被告人を罰金40万円に処した一審判決を維持し、控訴を棄却した。

大阪高判平成17年10月25日

被告人が、走行中の電車内において、乗客の女性のスカートの中にまで手を入れて大腿部を触るなどしたとされる迷惑防止条例違反事件の控訴審において、被告人による犯行は、動機や経緯に酌量の余地がなく、態様もかなり悪質なものであるとして、被告人を懲役5月に書した原判決の量刑が不当に重いとはいえないとして、控訴を棄却した事例。

証拠上のポイント

本件では、犯行動機や経緯に酌量の余地がないことや態様も相手のスカートの中にまで手を入れるなどかなり悪質なものであることなどを指摘した上で、被告人には、同種事犯の検挙歴や罰金前科のみならず、本件とほぼ同一手口による準強制わいせつの罪で懲役1年8月、3年間執行猶予に処せられ、その猶予期間中に本件犯行に及んでいることから、示談が成立していても、いまだ刑の執行猶予を相当とする事案とは認めず、被告人を懲役5月に処した原判決の量刑が不当に重いとまではいえないとして、控訴を棄却した。

東京地判八王子支部平成18年3月10日

被告人が、走行中の電車内において、被害者に対し、その臀部を着衣の上から手で触るなどしたとされる公衆に著しく迷惑を掛ける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件について、被告人の自白供述は疑問な点が多く、検察官の主張するような「経験した者でなければ供述し得ない臨場感がある内容」とは到底いえず、信用性は極めて低いとし、無罪を言い渡した事例。

証拠上のポイント

本件では、被害者の供述に関して、本件の最も核心部分である被害行為の態様(行為自体は単純で、極めて短時間の出来事)について、多くの変遷が認められるなどしていることや被告人の捜査段階での自白供述が虚偽の自白をするに至った心情が見て取れるものであることから、被害者の供述及び被告人の捜査段階での自白供述の各信用性がいずれも否定され、無罪判決が言い渡された(なお、逮捕・勾留手続の問題点についても指摘がなされている)

札幌高判平成18年9月14日

被告人が、走行中の電車内において、被害者のスカートの中に手を入れた上、パンティの中に手を入れてその陰部を手指で弄ぶなどしたとされる公衆に著しく迷惑を掛ける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反、強制わいせつ被告事件の控訴審において、検察官及び弁護人から控訴申立てがなされた件について、被害者の供述と被告人の供述とが符合していることなどを理由に、本件についても被告人がその犯人であるとの疑いは相当に強いと判断されるとして、原判決を破棄し、被告人に対して懲役1年6月を宣告した事例

証拠上のポイント

本件では、被告人が時間及び区間の限定された地下鉄車両内において同一被害者に対し連続して痴漢をしていたことが明らかであることや被害者に対して相当回数痴漢をし、被害者が抵抗したり、周囲に助けを求めたりしないことを知った上で態様をエスカレートさせていたことから、本件も被告人の犯行であることが相当強く疑われる上、被告人が捜査段階で本件発生日の前後の期間に被害者に痴漢行為を行ったとする供述が信用できることから、被告人の犯人性を肯定して、無罪判決を破棄して、懲役1年6月の実刑判決を言い渡した。

東京高判平成18年10月23日

被告人が、走行中の電車内において、被害者に対し、その臀部に着衣の上から陰茎を押し付け、さらに、同女のスカートの中に手を差し入れて下着の上から臀部を触るなどしたとされる公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件において、被告人が事実誤認を主張して控訴した事案で、被告人の弁解が虚偽を含むものである以上、痴漢行為を否認する被告人の弁解も信用できないと判示して、控訴を棄却した事例。

証拠上のポイント

本件は被害状況を目撃した者の供述はなく、直接証拠は被害者と被告人の供述しかないことから、本件の帰趨は両名のいずれが信用できるかの判断にかかるとした上で、被害者が被告人を痴漢の犯人として捕まえた際の両名の手や被告人が所持していたバッグの状況について、両名は全く違った供述をしており、被害者の供述は自然なものであるが、被告人の供述は極めて不自然であるとして、被告人の弁解が明白な虚偽を含むものである以上、痴漢行為を否認する被告人の弁解もおのずと信用することはできないと判断し、控訴を棄却した。

東京高判平成19年3月14日

被告人が、神奈川県内の駅から乗車した電車内で認めた被害女性に痴漢行為をすることを企て、同駅から東京都内の駅までの間を進行中の電車内において、その犯意を継続させて一連の犯意の下に、同女性に対し、卑猥な行為をすることを繰り返したという事案で、各都県の迷惑防止条例違反の罪が観念的競合の関係に立つとして刑法54条1項前段を適用した原判決には、法令適用の誤りがあるとした事例。

証拠上のポイント

本件では、神奈川県迷惑防止条例違反の罪と東京都迷惑防止条例違反の罪のいわゆる包括一罪が成立すると解するのが相当であり、上記両罪が観念的競合の関係に立つとして刑法54条1項前段を適用した原判決には、法令適用の誤りがあるとした。ただ、処断刑には差異を来していないことから、上記法令適用の誤りは、判決に影響を及ぼすものではないことが明らかであるとして、控訴を棄却した。

東京地決平成19年5月21日

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被疑事件で、被疑者につき検察官より勾留期間の延長請求がなされ、これが認められたことから、被疑者が犯罪の嫌疑及び罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がなく、やむを得ない事由も存在しないとして、勾留期間を延長した原裁判を取消すよう求めて準抗告した事案で、原裁判が刑訴法208条2項の「やむを得ない事由」の判断を誤っていると判示し、原裁判を取り消して勾留延長請求を却下した事例。

証拠上のポイント

本件では、一件記録をみても、検察官が当初の10日間の勾留期間中に必要な捜査を尽くす努力をしたことすら窺えなかったため、捜査の必要性は認められるものの、勾留の必要性の程度や検察官の怠慢ともいうべき捜査の進捗状況を考えると、被疑者の身柄拘束を更に継続してこれを行わせるのは相当でないとして、本件被疑者の勾留期間を5日間延長した原裁判を取消し、勾留延長請求を却下した。

東京高判平成20年5月15日

被告人が、走行中の電車内において継続的に、被害者に対してその着衣の上からその右乳房を手で触るという痴漢行為をした事案で、被告人の行為が千葉県と東京都にまたがっていたとして、千葉県と東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反で起訴された事件の控訴審において、罪数評価を変更した事例。

証拠上のポイント

本件の事実関係を前提とすれば、被告人の行為については、各条例の場所的適用範囲からして同一の行為が両方の条例に違反するということはあり得ないので、いわゆる包括一罪として処罰するのが相当であるとして、観念的競合とした原判決は法令の適用を誤っているといわざるを得ないが、この誤りは判決に影響を及ぼさないと判断した。

奈良地判平成20年5月16日

被告人が、停車中の私鉄電車の車内において、通学中の女子生徒に対して、スカートの上から臀部を右手でつかんで揉むという痴漢行為を行ったものとされる公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件について、被害者供述のみをもって被告人が犯人であるとは断定できないとして、犯人性を否定し、被告人に無罪を言い渡した事例。

証拠上のポイント

本件では、被害者が痴漢被害にあったこと自体は容易に認められるものの、被害者が被害に遭った瞬間やその直前直後に自己の背後にいた犯行可能性のある者の存在等をどれほど正確に認識できていたかという点などについて疑問がないわけでなく、被害者の供述のみを根拠に被告人が本件の犯人であると断定しうるほどの高度の信用性までは認め難いことから、犯人性が否定されて、被告人に無罪が言い渡された。

大阪地判平成20年9月1日

被告人が、通勤電車内において同一時間帯に、女子高生であるA及びBに対し痴漢行為をしたとして、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反で起訴された事案について、Aに関しては故意を否定し、Bに関しては犯人性を否定して、被告人に無罪を言い渡した事例。

証拠上のポイント

本件では、被害者Aに関して、被告人の右肘が被害者Aの胸に当たっていたことは認められるものの、電車内の状況、被告人と被害者Aの位置関係等からして、被告人に故意があったと認めるには合理的な疑いが残るとし、被害者Bに関しては、被害者Bが痴漢被害を受けた事実は認められるものの、被害者Bの供述からは被告人以外の人物が痴漢行為をしていた可能性を排除することができないため、犯人性が否定されて、両事件とも無罪が言い渡された。

名古屋高判平成21年5月19日

被告人が背後から女性のスカート内に右手を差し入れて下着の上から同女の臀部を触ったとされる公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件の控訴審について、被告人を本件の犯人と認定した原判決には事実の誤認があるとし、原判決を破棄し、無罪を言い渡した事例。

証拠上のポイント

本件では、被害者の被害状況に関する証言と被告人の自白との間に整合しない点が多々みられ、これらは同一事象を体験しているものとしては、看過し難い齟齬を来たしており、被告人が本件の犯人である疑いはあるものの、別の人物の犯行の可能性、あるいは被告人の別の機会の犯行との取り違えなどの可能性を否定できないため、犯人性が否定されて、無罪が言い渡された。

名古屋地判平成22年1月18日

被告人が走行中の列車内において、V(当時28歳)に対し、その背後から、その両足の間に右足を差し入れて動かし、同女の両太股付近にすり付けるなどした、とされた事案。

証拠上のポイント

被害女性の背後に立っていた被告人の右足が被害女性の両足の間に差し入れられ、その足が時折上下するように動いて、被害女性のひざ周辺部に接触したことについて、被告人が故意に行ったことを推認するに足りる証拠はなく、被告人が故意を有していたものとは認められないとして、被告人に無罪を言い渡した。

さいたま地判平成22年6月24日

被告人が進行中の電車内において乗客である当時17歳のVに対し、そのスカートの中に左手を差し入れて臀部を下着の上からなぞるなどした、とされた事案。

証拠上のポイント

被告人の左手の甲と掌から採取された繊維と同種又は類似の繊維は、Vの下着と着衣から採取した繊維からは検出されず、また、Vの下着に細胞様片の付着が認められ、ヒト成分が検出されたが、そのDNA型は被告人のDNA型とは一致しなかったという事情は、直ちに被告人が痴漢の犯人ではないことを示すものではないが、Vの供述する痴漢の態様がかなり執拗なものであったことに照らすと、被告人が痴漢の犯人であることに相当強い疑念を抱かせる事情であることは疑いないなどとして、被告人に対し無罪を言い渡した。

名古屋高判平成22年11月24日

上記事案(名古屋地判平成22年1月18日)と同じ。

証拠上のポイント

原判決は、関係証拠の中核となる被害女性らの原審公判供述の信用性の評価・判断を誤り、その結果、被告人の足の動きや、被害女性との位置関係、接触した状況等について事実認定を誤り、ひいては、被告人の故意について事実認定を誤った、といわざるを得ないとして、原判決を破棄し、被告人を罰金50万円に処した。

福岡高判平成23年5月25日

被告人は、正当な理由がないのに、①市内のスーパーZ店において、V1(当時19歳)とすれ違う際に、同人に対し、その臀部を着衣の上から手で触り、②同日、上記スーパーZ店において、V2(当時20歳)とすれ違う際に、同人に対し、その臀部を着衣の上から手で触り、③同日、上記スーパーZ店において、V3(当時20歳)とすれ違う際に、同人に対し、その臀部を着衣の上から手で触り、さらに、同日、同所において、同人とすれ違う際に、同人に対し、その陰部付近を着衣の上から指で触った、とされた事案。

証拠上のポイント

被害者らの一審公判供述は、基本的に信用できるものである上、被害に関する供述内容について防犯カメラの映像等によって裏付けられているなどとして、被告人を無罪とした一審判決を破棄し、被告人を罰金30万円に処した。

横浜地判平成23年10月12日

被告人が停車中の下り列車内において、乗客のV(当時16歳)に対し、同人の後方からそのスカート内に右手を差し入れて、下着の上から手指で同人の陰部などを触った、とされた事案。

証拠上のポイント

痴漢取締り中の警察官が、列車内で男性が被害者のスカートに手を押し当てていたのを現認した後、列車を降りてその男性を追跡していったこと、追跡する過程でその男性とほかの人物とを混同したことはなかったこと、同警察官が逮捕した男性は被告人であったことを認定することができるとして、被告人を懲役4月(執行猶予3年)に処した。

神戸地判平成23年11月15日

被告人が歩道上において、歩行中のV(当時24歳)に対し、その前方から、右手の平をその着衣の上から同女の右胸部に押し当てて触った、とされた事案。

証拠上のポイント

一刻も早く帰宅しようと道を急いでいた被告人が、歩道上をこちらに歩いてくる通行人を発見して突如劣情を催し、本件わいせつ行為に及んだという見方にはやや不自然さを感じるなど、わいせつ行為の唯一の証拠である女性の証言には疑いを容れる余地があり、信用性を認めがたい一方で、被告人の供述は自然で一貫しており真実味があるため、被告人が述べるとおり、不意に女性にぶつかっただけであった可能性が十分あり、犯罪の証明があったとはいえないとして、被告人に無罪を言い渡した。

東京高判平成24年7月5日

被告人が走行中の電車内において、乗客である本件女性に対し、着衣の上から、その臀部に自己の股間を押し付け、さらに、その臀部等を右手で撫で回すなどした、とされた事案。

証拠上のポイント

本件女性の原審証言は、その真摯性に疑問を容れる余地がないことは原判決の指摘するとおりであるが、思い込みや誤解があった可能性が排斥できず、被告人に痴漢の故意があると認めることには、合理的な疑いを差し挟む余地があり、被告人に痴漢の故意があったと認定した原判決は、証拠評価に経験則違反があり、ひいては、事実を誤認したものといわざるを得ず、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであるとし、原判決を破棄し、無罪を言い渡した。

横浜地判平成24年8月31日

被告人がタクシー乗り場において、タクシーの順番待ちをしていたV(当時31歳)に対し、その後方に立ち、同人の臀部を着衣の上から手で触った、とされた事案。

証拠上のポイント

Vにとって犯人が誰であるのか特定するのが困難である半面、被告人にとっては土地勘もなく、逃走が困難であることなどを勘案すると、被告人が当時、酒に相当酔っていたことを考えても、痴漢行為に及ぶにはやや相応しくない場面設定だといわざるを得ないなどとして、被告人に対し、無罪を言い渡した。

東京地判平成24年9月20日

被告人が進行中の電車内において、被害者に対し、そのスカートをまくり上げて左太ももを手で触り、下着の上から陰部付近を手指で触り、さらに、下着を引き上げて臀部を手で触るなどした、とされた事案。

証拠上のポイント

被告人が犯人である旨の被害者の供述には、相応の信用性は認められるものの、供述の変遷や疑問点、的確な観察、認識ができなかった可能性といった難点もある上、この難点を補うべき客観証拠が不足しており、満員電車内における痴漢の事案の特質から慎重さを要することも考慮すると、犯行を否認する被告人の供述を排斥して、被告人の犯人性を確信させるには足りないとし、無罪を言い渡した。

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