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裁判員裁判 – 裁判員裁判の流れを解説

2009年からスタートした裁判員裁判。毎年5,000人以上の方が裁判員に選ばれています。(出典: 裁判員制度-裁判員制度関連報告書-裁判員裁判実施状況の検証報告書、図表5)

まだ裁判員に選ばれたことが無い方も、近い将来、もしかすると今日にでも、裁判所から候補者通知が届くかもしれません。裁判員に選ばれるということは、テレビや新聞で見聞きするだけの他人事ではないのです。そして、いざ自分が裁判員に選ばれたとき、そもそも裁判員裁判とは何か、どんな事件をどんな流れで審理するのか、通常の裁判とはどう違うのか等、様々な疑問が生じ、不安に思うかもしれません。その疑問を解消し、また不安を取り除く一助となるよう、以下、ご説明いたします。

また反対に、自分が裁判員裁判対象事件の被告人になってしまったとき、その手続の大枠を知っていることは大切です。もしかすると「そんなの依頼した弁護士に聞けば教えてもらえるだろう」と思われるかもしれません。
しかし、そもそもどのような弁護士に依頼するのが良いのか、それを判断するためにも手続の特色を知っていることは有用です。そこで、そのような観点で代表弁護士・中村勉が解説いたします。

裁判員裁判とは

裁判員裁判とは、国民の中から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加し、裁判官と共に有罪・無罪や量刑を判断する制度です。裁判員制度は一定の重大事件について、国民の中から選任された裁判員が、裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することによって、司法に対する国民の理解及び信頼を高めることを趣旨として導入されたものです。

裁判員裁判の対象事件

裁判員裁判の対象事件となるのは、法律で定められた一定の重大犯罪に関する事件です。具体的には、①死刑や無期懲役・禁錮に当たる罪に関する事件、②法定合議事件(裁判所法26条2項2号により、地方裁判所の裁判官の合議体で取り扱う旨が定められている事件)のうち、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関する事件、の2種類が対象となります。

例えば、殺人、強盗致死傷、強制性交等致死傷、現住建造物等放火、傷害致死、保護責任者遺棄致死、危険運転致死などに関する事件が、裁判員裁判の対象事件となります。

通常裁判と裁判員裁判の違い

通常裁判であれば、一回結審の裁判でない限り、公判と公判の期間は1か月程度空けて行われることが多いです。すなわち、月に1回程度の裁判が、何回かに分けて行われます。
しかし、裁判員裁判では、裁判員が審理に直接参加し、有罪・無罪や量刑の判断まで行わなければなりません。それに伴い、裁判員の社会生活上の影響をできるだけ少なくするため、公判を連日行うなど、短期間で集中的に公判が開かれています。
また、審理を短期間で行えるよう、裁判官・検察官・弁護人の三者で公判前整理手続という事前準備の手続を行い、そこで争点や証拠を整理することになります。

裁判員裁判の流れ

裁判員裁判の大まかな流れは、まず裁判官・検察官・弁護人が公判前整理手続を行い、それを踏まえて、裁判員が公判に参加し、評議・判決を行うというものです。

(1)公判前整理手続

裁判員裁判では審理に必要な期間等が予め明らかになっているとともに、裁判に参加する裁判員の審理の負担を最小限にする必要があります。そのためには、公判の前に十分な争点及び証拠の整理を行い、連日的な開廷を可能にする審理計画を策定する必要性が高いです。したがって、公判前整理手続では、争点整理、証拠の開示・整理、取り調べる証拠の決定、スケジュールの決定が行われます。

具体的には、まず、検察官が証拠によって証明する犯罪の事実を明らかにするとともに、その事実を証明するために用いる証拠の取り調べを請求し、弁護人に開示(閲覧やコピーの機会を与えること)します。これに対して弁護人は、その証拠を公判で取り調べてよいか意見を述べなければなりませんが、そのためには、検察官が取調べを請求した証拠だけでなく、検察官が持っている他の証拠も見たうえで、検討する必要があります。法律上、弁護人は、検察官の持つ特定の証拠のうち重要なものを指定して、開示するよう請求することができます(これを「類型証拠開示請求」といいます。刑訴法316条の15)。

こうして開示された証拠をもとに、弁護人は、検察官が請求した証拠が本当に事件と関係があるか、事実認定を誤らせるような問題のあるものでないか等を検討し、その証拠を公判で取り調べてよいか意見を述べます。

次に、弁護人が自らの主張を明らかにするとともに、その証明に用いる証拠の取り調べを請求し、検察官に開示します。これを受けて検察官が、その証拠を公判で取り調べてよいか意見を述べます。また、弁護人は、弁護人の主張に関連すると認められるものについて、検察官に証拠を開示するよう請求することができます(これを「主張関連証拠開示請求」といいます。刑訴法316条の20)。
このようなやりとりを経て、証拠及び争点の整理を行っていきます。

(2)公判期日

裁判員は前述の公判前整理手続には参加しません。裁判員は、この公判期日から公判に参加することとなります。公判の期日は、事件の内容や争点にもよりますが、数日から一週間以内であることがほとんどです。公判の様子は、皆さんがテレビドラマなどで見たことがある刑事裁判での法廷シーンをイメージしていただければ良いと思います。

公判の流れをおおまかに説明しますと、まず、冒頭手続が行われます。次に証拠調べが行われた後、最後に、検察官の論告、求刑と、弁護人の最終弁論、という流れとなります。
冒頭手続では、被告人が起訴状記載の本人か確認するための人定質問が行われ、続いて検察官による起訴状の朗読が行われます。次に裁判長から被告人に黙秘権の告知をしたうえで、被告人が起訴状の内容を認めるか否かを述べる罪状認否と続きます。

冒頭手続が終わると証拠調べが始まり、検察官、弁護人の順で冒頭陳述が行われます。冒頭陳述では起訴状記載の事実よりも詳細に事件が語られ、検察官、弁護人が証拠調べによって証明しようとしている事実が述べられます。この冒頭陳述は、検察官、弁護人のそれぞれの視点から事件が語られることが多いです。証拠調べでは、証拠物や供述調書の取調べ、証人尋問、被告人質問等が行われます。裁判官と裁判員は、検察官と弁護人の主張を聞きつつ、何が事実として認定できるのかを、証拠に基づいて判断しなければなりません。

証拠調べが終わると、最後に、検察官の論告・求刑弁護人の最終弁論となります。
論告では、検察官が審理の結果に基づいて、事実及び法律の適用に意見を述べ、求刑では被告人に科すべき刑罰について意見を述べます。最終弁論では、弁護人の主張が、法廷で取り調べられた証拠に基づき、論理的で常識にもかなうことを、説得的に語ります。

(3)評議

法廷での審理が終わると、評議が行われます。評議は、裁判官と裁判員によって、評議室で非公開にて行われます。そして、裁判官と裁判員のそれぞれが一票を有した多数決によって、被告人が有罪か無罪か判断されます。ただし、被告人が有罪であると判断する場合は、裁判官、裁判員のそれぞれ1名以上を含む過半数の賛成票が必要です。

被告人が有罪であると判断された場合、さらに被告人に科すべき刑の重さについて判断します。この際、意見が分かれた場合は、被告人に最も不利益な意見の数を順次、利益な意見の数に加えて、裁判官、裁判員のそれぞれ1名以上を含む過半数に達した中で、最も利益な意見により決定します。

(4)判決

評議に基づいて、法廷で判決が下されます。被告人または検察官は、判決に不服があれば、2週間以内に控訴することができます。控訴審は裁判官のみで合議体が構成されます。
当事務所は控訴事件も承っております。ご検討中の方はこちらをご覧ください。

裁判員裁判で弁護士に求められる能力

裁判員裁判では、普段、法律になじみのない一般の市民が裁判に参加し、最終的な判断を下すことになります。そのため、弁護士は、法的な専門知識を前提にしつつも、裁判員に対しては、いかに難しい法律用語を避けながら、論理的でわかりやすく被告人の主張を伝えることができるかが大きな鍵となります。そして、同時に、法廷での振る舞い方といった法廷技術も必要となってきます。

例えば、尋問の際に、弁護人が何を聞きたいのかが分かりにくい質問をしたり、弁護人の質問と証人の答えがちぐはぐなやりとりばかり繰り返したりしていれば、裁判員は尋問の内容を理解できません。また、弁護士が法廷で話をする際に、ずっと書面を見ながら淡々と自らの主張を話し続けていたら、どのように感じるでしょうか。たとえ、その話している内容が説得力のあるものだとしても、裁判員の心には響かず、主張の内容が伝わりません。

逆に、弁護士が、裁判官・裁判員が耳で聞いて理解できる尋問をすることができれば、尋問を通して、弁護人の主張を裁判官・裁判員に伝えることができます。また、弁護士が法廷で書面を見ずに、裁判官・裁判員の目を見ながら、主張を語りかけたとすれば、それはきっと裁判官・裁判員の心を動かすことにつながります。裁判員もあなたと同じ一市民であり、人間です。弁護士が、裁判官・裁判員を説得しようとする姿勢で語ることで、裁判官・裁判員の共感を得ることにつながるのです。

このように、裁判員裁判では、弁護士には、裁判員にメッセージをより強く届けることができる能力が求められます。

まとめ

裁判員裁判の流れについて、ご理解いただけましたでしょうか。あなたが近い将来、裁判員に選ばれることになった時のために、是非ともこの記事を参考にしてください。
また、裁判員裁判の被告人となってしまった場合は当事務所にご相談ください。

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経験豊富な弁護士がスピード対応

刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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