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軽犯罪法違反とは – 軽犯罪法違反に該当する事例について弁護士が解説

警察に指摘されて初めて「これって違法なの?」「こんなことで警察に調べられるの?」と思う犯罪の代表格が軽犯罪法違反の事案です。
軽犯罪法はその名のとおり、比較的軽微な犯罪が定められている法律ではありますが、だからといって真剣に向き合わないと、将来に影響が出てしまいかねません。
また、本来軽犯罪法違反として立件されるべき行為が、より重い犯罪として立件されているケースもあります。以下、
代表弁護士・中村勉が解説します。

軽犯罪法とは

軽犯罪法は、日常生活において、身近で比較的軽微な違法行為を取り締まるために定められた法律です。軽犯罪法において規制されているいずれの行為も、刑罰は拘留又は科料となっており、このことからも、刑法等で定められている多くの犯罪よりも軽微なものと考えられていることがわかります。まずは、条文を見てみましょう。

第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
一 人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者
二 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
三 正当な理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
四 生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの
五 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者
六 正当な理由がなくて他人の標灯又は街路その他公衆の通行し、若しくは集合する場所に設けられた灯火を消した者
七 みだりに船又はいかだを水路に放置し、その他水路の交通を妨げるような行為をした者
八 風水害、地震、火事、交通事故、犯罪の発生その他の変事に際し、正当な理由がなく、現場に出入するについて公務員若しくはこれを援助する者の指示に従うことを拒み、又は公務員から援助を求められたのにかかわらずこれに応じなかつた者
九 相当の注意をしないで、建物、森林その他燃えるような物の附近で火をたき、又はガソリンその他引火し易い物の附近で火気を用いた者
十 相当の注意をしないで、銃砲又は火薬類、ボイラーその他の爆発する物を使用し、又はもてあそんだ者
十一 相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者
十二 人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠つてこれを逃がした者
十三 公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者
十四 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者
十五 官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者
十六 虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
十七 質入又は古物の売買若しくは交換に関する帳簿に、法令により記載すべき氏名、住居、職業その他の事項につき虚偽の申立をして不実の記載をさせた者
十八 自己の占有する場所内に、老幼、不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら、速やかにこれを公務員に申し出なかつた者
十九 正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者
二十 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者
二十一 削除
二十二 こじきをし、又はこじきをさせた者
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
二十四 公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者
二十五 川、みぞその他の水路の流通を妨げるような行為をした者
二十六 街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者
二十七 公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者
二十八 他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者
二十九 他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者
三十 人畜に対して犬その他の動物をけしかけ、又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者
三十一 他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者
三十二 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者
三十三 みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者
三十四 公衆に対して物を販売し、若しくは頒布し、又は役務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者
第二条 前条の罪を犯した者に対しては、情状に因り、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる。
第三条 第一条の罪を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準ずる。
第四条 この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。

拘留、科料とは

軽犯罪法違反の罰則とされている、拘留または科料の意味は以下のとおりです。

拘留(刑法第16条に規定)
一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。
科料(刑法第17条に規定)
千円以上一万円未満とする。

1月以上の刑事施設での拘置が「懲役」ですので(刑法第12条)、拘留は懲役より軽い自由刑になります。また、1万円以上の納付を求められるものが「罰金」ですので(刑法第15条)、科料は罰金より軽い財産刑になります。

比較的軽微な違法行為ということもあり、罰則も刑罰の中でもっとも軽い2種類となっているのです(軽犯罪法第1条柱書、刑法第10条1項本文、第9条)。さらに、情状によっては、刑の免除も可能となっており(軽犯罪法第2条)、その点からも、軽微な犯罪類型が定められている法律であることがわかります。

しかし、軽微とはいえ、起訴され、有罪となれば前科になります。たとえ、判決で刑が免除されたとしても、前科になることに変わりはありません。

軽犯罪法違反に該当する事例

ここでは、軽犯罪法違反に該当し得る事例をいくつか挙げてみます。

1. 正当な理由なく、折りたたみナイフや木刀を隠して携帯する行為

ご自身では隠して携帯しているつもりでなかったとしても、2号の行為(凶器携帯の罪)に当たるとして、摘発される例があります。職務質問やそれに付随する所持品検査を通して立件されることが多いです。

2. 正当な理由なく、脱衣所にビデオカメラを設置して盗み撮りする行為

23号の行為(窃視の罪)に当たるとして、摘発される例があります。
条文上は「のぞき見た」行為が処罰の対象となっていますが、直接自分の目でのぞき見る行為のほか、カメラやビデオでの盗み撮りも同行為に当たるとされています(福岡高裁平成27年4月15日判決)。仮に盗み撮りを意図していた裸体等が全く写っていなくても軽犯罪法違反となり得ます。

3. 夜道、たまたま見かけた女性を一度だけ尾行してつきまとう行為

10号の行為(追随等の行為)に当たるとして、摘発される可能性があります。
ストーカー規制法では、同一の者に対してつきまとい等を繰り返して初めて刑事事件として立件される建付けとなっており、一回きりのつきまといですと、警告で終わることが多いです。

また、ストーカー規制法上のつきまとい等は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」が要件となっていますので、そもそもこのような目的なくつきまとう行為はストーカー規制法の規制対象になりません。こういったストーカー規制法で対応しきれないつきまとい行為は、軽犯罪法違反として立件される可能性があります。

軽犯罪法違反事件の弁護

すでに述べた通り、軽犯罪法違反の刑は軽いとはいえ、ひとたび起訴されてしまえば前科となります。前科があると、例えば就職活動において欠かせない履歴書に賞罰欄があれば、そこに前科を記載すべきことになります。あるいは、就業規則において、犯罪の重さに関わらず、「犯罪行為をしたこと」が懲戒処分事由になっていれば、懲戒処分を受ける可能性があります。

したがって、軽犯罪法違反の事案であっても、被疑者として警察や検察に呼び出されているのであれば、前科がつかないよう、不起訴を目指す活動が必要です。
弁護士は、どのような事情があれば不起訴になる可能性が高まるのかを把握していますので、ご依頼いただければ、的を射た活動をすることができます。

反省の態度を見せることはご自身でそれなりにできるかもしれませんが、反省の態度一つをとっても、弁護士からのアドバイスがあるのとないのとでは、処分を決める検察官が受ける印象に違いが生じ得ます。
被害者がいる事件においては被害者と示談交渉し、被害者がいない事件では具体的事案における被疑者に有利な事情を拾い上げ、不起訴処分にすべき旨の意見書を書きます。

軽犯罪法違反で逮捕されるケースはそれほど多くありませんが(刑事訴訟法上も逮捕の要件が加わり、形式的にも逮捕のハードルが上がります)、軽犯罪法違反として立件されるべき事案が、より重い犯罪で立件され、場合によっては逮捕されてしまう事態も生じ得ます。
それは、軽犯罪法が刑法や他の特別法による処罰対象から漏れてしまっている行為を規制する補充的位置づけにあるからです。軽犯罪法に触れるのか、より重い刑法等に触れるのか、判断が微妙な場合には、捜査機関はまず重い方の犯罪で立件する傾向にあるのです。
重い方の犯罪を念頭に取調べ等も行われますから、いつの間にか重い方の犯罪にあたる事実があったかのように誘導され、取り返しがつかないことになることも十分に考えられます。
弁護士にご依頼いただければ、事案を詳細に聴取し、本当にその犯罪が成立するのか、より軽い犯罪が成立するにとどまらないか等を丁寧に検討し、逮捕の罪名の成立に疑問を持った場合には、そのことを警察や検察に主張し、徹底的に争います。
軽い軽犯罪法違反にしかならないことを十分にアピールできれば、事案自体の軽微性をアピールすることに成功したことになりますから、これは不起訴処分を狙う上でも有利になります。

罪名が重いものから軽いものに変わることを俗に「罪名落ち」と言いますが、刑法犯等から軽犯罪法へ罪名落ちする可能性のある犯罪としては以下のようなものがあります。

  • ストーカー規制法違反、迷惑行為防止条例違反(客引き行為)→軽犯罪法第1条第10号
  • 迷惑行為防止条例違反(盗撮)→軽犯罪法第1条第23号
  • 公然わいせつ罪(刑法第174条)→軽犯罪法第1条第20号
  • 放火罪(刑法第108条~第110条)、失火罪(刑法第116条)→軽犯罪法第1条第9号
  • 住居侵入罪(刑法第130条)→軽犯罪法第1条第1号
  • 建造物損壊罪(刑法第260条)、器物損壊罪(刑法第261条)→軽犯罪法第1条第33号
  • 詐欺罪(刑法第246条)、不当景品類及び不当表示防止法違反、健康増進法違反、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律違反、宅地建物取引業法違反→軽犯罪法第1条第34号
  • 銃刀法違反→軽犯罪法第1条第2号
  • 暴行罪(刑法第208条)→軽犯罪法第1条第11号
  • 虚偽告訴罪(刑法第172条)→軽犯罪法第1条第16号
  • 遺棄罪(刑法第217条、第218条)→軽犯罪法第1条第18号
  • 死体遺棄罪(刑法第190条)→軽犯罪法第1条第19号
  • 偽計業務妨害罪(刑法第233条)、威力業務妨害罪(刑法第234条)→軽犯罪法第1条第31号

まとめ

いかがでしたでしょうか。刑罰の軽い軽犯罪法違反であっても、将来のためには、弁護士に相談されることをお勧めします。
また、ご自身に容疑がかかっている犯罪が本当に成立するのかという観点も重要です。軽犯罪法違反にとどまるのではないか、と少しでも疑問に思う場合には弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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