「セクハラ」というとどのような行為を思い浮かべるでしょうか。
このくらい良いだろうと思っていたとしても、その行動は民事上の責任を問われるのみならず、何らかの犯罪にあたるかもしれません。仮に何らかの犯罪が成立していれば、逮捕・起訴されて前科がつくなどの刑事上の責任を負う可能性もあります。
そこで、ここでは、そもそもセクハラとはどのような行為を指すのか、セクハラで逮捕されることがあるのか、セクハラで刑事事件になった後の流れなどについて解説していきます。
セクハラで逮捕されることはある?
刑法を含めた法律には、セクハラ罪というものは規定されていません。したがって、現行法上、セクハラを行ったという事実だけでは逮捕されることはありません。
しかし、セクハラの態様次第では、不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪、名誉毀損などの犯罪に該当する可能性があります。そのような場合には、セクハラが発端となって逮捕され、刑事責任を問われることがあります。
セクハラとは
セクシャルハラスメントとは、厚生労働省が発表する指針では、「職場において、労働者の意に反する性的言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受ける」という対価型セクハラや、「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者が就業する上で見過ごすことができない程度の支障が生じる」という環境型セクハラに分けられています。
査定をする上司から一対一で食事に誘われたり、上司から性交渉を持ち掛けられ断ったりしたところ、降格されるなどした場合などは「対価型セクハラ」にあたります。一方で、他の職員がいる職員室で風俗の体験談を話す、職場でアダルト動画を見る場合などは「環境型セクハラ」にあたります。
セクハラで刑事事件になり得るケース
刑法を含めた法律には、セクハラそのものは罪として規定されていません。もっとも、名誉棄損罪、強要罪、不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪などにあたる行為を行っていた場合には、立派な罪となるので刑事事件となり得ます。
例えば、次のような言動を行った場合には刑事事件になり、逮捕されることがあります。
- 飲み会の場で被害者の性に関する情報を言いふらす(名誉棄損罪)
- デートしてくれないと職場で不利に扱うなどと脅す(強要罪)
- 上司部下など、断りにくい関係性を利用するなどして、真の同意がないにも関わらず、被害者の胸、尻などを触る(痴漢の罪、不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪)
セクハラで刑事事件になった場合の流れ
刑事事件になった場合には、身柄事件の場合には、主に逮捕⇒勾留⇒起訴⇒有罪といった流れで刑事手続が進行します。
1.逮捕
被害届など、何らかの形で警察が犯罪事実について認知した場合、犯罪の捜査が開始されます。そして、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法199条1項)、すなわち、犯罪に対する嫌疑が存在する場合には、被疑者が逮捕されてしまうことがあります。
警察官が被疑者を逮捕した場合、警察は被疑者を検察に送致します(送検)。検察官は、事件記録を検討して、逮捕から48時間以内に被疑者を釈放するか、それとも裁判官に勾留(更なる10日間の身柄拘束)を請求するか判断します。
勾留請求された場合、裁判官は、逮捕時から72時間以内に勾留するか釈放するかの判断をします。この間、弁護士は依頼人である被疑者を釈放できるように検察官や裁判官を説得するといった弁護活動を行います。なお、検察官によって勾留が請求され、裁判官がこれを許可する確率は94%前後と言われています。そのため、逮捕された段階で早急に弁護士に依頼することが重要です。
2.勾留
勾留とは被疑者を刑事施設に身柄拘束することをいい、起訴・不起訴が決定する前の勾留期間は原則10日以内、延長されるとさらに追加で最大10日間の延長が可能です。
したがって、起訴前であっても、逮捕されてから勾留が決定するまでの手続を含めると、最大で逮捕から23日間拘束される可能性があります。もちろんその間職場に出勤することはできないため、仕事を休めば必然的に逮捕の事実が職場に知られることになってしまいます。したがって、職場に逮捕・勾留されたことを知られないようにするためにも、早期の釈放を目指さなければなりません。勾留になった場合には、弁護士は、長期の勾留を避けるために、勾留延長を回避するための弁護活動などを行います。
3.起訴
検察官が起訴し、裁判で刑の言渡しを受けた場合には、前科がつきます。罰金刑や科料、執行猶予付きの判決も前科に含まれます。
現在の日本の刑事裁判の有罪率は99%以上であり、いったん起訴された場合には前科を回避すること、すなわち、無罪判決を獲得することは非常に難しくなります。そのため、起訴される前のできる限り早い段階で弁護士をつけ、不起訴処分を獲得するための弁護活動を行うことが何よりも重要です。
示談交渉は経験豊富な刑事事件に強い弁護士を
不起訴処分を獲得するためには、被害者の方との示談を成立させることが鍵となります。示談書を取り交わすことで、被害者の処罰感情がなくなった、あるいは軽減したことを検察官にアピールすることができ、不起訴処分に近づけます。もっとも、示談交渉はご自身で行うことは得策ではなく、弁護士にご相談ください。
特に、性犯罪の被害者は他の犯罪と比べて強い処罰感情を持っていることが多いです。被害者は、加害者から直接連絡が来るだけで被害感情を強め、示談交渉は更に困難を極めることになります。また、被害者に直接コンタクトを取ることは、警察からは証拠隠滅を図っていると捉えられてしまい、かえって不利になってしまうおそれもあります。
このように、弁護士を通さずに直接被害者に対し示談交渉を持ちかけることは、逮捕・勾留へと繋がるリスクがあります。また、弁護士ではなく共通の知人などの第三者に仲介してもらうことも、法的知識のない人が交渉を担うことで新たなトラブルを生むことになりかねない上、こちらも証拠隠滅と捉えられるおそれがあるので、避けたほうがよいでしょう。
示談交渉の際には、示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することがポイントです。当事務所は、性犯罪の示談交渉の経験が大変豊富です。示談交渉の具体的な内容やタイミングについて、依頼者にとって最善のアドバイスを提供することができます。そして、当事務所では、被害者感情を無視したような強引な説得は行わず、真摯な対応を心掛けております。示談交渉はあくまで双方の合意の上に成り立つものですし、強引な示談交渉を行っていたのでは、捜査機関から被害者に対して示談状況についての問い合わせ等がなされた場合に、示談したけれども本意ではなかったなどとして示談を翻されてしまい、示談が全く意味のないものになってしまうからです。
真摯な対応の中でも、不合理な要求に対しては毅然と対応したり、悩んでいる被害者に対しては粘り強く交渉をすることを心掛けています。示談交渉が成立した後の警察・検察とのやり取りも弁護士が行います。
セクハラに関する具体的な事例
当事務所で扱ったセクハラに関する事例をご紹介します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ここでは、セクハラとはどのような行為を指すのか、セクハラで逮捕されることがあるのか、セクハラで刑事事件になった後の流れなどについて解説いたしました。
セクハラ行為が発端となって逮捕されてしまった場合には、早期の釈放を目指すため、一刻も早く弁護士に相談することが重要です。
中村国際刑事法律事務所では刑事事件を数多く取り扱っており、示談交渉の経験も豊富です。刑事事件はスピードが命です。土日・祝日も24時間ご相談を受付しておりますので、お気軽にご相談ください。