強制わいせつとはどのような罪か|代表弁護士中村が解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

強制わいせつとはどのような罪か|代表弁護士中村が解説 強制わいせつとはどのような罪か|代表弁護士中村が解説
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強制わいせつ事件の逮捕・示談に強い弁護士|刑事事件の中村国際刑事法律事務所 いわゆる性交や性交に至らない性的行為は,当事者の合意のうえで行われる場合には何の犯罪にも当たりません。しかし,実際には,一方当事者の合意がなく,暴行や脅迫が用いられたとして刑事事件になるケースが後を絶ちません。
 我々の社会において,大学のサークルや合コン,職場,あるいはマッチングアプリなど,他人同士が恋愛関係や性的関係に発展する機会は非常に多いです。だからこそ,誰しもが,性犯罪に問われる潜在的な危険性を有しているともいえます。

 強制わいせつ罪のような性犯罪の内容や予想される刑事手続について理解しておくことで,いわれのない罪を疑われて不利益を被る危険から身を守る必要があります。

 本コラムは代表弁護士・中村勉が執筆いたしました。

強制わいせつ罪とは

 強制わいせつ罪は,刑法176条で定められている犯罪です。

 ①13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者,②13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした者について,強制わいせつ罪が成立すると考えられています。

 なお,刑法178条1項で,準強制わいせつ罪が定められています。準強制わいせつ罪とは,人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心身を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせてわいせつな行為をした者に成立する犯罪で,強制わいせつ罪と同じ法定刑が定められています。

強制わいせつの成立要件

 強制わいせつ罪が成立するための要件について解説します。

 まず,被害者が13歳以上の場合については,「わいせつな行為」が必要です。
 「わいせつな行為」とは,性欲を刺激,興奮又は満足させ,かつ,普通人の性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為」をいいます(名古屋高裁金沢支部昭和36年5月2日下集3巻5=6号399頁)。

 代表的な例は,女性の胸や陰部を直接触ったり舐めたりする場合です。

 次に,「暴行又は脅迫」が必要です。
 ここでの「暴行又は脅迫」とは,「被害者の意思に反して当該わいせつ行為を行うに必要な程度に抗拒を抑制する程度・態様の暴行・脅迫」をいいます。
 この場合の「暴行」の定義が非常に広いことに注意が必要です。
 いわゆる殴る蹴るといった暴力でなくても,胸や陰部を触るために体を掴んだり,服を脱がせたりする行為も「暴行」に当たります。

 更に,被害者の同意がないことが必要です。
 13歳以上の被害者について,わいせつ行為につき同意がある場合には,社会的に認められた性的行為ということになりますから,違法な行為ではないとされ,強制わいせつ罪は成立しません。
 加えて,被疑者・被告人に強制わいせつ罪の故意があることが必要です。
 ここでいう故意とは,強制わいせつ罪の成立要件に該当する事実を認識・認容していることです。
 つまり,被害者の同意がなく,「暴行又は脅迫」に当たる行為を行って,「わいせつな行為」に当たる行為を行ったことの認識・認容が必要です。

 例えば,同意のない被害者の服を無理やり脱がせて胸を直接触った場合には,当然,自身が服を脱がせたことや胸を触ったことを認識・認容しているわけですから,故意が認められることになります。
 「服を脱がせることが暴行とは思わなかった」と主張をしたとしても,その行為自体を認識・認容していれば原則として故意が認められます。被疑者・被告人が,被害者がわいせつ行為に同意していると認識していた場合には,故意がなく強制わいせつ罪は成立しないことになります。この場合には,被害者の同意があると確信していることが必要です。
 なぜなら,少しでも被害者が同意していないかもしれないと考えていた場合,「未必の故意」があるとして故意が認定されてしまうからです。

 次に,被害者が13歳未満の場合には,被害者が13歳以上の場合と同様「わいせつな行為」が必要ですが,「暴行又は脅迫」や被害者の同意がないことは必要ありません。
 故意についても,被害者が13歳未満であること及び「わいせつな行為」に当たる行為の認識・認容があれば足り,「暴行又は脅迫」や被害者の同意がないことの故意は不要です。
 そのため,被害者が13歳未満の場合には,被疑者・被告人が被害者が同意していたと考えていても,強制わいせつ罪が成立することになります。

強制わいせつ事件の具体例

強制わいせつ事件の具体例 強制わいせつ罪が成立する事案には,様々な類型があります。

 例えば,路上で見知らぬ女性を襲って体を直接触った事例や,一人暮らしの女性の自宅に侵入してわいせつな行為を行う事例,電車内でいわゆる痴漢行為がエスカレートして女性の陰部の中に指を入れた事例などがあります。
 これらの事例は,被疑者・被告人が見知らぬ女性に対して,殆どコミュニケーションもなく突然わいせつな行為を行う類型ですから,女性の同意を期待することが非常に困難な場合です。
 そのため,同意があったなどと犯罪の成立を争うことは難しく,量刑も重くなる傾向があります。一方で,飲み会の後に二人きりになった場合,ナンパをしてラブホテルに連れ込んだ場合,一度交際していたが別れた後の男女間の場合,マッチングアプリで出会った男女間の場合など,被害者とされる人物が性交に同意することがあり得る事例でも,強制わいせつ罪が問題になることは珍しくありません。
 この場合には,被疑者・被告人が,「被害者はわいせつ行為に同意していた」「少なくとも自分は被害者が同意していたと思っていた」と主張し,強制わいせつ罪の成否が争われることが多くなります。

 また,未成年に対する事例もあります。非常に痛ましい事例ですが,路上で見知らぬ児童に声を掛けてわいせつな行為を行う事例も少なくありません。
 児童の多くは,まだ十分な性的知識がなく,嫌だと思っても抵抗する能力が不十分ですので,そのような未熟な児童を付け狙った事案は非常に悪質とされ,量刑も非常に重くなる可能性が高いです。
 

強制わいせつはキスやハグも対象となるか

 キスは,強制わいせつ罪におけるわいせつ行為に当たるとされています(高松高判昭和33年2月24日裁特5巻2号57頁,東京高判平成20年7月9日高検速報(平成20年)121頁)。
 被害者を単に抱きすくめる行為については,わいせつ行為に当たることを否定した判例もありますが(名古屋地判昭和48年9月28日判時736号110頁),その際に胸や臀部に触れた場合にはわいせつ行為に当たる可能性が高いといえます。

強制わいせつは同性相手でも成立するか

 強制わいせつ罪を定める刑法176条に,行為の主体や客体を異性に限定する言葉はありません。そのため,強制わいせつ罪は,当事者が同性同士であっても成立します。例えば,ある男性が路上で見知らぬ男性を襲い,無理矢理に陰茎を直接触った場合には,強制わいせつ罪が成立することになります。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。もしこの記事を読んでも不安が解消されなかったら,すぐに弁護士にご相談ください。起こしてしまったことは,時計を逆戻りにはできず,正面からこれと向き合って,一つ一つ解決していくしかないのです。

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