示談成立で不起訴を獲得
依頼者はマッサージ業を営んでいることころ、客の女性が、依頼者から胸のマッサージを受けた際に、施術用紙ブラジャー(施術着)を外され、直接胸を揉まれ、乳首をつままれたとの内容で被害届を出したという準強制わいせつの事例です。
依頼者は、初回相談時、当該女性のマッサージをしたことは認めるもののわいせつ行為は否認し、ブラジャーを外したことも乳首をつまんだこともない、ただ、胸の施術の際に、ブラジャーをずらしたり、乳首に触れることはあったかもしれないと主張したため、どちらの言い分が信用できるかが問題となりました。
実際のところ、一度依頼者のマッサージを受けただけの客が依頼者を陥れるために被害届を出す動機は想定し難く、ブラジャーをはずすとずらす、乳首に触れるとつまむ行為を取り違えることも考えにくいから、被害者供述の方が信用性は高いと思われました。
依頼者の弁解は認めなのか否認なのか中途半端であり、そのままの弁解では被害者が納得せず、示談交渉がうまくいかなくなる可能性が高いと判断したため、近い日程で再度依頼者に来所してもらい、依頼者の弁解を再度丁寧に確認しました。結局ほとんど認める内容となったため、その前提で示談交渉を行いました。
示談交渉の場で、被害者はやはり依頼者が当初否認していたことについて気にしていましたが、事前に依頼者とよく打合せをしていたため、その点うまく説明することができ、比較的スムーズに示談を締結することができました。
その結果、依頼者が検察官に呼ばれることもなく、早期に不起訴処分を獲得することができました。
事件のポイント
依頼者が否認する場合には、①本当にわいせつ行為はやってない、②やってないが紛らわしい行為はした、という2つのパターンがあります。
そして、①やってないという場合でも、実はわいせつ行為をしていて、それを弁護士に話せない方もいます。 弁護士はそこをまず見極めなければなりません。
①において、被疑者が虚偽の否認をする理由には、目撃者がいないし、証拠がないので無罪放免となると考えている場合や、家族の手前、認める訳にはいかないという場合など千差万別です。
しかし、目撃者がいなくても物的証拠がなくても最大の証拠である被害者という存在があることを依頼者にわかってもらう必要があります。それは②のパターンでも同じです。触られた本人である被害者は、施術なのかわいせつ行為なのか一番よく知っているのです。
家族の手前、虚偽の否認をしている人に対しても、否認を続けると拘束が長くなり、示談もできずに前科がつくリスクがあることを説明すべきです。弁護士は依頼者を疑ったり、検事みたいに取り調べしたりしてはなりません。どういう主張をすればどのような結果となるか説明し、本人に判断させるのです。
本件は、②のパターンでしたが、適切な見通しと依頼者説得により不起訴を獲得できました。
執筆者: 代表弁護士 中村勉