児童ポルノの自画撮りを要求し送信させた事件(セクスティング)で不起訴
トークアプリで知り合った自称16歳の少女に対して,男女が性交する動画を送信し,少女が他の動画も欲しいと言われたため,裸の自画撮りと交換で他の動画を送ると伝えて女性の胸部が露出した画像を送信させて保存したという事例です。
少女が画像を送信した後,依頼者は違法なのではないかと思い,少女に対して動画を送信しないでいたところ,親に相談すると言われたため,依頼者は警察署に出頭することにしました。
本件は,①自称16歳の被害者が特定されて,18歳未満の児童であったか,②仮に被害者が特定されて18歳未満の児童であることが判明したとしても,裸体の画像を送信させたことについて児童ポルノ製造にあたるか(もともと児童が自画撮りをストックしており,それを送信したとすれば製造は成立しない可能性がある。新たに自画撮りをしたとすれば,姿態をとらせて製造(7条4項)が成立する可能性がある),③依頼者は一旦画像を保存したもののすぐに削除しているため所持にあたるか,④依頼者に少女が18歳未満の児童であることの認識があるといえるかが,問題となりました。
依頼者は,少女が家族に相談する旨伝えられたことから,自称16歳の被害者が児童であるかもしれないと不安になり,弁護士とともに逮捕や刑罰を受けることを避けるべく警察署に出頭しました。
捜査の結果,被害者が特定されれば弁護人は,少女を知り合ったアプリに年齢制限があり故意がないことを指摘して不起訴処分を目指しました。
結果として,被害者の特定には至らなかったようでした。
その後,少女自身の自画撮り写真の送信を求めた点について,青少年保護育成条例(児童ポルノ要求行為)により依頼者は送致されましたが,被害者が特定できず,18歳未満の青少年であることを裏付ける証拠がなく不起訴処分で終結しました。
本件は自称16歳の女性に対する児童ポルノ事件で初動から争点を明らかにして依頼者に説明の上,逮捕リスク回避のため,警察へ同行した事例でした。
争点については特に年齢知情が問題となりますが,いかにアプリの説明に18歳未満を制限する旨の記載があったとしても,利用者の女性が18歳未満とは限りません。そのことは利用する男性としても,アプリ運営会社に年齢制限遵守の手続的担保がない限り,「もしかしたら18歳未満かもしれない」という不安がつきまとうはずです。
しかも,本件では明示的に16歳と言っているのですから尚更です。18歳や20歳の女性が,年齢制限あるアプリを利用する際,わざわざ16歳と年齢を偽るはずがない,と普通は思います。
こうした故意が認定されるリスクを考えると,本件のように警察に出頭したのは正解でした。
執筆者: 代表弁護士 中村勉
代表パートナー弁護士(法人社員) 中村 勉
代表パートナー弁護士である中村勉は,北海道函館市出身,中央大学法学部(渥美東洋教授の刑事訴訟法ゼミ),コロンビア大学ロースクールLLM(フルブライト ...