薬機法違反の疑いがあったが不起訴となった事例
「危険ドラッグ」のリキッドを吸引したことで心臓発作状態となり、自らリキッドを吸引したことを119番通報し、警察署にも大麻取締法違反として捜査が開始されたという事例です。
依頼者は令和4年2月にインターネットにて当時厚生労働省による指定薬物に指定されていなかったヘキサヒドロカンナビノール(以下、「HHC」といいます。)を含有するリキッドを購入しました。同年3月7日に厚生労働省がHHCを指定薬物に指定したことを受けて再度HHCリキッドを購入し、所持使用していました。
依頼者の供述によれば、購入所持使用したのはHHCリキッドであると認識していたため、鑑定によりリキッドに大麻が含まれていた場合には、大麻取締法の故意が問題となりました。
大麻が検出されなかったとしても、再度購入した当時、HHCは指定薬物として所持使用が禁止されていたため、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律違反(以下、「薬機法」といいます。)が成立し、逮捕・起訴のおそれがありました。
HHCリキッドに大麻が含まれていない場合であっても、薬機法違反により逮捕の可能性がありましたので弁護人は、自らの119番通報によって警察署が発覚するに至ったことから、自首に類似するものとして警察署に対して出頭確保を誓約する旨の意見書を提出するなどして逮捕回避に取り組みました。
鑑定の結果、HHCリキッド内には大麻が含まれていなかったため大麻取締法違反から薬機法違反に切り替わり、在宅事件として進められることになりました。
弁護人は取調べ前に依頼者と打ち合わせて、指定薬物に指定された後にはHHCリキッドを購入していないこと、メンタルクリニックに通院して薬物からの離脱を図っていたこと、自ら119番通報していること、自身も生死をさまようなど指定薬物の危険性を認識していることなどを主張し、不起訴処分を目指しました。
依頼者はHHC所持及び認識について自白していましたが、規制後間もないこと、依頼者自身も生死をさまよったことなど危険性について十分に認識したことなどから、不起訴(起訴猶予)処分となりました。
事件のポイント
規制薬物違反の事案は違法性の認識が問題となります。規制された年月日と購入時期、使用期間、所持残量を時系列に従い、客観的証拠と照らし合わせて、認識について丁寧な分析が必要となります。
当事務所はこの分析が得意です。
また、一般に、薬物の影響で錯乱状態になっての110番通報は自首に当たらないとされますが、本件では自首に準ずるものとして積極的に身柄拘束回避に動いています。
こうした丁寧かつ積極的な防御活動が起訴猶予という最善の結果をもたらしたと言えます。
執筆者: 代表弁護士 中村勉