否認事件で黙秘を貫き不起訴
大麻の共同所持の否認事件で不起訴処分を獲得しました。
事案の概要は、依頼者が友人の家に遊びに行った際に、友人が家宅捜索を受けて大麻所持が発覚したものです。その場に居合わせてしまったことから、共同所持を疑われたという事件でした。依頼者本人は所持も使用もしていないことから黙秘を貫き、弁護活動の結果、不起訴処分を獲得するに至りました。
否認事件のため弁護活動方針が重要となりましたが、依頼者には一貫して黙秘を貫いてもらい、接見にも頻回に足を運びました。接見時に依頼者と取調べのシミュレーションを何度も行い、黙秘破りがなされないようにしました。また依頼者から取調べの様子を細かく聞き、検察官からの「取調べで何も答えずに黙っているということは日本語がわからないのか。通訳を付けた方がいいか」など不適切な取調べに対しては、抗議文を出し、適切な取調べを求めました。抗議文を出したことにより、不適切な取調べは改善されました。
検察官に対しては、弁護人作成の意見書を提出し、依頼者の言い分を伝えるとともに、法律構成として、共同所持は成立しないことなどを主張しました。
20日満期に起訴・不起訴の決定がされないまま釈放。警察官からは今後も依頼者の呼び出しが続く旨を告げられていましたが、弁護人から捜査機関に対し、今後取調べを継続したとしても、依頼者には黙秘をさせ続けることを強調したところ、一度も呼び出しがなく不起訴処分となりました。
事件のポイント
検察官の人権意識の低さがよく分かる事例でした。検察官も大学で法を学び、司法試験に合格し、黙秘権の何たるかが分かっていて然るべきですが、黙秘権行使をする被疑者に対して、日本語が分からないのか、とか、通訳をつけるかなどの暴言、嫌味を口にするのであれば、この検察官、司法試験をもう一度受け直した方が良いのではないでしょうか。おそらく警察官ですらこんなことを言いません。
いずれにしても、捜索の際、偶々その場にいたというだけで、長期間身体拘束を受けること自体、重大な人権侵害です。国家権力による人権侵害に対する弁護士の闘いに終わりはありません。
執筆者: 代表弁護士 中村勉