依頼者が飲食店の女性店員のお尻をさわったことを咎められたため、逃げようとして駅の路上にて双方転倒し店員がけがを負ったという暴行被疑事件です。
なお、被害者は痛みを感じて傷跡も残ったとお話していましたが、診断書等の証拠や本件との因果関係が明らかでないことから暴行での立件となりました。また、着衣の上から臀部を触った点については、下着の上から鷲掴みにしたり撫で回したり揉んだりするような場合と異なり、行為そのものの性的意図の程度が小さいことから「わいせつな行為」とまでは評価し難く、強制わいせつでは立件されなかったものと考えられます。
「わいせつな行為」がなされたものとは言い難いことや、傷害の有無・因果関係に関する立証上の問題もあり、本件では、強制わいせつ等致傷も不成立となります。
本件は、依頼者が処分保留釈放後、被害者や被害者の職場のオーナーと示談交渉を進めていましたが、お互いに意思疎通が食い違うことで示談交渉が進められないまま時間だけが過ぎてしまったものでした。
依頼者から、示談交渉に進展がないことから弊所への依頼につながりました。
弁護士は、これまでの示談交渉経過について詳しく聴取して、これまでの問題点や食い違いの内容を分析して被害者との示談交渉に臨むことで、双方のわだかまりの解消に至り、被害者との間で本格的に示談交渉に進むことができました。
その後は、実現可能な示談内容を双方で見極めて、円満に示談が成立することになりました。
本件は、当事者同士で不信感が高まった中で、円満に示談が成立した例になります。
事件のポイント
示談交渉は相手のあることであり、被害感情などを考えると、交渉着手のタイミングは難しく、また弁護士の進め方の良し悪しもあって簡単には妥結にいたりません。
本件でも被害者の方はわいせつなことをされた上、怪我までさせられたので到底加害者をゆるせるものではありませんが、そうした被害感情に配慮した交渉が実を結びました。
なお、お尻を触った点は一瞬の行為であったことから強制わいせつには問疑されませんでしたが、暴行罪にはなります。時間的に接着する暴行として一罪と認定されたのでしょう。
執筆者: 代表弁護士 中村勉