熱心な示談交渉で不起訴
店舗備品持ち去りの窃盗の事例をご紹介します。
被害品の返却および謝罪文の送付が行われたことに加え、被害店舗から「厳罰は求めない」との意向が示された結果、不起訴処分となった事例です。
事案の内容は、ディスカウントストアにおいて購入した商品とともに店舗備品である買い物カゴを同行していた友人とともに持ち去ったというものです。依頼者と友人は特に示し合わせていたわけではありませんでしたが、友人の持ち去り行為を黙認していたという経緯であったため、共謀が成立することが懸念されました。
また、依頼者等は行為に及んでから車両で移動しており、数時間後の職務質問で本件発覚に至っていることから、「返却するつもりだった」とはいえ、不法領得の意思も認められてしまうものと見込まれました。
以上の事情から嫌疑不十分を主張することは難しいと判断し、被害店舗との示談成立による不起訴処分を目指すという方針で臨んでいます。
示談交渉が応じられないことも予想されましたが、本件は商品の万引き事案ではないため、例外とされる可能性も考慮して弁護人において被害店舗へのアプローチを敢行しました。
弁護人より被害店舗に対して依頼者の謝罪と反省の意思を伝え、迷惑料の支払いを打診したところ、被害品の返却のみで足り迷惑料の支払いは不要であるとの回答でした。そこで、弁護人から改めて謝罪文だけでも送付させてほしいと依頼した結果、承諾を得られたうえ、「厳罰は求めない」との意向も確認することができるに至っています。
この示談交渉の経緯を報告書にまとめて担当検察官に提出し、不起訴処分に繋げることができました。
事件のポイント
本件は、軽微事案と言えそうですが、陳列棚の商品をくすねる万引きとは違い、厳重注意では済まず刑事事件化したケースです。
よく一般的にあるのは、商品を車両に積載するために買い物カゴのまま店外に出て、積載後に店に戻すつもりが面倒になり、そのまま持ち去るというケースです。
そのような動機であるなら、「後で戻そうと思った」「次に来店したときに返そうと思った」という弁解を述べて犯罪成立要件の不法領得の意思を争うという弁護戦略はほとんど容れられることはありません。
本件では、その見極めを迅速に行い、示談解決に絞って弁護活動をしました。一般的に量販店は会社方針として示談を拒否する店が多いですが、そこは弁護士の熱心さをもって例外を作ることは可能です。
最後まで諦めずに当初の弁護方針を貫いたことが功を奏したと言えます。
執筆者: 代表弁護士 中村勉