暴行,傷害事件で同種前歴がある中,執行猶予を獲得
依頼者が,被害者に対し,その身体に火のついたたばこを多数回押し付けて熱傷の傷害を負わせ,別の日にその身体を手で殴るなどの暴行を加えた件で逮捕された事案です。なお,依頼者には同種前歴がありました。
被害者とは捜査段階から示談交渉をしていたものの示談金額に折り合いがつかず,検察官からは,勾留満期前に示談の成否に関わらず起訴見込みであることを告げられたため,示談交渉は起訴後に持ち越すこととなりました。その後,第1回公判期日前に示談が成立し,保釈も許可されました。
捜査段階で黙秘していたため,公判において依頼者の供述調書は弁護人選任前に作成された身上に関するものしか証拠調べ請求されず,検察官の他の請求証拠等の内容を検討した上で,公判での事実の認否や供述方針を自由に決めることができました。
公判では,被害者との間で示談が成立しており,損害賠償が尽くされていることのほか,被告人質問や情状証人としての家族の証人尋問を通して,依頼者が反省していることや再犯防止策がとられていること等を顕出しました。特に前歴との関係では,前歴から本件犯行に至るまでの間に本人,ご家族共に一応の再犯防止策をとっていたことや,それでも今回防止できなかったことを受け,前回の反省を生かし,今回は心療内科を受診して本件犯行の原因解明に努めており,今後も通院を継続して,必要に応じて服薬するなどにより効果的な再犯防止策をとっていることをアピールしました。
その結果,執行猶予付き判決を獲得することができました。
本件はいわゆるDV事案で同種前歴もあることから起訴不可避の事案でした。実刑可能性もある中で執行猶予を獲得できたのは,示談成立はもとより,心療内科での治療継続がポイントだったと思います。社会的な関心として被害者支援のみならず,「どうしてもDVをやめられない」人に対する加害者更生プログラムも充実してきており,そうした更生面からのアプローチは同じような被害者を出さないためにも必要で,それが弁護の形でも奏功した事案でした。
執筆者: 代表弁護士 中村勉
代表パートナー弁護士(法人社員) 中村 勉
代表パートナー弁護士である中村勉は,北海道函館市出身,中央大学法学部(渥美東洋教授の刑事訴訟法ゼミ),コロンビア大学ロースクールLLM(フルブライト ...