未成年への痴漢事件で不起訴
電車内で女子高生のスカート内に手を入れて体を触ったという痴漢事例です。
被疑者は現行犯逮捕されましたが,勾留請求されずに釈放されました。その後,当事務所に相談があり,受任しました。
当然のことながら,被害者の保護者の方の被害感情は強く,当初は「示談に応じるつもりはない」とはっきりと言われていました。
しかし,被疑者が今回の事件を受けて会社を欠勤し,すでに社会的制裁を受けていること,被疑者の妻も事件のことを知っており,今後はGPSアプリで行動監視をして再犯防止に努めることを弁護士から保護者の方にお話ししました。そして,今回の事件が被疑者の生活に影響を及ぼしていることを弁護士から伝えたところ,保護者の方からは,今回の事件がすでに再犯の抑止力になっているのではとのお言葉をいただき,被害感情を和らげることができました。
また,被疑者が今後電車を乗る際には事件当時と乗車時間をずらすこと,端の車両のみを使うことを約束し,今後被害者と遭遇する可能性をできる限り減らしたことで,最終的には示談が成立し,検事も被疑者の反省をくみ取って,不起訴処分を獲得することができました。
自分の娘が同じ目に遭ったらと思うと,被害者の方,そのご両親の方も犯人を絶対に許せないという気持ちになるのは当然のことと思います。お嬢様をご幼少の頃から絶対的に守ってきたのですから。
ですから,弁護士も本人も「許してはもらえない」という前提で交渉をスタートしなければなりません。
弁護士は被疑者を弁護します。「なぜ悪人を弁護するのか」というのは多く聞かれる質問です。ただ,組織的で計画的で利欲的な本質的な犯罪人ではなく,機械的,偶発的,出来心による犯行は,犯人自身が犯行後に後悔していることが多いです。その気持ちを弁護士が更に深めさせ,それを被害者に伝えることができれば,弁護の甲斐があるというものです。本件はその典型的な解決事例と言えます。
執筆者: 代表弁護士 中村勉
代表パートナー弁護士(法人社員) 中村 勉
代表パートナー弁護士である中村勉は,北海道函館市出身,中央大学法学部(渥美東洋教授の刑事訴訟法ゼミ),コロンビア大学ロースクールLLM(フルブライト ...