痴漢の少年事件で学校への連絡回避(審判不開始)
事案概要・結果
少年の痴漢事件で,学校に連絡されることなく,審判不開始となりました。
当時高校2年生だった少年が,登校の際に利用していた満員電車において,女子高校生のお尻をスカートの上から触ったという痴漢事件でしたが,女子高校生に手を掴まれた瞬間に過呼吸となり失神。駅のベンチ等で手当てをされた後,警察署に連行されましたが,逮捕はされずに在宅捜査となり,審判不開始処分決定を獲得しました。
少年は,私立の進学校に在籍しており,本人及び両親が同校の卒業を希望していたため,学校への連絡を回避すること,また,受験勉強への悪影響を避け,できる限り早期に解決するため,審判不開始処分が最大の目標となりました。
在宅事件については,犯罪の重要性や家族の観護能力,本人の反省の情などによって,在籍している学校に通知しないケースも有り得るため,担当警察官に対して,学校へ連絡しないことを求める意見書を作成し提出。意見書には,本人の反省の情及び家族の観護能力を示すために,少年及び少年の家族作成にかかる,謝罪文及び誓約書を添付するなどして,工夫をしました。
示談交渉
犯罪の重要性については,被害者の処罰感情も重要な考慮要素となるため,示談活動も行いました。
警察署の応接室内で,被害者の実父,少年の両親及び弁護人の面会が叶い,示談交渉を行うことができました。少年の両親から直接謝罪を受けたことで,被害者の実父も示談に応じる意志を示し,少年の更生のために,学校の退学は望まないことを付け加えてもらえました。宥恕文言入りの示談は,書類送検前に締結されたため,示談書及び示談金の振込票を添付した示談状況報告書を作成し,警察官に提出しました。
結果,警察官から学校へ連絡がなされることはなく,事件は家庭裁判所に送致されることとなりました。
家庭裁判所への送致後の弁護活動
家庭裁判所送致後は,警察官に対するものと同じ内容の意見書を担当書記官及び調査官に送り,再び学校への連絡回避及び調査の際の配慮を要請しました。また,成績表等,学校での活動に関連する書面については,少年の家族に積極的に準備させ,調査官に提出し,通知の必要性がないと働きかけ,結果,家庭裁判所からも学校には通知されることはありませんでした。
調査官面接の際には,付添人も同席し,審判不開始を求める意見書を持参し,調査官に写しを交付し,調査官面接に先立って,少年照会書の書き方の指導や調査官面接のリハーサルを行うなどして,面接に備えました。
具体的には,少年に対しては本件犯行当時の心境や,犯行に及んでしまった理由,被害者の心情等について,再度深く検討させました。
また,少年の両親に対しては,親子関係,思春期の子供との接し方,少年の性的な問題などについて,再考させ,少年の更正にあたりました。
執筆者: 代表弁護士 中村勉
代表パートナー弁護士(法人社員) 中村 勉
代表パートナー弁護士である中村勉は,北海道函館市出身,中央大学法学部(渥美東洋教授の刑事訴訟法ゼミ),コロンビア大学ロースクールLLM(フルブライト ...