電車内での盗撮発覚後に逃走した事件で,不起訴処分となった事例
電車内において,前方にいた女性のスカート下方にスマートフォンを差し入れ,盗撮していたところ,近くにいた別の女性から指摘され,到着した駅で駅員を呼ばれたが,逃走したという盗撮事件です。
相談を受けた時点で警察からの連絡はなく,自首すべき事案であるか問題となりましたが,目撃者の女性が被害者にも声をかけており,駅員も呼んでいたため,被害届が出ている可能性が十分にあると判断し,自首同行することにしました。事件の2日後に自首同行しましたが,被害届は出ていないようでした。
相談者は逃走直後に本件映像を削除しており,また,現場は車両内で防犯カメラはなさそうでしたが,他にも同様の行為を繰り返していることから,余罪立件のおそれも考えられるため,自首後,速やかに専門クリニックに通院してもらい,また,スマートフォンのカメラを使用できなくするなどの再犯防止策を実践してもらいました。
担当警察官に対しては,こまめに捜査状況を確認し,もし被害者が判明した場合はすぐに示談交渉ができるようにするとともに,本人の反省状況を改めて伝え,捜査を早めに進めて,本人の刑事処分が速やかに出るようにしてもらいたい旨伝えました。
結局,被害者不詳のまま送致されましたが,担当検察官が決まって即日,本人の再犯防止に対する取り組みや,担当警察官から聞いている証拠関係に照らして,早急に不起訴にしていただきたい旨を訴えました。
その結果,送致後,1週間も経たずして,不起訴処分を得ることができました。
個人的に思うのは,自首すべきかどうか迷い,夜も眠れないときは自首した方がいいと思います。
しかし,それは弁護士が決めることではありません。弁護士は前科者を増やすことはいいとは思わないからです。 ですから,自首は自分で決めなければなりません。
そして,自首すると決めたら一刻も早く専門の弁護士に相談すべきです。それが最良の結果をもたらし,前科を回避することにもつながるからです。本件はその好事例です。
執筆者: 代表弁護士 中村勉
代表パートナー弁護士(法人社員) 中村 勉
代表パートナー弁護士である中村勉は,北海道函館市出身,中央大学法学部(渥美東洋教授の刑事訴訟法ゼミ),コロンビア大学ロースクールLLM(フルブライト ...