否認示談で不立件を獲得
会社の元同僚の相手方と居酒屋で飲食した後、2人でビジネスホテルに入室した後、相手方の胸を触る、キスをしたとされる強制わいせつの事例です。
依頼者は、居室内では一切わいせつな行為、言動をしていないとして否認しているため、相手方が主張するようなわいせつ行為がなされたかどうかが問題となりました。
受任後、弁護人は嫌疑不十分として不起訴を目指し、取調べでは依頼者の言い分を正直に供述して、ラインのやりとりや防犯カメラなどの客観証拠にも整合することを主張することにしました。
依頼者は、相手方が主張するような事実はないと否認し、二度にわたる警察署での聴取についても同様に否認しました。依頼者は、否認の主張は維持しつつも相手方から示談の提案を受けて、示談金を支払って円満に解決したいとの意向を示したため、否認の主張を前提としながらも相手方に対し、清算条項、宥恕条項、口外禁止条項を含める趣旨で示談が成立するに至りました。
事件のポイント
示談不成立のまま被害届提出に至った場合、依頼者を長期の間、捜査機関の取調べに曝され、その間に婚約者や職場に知られてしまう可能性がありました。
本件は警察署に対する被害相談の段階で相手方との示談の可能性が認められる間に双方で妥結した点で、時期を見定めて示談が成立できたものと思われます。
一緒にビジネスホテルに入った点は合意を伺わせる事情であり、否認を前提に防御しています。1対1供述の場合、被疑者の話を信用してもらうためにはビジネスホテルに行くことになった経緯や室内の状況を詳細に話した上で否認を貫いた方が、完全黙秘するより検事に信用してもらえる可能性が高まります。
本件はそのような弁護方針のもと、念のために示談交渉も並行に進めて不起訴を完全なものにしました。
執筆者: 代表弁護士 中村勉